8 / 9
第七話 小説の世界と現実の人々
しおりを挟む
小説の中のアーサーも現実のアーサーも、公爵家次期当主、王太子の側近、王位継承権第三位という肩書の重みにひどくプレッシャーを感じていた…。
そんな彼が従者で異母弟のフィリップの甘言に誑され、ギャンブルにハマるのは、思いのほか容易いことだった…。
最初のうちは自分の所持金でちまちまと遊んでいたのが、一度大きく当たる快感を覚えた後は沼にはまるようにズルズルと深みにハマり…気付いた時には公爵家の土地、資産を全て売り払っても返せないほどの借金を抱えるようになっていた…。
名門ガーランド家公爵令息ということで、際限なくツケが利いたのも良くなかった…。
(もちろん僕がそうなるように仕組んだのだけれど…)
王位継承権を持つ人間が、甘言に騙され自分を律することが出来ないなど、あってはならない話だ…。
自制心は、上に立つ者には絶対必要とされる条件。
アーサーにはその覚悟と責任感が足りていなかった…。
異母弟のフィリップとしては、ずっと自分を虐げてきたガーランド公爵家への復讐だったので、ガーランド公爵家が潰れるのでも、公爵家自慢の異母兄が廃嫡になって卑しい愛人の子と蔑まれていた自分がガーランド公爵家を牛耳ることになるのでも、どちらでも構わなかった。
小説の中では、アーサーを意のままに操るため、更に借金を膨らませるよう仕組んだのはナターシャだった。
ナターシャは借金を肩代わりする条件として、アーサーに破落戸を雇わせクリスティーナを襲うよう指示した。
その後、良心の呵責に苛まれたアーサーは、責任をとってクリスティーナと結婚しようとするけれど…クリスティーナの幸せを望まないナターシャによって暗殺されるというのが、原作の筋書きだ。
まあ、今回はそうなる前に意図的にローランドがそれを行った。
そして借金を肩代わりして、国外にアーサーを逃す代わりに、芝居を打ってもらうことにしたのだ。
クリスティーナを襲うための手配(真由が昔憧れると言っていた丸太小屋風森の中のコテージに天蓋付きのお姫様ベッドの用意)、その後クリスティーナを慰め保護すること(絶対手は出さない!!)、両親に、実はお腹の中の子は自分の子だと嘘の証言をさせ、ガーランド公爵家でクリスティーナが大切に扱われるようにする(もちろん最終的にクリスティーナは返してもらうので、その証言は嘘でしたと告白をした遺書付き)、そして結婚式当日には馬車事故を偽装して国外に行き二度と戻らないこと(そこそこの準備金を渡す代わりに、国外で要らない火種を撒かないよう断種済)
これらを条件にアーサーをナターシャに利用されないよう遠く離れた異国の地に逃がした。(異国までの流浪の旅には、フィリップの母がいる舞踏団が協力してくれた)
もちろん髪も瞳も平民に多い茶色になるよう、一生解けない魔法が掛けてある。
上記のことはローランドは指示しただけで、全てアーサーが段取りを組んで行った。
(本当…能力はあるのに…)
側近としては優秀だったから勿体ないけれど…彼のガラスのハートには、平民の方が向いていたのかもしれない…。
優秀な人間だから、平民になっても何かと重宝され、やっていけるだろう…。
フィリップには変に嘘をつくより、真実を話した方が味方に出来ると思ったため、前世のことも含め、すべて真実を話した上で、フィリップを次期公爵に据える代わりに、協力してくれるよう依頼した。
前世なんて…初めは胡散臭い顔をしていた彼も、自分の企みを全て知っていることに驚き、半信半疑ながら協力することを約束した。
(彼も優秀な人材なので、アーサーに代わり良い側近となるだろう…。
彼ならアーサーよりも四角四面でないぶん融通が利くので、ハニートラップなども仕掛けられるだろう…。
ナターシャに関しては、『ああいう、しつこく付き纏いそうな人間は、例え罠でも接するのは嫌だ』と断られたけれど…)
「だからフィリップ様からは微妙な視線を感じていたのね…。
小説の中では、クリスティーナに対して憧れを抱いていると書かれていたのに…あれは憧れのお姫様を見るというよりは、珍しい宇宙人を見るような目だったから…おかしいと思っていたの…」
クリスティーナは納得したように一人頷いていた…。
~・~・~・~・~
「これからどうするの…?」
謎は解けたし、たぶんスカイと名付けられるだろうこの子は、確かに私とローランド様の子供だけれど…それを実証する術がない…。
「それなら大丈夫。この件は前から計画していたから、そのための親子関係認証魔法もすでに特許申請済だ。
もうすぐ認可が下りるから…そうすれば親子関係を証明して、内々に結婚してしまおう。
一応、ナターシャの王太子妃教育を2年は待つ条件だから、それが終わるまで対外的に発表するのは難しいけれど…2年経っても終わらなければ、私は正妃を娶って良いことになっている。
どうせ終わるはずがないし…そもそも王太子妃教育を完了するまで彼女は、うちに入国することも出来ない。
もう父上も母上も、スカイの顔を見るなり確信して、孫として盲愛しているから…問題ないよ」
