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第38話 体育祭(6)
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さて、私は今どこにいるでしょうか?
正解は…私にも分かりません。
何故なら、手足を縛られて目隠しされた状態で、たぶん車で移動中だからです…。
~・~・~・~・~
あの後私は、学院長が自らケータリングの手配をしたと聞き(何でそんな仕事を学院長がするのかしら…?と思ったけれど、人のいいあの方なら、押しの強い先生方に頼まれてやっていそうね)探しに行く途中、気品のある老婦人に声を掛けられました。
お昼を召し上がられた後、体調を崩されたので、お手洗いまで連れて行ってほしいとのこと…。
やはりケータリングのお弁当に問題があったのだと思った私は、取り急ぎ学園長に電話連絡だけ入れ、お客様をお手洗いへと案内する途中、校舎に入った途端に後ろから口を塞がれ…
気付いた時には車中にいました…。
~・~・~・~・~
その頃…校庭では…。
「どうして誰もいない…」
騎馬戦を終え、魁皇達が戻ってきた本部には、誰もいなかった…。
急いで京香に連絡をとっても、繋がらなくなっており、時雨は体調を崩して保健室にいた…。
そこにのほほんと学院長がやって来て…
「白藤さんは戻られていますか~?
先程白藤さんから、こちらで用意したケータリングのお弁当で、来賓の方が食中毒を起こされたかもしれないと連絡をもらったのですが…」
「学院長、それはいつ頃ですか?」
「15分程前かな…?
体調を崩したのは、白藤さんが手洗いに案内した御婦人だけだったようで、幸いにも他に不調を訴えられる方はいなかったのだけれど…。
詳しいことを尋ねようと連絡しても電話が繋がらなかったものですから、直接こちらに来たのですが…白藤さんは?」
学院長の質問には答えず、魁皇は更に尋ねた。
「その御婦人はどこのどなたですか?」
来賓客なら、全員名簿にのっているはず…。
「それが…先程確認したら来賓の方は皆様席におられて…どうやら白藤さんが会った御婦人は賓客ではなかったようです…」
その場にいた全員が顔を見合わせた…。
「やられた…」
思わず漏れた魁皇の呟きに…
「本当…時雨君ってポンコツ…」
本家の若でもある従兄弟に対して、身も蓋もない天馬…。
口調は軽いが、その表情はいつもの余裕のあるものではなく、少し苛立ちが見える…。
「・・・・」
自分が守るべき対象を奪われ、何も言えない田中…。
「どうかしたのかい…?」
そんな三人の様子に学院長が怪訝そうに尋ねる。
いち早く自分が取るべき対応を理解した魁皇は、まず学院長に門の封鎖を依頼した。
「学院長、たぶん京香は連れ去られました。他の者には気づかれぬよう、速やかに門を封鎖してください」
「連れ去られたとは随分物騒な話だけれど…それは何か根拠があるのかい…?」
白藤京香という生徒が拐われたことに、思いあたる節があった学院長は、驚くよりも確認をするように尋ねた。
魁皇は真っすぐに学院長の目を見て答える。
「京香を拐ったのは、十中八九…鬼瓦家の者でしょう…」
「鬼瓦家の手の者が学院内に…」
その後の学院長の動きは、いつもののんびりした態度が嘘のように素早かった。
警備の者にすぐに全ての門を閉鎖させ、学院中の監視カメラに不審人物が映っていないか確認するよう指示を出した。
「とりあえずこちらの動きを悟られないように、君達は予定通り閉会式を終わらせ、学院長室に集まってくれたまえ。
その間にこちらも打てる手は打つ」
「学院長…父に連絡を入れても構いませんか…?」
「二階堂君か…彼なら友人だった二人の娘のために手を貸してくれることだろう…。
私からもお願いします」
そう言って生徒に向かって頭を下げる学院長の顔は、昼行灯と言われる学院長の顔ではなく、熱血教師だった頃を彷彿させるものだった…。
■□■□■□■□
お読みいただきありがとうございます。
