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月樹《つき》

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白珪学園編

第一話 白珪学園

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 私、皆野みなのたからはこの春から父の母校、白珪はっけい学園に通っています。
 この白珪という校名は、中国の古い詩に由来し、白く美しい完璧な玉でも、さらに磨くことでより美しくなる…
 つまり優秀な者達が、現状に満足するのではなく、精進することによってさらなる高みを目指しなさいという教えからきた名前です。
 創立は明治初期という、よく言えば歴史のある…はっきり言ってかなりボロい学校です。

 父は事情により、卒業出来なかったこの学園に深い思い入れがあるそうで…
 私にも『ぜひに!!』と勝手にこの学校に行くことを決めてくれました。
 でも両親も年の離れた兄達も、仕事の関係で全く日本にいないため、私はこの学校に通う間だけ、父方の祖父母の家に1人預けられることになったのです。
 
「あの子ったら、久しぶりに帰ってきたと思ったら、タカラちゃんだけ置いてまたすぐ行っちゃうし…本当に困った子ね…」
 そう言いながらも、入学の手続きから何から、全て手配してくれたユカリおばあちゃんは本当に良い人です。
 口だけの誰かさんとは本当大違い。

 無口で普段あまり話さないけれど、
「タカラが好きだと聞いたから…」
 と言って、山盛りの苺を買ってきてくれるヒデおじいちゃんも、思いやりのある素敵なおじいちゃんだと思います。
 こっちの人達は、本当にあたたかくて優しい…。

 決して母方の祖父母が冷たいというのではないのですが…立場上、身内にも線引が必要な人達なので…それは淋しく感じても仕方のないことだと承知しております。 


 そんなこんなで、白珪学園に入学してから一ヶ月近く経ちました。
 この学園、面倒なことに生徒全員がどこかのクラブに所属しないといけません。

 特に興味があるスポーツもありませんし…一通り楽器は習っていますが、クラブ活動としてやりたいとは思いませんし…

 クラブの入部届はゴールデンウィークまでに提出しないといけません。
 参考までに、父の入っていたクラブを尋ねましたら、意外なことに写真部でした。
 父は、所謂いわゆる脳筋脳が筋肉で出来ていると言われるタイプの人なので、運動部だとばかり思っていました…けれど、その写真部も今はもう存在しないので、参考にはなりませんでした。

 もうほとんどの子が入部届を出していて、クラスでまだなのは、私と倶利伽羅くりからくんだけです…。
 倶利伽羅くんは、ちょっと独特な雰囲気をもつ……まあ一言で言うなら"根暗ねくら"です。

 私は見た目ははかなげな雰囲気の母に似ていると言われますが、中身はまんま父なので、はっきり言って私もです。
 なので、周りの空気を読んで、言葉を取りつくろうということは…得意ではありません。
 それでよく長兄を傷つけてしまいます。
 だって…すごくかまってくるから鬱陶うっとうしくて…。
 兄は結構偉い立場の人なのに、私の前では単なる妹馬鹿になる、とても残念な人です。
  

 まあ、今はそれは置いといて…今日がクラブ入部届提出の締切日なので、担任の先生に、倶利伽羅くんと一緒にクラブ見学に行くよう言われました。

 別に1人で回っても良かったのですが…先生に『2人で一緒に回って、さっさと決めてきなさい!!』と言われたので、仕方なく一緒に回っています。
 さいわい倶利伽羅くんも運動部は絶対無理!!とのことなので、文化部のみを端から順に回ってみました。


 ~・~・~・~・~

【吹奏楽部】
「君はどこの楽団に所属してるんだい?こんな素晴らしい音色、プロでもなかなか出せない!!是非うちに入ってくれ!!」

【手芸部】
「どうして、そんなわずかな時間でこんな素晴らしい図柄、くるいのないステッチが出来るのかしら?もうこれは芸術作品として出展できる作品です!!」

【コーラス部】
「聞くだけで、涙が止まらない…。天使の歌声とは君のことか!?
 是非、私と一緒にプロを目指そう!!」

【美術部】
「この色づかいにこのタッチ…。これはこの前まで小学生だった子が描けるような絵ではない!!
 君は帰国子女だと聞いているが…イタリアかフランスで絵を学んでいたのかね?」



「・・・・」
「・・・・」
 顧問の先生に引き留められるたびに、それを振り払って、二人揃って逃げてきました…。



「君、何者なの?」
 倶利伽羅くんが、いぶかしがるような目で見てきます…。
 倶利伽羅くんの目は、前髪でほとんど隠れているので、はっきり見えるわけではありませんが…どんな目で見られているのかは、だいたい想像がつきます…。

「何者って…普通の女子中学生です♡」
 ちょっと育ちが特殊かもしれませんが…

「……で、どうするの?」
 賢明けんめいな倶利伽羅くんは、私に聞いても無駄だろうと聞き出すのはあきらめたようです。

「う~ん、どこもいまいち興味がわかなくて…」
 でも、これでクラブ紹介に書いてある文化系のクラブは一通り回りましたし…運動部も念のため、見てみるべきでしょうか?
 と迷ってましたら、倶利伽羅くんが…
「あっちは?」
 と校舎裏の森の方を指さしました。

「あれは…今はもう使われていない旧校舎なのでは…?」
 確か数年前に校舎の老朽化に伴い、今の校舎が建てられ、それ以来、旧校舎には鍵がかけられ封鎖されていると聞きましたが…。
 たぶん、父が学生の頃は、あちらの校舎に通っていたのでしょう…。

「でも、学生が入って行くのが見えたよ。あっちにも何か部室があるんじゃないかな?」

 私達は一縷いちるの望みをかけ、旧校舎に足を運ぶことにしました。



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 お読みいただきありがとうございます。

 第3回きずな児童書大賞にエントリーしております。

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