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1話完結
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シリウスと出会ったきっかけは、たまたま訪れた本屋でだった。
取ろうとした本が、同じ冒険小説で、そこからお互いに好きな小説の話になり、私達は好みがとても合うことが分かった。
二人とも春から初等部に上がる年齢だったので、彼は「同じ学校に通いたい!!」と言った。
本当は、春から隣国の祖父母のところに行く事が決まっていた。
けれど彼が望むから、隣国に行くのを止め、父と義母と異母妹のいる、この国に残った。
母の亡くなった家に、私の居場所は無かったけれど、学校に行けばあなたがいるから構わなかった。
冒険者に憧れるあなたに請われ、色んな探検をした。
あなたがみつけた、隠された秘宝があるという地図。
その地図に従って洞窟に入ったら、コウモリが大量に出てきて、2人で泣きながら逃げたっけ…。
滝の裏に、隠された祠がある!と言って、行こうとした時は、川に落ちてビショビショになった…。
他にも、変な所に入って、潜って、ドロドロになって、擦り傷だらけになって…色々やったな…。
家に帰るたびに、父にも義母にも怒られ、異母妹には馬鹿にされた。
でも、あなたの喜ぶ顔が見れたから、そんなのどうでも良かった。
中等部になってから、少しずつ、あなたの態度が素っ気なくなった。
前みたいにあまり熱心に話ししてくれなくなった。
肩を組んだり、頭を小突いたりという事もなくなった。
お昼も、違うクラスになってからは一緒に食べなくなった。
「フィンリーは、高等部はどうするの?」
1人で下校していたら、珍しく彼の方から話し掛けてきた。
彼と話すのは、いつくらいぶりだろう?
「隣国に…祖父母の国に行こうかと考えている」
元々、その予定だった。
シリウスが一緒の学校に行きたいと望むから、こちらに残ったけれど…最近ではほとんど話もしていないし…。
だんだん、家にも居づらくなってきている。
私が成長して髪も伸び、亡くなった母に似てきている事が、父や義母は気にくわないらしい。
母は隣国の公爵令嬢だった。プラチナブロンドの髪にアメジストのように輝く瞳がとても美しい人だったと聞く。
父は留学生として隣国に行った際に母と出会い、大恋愛の末に結ばれた。
隣国の、しかもたかが子爵令息である父を、祖父母は母の結婚相手として認めなかった。
けれど母は諦めきれず、ほぼ駆け落ちのようにして、父に付いて行った。
公爵令嬢として、蝶よ花よと育てられた母にとって、子爵家での生活は大変だったけれど、愛し合う2人はそれでも幸せだった。
でも、その幸せは長くは続かなかった。
母はお産の際に身体を壊してしまい、それからほどなくして帰らぬ人となった。
父は母の命を奪った私を愛する事が出来ず、母と同じ紫色の瞳の男爵令嬢に癒しを求めるようになった。
それが今の義母だ。その娘の異母妹も薄い紫色の瞳をしている。
私のは、母に良く似た、鮮やかな紫だ。
「フィンリーがいないのは…寂しくなる。
同じ学校に行かないか?」
まだ、あなたは私を必要としてくれるのだろうか?