確かに…スカイの部屋は見る見るうちに、国王と王妃からのプレゼントの山でいっぱいになった…。
もうすぐプレゼントだけのために別室が用意されそうな勢いだ…。
「でもガーランド公爵家の皆様は…?」
「アーサーの部屋から出てきたという告白の手紙を見せ、僕が肩代わりした借金の借用書を見せたら納得してくれたよ…」
(公爵夫人はフィリップを後継者にしたくなくて、かなりごねたようだけれど…アーサーの拵えた借金を返済しようと思ったら、それこそお家存続の危機なので、心ならずも了承したようだ…)
「ナターシャ姫のことは本当に大丈夫なの?彼女とは、まだ婚約関係なのでしょ?」
「それなら大丈夫」
ローランド様は、また透が何か企む時のイタズラな瞳をしていた…。
■□■□■□■□
お読みいただきありがとうございます。
明日でラストとなります。
そんな彼が従者で異母弟のフィリップの甘言に誑され、ギャンブルにハマるのは、思いのほか容易いことだった…。
最初のうちは自分の所持金でちまちまと遊んでいたのが、一度大きく当たる快感を覚えた後は沼にはまるようにズルズルと深みにハマり…気付いた時には公爵家の土地、資産を全て売り払っても返せないほどの借金を抱えるようになっていた…。
名門ガーランド家公爵令息ということで、際限なくツケが利いたのも良くなかった…。
(もちろん僕がそうなるように仕組んだのだけれど…)
王位継承権を持つ人間が、甘言に騙され自分を律することが出来ないなど、あってはならない話だ…。
自制心は、上に立つ者には絶対必要とされる条件。
アーサーにはその覚悟と責任感が足りていなかった…。
異母弟のフィリップとしては、ずっと自分を虐げてきたガーランド公爵家への復讐だったので、ガーランド公爵家が潰れるのでも、公爵家自慢の異母兄が廃嫡になって卑しい愛人の子と蔑まれていた自分がガーランド公爵家を牛耳ることになるのでも、どちらでも構わなかった。
小説の中では、アーサーを意のままに操るため、更に借金を膨らませるよう仕組んだのはナターシャだった。
ナターシャは借金を肩代わりする条件として、アーサーに破落戸を雇わせクリスティーナを襲うよう指示した。
その後、良心の呵責に苛まれたアーサーは、責任をとってクリスティーナと結婚しようとするけれど…クリスティーナの幸せを望まないナターシャによって暗殺されるというのが、原作の筋書きだ。
まあ、今回はそうなる前に意図的にローランドがそれを行った。
そして借金を肩代わりして、国外にアーサーを逃す代わりに、芝居を打ってもらうことにしたのだ。
クリスティーナを襲うための手配(真由が昔憧れると言っていた丸太小屋風森の中のコテージに天蓋付きのお姫様ベッドの用意)、その後クリスティーナを慰め保護すること(絶対手は出さない!!)、両親に、実はお腹の中の子は自分の子だと嘘の証言をさせ、ガーランド公爵家でクリスティーナが大切に扱われるようにする(もちろん最終的にクリスティーナは返してもらうので、その証言は嘘でしたと告白をした遺書付き)、そして結婚式当日には馬車事故を偽装して国外に行き二度と戻らないこと(そこそこの準備金を渡す代わりに、国外で要らない火種を撒かないよう断種済)
これらを条件にアーサーをナターシャに利用されないよう遠く離れた異国の地に逃がした。(異国までの流浪の旅には、フィリップの母がいる舞踏団が協力してくれた)
もちろん髪も瞳も平民に多い茶色になるよう、一生解けない魔法が掛けてある。
上記のことはローランドは指示しただけで、全てアーサーが段取りを組んで行った。
(本当…能力はあるのに…)
側近としては優秀だったから勿体ないけれど…彼のガラスのハートには、平民の方が向いていたのかもしれない…。
優秀な人間だから、平民になっても何かと重宝され、やっていけるだろう…。
フィリップには変に嘘をつくより、真実を話した方が味方に出来ると思ったため、前世のことも含め、すべて真実を話した上で、フィリップを次期公爵に据える代わりに、協力してくれるよう依頼した。
前世なんて…初めは胡散臭い顔をしていた彼も、自分の企みを全て知っていることに驚き、半信半疑ながら協力することを約束した。
(彼も優秀な人材なので、アーサーに代わり良い側近となるだろう…。
彼ならアーサーよりも四角四面でないぶん融通が利くので、ハニートラップなども仕掛けられるだろう…。
ナターシャに関しては、『ああいう、しつこく付き纏いそうな人間は、例え罠でも接するのは嫌だ』と断られたけれど…)
「だからフィリップ様からは微妙な視線を感じていたのね…。
小説の中では、クリスティーナに対して憧れを抱いていると書かれていたのに…あれは憧れのお姫様を見るというよりは、珍しい宇宙人を見るような目だったから…おかしいと思っていたの…」
クリスティーナは納得したように一人頷いていた…。
~・~・~・~・~
「これからどうするの…?」
謎は解けたし、たぶんスカイと名付けられるだろうこの子は、確かに私とローランド様の子供だけれど…それを実証する術がない…。
「それなら大丈夫。この件は前から計画していたから、そのための親子関係認証魔法もすでに特許申請済だ。