正解は…私にも分かりません。
何故なら、手足を縛られて目隠しされた状態で、たぶん車で移動中だからです…。
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あの後私は、学院長が自らケータリングの手配をしたと聞き(何でそんな仕事を学院長がするのかしら…?と思ったけれど、人のいいあの方なら、押しの強い先生方に頼まれてやっていそうね)探しに行く途中、気品のある老婦人に声を掛けられました。
お昼を召し上がられた後、体調を崩されたので、お手洗いまで連れて行ってほしいとのこと…。
やはりケータリングのお弁当に問題があったのだと思った私は、取り急ぎ学園長に電話連絡だけ入れ、お客様をお手洗いへと案内する途中、校舎に入った途端に後ろから口を塞がれ…
気付いた時には車中にいました…。
~・~・~・~・~
その頃…校庭では…。
「どうして誰もいない…」
騎馬戦を終え、魁皇達が戻ってきた本部には、誰もいなかった…。
急いで京香に連絡をとっても、繋がらなくなっており、時雨は体調を崩して保健室にいた…。
そこにのほほんと学院長がやって来て…
「白藤さんは戻られていますか~?
先程白藤さんから、こちらで用意したケータリングのお弁当で、来賓の方が食中毒を起こされたかもしれないと連絡をもらったのですが…」
「学院長、それはいつ頃ですか?」
「15分程前かな…?
体調を崩したのは、白藤さんが手洗いに案内した御婦人だけだったようで、幸いにも他に不調を訴えられる方はいなかったのだけれど…。
詳しいことを尋ねようと連絡しても電話が繋がらなかったものですから、直接こちらに来たのですが…白藤さんは?」
学院長の質問には答えず、魁皇は更に尋ねた。
「その御婦人はどこのどなたですか?」
来賓客なら、全員名簿にのっているはず…。
「それが…先程確認したら来賓の方は皆様席におられて…どうやら白藤さんが会った御婦人は賓客ではなかったようです…」
その場にいた全員が顔を見合わせた…。
「やられた…」
思わず漏れた魁皇の呟きに…
「本当…時雨君ってポンコツ…」
本家の若でもある従兄弟に対して、身も蓋もない天馬…。
口調は軽いが、その表情はいつもの余裕のあるものではなく、少し苛立ちが見える…。
「・・・・」
自分が守るべき対象を奪われ、何も言えない田中…。
「どうかしたのかい…?」
そんな三人の様子に学院長が怪訝そうに尋ねる。
いち早く自分が取るべき対応を理解した魁皇は、まず学院長に門の封鎖を依頼した。
「学院長、たぶん京香は連れ去られました。他の者には気づかれぬよう、速やかに門を封鎖してください」
「連れ去られたとは随分物騒な話だけれど…それは何か根拠があるのかい…?」
白藤京香という生徒が拐われたことに、思いあたる節があった学院長は、驚くよりも確認をするように尋ねた。
魁皇は真っすぐに学院長の目を見て答える。
「京香を拐ったのは、十中八九…鬼瓦家の者でしょう…」
「鬼瓦家の手の者が学院内に…」
その後の学院長の動きは、いつもののんびりした態度が嘘のように素早かった。
警備の者にすぐに全ての門を閉鎖させ、学院中の監視カメラに不審人物が映っていないか確認するよう指示を出した。
「とりあえずこちらの動きを悟られないように、君達は予定通り閉会式を終わらせ、学院長室に集まってくれたまえ。
その間にこちらも打てる手は打つ」
「学院長…父に連絡を入れても構いませんか…?」
「二階堂君か…彼なら友人だった二人の娘のために手を貸してくれることだろう…。
私からもお願いします」
そう言って生徒に向かって頭を下げる学院長の顔は、昼行灯と言われる学院長の顔ではなく、熱血教師だった頃を彷彿させるものだった…。
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お読みいただきありがとうございます。
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