乙女ゲーの王子に転生したけどヒロインはマジでお断りです

きょんきち

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波乱の学園生活

偽物

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 その日、彼女は午後の授業に参加せず、寮の自室に閉じこもったらしい。

僕は授業終了後に学年担当教師の招集を受け、昼休みに起こった内容を確認された。

ありのままに伝えると彼らの耳にも彼女の入学以降の行動や噂が耳に届いていたのだろう。

特にお咎めなしとなった。そのまま友人達の待つテラスに向かいようやく僕は一息をついたのだった。

「災難でしたね、殿下。」

ジョーンヌが労いの言葉をかけてくれるが僕の頭の中には彼女の言葉が反芻されていた。

「偽物か。」

誰に聞かせるつもりではなく独りごちる。

「ブランシュ様?」

そんな僕の様子にキュリテが心配そうに声をかけてくれる。

「みんなに聞きたい。私が本当の私ではなかったとしたら君達はどう思う?

他人のことなんて顧みず、ただ王になる事だけに集中するだけに生涯を捧げるのが本当の僕だと言ったら君達はどうする?」

僕の言葉の真意が掴めず、この場にいる者達は戸惑った。

「5年前。」

その沈黙を破ったのは他でもなくキュリテだった。

「5年前のあの頭痛で倒れられるまでのブランシュ様はブランシュ様のおっしゃる通りの人でしたね。

10歳という幼い身で一心に次代の王となるための勉学に励み、幼い頃から婚約者として側にいた私になんて見向きもなさらない。」

「そうだね。あの頃の兄上はいつも厳しい目をしてずっと一人で勉強していた。

その真面目さを尊敬もしたけど、当たり前のようにつまらなそうに僕のできない事をして、兄上と比べられて劣等感から僕はあの頃の兄上があまり好きじゃなかった。」

キュリテに続いてノワールも話しだす。

「あの日、婚約者の義務と思って伺った私はブランシュ様の変わり様にすごく戸惑いました。

甘いものがあまり好きではない私なんて気にもかけず、お声かけしようともなさらなかったあの殿下が早々に私に対して気遣いをなさってくださった。

病で心が弱られたのか、今更の行動に何か意図があるのかなんて考えて帰り道に酷く困惑しましたわ。」

「ずっと勉学一本筋だった兄上が急に料理に興味を示して。僕にも今までのはなんだったのってくらい気軽に声をかけてきたり。

確かにあの日から兄上は大きく変わったね。」

そう言う2人の顔は過去を懐かしむようなものだった。

「私達が知っている殿下はその後のものですから、想像もつきませんね。」

「そうだね。彼の幼いながらの優秀さはうちにも届いていたけどその後に出会った僕としては噂以上の傑物としか思わなかった。」

2人の話にジョーンヌとブルは驚きの声を上げる。

「それが偽物だと言うなら、私は偽物のブランシュ様の方がいいですわ。

私がお慕いしているブランシュタイン殿下は今の殿下です。」

「うん。僕も今の兄上が好きだな。それが偽物だって言うんなら僕は偽物でいい。」

「私は今の殿下しか知りませんから。偽物だと言われても想像できません。」

「僕もだね。山の国を豊かにしてくれて友誼を結んだのは今の殿下だ。偽物かどうかは関係ない。」

彼らの言葉に僕はただ感謝の言葉しかいえなかった。

----------

 覚悟は決まった。いや、最初から決めていたんだ。異世界から転生し、に宿ったは僕として生きていく事を決めていた。

そこに迷う事なんて何もなかったのだ。僕が僕となった意味が何かあるかは知らない。

僕は僕として僕の思うままこの世界で生きていくんだ。偽物と言われようが構わない。

それが今の僕ブランシュタインだ。

 週末、僕は彼女を誘って街に出た。流石に学園から出ると色々危険があるため、護衛は数人ついているが散策デートというやつだ。

ちなみにゲームでも週末は毎週こういうデートイベントが発生する。

色んなところを出歩いて好感度をより上げやすくなる。このデートをうまくこなせるかが攻略のポイントになる。

なおいわゆるミニゲームとなっており、攻略対象からされる質問に相手に合わせた返事を選択しないといけない。

だが現実はミニゲームとは違う。僕達は露天市場を巡りアクセサリーを見たり、軽食を買って道すがら味わったりとごく普通の平民がするようなデートを楽しんだ。

貴族や王族の立場ではあまりできない事だが今の学園生という立場はそのハードルを下げてくれるらしい。

まぁ店側は僕や彼女に気付き恐縮してたけどね。

最後に学園に戻ってテラスでお茶をすることにした。

「こういうのが、平民のデートなんですね。」

散策デートを楽しんだキュリテはやや疲れた様子でそう呟いた。

「こういうのもたまにいいかなと思ってね。貴族や王族って立場だとそう出来ないから。」

疲れているが満足しているキュリテの様子に僕もそう答える。

お互い満足した様子で僕らは残り時間を楽しんだ。
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