9 / 9
第八話 ナターシャ
しおりを挟む
「もう、いつになったらローランド様は迎えに来てくれるの!?
せっかく邪魔者を誰かが消してくれたから、お父様にお願いして…あんなにいっぱい条件をのんで…やっと婚約者の座を手に入れたのに…。
お前の教え方が悪いからよ!!」
ナターシャは、まだお茶が入っているティーカップをムシャクシャする思いのまま、家庭教師のルパートに投げつけた。
「ナターシャ様、力不足で誠に申し訳ございません…。しかし契約に認められておりますので、全ての課題が基準に達さなければ、あちらの国に入国することもできません…もし、契約を一方的に反故にして無理やり入国しようものなら、その時点でこちら側の契約不履行となり、ナターシャ様が王太子妃になることは叶わなくなります…」
額から流れる血をハンカチで押さえながら、正統な理由を語るルパートに、ナターシャの怒りは更に爆発する。
「だいたい、何でそんな契約をしたのよ!!
愛し合う私達にそんなもの必要ないじゃない!!
王太子妃教育なんて…向こうに行って結婚してから少しずつ、ローランド様が教えてくれたら良いんだから!!」
契約をしたのは、ナターシャとサラマンド王だ。
そもそもローランド王太子は愛しているどころか、断るために無理難題をふっかけたのに、それを全て了承して無理やり婚約を結んだのも、この二人だ…。
サラマンド王国民のルパートにとっては、そんな誰が見ても分かる、一方的に自国に不利な契約を、こんな砂漠に水を撒くよりも吸収率の悪い馬鹿な王女のために結んだ国王に呆れていたし、怒ってもいた…。
けれど…少しでも国に利を生むためには、こんな王女でも嫁がせてバイオレット王国と縁を結ぶくらいしか方法はなかった…。
この契約は一方的にバイオレット王国に有利になるよう結ばれていたので、もしこちらから婚約を無かったことにしてくれるよう申し出たとしても、一度定められた不平等な貿易条件などはそのまま保たれるようになっていた…。
ただ…1つだけこの不平等な条件を見直す方法が組み込まれていて…
サラマンド王はそんなことはあり得ないと思って見落としていたけれど…
それは…
~・~・~・~・~
「ローランド様、サラマンド王国から書簡が届きました」
最近、父王は第一王子と第二王子の相手をするのに夢中で、執務のほとんどをこちらに振ってくる…。
うちの王国は別に若くして譲位しても構わない制度のため、近々王位を譲られそうだ…。
フィリップから渡された、サラマンド王の封蝋がされた書簡を開け、中身に目を通す…。
「結構粘ったようだけれど…やっと交代したか…」
それは、サラマンド王が流行り病で亡くなり、ラルフ王太子が王位につくことになったという知らせであった。
またそこには、ナターシャも王の後を追うように病にかかり、息を引き取ったと記されていた。
「さてさて…本当に病で亡くなったのか?
はたまた怒り狂う民衆による、拷問の末に亡くなったのか…?」
「ローランド様にしては、珍しく血なまぐさいことを嬉しそうに語りますね…」
封筒に戻した書簡を受け取りながら…フィリップが不思議そうに尋ねると…
「うん、前世で晴らせなかった恨みを、やっと晴らすことが出来たからね」
この世界でナターシャに会った時、中山くるみだとすぐに分かった。
その時からすでに、この計画も立てられていた。
前世では、もう恐怖も苦しみも分からない、正気ではない状態であっさり死なせてしまったことが悔しくて仕方なかった…。
だから、今世では絶対生きてきたことを後悔させて、死の恐怖を十分に味あわせてから殺してやると思っていた。
ラルフ王太子は気の弱い男だったから、なかなか独裁的な父王に歯向かうことが出来なかったけれど…
もう食べるのに困った国民が暴徒化し、反乱が起きるという瀬戸際になって、やっと立ち上がった。
私は、ただ…
『こんな状況の元凶になったのは誰だ?
誰のせいで国民は飢えているのか?
