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46. 鬼瓦家(7)
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食えない老獪の鬼瓦家当主相手に下手に言葉を濁しても、時間の無駄だと考えた魁皇は、直球で要求を伝えた。
「突然の訪問失礼いたします…。
だが、こんな時間にお邪魔したのも、そちらが私の婚約者を連れ去ったため仕方なくです。
ここへ連れ去られたことは調べがついてます。私の婚約者を…京香を返してください」
「婚約者…?それはおかしなことを言うね…。
保護者であるわしが知らぬのに…婚約など…。
そもそも孫娘を連れて帰っただけなのに、連れ去ったなどと言いがかりをつけられても…」
と古狸がのらりくらりと躱そうとしたので…
「彼女の保護者は白藤ご夫妻です。
ご両親が亡くなれた時にちゃんと養子縁組もされています。
そもそも雅さんが鬼瓦家から籍を抜き、絶縁状を送りつけた時点で、あなた達とはとっくに縁は切れている。
本人の同意もなく、勝手に連れて行くのは犯罪です」
淡々と正論を述べて、ぐうの音も出なくした。
天馬の調べによると…事実上の当主はすでに次代に移行している…。
つまり今、自分が相手しているのは年老いて見栄だけで立っているようなハリボテなので、京香を連れ帰るためには、サッサとこれを片付け、後ろにいる黒幕を引っ張り出さねばならないのだ…。
「だが…血の繋がりがある限り、縁は切れないはずだ!!」
若造に丸め込まれ腹を立てた景虎は、後先考えずガンッと机を叩いて立ち上がった。
「縁は切れないと言っても、相続の問題くらいで…。
すでに15歳を過ぎた彼らには、自分達の意思で保護者を選ぶ権利があります」
「なら、血の繋がりもない養父母なんかよりも本当の祖父母を選ぶはずだ!!
この家に来れば、もうあんなボロアパートに住まなくてもよくなるし、豊かな生活も保障される。わざわざ奨学生なぞにならなくてもいくらでも行きたい学校に通えるのだから…」
トントン
自分の価値観を信じて疑わず、まくし立てる景虎に水を差すように、部屋の扉を叩く者がいた。
『失礼します』
流暢な英語で問い掛ける声が聞こえ、こちらの返事を待つことなく入室してきたのは…
魁皇よりも背が高い…目を見張るような美青年だった。
魁皇が華やかな太陽の神だとすれば、彼はその銀髪にブルーグレーの瞳が神秘的な月の神のようだ…。
『君はノックの意味も知らないのか?』
魁皇がフランス語で返すと…
『どうして僕がわざわざ君達の返事を待つ必要が…?』
とドイツ語で返ってきた…。
その間、2人は終始にこやかに微笑んだまま会話を交わしているのに…
何故か周囲には冷気が漂う…。
「ヘンリー、どうしてお前がここに…?」
この状況に耐えられなくなった景虎が言葉を挟むと、睨み合いに飽きてきたヘンリーがそれに答えた。
「う~ん?京香を付け回す勘違い野郎に一言釘を刺しておこうかと思って…?」
変わらずキラキラの笑顔で答えるヘンリー。
「お前…幼少期からの白藤姉弟のストーカーか…?」
「ストーカーなんて失礼な…熱烈なファンと言ってくれたまえ」
「飲みかけのペットボトルがなくなって、新しいペットボトルに入れ替わっていることがよくあったと聞いたが…?