こうやって話し掛けてくれたのも、本当に久しぶりなのに…。
母が亡くなって、すぐに後妻を迎えた父を、祖父母は許せなかった。
さすがに墓の中の母を掘り起こして引き取ることは出来ないから、初等部に入るタイミングで、母の忘れ形見の私を引き取ろうとした。
けれど、当時どうしてもシリウスと離れたくなかった私は、それを断った。
それからも、祖父母は私の事を気にかけ、ちょくちょく隣国に来るよう声を掛けてくれた。
もうこれ以上は無理かな……と思った私は、祖父母の誘いにのる返事をした。
それが1週間前の事だ。
「私がいなくなっても、シリウスにはキャロルがいるでしょ?」
「何で、彼女の事を知っているの?」
私がキャロルの話をした事に、シリウスはとても驚いた顔をした。
街でキャロルと腕を組んで歩くシリウスを見た時は、とてもショックだった。
少女らしい、可愛らしい花柄のワンピースを着たキャロルと、少し身長が伸びて凛々しくなった彼はお似合いだった。
その藤色の瞳で、背の高いシリウスを見上げるキャロル。
それに照れたように視線をそらすシリウス。
どう見ても、付き合っているように見えた。
「俺達の関係に、彼女は関係ないだろ…?」
「キャロルの事が好きなの?」
私はそれには答えず、彼に尋ねた。
「可愛いとは思うけれど…」
「そう」
もういいと思った。
「彼女は関係ないだろう。今はフィンリーの話をしてるんだし。
なあ、隣国になんか行かないよな?だって今までも、ずっと一緒にいてくれたじゃないか…」
彼は、飽きて遊ばなくなったおもちゃを、他の子にあげると言った途端、惜しがる子供のようだ…。
「関係なくはないよ。だってキャロルは異母妹だもの」
「キャロルが異母妹…?えっ、じゃあフィンリーはキャロルの姉なのか!?」
シリウスはとても驚いて、言葉が発せないようだった。
キャロルがシリウスと知り合ったのは、決して偶然じゃない。
キャロルは何でも私のものを取り上げるのが好きなのだ。
初めのうちは、洋服とか小物だった。
祖父母が送ってくれた、隣国の珍しいおもちゃや装飾品も取り上げられた。
それが、私付きの仲の良いメイドや友達になり、とうとうシリウスにまで手を伸ばした。
キャロルに取られないよう、彼の話は一切しなかったのに、たまたま2人で出掛けてるところを見られたのだろう…。
キャロルは義母に似て、大きな瞳に丸顔で、可愛らしい顔をしている。
私はどちらかと言うと、母に似てシャープで綺麗と言われる顔だ。だから、少し少女らしさに欠ける。
二人で話していると、そこに突然割って入るお邪魔虫が現れた。
「シリウス様、ご機嫌よう。
まあ、お異母姉様、こんなところでどうして2人でいるの?
まさか、シリウス様が私の好きな人だと知って…また私から奪うつもり?」
キャロルは泣きそうな顔をして、シリウスの腕にしがみついた。
被害者のふりをして、私を貶めるのは、彼女の上等手段だ。
シリウスもキャロルの手に落ちるのだろうか?
どうせなら、仲の良い友達のまま終わりたかったのに…。
そう思っていると、
「何を言ってるんだ?フィンリーは君よりもずっと古くからの付き合いだ!!」
シリウスは不愉快そうに、キャロルの腕を払った。
腕を振り払われたキャロルは、信じられないといった目で、シリウスを見つめる。
「それに君は嘘つきだ。異母姉が意地悪で、自分を虐げると言っていたが、フィンリーがそんな人でないことは僕が一番知っている」
「私を信じてくれないの?」
今まで、みんな異母姉より自分を信じてくれたので、そんなはずはないと瞳を潤ませ、演技を続けたが、彼の目にはもう、親しみの感情は一切見られなかった。
「君よりも、付き合いの長いフィンリーを信じるに決まってる。
フィンリーは僕が知ってる人の中で、一番優しく、勇敢で、そして素敵だ!」
キャロルは悔しそうに私を睨むと、何も言わず、その場を立ち去った。
「…追わなくて良いの?キャロルと付き合ってたんじゃないの?」
私の事を信じると言ってくれたのは嬉しかったけれど、まだ信じられなくて、もう一度確認するように尋ねた。
「彼女には、街でたまたま何度か話し掛けられただけで、そういうのじゃない…」
「でもキャロルと腕を組んで、楽しそうにしてるのを見たよ」
「何か会ったばかりの人間にも、スキンシップの激しい子だなとは思ってた…でも、フィンリーと同じ紫色の瞳で見つめられると、最近フィンリーに気軽に触れられなかったから…つい、許してしまって…」
シリウスは気不味そうに視線を反らした。
「どうして、最近は私のこと、避けてたの?