もし…万が一、契約にも書いたように契約人である王と王女が亡くなるようなことがあれば、私はまた条件を見直し、新たな契約を結ぶつもりだ…。
もちろん君達が国を良く変えたいと思うなら、協力は惜しまない…』
とラルフ王太子に対して書簡を送っただけ…。
そこに、少し王と王女への怨恨を混ぜて…。
真由は中山くるみのことを何も知らない。
彼女はこんな醜い思いを知らなくて良い…。
いまは前世では産めなかった第三子を、そのお腹に宿している。
どうしても娘が欲しかった僕の執念の賜物だろうか…?まだ男女どちらか分からないのだけれど…。
空、海と来たら…次は陸か?
女の子に陸…はどうなんだろう…?
まあ、女の子の時は残念だけれど、妻に命名権を譲ろう。
どちらにしても今からその時が待ち遠しい…。
『~この子誰の子?~』
もちろん、みんな僕の子だ!!
■□■□■□■□
お読みいただきありがとうございます。
せっかく邪魔者を誰かが消してくれたから、お父様にお願いして…あんなにいっぱい条件をのんで…やっと婚約者の座を手に入れたのに…。
お前の教え方が悪いからよ!!」
ナターシャは、まだお茶が入っているティーカップをムシャクシャする思いのまま、家庭教師のルパートに投げつけた。
「ナターシャ様、力不足で誠に申し訳ございません…。しかし契約に認められておりますので、全ての課題が基準に達さなければ、あちらの国に入国することもできません…もし、契約を一方的に反故にして無理やり入国しようものなら、その時点でこちら側の契約不履行となり、ナターシャ様が王太子妃になることは叶わなくなります…」
額から流れる血をハンカチで押さえながら、正統な理由を語るルパートに、ナターシャの怒りは更に爆発する。
「だいたい、何でそんな契約をしたのよ!!
愛し合う私達にそんなもの必要ないじゃない!!
王太子妃教育なんて…向こうに行って結婚してから少しずつ、ローランド様が教えてくれたら良いんだから!!」
契約をしたのは、ナターシャとサラマンド王だ。
そもそもローランド王太子は愛しているどころか、断るために無理難題をふっかけたのに、それを全て了承して無理やり婚約を結んだのも、この二人だ…。
サラマンド王国民のルパートにとっては、そんな誰が見ても分かる、一方的に自国に不利な契約を、こんな砂漠に水を撒くよりも吸収率の悪い馬鹿な王女のために結んだ国王に呆れていたし、怒ってもいた…。
けれど…少しでも国に利を生むためには、こんな王女でも嫁がせてバイオレット王国と縁を結ぶくらいしか方法はなかった…。
この契約は一方的にバイオレット王国に有利になるよう結ばれていたので、もしこちらから婚約を無かったことにしてくれるよう申し出たとしても、一度定められた不平等な貿易条件などはそのまま保たれるようになっていた…。
ただ…1つだけこの不平等な条件を見直す方法が組み込まれていて…
サラマンド王はそんなことはあり得ないと思って見落としていたけれど…
それは…
~・~・~・~・~
「ローランド様、サラマンド王国から書簡が届きました」
最近、父王は第一王子と第二王子の相手をするのに夢中で、執務のほとんどをこちらに振ってくる…。
うちの王国は別に若くして譲位しても構わない制度のため、近々王位を譲られそうだ…。
フィリップから渡された、サラマンド王の封蝋がされた書簡を開け、中身に目を通す…。
「結構粘ったようだけれど…やっと交代したか…」
それは、サラマンド王が流行り病で亡くなり、ラルフ王太子が王位につくことになったという知らせであった。
またそこには、ナターシャも王の後を追うように病にかかり、息を引き取ったと記されていた。
「さてさて…本当に病で亡くなったのか?
はたまた怒り狂う民衆による、拷問の末に亡くなったのか…?」
「ローランド様にしては、珍しく血なまぐさいことを嬉しそうに語りますね…」
封筒に戻した書簡を受け取りながら…フィリップが不思議そうに尋ねると…
「うん、前世で晴らせなかった恨みを、やっと晴らすことが出来たからね」
この世界でナターシャに会った時、中山くるみだとすぐに分かった。
その時からすでに、この計画も立てられていた。
前世では、もう恐怖も苦しみも分からない、正気ではない状態であっさり死なせてしまったことが悔しくて仕方なかった…。
だから、今世では絶対生きてきたことを後悔させて、死の恐怖を十分に味あわせてから殺してやると思っていた。
ラルフ王太子は気の弱い男だったから、なかなか独裁的な父王に歯向かうことが出来なかったけれど…
もう食べるのに困った国民が暴徒化し、反乱が起きるという瀬戸際になって、やっと立ち上がった。
私は、ただ…
『こんな状況の元凶になったのは誰だ?