もうすぐ認可が下りるから…そうすれば親子関係を証明して、内々に結婚してしまおう。
一応、ナターシャの王太子妃教育を2年は待つ条件だから、それが終わるまで対外的に発表するのは難しいけれど…2年経っても終わらなければ、私は正妃を娶って良いことになっている。
どうせ終わるはずがないし…そもそも王太子妃教育を完了するまで彼女は、うちに入国することも出来ない。
もう父上も母上も、スカイの顔を見るなり確信して、孫として盲愛しているから…問題ないよ」
確かに…スカイの部屋は見る見るうちに、国王と王妃からのプレゼントの山でいっぱいになった…。
もうすぐプレゼントだけのために別室が用意されそうな勢いだ…。
「でもガーランド公爵家の皆様は…?」
「アーサーの部屋から出てきたという告白の手紙を見せ、僕が肩代わりした借金の借用書を見せたら納得してくれたよ…」
(公爵夫人はフィリップを後継者にしたくなくて、かなりごねたようだけれど…アーサーの拵えた借金を返済しようと思ったら、それこそお家存続の危機なので、心ならずも了承したようだ…)
「ナターシャ姫のことは本当に大丈夫なの?彼女とは、まだ婚約関係なのでしょ?」
「それなら大丈夫」
ローランド様は、また透が何か企む時のイタズラな瞳をしていた…。
■□■□■□■□
お読みいただきありがとうございます。
明日でラストとなります。
52
あなたにおすすめの小説
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
愛はリンゴと同じ
turarin
恋愛
学園時代の同級生と結婚し、子供にも恵まれ幸せいっぱいの公爵夫人ナタリー。ところが、ある日夫が平民の少女をつれてきて、別邸に囲うと言う。
夫のナタリーへの愛は減らない。妾の少女メイリンへの愛が、一つ増えるだけだと言う。夫の愛は、まるでリンゴのように幾つもあって、皆に与えられるものなのだそうだ。
ナタリーのことは妻として大切にしてくれる夫。貴族の妻としては当然受け入れるべき。だが、辛くて仕方がない。ナタリーのリンゴは一つだけ。
幾つもあるなど考えられない。
夫は運命の相手ではありませんでした…もう関わりたくないので、私は喜んで離縁します─。
coco
恋愛
夫は、私の運命の相手ではなかった。
彼の本当の相手は…別に居るのだ。
もう夫に関わりたくないので、私は喜んで離縁します─。
【完結】好きでもない私とは婚約解消してください
里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。
そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。
婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。
裏切りの街 ~すれ違う心~
緑谷めい
恋愛
エマは裏切られた。付き合って1年になる恋人リュカにだ。ある日、リュカとのデート中、街の裏通りに突然一人置き去りにされたエマ。リュカはエマを囮にした。彼は騎士としての手柄欲しさにエマを利用したのだ。※ 全5話完結予定
貴方なんて大嫌い
ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と
いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている
それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い
完結 貴方が忘れたと言うのなら私も全て忘却しましょう
音爽(ネソウ)
恋愛
商談に出立した恋人で婚約者、だが出向いた地で事故が発生。
幸い大怪我は負わなかったが頭を強打したせいで記憶を失ったという。
事故前はあれほど愛しいと言っていた容姿までバカにしてくる恋人に深く傷つく。
しかし、それはすべて大嘘だった。商談の失敗を隠蔽し、愛人を侍らせる為に偽りを語ったのだ。
己の事も婚約者の事も忘れ去った振りをして彼は甲斐甲斐しく世話をする愛人に愛を囁く。
修復不可能と判断した恋人は別れを決断した。
【完結】旦那に愛人がいると知ってから
よどら文鳥
恋愛
私(ジュリアーナ)は旦那のことをヒーローだと思っている。だからこそどんなに性格が変わってしまっても、いつの日か優しかった旦那に戻ることを願って今もなお愛している。
だが、私の気持ちなどお構いなく、旦那からの容赦ない暴言は絶えない。当然だが、私のことを愛してはくれていないのだろう。
それでも好きでいられる思い出があったから耐えてきた。
だが、偶然にも旦那が他の女と腕を組んでいる姿を目撃してしまった。
「……あの女、誰……!?」
この事件がきっかけで、私の大事にしていた思い出までもが崩れていく。
だが、今までの苦しい日々から解放される試練でもあった。
※前半が暗すぎるので、明るくなってくるところまで一気に更新しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる