幽霊倶楽部メルティキッスにようこそ

月樹《つき》

文字の大きさ
10 / 39
白珪学園編

第九話 初代オブザーバー②

しおりを挟む
「「・・・・」」

 正面を向いた文雄様は、まるで…

 人体模型の○ナブ君でした…。

「何で…マナ○君…」
 思わず出てしまったつぶやきに、文雄様が苦笑いしながら話してくれたことには…

『いや~、最初何も考えずに
 亡くなった時の姿のままで義姉さん達の前に出たら、二人とも卒倒しちゃって…。
 あの時、僕は不意打ちをされて、屋上から突き落とされたんだけれど…運悪く下にあった鉄柵に刺さっちゃってね、かなりグロい感じになったんだよね…』

 それは確かに…その姿で現れられたら、トラウマになりますね…

「でも、マナ○君の姿になれるってことは…」

『うん、生前の姿になれるよ』
 そう言っているうちに、文雄様の姿は何の傷跡もない、艷やかな黒髮が美しい整った姿の少年に変わりました。

「どうして初めからその姿で現れないんですか?」
 倶利伽羅くんが意味が分からない…という表情(たぶん?)で尋ねると…

『だってマナ○君で現れた方がインパクトがあるでしょ?
 普通に現れても単なる美少年だし…そのうちみんなの記憶からも薄れてしまって、こんな凄惨な事件があったことも風化してしまうから…』
 文雄様は悲しそうな表情でそう語ってくれました。

 う~ん、確かにインパクトは強いですけれど…あの姿ではコントのようにしか思えないので、事件の悲惨さは全然伝わらないと思います。
 マナ○君で真面目に語られても、話が右から左に素通りしそう…。
 なんて不埒ふらちなことを考えていたら、倶利伽羅くんが話を元に戻してくれました。
「それで文雄様が殺された後…どうなったのですか?犯人はすぐに捕まったのですか?」

『それが…あの時間帯、運の悪いことに誰も見ていた人が居なかったし…今のように科学の発達した時代でも無かったから、すぐには犯人は見つからなかったんだ…』

 確かに…防犯カメラもDNA鑑定のような科学的捜査もない時代に、学校のような閉鎖的な社会での犯人探しは、大変だったと思います。

『明らかな証人が出てこないなか、捜査は混迷を極めたんだ。
 でもそんな生徒達が落ち着かない状態になっているからこそ、生徒会が中心となってみんなをまとめなくてはいけなくて…僕の代わりに来栖が指揮をした。その側では田村がそれを支えた。
 来栖に恨みはないけれど、その田村が望んだ通りの状況になったのが、どうしても許せなくて…』
 文雄様は今でも思い出したら込み上げてくるのでしょう…拳を握りしめ、すごく悔しそうな顔をされました。

『毎晩、来栖の枕元に出て、ずっと愚痴を言いまくっていたんだ。
 そうしたら…思いって通じるものなんだね♡
 突然、来栖に僕の姿が見えるようになったんだ…その時の僕はまだ姿を変える方法を知らなかったから、亡くなった時の…鉄柵が刺さったままの状態で…』

 それはお気の毒様でした…。

『いつも動じなくて面白みのない男だと思っていたけれど…あの時の顔は面白かったな~。
 おまけにビックリして飛び起きて、あのフランスから輸入したという自慢のベッドから転がり落ちた時は笑えた…』
 文雄様は楽しそうに笑われているけれど…そりゃ死んだはずの、しかも鉄柵が頭に刺さった同級生が枕元に立っていたら…誰だって驚くでしょう…。

『運の良いことに、声もちゃんと聞こえたから、僕はどうしてこんな姿になったのかを来栖に切々と訴えることが出来た。
 最初はすぐに気を失ったけれど、少しずつ耐性を持って対策を練ってくれたので、3日目にはちゃんと話を聞いてくれたよ。やっぱり出来る男は違うね…』