誰のせいで国民は飢えているのか?
もし…万が一、契約にも書いたように契約人である王と王女が亡くなるようなことがあれば、私はまた条件を見直し、新たな契約を結ぶつもりだ…。
もちろん君達が国を良く変えたいと思うなら、協力は惜しまない…』
とラルフ王太子に対して書簡を送っただけ…。
そこに、少し王と王女への怨恨を混ぜて…。
真由は中山くるみのことを何も知らない。
彼女はこんな醜い思いを知らなくて良い…。
いまは前世では産めなかった第三子を、そのお腹に宿している。
どうしても娘が欲しかった僕の執念の賜物だろうか…?まだ男女どちらか分からないのだけれど…。
空、海と来たら…次は陸か?
女の子に陸…はどうなんだろう…?
まあ、女の子の時は残念だけれど、妻に命名権を譲ろう。
どちらにしても今からその時が待ち遠しい…。
『~この子誰の子?~』
もちろん、みんな僕の子だ!!
■□■□■□■□
お読みいただきありがとうございます。
59
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
愛はリンゴと同じ
turarin
恋愛
学園時代の同級生と結婚し、子供にも恵まれ幸せいっぱいの公爵夫人ナタリー。ところが、ある日夫が平民の少女をつれてきて、別邸に囲うと言う。
夫のナタリーへの愛は減らない。妾の少女メイリンへの愛が、一つ増えるだけだと言う。夫の愛は、まるでリンゴのように幾つもあって、皆に与えられるものなのだそうだ。
ナタリーのことは妻として大切にしてくれる夫。貴族の妻としては当然受け入れるべき。だが、辛くて仕方がない。ナタリーのリンゴは一つだけ。
幾つもあるなど考えられない。
夫は運命の相手ではありませんでした…もう関わりたくないので、私は喜んで離縁します─。
coco
恋愛
夫は、私の運命の相手ではなかった。
彼の本当の相手は…別に居るのだ。
もう夫に関わりたくないので、私は喜んで離縁します─。
【完結】好きでもない私とは婚約解消してください
里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。
そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。
婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。
裏切りの街 ~すれ違う心~
緑谷めい
恋愛
エマは裏切られた。付き合って1年になる恋人リュカにだ。ある日、リュカとのデート中、街の裏通りに突然一人置き去りにされたエマ。リュカはエマを囮にした。彼は騎士としての手柄欲しさにエマを利用したのだ。※ 全5話完結予定
貴方なんて大嫌い
ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と
いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている
それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い
完結 貴方が忘れたと言うのなら私も全て忘却しましょう
音爽(ネソウ)
恋愛
商談に出立した恋人で婚約者、だが出向いた地で事故が発生。
幸い大怪我は負わなかったが頭を強打したせいで記憶を失ったという。
事故前はあれほど愛しいと言っていた容姿までバカにしてくる恋人に深く傷つく。
しかし、それはすべて大嘘だった。商談の失敗を隠蔽し、愛人を侍らせる為に偽りを語ったのだ。
己の事も婚約者の事も忘れ去った振りをして彼は甲斐甲斐しく世話をする愛人に愛を囁く。
修復不可能と判断した恋人は別れを決断した。
【完結】旦那に愛人がいると知ってから
よどら文鳥
恋愛
私(ジュリアーナ)は旦那のことをヒーローだと思っている。だからこそどんなに性格が変わってしまっても、いつの日か優しかった旦那に戻ることを願って今もなお愛している。
だが、私の気持ちなどお構いなく、旦那からの容赦ない暴言は絶えない。当然だが、私のことを愛してはくれていないのだろう。
それでも好きでいられる思い出があったから耐えてきた。
だが、偶然にも旦那が他の女と腕を組んでいる姿を目撃してしまった。
「……あの女、誰……!?」
この事件がきっかけで、私の大事にしていた思い出までもが崩れていく。
だが、今までの苦しい日々から解放される試練でもあった。
※前半が暗すぎるので、明るくなってくるところまで一気に更新しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる