実は僕……

咲樹

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僕はいつものように学校へ歩いていた。
「蒼ちゃん、おはよう」
「おばちゃん!おはようございます!!」
挨拶を返しながら、ニコニコしておばちゃんの横を通り過ぎた。通り過ぎた後ろで、おばちゃんが鼻を抑えながら、悶えていたとも知らずに……。
通学路を通っていると、見知った友人がいた。
「おはよう!奏(そう)くん」
「おはよ、蒼。
…今日の王子スマイルも凄いな…ボソッ」
「?奏くん、何か言った??」
「いや、今日も元気だなって思ってさ」
そんなことを言われて僕は嬉しくてにへら~って笑っていると、バタンッと倒れる音がした。音の方向を向くと女の子が倒れていた。
「えっ!?大丈夫?怪我してない??」
と言って駆け寄った。
「神様、ありがとうございますっ。
こんな笑顔を朝に見られて私はもうこのまま召されても構いません。あぁ~、神様は本当にいたんだ…。」
何かよくわからないけど、大丈夫そうじゃないから救急車を呼ぼうと携帯を取りだした。奏くんは携帯を取り出した瞬間、
「大丈夫だから気にすんな!熱があったんだろうな!!ほら、他の人が寄ってきてくれたからその人に任せよう。な?」
「熱があるなら呼んだ方がいいんじゃないの?」
僕はすごく心配した目で女の子を見つめた。
「大丈夫だから!ですよね?!」
「!あぁ!その通りだよ。ここは私に任せてね?
ほら、早く行かないと学校に遅れちゃうよ??」
通りすがりの人に奏くんが焦った感じで聞き、その人も僕に安心させるように言った。
「じゃあ、よろしくお願いします!」
奏くんはそう言って、僕の手を取って走り出した。
「ねぇ、奏くんっ!僕まだ頼んでな…」
「いいからいいから。
マジで間に合わなくなるから!」
と僕が言おうとして、遮られてしまった。なんで女の子が倒れたのか疑問に思いつつも、学校へ向かった。
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なんとか学校に着き、教室に先生がいて
「すいません!遅れました。
あと、おはようございます!!」
「おはようございます。
こいつのいつものキラーが発動して遅くなりました。俺は悪くないです。」
先生は奏くんに同情した目を向けて、
「いつもお疲れ様…、城谷。
そして、今日も頑張れよ。」
と返した。僕には
「城谷を朝から疲れさせるんじゃないぞ?
んで、天宮は女子・・なんだからズボンじゃなくて、スカートをはけ!
髪はちゃんと結んでるようだが…」
溜息をつかれ、教室内を見渡していた。つられて見てみると、女子が机の上で寝ていた。
「毎回思うんですけど、眠らないって注意しなくていいんですか?」
「泣いていいか?」
「え?」
「まぁいいや。とりあえず、城谷と天宮が来たので、SHRを終わりとする。各自自分のことをしろ。あと、女子を助けてやれ…。」
そう言って先生が教室から出ていった。
首を傾げる僕の後ろで奏くんが
「お疲れ様です。」
と聞こえない声でいい、頭をさげた。
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