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白珪学園編
第二十話 肝試し大会⑤
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理科室へと向かう千明を誘導するように、ふわふわと前を進む火の玉。
でも千明は、火の玉から離れ、迷いなく理科室への最短コースを進みました。
千明が付いて来ていないことに気がついた火の玉が、慌てて軌道を修正しようとすると…
「あのね、私は早く理科室に向かいたいの。
理科室に向かう道はこっちだって分かってる。だから、君が私を迂回させようとしても、無駄だよ」
そう言うと千明は、火の玉が行かせたい方向とは逆に向かって進み始めました。
しばらく迷っていた火の玉も、仕方なく千明に付いて、理科室へと向かうことにしました…。
~・~・~・~
一方、尚明は…火の玉が向かう後をついて行きますが…廊下は真っ暗で、初めて歩く旧校舎は、どんな配置なのかも分かりません…。
さっきからどうも同じ所を歩いている気がします…。
「う~ん、火の玉くん。本当にこちらの道で合っているのかい?」
何も答えてくれないと思いつつも、火の玉に質問する尚明。
もちろん返答はありません…。
あきらめて窓の外に目を向けると…視界に白衣が翻るのが見えました。
(誰だろう…?)
でも、よく考えればここは三階…。
窓の外に人がいるはずがありません…。
白衣の人影は窓から2メートルほど離れたところを、右から左へと真っ直ぐ通り過ぎて行きます…。
思わず窓から身を乗り出して、正体を確かめようとしたところで…
カタンッ… 階段の方で物音がして…
白衣の裾が見えました…。
尚明は、火の玉くんを置いてけぼりにして、1人白衣を追いかけます。
自慢ではありませんが、尚明はサッカー部のエース。
走るのには自信があるので、追いかけっこなら、誰にも負ける気はしません!!
~15分経過~
「どうしてなんだ…この僕が…いくら本気で走っても…追いつかないなんて…。
まさか…本気で…幽霊だとでもいうのか…?」
全速力で階段を上がり下がりしながら校舎内を走り回ったので、流石のサッカー部エースもゼェハァ息を切らしています。
白衣の人物を見失った尚明が、そこに隠れたのではないか?と、前に見える明かりが灯った教室に入ると…
そこは理科室でした…。
とりあえず、ルールを思い出し、手持ちの札を教卓の上にある箱に入れます。
既に誰かが来たのか…箱の中にはもう1つ札が入っていました。
箱の横には、不自然に…コンパクトなスピーカーが置かれていて…
不思議に思い、確認していましたら…
ガラッ…ピシャッ!
まるで『逃さない』というように、戸が閉まりました…。
突然、電気が消え…手元の懐中電灯の薄暗い明かりだけになったところで…
「ヒッ…!!」
何かヌメッとしたものが首筋を撫ぜました…。
そして…教卓に置かれたスピーカーから…
『君には何が見える?』
ボイスチェンジャーで変えたような不気味な声が問い掛けてきました…。
尚明は指示されるまま、理科室の中をぐるっと懐中電灯で照らして見ましたが…
「特に何も…」
そこには普通に実験机や椅子、実験器具が揃った棚が置いてあるだけでした…。
尚明がそう答えると、再び理科室の電気が全てつき、教卓の上のスピーカーから…
『お疲れ様でした。以上で肝試し大会は終了です。そのまま火の玉が誘導いたしますので、正面玄関からお気をつけてお帰りください』
…と今度は明るい女性の声で終わりの合図が流れました。
(結局、この肝試し大会にどんな意味があったのか…)
そう思いながら、尚明が最短距離で導かれる案内に従って正面玄関の外に出ると…
「尚明君は外部受験予定だから、これから受験勉強大変だろう?
海星志學館は高等部からの入学試験は難しいと聞くからね…。
是非その時に、これらの物を活用してくれたまえ」
そう言って、親戚でもある学園長が、笑顔でよく分からない記念品を渡してくれました…。
『第10回来栖家恒例肝試し大会』と書かれたタオルにボールペン、耐熱マグカップ…はっきり言って、要らない…。
「ありがとうございます。ところで一つお尋ねしたいのですが…
あの僕が追いかけっこした白衣の幽霊は、学園長がドローン技術を駆使して飛ばされたものだったのでしょうか?
それとも…まさかアレが本物の幽霊だったとか…?」
尚明は、政明ほどではないけれど、幽霊などという不確かなものを信じていません。けれど、学園一俊足の尚明がらいくら追いかけても追いつかない速さで…足音も立てずに走るなんて…人間が成しうる技ではありません…。
「ああ…もうみんな終了したからネタバラシしちゃうけれど…最初窓の外に見えた白衣は僕がドローンで浮かしてたものだよ。でも…その後の校舎内のは学園の生徒に協力してもらったんだ」
学園長は、笑顔で何でもないことのように言ってのけましたが…そんな神業をできる学生がいるなんて、あり得ないことでした。
「それは誰が…?」
「それは秘密だよ。匿名ということで、協力してもらっているからね」
尚明は突出した才能を持った者がいない…そう努力しなくても自分がトップに立ててしまう白珪学園に退屈していました。
けれど、今年はそんな彼に、思い掛けない刺激を与えてくれる逸材が揃ったようです。
「学園長…僕は海星に行くのを止め、もう少しこの学園で学びたいと思います」
気がつけば尚明は、そう学園長に宣言していました。
夏休み明け、せっかく地味な(自称)学園生活を送っていた宝のクラスに、キラキラ☆代表の尚明が訪ねて来て、平穏な毎日を壊されるとは…この時の宝は知る由もありませんでした…。
■□■□■□■□
お読みいただきありがとうございます。
でも千明は、火の玉から離れ、迷いなく理科室への最短コースを進みました。
千明が付いて来ていないことに気がついた火の玉が、慌てて軌道を修正しようとすると…
「あのね、私は早く理科室に向かいたいの。
理科室に向かう道はこっちだって分かってる。だから、君が私を迂回させようとしても、無駄だよ」
そう言うと千明は、火の玉が行かせたい方向とは逆に向かって進み始めました。
しばらく迷っていた火の玉も、仕方なく千明に付いて、理科室へと向かうことにしました…。
~・~・~・~
一方、尚明は…火の玉が向かう後をついて行きますが…廊下は真っ暗で、初めて歩く旧校舎は、どんな配置なのかも分かりません…。
さっきからどうも同じ所を歩いている気がします…。
「う~ん、火の玉くん。本当にこちらの道で合っているのかい?」
何も答えてくれないと思いつつも、火の玉に質問する尚明。
もちろん返答はありません…。
あきらめて窓の外に目を向けると…視界に白衣が翻るのが見えました。
(誰だろう…?)
でも、よく考えればここは三階…。
窓の外に人がいるはずがありません…。
白衣の人影は窓から2メートルほど離れたところを、右から左へと真っ直ぐ通り過ぎて行きます…。
思わず窓から身を乗り出して、正体を確かめようとしたところで…
カタンッ… 階段の方で物音がして…
白衣の裾が見えました…。
尚明は、火の玉くんを置いてけぼりにして、1人白衣を追いかけます。
自慢ではありませんが、尚明はサッカー部のエース。
走るのには自信があるので、追いかけっこなら、誰にも負ける気はしません!!
~15分経過~
「どうしてなんだ…この僕が…いくら本気で走っても…追いつかないなんて…。
まさか…本気で…幽霊だとでもいうのか…?」
全速力で階段を上がり下がりしながら校舎内を走り回ったので、流石のサッカー部エースもゼェハァ息を切らしています。
白衣の人物を見失った尚明が、そこに隠れたのではないか?と、前に見える明かりが灯った教室に入ると…
そこは理科室でした…。
とりあえず、ルールを思い出し、手持ちの札を教卓の上にある箱に入れます。
既に誰かが来たのか…箱の中にはもう1つ札が入っていました。
箱の横には、不自然に…コンパクトなスピーカーが置かれていて…
不思議に思い、確認していましたら…
ガラッ…ピシャッ!
まるで『逃さない』というように、戸が閉まりました…。
突然、電気が消え…手元の懐中電灯の薄暗い明かりだけになったところで…
「ヒッ…!!」
何かヌメッとしたものが首筋を撫ぜました…。
そして…教卓に置かれたスピーカーから…
『君には何が見える?』
ボイスチェンジャーで変えたような不気味な声が問い掛けてきました…。
尚明は指示されるまま、理科室の中をぐるっと懐中電灯で照らして見ましたが…
「特に何も…」
そこには普通に実験机や椅子、実験器具が揃った棚が置いてあるだけでした…。
尚明がそう答えると、再び理科室の電気が全てつき、教卓の上のスピーカーから…
『お疲れ様でした。以上で肝試し大会は終了です。そのまま火の玉が誘導いたしますので、正面玄関からお気をつけてお帰りください』
…と今度は明るい女性の声で終わりの合図が流れました。
(結局、この肝試し大会にどんな意味があったのか…)
そう思いながら、尚明が最短距離で導かれる案内に従って正面玄関の外に出ると…
「尚明君は外部受験予定だから、これから受験勉強大変だろう?
海星志學館は高等部からの入学試験は難しいと聞くからね…。
是非その時に、これらの物を活用してくれたまえ」
そう言って、親戚でもある学園長が、笑顔でよく分からない記念品を渡してくれました…。
『第10回来栖家恒例肝試し大会』と書かれたタオルにボールペン、耐熱マグカップ…はっきり言って、要らない…。
「ありがとうございます。ところで一つお尋ねしたいのですが…
あの僕が追いかけっこした白衣の幽霊は、学園長がドローン技術を駆使して飛ばされたものだったのでしょうか?
それとも…まさかアレが本物の幽霊だったとか…?」
尚明は、政明ほどではないけれど、幽霊などという不確かなものを信じていません。けれど、学園一俊足の尚明がらいくら追いかけても追いつかない速さで…足音も立てずに走るなんて…人間が成しうる技ではありません…。
「ああ…もうみんな終了したからネタバラシしちゃうけれど…最初窓の外に見えた白衣は僕がドローンで浮かしてたものだよ。でも…その後の校舎内のは学園の生徒に協力してもらったんだ」
学園長は、笑顔で何でもないことのように言ってのけましたが…そんな神業をできる学生がいるなんて、あり得ないことでした。
「それは誰が…?」
「それは秘密だよ。匿名ということで、協力してもらっているからね」
尚明は突出した才能を持った者がいない…そう努力しなくても自分がトップに立ててしまう白珪学園に退屈していました。
けれど、今年はそんな彼に、思い掛けない刺激を与えてくれる逸材が揃ったようです。
「学園長…僕は海星に行くのを止め、もう少しこの学園で学びたいと思います」
気がつけば尚明は、そう学園長に宣言していました。
夏休み明け、せっかく地味な(自称)学園生活を送っていた宝のクラスに、キラキラ☆代表の尚明が訪ねて来て、平穏な毎日を壊されるとは…この時の宝は知る由もありませんでした…。
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