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月樹《つき》

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白珪学園編

第十話 初代オブザーバー③

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『僕の話を聞いた来栖は、自分の責任でもあると心から謝罪し、すぐに動いてくれた』

 まず、僕と一緒に兄さん達や義姉さん達のところを訪ね、事件の真相の説明をしに行ってくれた。 
 もちろん僕の家族は、敵対ライバル関係にあった来栖の話を最初から信じたわけではなかったけれど…義姉さん達が来栖の横にいる僕に気づいてくれたんだ。
 元々、櫻子義姉さんと喜久子義姉さんは一卵性の双子だからか、お互いに話さなくても伝わるテレパシーのようなものがあってね…たまたま僕の霊としての波長がそれに合ったようで…

『もっとも初めて僕の姿を見た時は、あまりにも酷い姿だったから、義姉さん達、驚いて失神しちゃったけれどね…』 

 まあ、それで信じてもらえたので、それから姿を変えられるようになるまでは、来栖に僕の代わりに動いてもらった。
 兄さん達も必死に目撃者を探し、事件の後すぐに学校を辞めた用務員があやしいと当たりをつけた。
 彼は、元々良心の呵責もあったのだろう…田村の父親に脅されて、買収に応じて黙秘していたことを話してくれた。
 田村の父は、もし買収に応じなかったら、何が起こるか分からない、身の回りに気をつけろ…と、暗に身の危険を匂わせる脅しもかけてきたそうだ…。

「じゃあ、その目撃者が見つかって、犯人は捕まったのですか?」
 それで一件落着かと思ったら…

『いいや、用務員は屋上から走って逃げてきた田村とすれ違っただけで現場を見たわけではなかったから、起訴するための証言としては弱かった…』

 田村を法的に裁くことは難しかったようだ…。

「なら、田村の元に化けて出て呪い殺したとか…?」
 私が思ったことを率直に問い掛けると、またみんなに睨まれました…。

『それは最初にやろうと思ったんだけれどね、あいつすごく鈍くて…枕元でどんなに呪いの言葉を囁いても気づかないんだ…。
 だんだん腹が立ってきて、ポルターガイストで物音を立てても起きないんだよ…。
 田村に無視されて、仕方がないから来栖のところに愚痴を言いに行ったら…彼にはすぐ気づいてもらえたんだ…』
 やっぱり文雄様もそう思って、最初は田村のところに行きましたのね…。

「それにしても、文雄様を殺害しておいて、自分はぐっすり眠れるなんて…すごい神経していますね…」
 倶利伽羅くんは田村のその態度に、少し憤慨したようです。

『彼にとっては、来栖カミこそが全てで…そのために邪魔な僕を消しても罪悪感どころか、崇高な任務を果たしたくらいにしか思っていなかったからね…だから…彼の神様に、田村カレの裁きを任せたんだ…』

 来栖は殺害現場となった屋上で、田村の説得を試みた。それはどう言う状況で僕が殺されたのか…その内容を知っていると田村に伝えるための措置だった。
 もちろん万が一のことが起こらないように、兄さん達や警察も隠れて待機してだ…。
 来栖は田村が犯した罪を全て知っていること、自分が生徒会選挙に落選したのは公明正大な選挙結果の上なので、そんなこと…自分は望んでいなかったこと、速やかに自首することを願っていると伝えた。
 けれど、田村は納得しなかった…。
 彼にとってそれは、神のために行った正しいことなのに…それを来栖カミに否定されるなんて思わなかったからだ…。

 田村は「生徒会長あのの椅子は来栖カミ様が座るべき椅子だった。
 間違った者が座っていたから排除しただけで、自分は間違っていない!!」と言ってのけ、抗議するようにそのまま屋上から飛び降りた。

しくもそこは…僕が落ちた場所と同じでね…』

 もちろん田村は、帰らぬ人となった。
 この事件は、被疑者死亡のまま、みんなが釈然としない状態で終わりを迎えた。

『来栖は自分が田村を狂わせた切っ掛けになったことに責任を感じてしまってね…結局学園を辞め、アメリカに留学してしまったんだ…』
 しんみりと語る文雄様は、一緒に事件解決に向けて働くうちに、彼に友情を感じていたのかもしれません…。

「その後、来栖さんはどうされたんですか?」
 私が気になって尋ねると…

『もちろん、しっかり責任をとって、白珪うちで教鞭を執ってもらったよ。せっかくアメリカで近代教育を学んできた彼を放っておくなんて、もったいないからね。
 もちろん亡霊部の初代顧問は彼だよ』
 そう言って笑った文雄様の顔は、今までのしんみりした空気が嘘のように、あくどい顔をされていました…。


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 お読みいただきありがとうございます。
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