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第8話 騎士と聖女【クリストファー視点】
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私はこの国の第三王子として、幼い頃から何かしら国の役に立てる人間となるためよく勉強し、よく鍛えるように…と言われ育った。
1番上の兄は次期国王として、2番目の兄は国王を支えるスペアとして厳しく育てられたが…
そのどちらでもない私は、何をするにしても何かしらで良かった…。
それが私には、必要とされていない人間のようで辛かった…。
そんな無気力な少年時代を過ごした私にも、好んでよく読んだ本がある。
『騎士と聖女』という冒険物語だ。
子供向けに書かれたお話だったので、とてもわかりやすい単純な内容だったが、騎士と聖女が力を合わせてドラゴンを倒すシーンは何度も読み返し、とてもワクワクした。
私が王立学園に入る時に騎士科を選んだのも、その影響だと思う。
何か新しいことが起こるのでは…?と期待して入学したけれど…
王族としてみんなからは一歩引いて接される毎日に特に変化はなく…
積極的に話し掛けてくるのは王家との繋がりを望む野心を持った者ばかりだった…。
騎士科では二年の夏期休暇に、それぞれ腕を磨くための実地訓練を行う。
訓練先はいくつかの候補の中から、自分達の実力に見合った場所を選べるのだけれど…
私はキャンベル領のダンジョン攻略を選んだ。
キャンベル領のダンジョンは、元々施設や整備が整っていると冒険者の評判も良いダンジョンだが、学生達の実地訓練には特に協力的で、無償で宿泊先を提供してくれたり、食料や衛生品の補充もしてくれると人気だった。
これはキャンベル男爵が、これからの未来を担う若者達への先行投資だからと、社会貢献として行ってくれているからなのだが…
もちろん若者達は成長し、将来のお得意先となるので、手広く商売するキャンベル領にとっては、善意だけでなく男爵の言うように先行投資にもなる。
そういった男爵の先を見越した考え方にも共感できたので、私は実地訓練に行くのを楽しみにしていた。
~・~・~・~・~
良く整備された現地では、快適にダンジョン攻略をし、効率的にレベル上げすることが出来た。
それは夏期休暇後の能力値の向上が、キャンベル領に行った者だけが極めて高かったことでも証明されている。
私は王族ということもあり、側近のアルバートと領主邸に宿泊させてもらったが、他の学園の者達にも清潔で快適な宿が提供されたらしい…。
キャンベル領に来た当初は、アメリアとは領主の娘として挨拶を交わしただけの関係であったし、大人しそうな普通の貴族の令嬢だと思っていた…。
けれど…ダンジョンに我々を送り出す時に必要な物を用意してくれる手際の良さ、勇気付けてくれる笑顔、また負傷して戻った者達を嫌な顔1つせず手当てしてくれるその優しさが、物語に出てきた聖女のようだと思った…。
アメリアは決して治癒魔法が使えるとかではない普通の女の子だけれど…
彼女に出来る最大限のことをしてくれていた。
そんな彼女に次第に惹かれるようになり…
決定打は…過信して実力よりも上のモンスター相手に挑んで大怪我をした私を、彼女が熱心に看病してくれた時に訪れた…。
『どうしてそんな無茶をするのです?
貴方に…もし何かあったら、多くの人が悲しみます。
もっと自分を大切にしてください!!』
ポロポロ泣きながら手当てしてくれる彼女に…
『私は三番目で…もし、私がいなくなったとしても、次期国王となる王太子もその兄を支える次兄もいるので…困りはしない…』
ずっと思っていた言葉が、つい出てしまった…。
『私はとても悲しみます…』
そんな私の手をしっかり握りしめ、目を見つめながら言ってくれたアメリア…。
次に来る時は、彼女を悲しませないよう、しっかり実力をつけてから挑もうと思った…。
~・~・~・~・~
そして…三年の夏、再度キャンベル領を訪れ、ダンジョン攻略に成功した私は…
その足でアメリアの元に向かい…プロポーズした…。
驚いて真っ赤になり取り乱す彼女は可愛かったな…。
いつもの、しっかり者で凛とした姿も素敵だけれど…
あの照れた顔は、私しか見られないと思うと嬉しかった…。
ちゃんとそれまでの一年の間に、両親にもキャンベル男爵夫妻にも…
そしてアメリア自身にも、私の思いが伝わるよう根回ししていたので…
驚いて取り乱しはしたけれど…
ちゃんと私のプロポーズを受け止めてくれた…。
婚約してからは、二人の距離を詰め…
何度も一緒に出掛け…
お互い愛称で名前を呼び合うようになり…
学園を卒業したらすぐに式を挙げ、キャンベル領に婿入りする約束も取り決めた…。
そして迎えた卒業式…
アメリアの幼馴染が、せっかくの皆の祝いの席でやらかしてくれたけれど…
まあ…なるべく穏便に片が付き…
長年まとわりついていた幼馴染とも、それが切っ掛けで家族まとめて縁が切れたので…良しとしよう…。
キャンベル領に美しいライラックの花が咲き誇る頃…
私達は親しい人達に見守られる中、幸せな結婚式を挙げた。
■□■□■□■□
