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月樹《つき》

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白珪学園編

第三十一話 体育祭⑩

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 そんななか、いち早く正気を取り戻した倶利伽羅くんは…
「お気持ちはありがたいのですが…そこまで人様に甘えるわけにはいきません。
 それにもう慣れているので、1人でも問題なく暮らしていけますし…」
 と遠慮しながらも自分の意思をはっきり伝えました。

 それに対して、ユカリおばあちゃんも負けずと頑固で引き下がりません。
「貴方はまだそんなことに慣れる必要のない年齢だわ。確かに同じ年の子達よりしっかりしているし、家事も出来るのかもしれないけれど…子供に大人が寄り添う役割って、それだけじゃないと思うの…。
 悩んだり困ったり…誰かに助けを求めたい時に、いつでも甘えられる環境を用意してあげるのも大人の役割なのではないかしら?」

 たぶん、おばあちゃんは昔のことを思い返したのでしょう…。

 突然の異世界召喚は連れて行かれた本人だけでなく、その家族にも深い心のキズを残しました。

 まだ中学生だったお父さんがいきなり知らない世界に連れて行かれ、そこで人々のために国を守るという重荷を背負って戦っていたときに、側にいてあげられなかったことを、ユカリおばあちゃんは今だに後悔しているのです…。
 それはおばあちゃんには、どうしようも出来ないことだったのに…。


「でもユカリおばあちゃん、それは家族が担う役割で、赤の他人である僕達が口を出すべきことではないと思います。
 倶利伽羅くん…だっけ?
 君の両親はどこに住んでいるの?
 どうして一緒に暮らさないんだい?」
 やっと元に戻ったお兄様も会話に加わってきました。
 もちろん同居は断固阻止の立場で…。

「僕には生まれたときから親はいません。
 家族とは僕を育ててくれた者達のことです。
 彼らには彼らの生活があるので…僕のためにそこを離れて暮らさせるわけにはいきませんから…」
 少し困った顔をして…でも隠すことなく自分の生まれ育った環境を語る倶利伽羅くんに…

「それは…勝手にこちらの考えを押し付けて申し訳なかった…」
 さすがのルークお兄様も自分が大人気なかったと反省したようです…。

 でもそれを聞いて、ユカリおばあちゃんはますます『放ってはおけない』と庇護欲を刺激されたようで…

 最終的には、倶利伽羅くんが頑なに断り、ルークお兄様やノアお兄様もそれに同調したので、同居こそありませんでしたが…
 妥協案としてだした、毎日お弁当を届けることには、倶利伽羅くんも渋々承知しました。



 それから私は毎日倶利伽羅くんにお弁当を届けるようになったため、みんなから『愛妻弁当か…?』と冷やかされ噂は益々加速し…

 そこに、生徒会長まで『僕のお弁当を作ってくれないか?』とプロポーズのようなセリフを言って押しかけてきたため、クラスのみんなからは『三角関係か!?』と面白がられ…余計にややこしくくなったのは…また別のお話です…。


 ~・~・~・~・


 話は体育祭の昼食タイムに戻り…

「午後からタカラや倶利伽羅くんはどんな競技に出るの?」
 深刻になった空気を変えるように、ノアお兄様が別の話題をふってくれました。

「私は玉入れで、倶利伽羅くんはリレーです」
 私がそう答えると…

「玉入れ?それはどんな競技?」
 ノアお兄様は興味を持って聞き返してくれました。
 聖アルメリア王国と日本では、競技が異なるため、お兄様達にとってこちらの競技はほとんど初めて聞くものばかりなのです。

「玉入れは、相手チームのカゴ持ちの人が背中にカゴを背負って逃げ回るので、それを追いかけてカゴに玉を入れるゲームです。多く玉を入れられたチームの勝ちです」
 元々の玉入れは、静止して高く掲げられたカゴに玉を入れる競技だったそうですが、うちの学校はより面白くなるように、少しルールを変えたそうです。

「つまり…相手チームのカゴ持ちを早く仕留めて動けなくし、多くの玉を入れた方が勝ちというゲームかい…?」
 ルークお兄様の解釈に…

「そんな物騒な競技じゃない!!」
 ヒデおじいちゃんは慌てて否定しました。

 でも私も最初ルールを聞いた時はだと思い、どうすればみんなにバレずに早く仕留められるかと考えたものです…。

 ■□■□■□■□

 お読みいただきありがとうございます。

 いつもより投稿が遅くなり申し訳ございません。

少し気になったため、ちょっと文章をいじりました。申し訳ありません。
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