ずっと会ってくれないし、話し掛けてくれないし、前のように肩に触れてもくれない…もう、私はシリウスにとって要らないのかと思った…」
我慢してたのに口に出すと、思わず、目から涙がこぼれた。
今まで、彼の前で泣いた事なんて一度もなかった。だから、私が涙を流すのを見てビックリした彼は、カバンから焦ってハンカチを出し、拭いてくれた。
「違う!!要らなくなんかない!!…ただ、どんどん綺麗になるフィンリーに、どういう態度を取れば良いのか分からなくて…」
シリウスが自分の事をそんな風に思ってるとは思わなかった。
何て言えば良いのか分からず、ただ潤んだままの紫の瞳で、彼を見つめた。
「フィンリーの事をただの友達とは思えなくなって来て、どうすれば良いのか分からなくて避けた…」
「友達と思えないって…それって、どういう事?」
話ししているうちに、どんどん顔が赤くなってくるシリウスに、本当は何か怒ってるのではないかと心配になった。
「…だって、知り合った時のフィンリーはシャツにズボン姿で短髪だったし…いつも僕の冒険にも付き合ってくれたし…。てっきり男の子だと思っていたんだ。
でも年々綺麗になっていくし、身長は低いままで華奢だし、髪も伸ばしだしたら女の子みたいになってきて…友達としてでなく、恋愛感情として好きな人として見ちゃうから…どうすれば良いのか分からなくなって…」
「…つまり、シリウスは私の事を友達としてでなく、恋人として好きっていうこと?」
シリウスは更に赤くなって、俯いたまま頷いた。
「私も初めて会った時から、シリウスの事が好きだよ」
私の言葉に驚いて、咄嗟に顔をあげたシリウスと目があった。
茹でダコのように真っ赤なシリウスに、サクランボのように赤い顔で微笑んだ。
その後、2人で話し合い、結局私は隣国に渡る事にした。
この国にいても、私の環境が改善される事はないから…。
母に似た義母と結婚したところで、父は母の事を忘れられなかった。
母の命を奪った私が、その最愛の人に似ることが許せず、父は私に男の子の格好をさせた。
だから、シリウスはずっと私を男の子だと思っていたらしい…。
この国にいても、ますます母に似てくる私の姿は父を苦しめ、義母にやっかまれ、疎んじられるだけだ。
今度はシリウスが私の望みを聞いてくれる事になった。
いきなりは無理なので、一年送れて、シリウスも隣国に留学して来る予定だ。
幸い、留学できる程にシリウスの成績は良く、家柄も問題ない。
隣国に行くと言ったら、父に
「お前も私を置いて行くのか?」と言われた。今更である。
義母は少しホッとしたような顔をして
「体に気をつけて…」と声を掛けてくれた。
キャロルは何も言わず、ただ睨んでいた。
私が公爵家で暮らすようになる事が、妬ましいらしい…。
今まで、ずっとシリウスの願いを聞いてきたけれど、これからは互いにもっと伝えたい事を言って、二人が望む道を進むことになった。
二人で話し合った結果、私達の関係は友達から恋人に変わった。
取ろうとした本が、同じ冒険小説で、そこからお互いに好きな小説の話になり、私達は好みがとても合うことが分かった。
二人とも春から初等部に上がる年齢だったので、彼は「同じ学校に通いたい!!」と言った。
本当は、春から隣国の祖父母のところに行く事が決まっていた。
けれど彼が望むから、隣国に行くのを止め、父と義母と異母妹のいる、この国に残った。
母の亡くなった家に、私の居場所は無かったけれど、学校に行けばあなたがいるから構わなかった。
冒険者に憧れるあなたに請われ、色んな探検をした。
あなたがみつけた、隠された秘宝があるという地図。
その地図に従って洞窟に入ったら、コウモリが大量に出てきて、2人で泣きながら逃げたっけ…。
滝の裏に、隠された祠がある!と言って、行こうとした時は、川に落ちてビショビショになった…。
他にも、変な所に入って、潜って、ドロドロになって、擦り傷だらけになって…色々やったな…。
家に帰るたびに、父にも義母にも怒られ、異母妹には馬鹿にされた。
でも、あなたの喜ぶ顔が見れたから、そんなのどうでも良かった。
中等部になってから、少しずつ、あなたの態度が素っ気なくなった。
前みたいにあまり熱心に話ししてくれなくなった。
肩を組んだり、頭を小突いたりという事もなくなった。
お昼も、違うクラスになってからは一緒に食べなくなった。
「フィンリーは、高等部はどうするの?」
1人で下校していたら、珍しく彼の方から話し掛けてきた。
彼と話すのは、いつくらいぶりだろう?
