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月樹《つき》

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白珪学園編

第二十六話 体育祭⑤

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 まあ予想通り、大道寺先輩のレースは散々なものでした…。

 ただでさえ身長差があるのに、激しい人見知りを発動した大道寺先輩が、なるべく離れて走ろうとするものですから、思いきり転倒してしまったのです…。女子の方が…。

「あ~あ。花村さん、派手に転けたね…」

 後ろから近づいてくる気配は感じていたので、がそう言って、肩に手を掛ける前に横にズレたのですけれど…

「イタタタタタ…。君、何でいつも振り向きもせずに、的確に僕の手を掴めるの…?
 もしかして…後ろにも目がついている?」

 倶利伽羅くんは、無言で生徒会長の手をひねりあげていました…。

 あの肝試し大会以来、生徒会長は隙を見つけては、こうやってチョッカイを掛けてきます。迷惑なことに…。
 大抵、倶利伽羅くんに阻止されていますが…。


「先輩、こっちは赤組の応援席ですよ。
 白組の応援団長が堂々とこちらに邪魔しに来ないでください」

 ただでさえ電飾背負ってるの!?というくらいキラキラしいのに、わざわざ敵陣地に来て、地味な一般生徒に話し掛けてくるので、ここだけ異様に目立っています…。

「連れないな~。君と僕の仲じゃないか…」
 生徒会長は倶利伽羅くんに捻られた手をさすりながら、いつもの胡散臭い笑顔で話し掛けてきますが…

「全くの無関係。赤の他人です」
 ちゃんと自己紹介したわけでもなく、肝試しの時にお化けに扮した姿を見破られただけなのに…。
 どうしてこんなに親しげに話し掛けてこられるのかが分かりません。

「あの派手に転けていた女生徒は生徒会長の知り合いですか?」
 倶利伽羅くんは、話題を振りながらりげなく、私と生徒会長の間に割り込みました。
 生徒会長はちょっとムッとしましたけれど、すぐに表情を繕って会話を続けます。

「彼女は僕のファンクラブ会長だよ。僕はファンクラブを認めていないから非公式だけれどね…」

 ファンクラブですか…そういえば、お兄様達や元恋人にもありましたわね…。

「あなたの自称ファンクラブ会長が、どうして彼に絡むのですか?」

 倶利伽羅くんの質問に、ニンマリとした笑顔で会長は答えました。

「それは、今まで何にも興味を示さなかった僕が、学校七不思議の一つと言われる『旧校舎にある謎のクラブ』に興味を示したからかな?
 夏休み明けにね、僕は学校に提出していた進路希望を、海星志學館から内部進学に戻したんだ。
 元々親戚が理事長をしてるからという安直な理由で入学したけれど、何も面白いものが見つからなかったから、高校からは従兄弟が通う海星志學館に移ろうと思っていたんだけれど…」

 そう言って会長は言葉を区切ると、何だか意味深に私の方を見つめ…

「海星に行くよりも面白いものを見つけたからね」

 その笑顔は珍しく、いつもの胡散臭い笑顔じゃなくて…


 ウサギをいたぶって遊ぶキツネのような笑顔でした…。
 思わずブルっと寒気がしたので、自分の身体を抱きしめて一歩後ろに下がると…


「確かに、こいつは見ているだけで何をするか分からなくて面白いが…
 タカラはのだから、遊ぶなら他のもので遊んでください」

 会長から庇うように、私の肩を抱いて自分の方に寄せ、ケンカを売る倶利伽羅くん。

(2人ともやめて~!!さっきから観客席からの殺気が凄いです!!)

 思わず観客席の方に目をやると…

     『殺す…』

 ルークお兄様が呟いていました…。


 ■□■□■□■□

 お読みいただきありがとうございます。
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