お読みいただきありがとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
1番上の兄は次期国王として、2番目の兄は国王を支えるスペアとして厳しく育てられたが…
そのどちらでもない私は、何をするにしても何かしらで良かった…。
それが私には、必要とされていない人間のようで辛かった…。
そんな無気力な少年時代を過ごした私にも、好んでよく読んだ本がある。
『騎士と聖女』という冒険物語だ。
子供向けに書かれたお話だったので、とてもわかりやすい単純な内容だったが、騎士と聖女が力を合わせてドラゴンを倒すシーンは何度も読み返し、とてもワクワクした。
私が王立学園に入る時に騎士科を選んだのも、その影響だと思う。
何か新しいことが起こるのでは…?と期待して入学したけれど…
王族としてみんなからは一歩引いて接される毎日に特に変化はなく…
積極的に話し掛けてくるのは王家との繋がりを望む野心を持った者ばかりだった…。
騎士科では二年の夏期休暇に、それぞれ腕を磨くための実地訓練を行う。
訓練先はいくつかの候補の中から、自分達の実力に見合った場所を選べるのだけれど…
私はキャンベル領のダンジョン攻略を選んだ。
キャンベル領のダンジョンは、元々施設や整備が整っていると冒険者の評判も良いダンジョンだが、学生達の実地訓練には特に協力的で、無償で宿泊先を提供してくれたり、食料や衛生品の補充もしてくれると人気だった。
これはキャンベル男爵が、これからの未来を担う若者達への先行投資だからと、社会貢献として行ってくれているからなのだが…
もちろん若者達は成長し、将来のお得意先となるので、手広く商売するキャンベル領にとっては、善意だけでなく男爵の言うように先行投資にもなる。
そういった男爵の先を見越した考え方にも共感できたので、私は実地訓練に行くのを楽しみにしていた。
~・~・~・~・~
良く整備された現地では、快適にダンジョン攻略をし、効率的にレベル上げすることが出来た。
それは夏期休暇後の能力値の向上が、キャンベル領に行った者だけが極めて高かったことでも証明されている。
私は王族ということもあり、側近のアルバートと領主邸に宿泊させてもらったが、他の学園の者達にも清潔で快適な宿が提供されたらしい…。
キャンベル領に来た当初は、アメリアとは領主の娘として挨拶を交わしただけの関係であったし、大人しそうな普通の貴族の令嬢だと思っていた…。
けれど…ダンジョンに我々を送り出す時に必要な物を用意してくれる手際の良さ、勇気付けてくれる笑顔、また負傷して戻った者達を嫌な顔1つせず手当てしてくれるその優しさが、物語に出てきた聖女のようだと思った…。
アメリアは決して治癒魔法が使えるとかではない普通の女の子だけれど…
彼女に出来る最大限のことをしてくれていた。
そんな彼女に次第に惹かれるようになり…
決定打は…過信して実力よりも上のモンスター相手に挑んで大怪我をした私を、彼女が熱心に看病してくれた時に訪れた…。
『どうしてそんな無茶をするのです?
貴方に…もし何かあったら、多くの人が悲しみます。
もっと自分を大切にしてください!!』
ポロポロ泣きながら手当てしてくれる彼女に…
『私は三番目で…もし、私がいなくなったとしても、次期国王となる王太子もその兄を支える次兄もいるので…困りはしない…』
ずっと思っていた言葉が、つい出てしまった…。
『私はとても悲しみます…』
そんな私の手をしっかり握りしめ、目を見つめながら言ってくれたアメリア…。
次に来る時は、彼女を悲しませないよう、しっかり実力をつけてから挑もうと思った…。
~・~・~・~・~
そして…三年の夏、再度キャンベル領を訪れ、ダンジョン攻略に成功した私は…
その足でアメリアの元に向かい…プロポーズした…。
驚いて真っ赤になり取り乱す彼女は可愛かったな…。
いつもの、しっかり者で凛とした姿も素敵だけれど…
あの照れた顔は、私しか見られないと思うと嬉しかった…。
ちゃんとそれまでの一年の間に、両親にもキャンベル男爵夫妻にも…
そしてアメリア自身にも、私の思いが伝わるよう根回ししていたので…
驚いて取り乱しはしたけれど…
ちゃんと私のプロポーズを受け止めてくれた…。
婚約してからは、二人の距離を詰め…
何度も一緒に出掛け…
お互い愛称で名前を呼び合うようになり…
学園を卒業したらすぐに式を挙げ、キャンベル領に婿入りする約束も取り決めた…。
そして迎えた卒業式…
アメリアの幼馴染が、せっかくの皆の祝いの席でやらかしてくれたけれど…
まあ…なるべく穏便に片が付き…
長年まとわりついていた幼馴染とも、それが切っ掛けで家族まとめて縁が切れたので…良しとしよう…。
キャンベル領に美しいライラックの花が咲き誇る頃…
私達は親しい人達に見守られる中、幸せな結婚式を挙げた。
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お読みいただきありがとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
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