「隣国に…祖父母の国に行こうかと考えている」
元々、その予定だった。
シリウスが一緒の学校に行きたいと望むから、こちらに残ったけれど…最近ではほとんど話もしていないし…。
だんだん、家にも居づらくなってきている。
私が成長して髪も伸び、亡くなった母に似てきている事が、父や義母は気にくわないらしい。
母は隣国の公爵令嬢だった。プラチナブロンドの髪にアメジストのように輝く瞳がとても美しい人だったと聞く。
父は留学生として隣国に行った際に母と出会い、大恋愛の末に結ばれた。
隣国の、しかもたかが子爵令息である父を、祖父母は母の結婚相手として認めなかった。
けれど母は諦めきれず、ほぼ駆け落ちのようにして、父に付いて行った。
公爵令嬢として、蝶よ花よと育てられた母にとって、子爵家での生活は大変だったけれど、愛し合う2人はそれでも幸せだった。
でも、その幸せは長くは続かなかった。
母はお産の際に身体を壊してしまい、それからほどなくして帰らぬ人となった。
父は母の命を奪った私を愛する事が出来ず、母と同じ紫色の瞳の男爵令嬢に癒しを求めるようになった。
それが今の義母だ。その娘の異母妹も薄い紫色の瞳をしている。
私のは、母に良く似た、鮮やかな紫だ。
「フィンリーがいないのは…寂しくなる。
同じ学校に行かないか?」
まだ、あなたは私を必要としてくれるのだろうか?
こうやって話し掛けてくれたのも、本当に久しぶりなのに…。
母が亡くなって、すぐに後妻を迎えた父を、祖父母は許せなかった。
さすがに墓の中の母を掘り起こして引き取ることは出来ないから、初等部に入るタイミングで、母の忘れ形見の私を引き取ろうとした。
けれど、当時どうしてもシリウスと離れたくなかった私は、それを断った。
それからも、祖父母は私の事を気にかけ、ちょくちょく隣国に来るよう声を掛けてくれた。
もうこれ以上は無理かな……と思った私は、祖父母の誘いにのる返事をした。
それが1週間前の事だ。
「私がいなくなっても、シリウスにはキャロルがいるでしょ?」
「何で、彼女の事を知っているの?」
私がキャロルの話をした事に、シリウスはとても驚いた顔をした。
街でキャロルと腕を組んで歩くシリウスを見た時は、とてもショックだった。
少女らしい、可愛らしい花柄のワンピースを着たキャロルと、少し身長が伸びて凛々しくなった彼はお似合いだった。
その藤色の瞳で、背の高いシリウスを見上げるキャロル。
それに照れたように視線をそらすシリウス。
どう見ても、付き合っているように見えた。
「俺達の関係に、彼女は関係ないだろ…?」
「キャロルの事が好きなの?」
私はそれには答えず、彼に尋ねた。
「可愛いとは思うけれど…」
「そう」
もういいと思った。
「彼女は関係ないだろう。今はフィンリーの話をしてるんだし。
なあ、隣国になんか行かないよな?だって今までも、ずっと一緒にいてくれたじゃないか…」
彼は、飽きて遊ばなくなったおもちゃを、他の子にあげると言った途端、惜しがる子供のようだ…。
「関係なくはないよ。だってキャロルは異母妹だもの」
「キャロルが異母妹…?えっ、じゃあフィンリーはキャロルの姉なのか!?」
シリウスはとても驚いて、言葉が発せないようだった。
キャロルがシリウスと知り合ったのは、決して偶然じゃない。
キャロルは何でも私のものを取り上げるのが好きなのだ。
初めのうちは、洋服とか小物だった。
祖父母が送ってくれた、隣国の珍しいおもちゃや装飾品も取り上げられた。
それが、私付きの仲の良いメイドや友達になり、とうとうシリウスにまで手を伸ばした。
キャロルに取られないよう、彼の話は一切しなかったのに、たまたま2人で出掛けてるところを見られたのだろう…。
キャロルは義母に似て、大きな瞳に丸顔で、可愛らしい顔をしている。
私はどちらかと言うと、母に似てシャープで綺麗と言われる顔だ。だから、少し少女らしさに欠ける。
二人で話していると、そこに突然割って入るお邪魔虫が現れた。
「シリウス様、ご機嫌よう。
まあ、お異母姉様、こんなところでどうして2人でいるの?
まさか、シリウス様が私の好きな人だと知って…また私から奪うつもり?」
キャロルは泣きそうな顔をして、シリウスの腕にしがみついた。
被害者のふりをして、私を貶めるのは、彼女の上等手段だ。
シリウスもキャロルの手に落ちるのだろうか?