 文雄様はとても満足そうですが…

「対策って、何をしたんですか?」

『ようは見えるから怖いので、目をサラシで隠して、僕が来るのを待ち構えるよになったんだ…。
 視覚を何とかすれば、幽霊という存在自体は受け入れられたそうだよ』

 一生懸命、対策を取ってでも文雄様の思いを聞き届けようとした来栖さんは、きっと責任感の強い心優しい人なのだと思いました…。


 ■□■□■□■□■

 お読みいただきありがとうございます。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【もふもふ手芸部】あみぐるみ作ってみる、だけのはずが勇者ってなんなの!?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 網浜ナオは勉強もスポーツも中の下で無難にこなす平凡な少年だ。今年はいよいよ最高学年になったのだが過去5年間で100点を取ったことも運動会で1等を取ったこともない。もちろん習字や美術で賞をもらったこともなかった。  しかしそんなナオでも一つだけ特技を持っていた。それは編み物、それもあみぐるみを作らせたらおそらく学校で一番、もちろん家庭科の先生よりもうまく作れることだった。友達がいないわけではないが、人に合わせるのが苦手なナオにとっては一人でできる趣味としてもいい気晴らしになっていた。  そんなナオがあみぐるみのメイキング動画を動画サイトへ投稿したり動画配信を始めたりしているうちに奇妙な場所へ迷い込んだ夢を見る。それは現実とは思えないが夢と言うには不思議な感覚で、沢山のぬいぐるみが暮らす『もふもふの国』という場所だった。  そのもふもふの国で、元同級生の丸川亜矢と出会いもふもふの国が滅亡の危機にあると聞かされる。実はその国の王女だと言う亜美の願いにより、もふもふの国を救うべく、ナオは立ち上がった。

未来スコープ  ―キスした相手がわからないって、どういうこと!?―

米田悠由
児童書・童話
「あのね、すごいもの見つけちゃったの!」 平凡な女子高生・月島彩奈が偶然手にした謎の道具「未来スコープ」。 それは、未来を“見る”だけでなく、“課題を通して導く”装置だった。 恋の予感、見知らぬ男子とのキス、そして次々に提示される不可解な課題── 彩奈は、未来スコープを通して、自分の運命に深く関わる人物と出会っていく。 未来スコープが映し出すのは、甘いだけではない未来。 誰かを想う気持ち、誰かに選ばれない痛み、そしてそれでも誰かを支えたいという願い。 夢と現実が交錯する中で、彩奈は「自分の気持ちを信じること」の意味を知っていく。 この物語は、恋と選択、そしてすれ違う想いの中で、自分の軸を見つけていく少女たちの記録です。 感情の揺らぎと、未来への確信が交錯するSFラブストーリー、シリーズ第2作。 読後、きっと「誰かを想うとはどういうことか」を考えたくなる一冊です。

9日間

柏木みのり
児童書・童話
 サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。   (also @ なろう)

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

トゲトゲ(α版)

山碕田鶴
絵本
トゲトゲ したものを挙げてみました。  ※絵本レイアウトにした改稿版が「絵本ひろば」にあります。

この町ってなんなんだ!

朝山みどり
児童書・童話
山本航平は両親が仕事で海外へ行ってしまったので、義父の実家に預けられた。山間の古風な町、時代劇のセットのような家は航平はワクワクさせたが、航平はこの町の違和感の原因を探そうと調べ始める。

児童絵本館のオオカミ

火隆丸
児童書・童話
閉鎖した児童絵本館に放置されたオオカミの着ぐるみが語る、数々の思い出。ボロボロの着ぐるみの中には、たくさんの人の想いが詰まっています。着ぐるみと人との間に生まれた、切なくも美しい物語です。

黒地蔵

紫音みけ🐾書籍発売中
児童書・童話
友人と肝試しにやってきた中学一年生の少女・ましろは、誤って転倒した際に頭を打ち、人知れず幽体離脱してしまう。元に戻る方法もわからず孤独に怯える彼女のもとへ、たったひとり救いの手を差し伸べたのは、自らを『黒地蔵』と名乗る不思議な少年だった。黒地蔵というのは地元で有名な『呪いの地蔵』なのだが、果たしてこの少年を信じても良いのだろうか……。目には見えない真実をめぐる現代ファンタジー。 ※表紙イラスト=ミカスケ様

処理中です...