あとゴミは勝手になくなることが多かったから、ゴミ置き場に鍵をかけるようにしたら、勝手に新しい鍵にすり替えられていていたとも…」
「それは一本じゃ足りないかな?と思って、なくなりかけの飲み物を新しいのに替えておいただけだし…
簡単にピッキングできるような鍵だと危ないと思ったから、他の者が開けられないように高性能な最新型に替えただけで…
ちゃんと各住人の部屋のポストにも新しい鍵は入れておいたし…」
照れたように答えるヘンリーに対して…
そこにいた全員の心が1つになった。
『『『真のストーカーだ…』』』
■□■□■□■□
お読みいただきありがとございます。
ヘンリーは今年も安定のストーカーで参りますが、よろしくお願いいたします。
「突然の訪問失礼いたします…。
だが、こんな時間にお邪魔したのも、そちらが私の婚約者を連れ去ったため仕方なくです。
ここへ連れ去られたことは調べがついてます。私の婚約者を…京香を返してください」
「婚約者…?それはおかしなことを言うね…。
保護者であるわしが知らぬのに…婚約など…。
そもそも孫娘を連れて帰っただけなのに、連れ去ったなどと言いがかりをつけられても…」
と古狸がのらりくらりと躱そうとしたので…
「彼女の保護者は白藤ご夫妻です。
ご両親が亡くなれた時にちゃんと養子縁組もされています。
そもそも雅さんが鬼瓦家から籍を抜き、絶縁状を送りつけた時点で、あなた達とはとっくに縁は切れている。
本人の同意もなく、勝手に連れて行くのは犯罪です」
淡々と正論を述べて、ぐうの音も出なくした。
天馬の調べによると…事実上の当主はすでに次代に移行している…。
つまり今、自分が相手しているのは年老いて見栄だけで立っているようなハリボテなので、京香を連れ帰るためには、サッサとこれを片付け、後ろにいる黒幕を引っ張り出さねばならないのだ…。
「だが…血の繋がりがある限り、縁は切れないはずだ!!」
若造に丸め込まれ腹を立てた景虎は、後先考えずガンッと机を叩いて立ち上がった。
「縁は切れないと言っても、相続の問題くらいで…。
すでに15歳を過ぎた彼らには、自分達の意思で保護者を選ぶ権利があります」
「なら、血の繋がりもない養父母なんかよりも本当の祖父母を選ぶはずだ!!
この家に来れば、もうあんなボロアパートに住まなくてもよくなるし、豊かな生活も保障される。わざわざ奨学生なぞにならなくてもいくらでも行きたい学校に通えるのだから…」
トントン
自分の価値観を信じて疑わず、まくし立てる景虎に水を差すように、部屋の扉を叩く者がいた。
『失礼します』
流暢な英語で問い掛ける声が聞こえ、こちらの返事を待つことなく入室してきたのは…
魁皇よりも背が高い…目を見張るような美青年だった。
魁皇が華やかな太陽の神だとすれば、彼はその銀髪にブルーグレーの瞳が神秘的な月の神のようだ…。
『君はノックの意味も知らないのか?』
魁皇がフランス語で返すと…
『どうして僕がわざわざ君達の返事を待つ必要が…?』
とドイツ語で返ってきた…。
その間、2人は終始にこやかに微笑んだまま会話を交わしているのに…
何故か周囲には冷気が漂う…。
「ヘンリー、どうしてお前がここに…?」
この状況に耐えられなくなった景虎が言葉を挟むと、睨み合いに飽きてきたヘンリーがそれに答えた。
「う~ん?京香を付け回す勘違い野郎に一言釘を刺しておこうかと思って…?」
変わらずキラキラの笑顔で答えるヘンリー。
「お前…幼少期からの白藤姉弟のストーカーか…?」
「ストーカーなんて失礼な…熱烈なファンと言ってくれたまえ」
「飲みかけのペットボトルがなくなって、新しいペットボトルに入れ替わっていることがよくあったと聞いたが…?
あとゴミは勝手になくなることが多かったから、ゴミ置き場に鍵をかけるようにしたら、勝手に新しい鍵にすり替えられていていたとも…」
「それは一本じゃ足りないかな?と思って、なくなりかけの飲み物を新しいのに替えておいただけだし…
簡単にピッキングできるような鍵だと危ないと思ったから、他の者が開けられないように高性能な最新型に替えただけで…
ちゃんと各住人の部屋のポストにも新しい鍵は入れておいたし…」
照れたように答えるヘンリーに対して…
そこにいた全員の心が1つになった。
『『『真のストーカーだ…』』』
■□■□■□■□
お読みいただきありがとございます。
ヘンリーは今年も安定のストーカーで参りますが、よろしくお願いいたします。
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