どうせなら、仲の良い友達のまま終わりたかったのに…。
そう思っていると、
「何を言ってるんだ?フィンリーは君よりもずっと古くからの付き合いだ!!」
シリウスは不愉快そうに、キャロルの腕を払った。
腕を振り払われたキャロルは、信じられないといった目で、シリウスを見つめる。
「それに君は嘘つきだ。異母姉が意地悪で、自分を虐げると言っていたが、フィンリーがそんな人でないことは僕が一番知っている」
「私を信じてくれないの?」
今まで、みんな異母姉より自分を信じてくれたので、そんなはずはないと瞳を潤ませ、演技を続けたが、彼の目にはもう、親しみの感情は一切見られなかった。
「君よりも、付き合いの長いフィンリーを信じるに決まってる。
フィンリーは僕が知ってる人の中で、一番優しく、勇敢で、そして素敵だ!」
キャロルは悔しそうに私を睨むと、何も言わず、その場を立ち去った。
「…追わなくて良いの?キャロルと付き合ってたんじゃないの?」
私の事を信じると言ってくれたのは嬉しかったけれど、まだ信じられなくて、もう一度確認するように尋ねた。
「彼女には、街でたまたま何度か話し掛けられただけで、そういうのじゃない…」
「でもキャロルと腕を組んで、楽しそうにしてるのを見たよ」
「何か会ったばかりの人間にも、スキンシップの激しい子だなとは思ってた…でも、フィンリーと同じ紫色の瞳で見つめられると、最近フィンリーに気軽に触れられなかったから…つい、許してしまって…」
シリウスは気不味そうに視線を反らした。
「どうして、最近は私のこと、避けてたの?
ずっと会ってくれないし、話し掛けてくれないし、前のように肩に触れてもくれない…もう、私はシリウスにとって要らないのかと思った…」
我慢してたのに口に出すと、思わず、目から涙がこぼれた。
今まで、彼の前で泣いた事なんて一度もなかった。だから、私が涙を流すのを見てビックリした彼は、カバンから焦ってハンカチを出し、拭いてくれた。
「違う!!要らなくなんかない!!…ただ、どんどん綺麗になるフィンリーに、どういう態度を取れば良いのか分からなくて…」
シリウスが自分の事をそんな風に思ってるとは思わなかった。
何て言えば良いのか分からず、ただ潤んだままの紫の瞳で、彼を見つめた。
「フィンリーの事をただの友達とは思えなくなって来て、どうすれば良いのか分からなくて避けた…」
「友達と思えないって…それって、どういう事?」
話ししているうちに、どんどん顔が赤くなってくるシリウスに、本当は何か怒ってるのではないかと心配になった。
「…だって、知り合った時のフィンリーはシャツにズボン姿で短髪だったし…いつも僕の冒険にも付き合ってくれたし…。てっきり男の子だと思っていたんだ。
でも年々綺麗になっていくし、身長は低いままで華奢だし、髪も伸ばしだしたら女の子みたいになってきて…友達としてでなく、恋愛感情として好きな人として見ちゃうから…どうすれば良いのか分からなくなって…」
「…つまり、シリウスは私の事を友達としてでなく、恋人として好きっていうこと?」
シリウスは更に赤くなって、俯いたまま頷いた。
「私も初めて会った時から、シリウスの事が好きだよ」
私の言葉に驚いて、咄嗟に顔をあげたシリウスと目があった。
茹でダコのように真っ赤なシリウスに、サクランボのように赤い顔で微笑んだ。
その後、2人で話し合い、結局私は隣国に渡る事にした。
この国にいても、私の環境が改善される事はないから…。
母に似た義母と結婚したところで、父は母の事を忘れられなかった。
母の命を奪った私が、その最愛の人に似ることが許せず、父は私に男の子の格好をさせた。
だから、シリウスはずっと私を男の子だと思っていたらしい…。
この国にいても、ますます母に似てくる私の姿は父を苦しめ、義母にやっかまれ、疎んじられるだけだ。
今度はシリウスが私の望みを聞いてくれる事になった。
いきなりは無理なので、一年送れて、シリウスも隣国に留学して来る予定だ。
幸い、留学できる程にシリウスの成績は良く、家柄も問題ない。
隣国に行くと言ったら、父に
「お前も私を置いて行くのか?」と言われた。今更である。
義母は少しホッとしたような顔をして
「体に気をつけて…」と声を掛けてくれた。
キャロルは何も言わず、ただ睨んでいた。
私が公爵家で暮らすようになる事が、妬ましいらしい…。
今まで、ずっとシリウスの願いを聞いてきたけれど、これからは互いにもっと伝えたい事を言って、二人が望む道を進むことになった。
二人で話し合った結果、私達の関係は友達から恋人に変わった。
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