姉妹チート:RE

和希

文字の大きさ
1 / 138
PRELUDE

いくつもの春を越えて

しおりを挟む
(1)

「お、トーヤ!」
「ああ、カンナ」

僕を見つけたカンナが声をかけてきた。
かつて渡辺班と呼ばれた、僕と同期の仲間。
僕の小学生の頃からの幼馴染。
今はやはり僕の友達の多田誠と結婚している。
今日は僕の息子、片桐空の結婚式に来ていた。
誠も一緒にいる。
僕の隣には僕の妻の愛莉が立っていた。

「空の様子はどうだった?」
「今頃お嫁さんの姿に見とれてるんじゃないですか?」

愛莉はそう言って笑っていた。

「しかし本当にあの二人が結婚するとは思わなかったぜ」

誠がそう言う。
僕も最初は驚いた。
誰も想像しなかったこと。
運命というのは何が起こるか分からない。
最後の最後まであきらめない者に女神という存在は微笑むのだろう。
僕のかつての友達は、子供を育てて、そして子供同士で集まってこの日まで共に歩んできた。
その子供たちが空の晴れ舞台に駆けつけてくれている。
空も色々あったけどようやくこの時がきた。
この式場を選んだのは僕と愛莉が結婚式を挙げた場所だったから。
同じ場所で式を挙げたいと思っていたそうだ。

「冬夜さんもお疲れ様でした。あの子達も立派に育ってくれました」
「一番頑張ってたのは愛莉だよ。お疲れ様」
「そういうしけた話は無しにしようぜ!せっかくのめでたい日なんだから」」

誠がそう言って笑う。
それもそうだな。
僕の両親もあの日僕と同じ心境だったのだろうか?
今は数々の苦難を乗り越えた空達を祝福してあげよう。
そしてこれからも数々の困難を乗り越える空達にエールを送ろう。

「これからは1人じゃない。2人で歩いていくんだ」

言わなくてもきっとあの2人は分かっているはず。
今までも2人だったのだから……。

(2)

「え?」

僕は夢を見ているようだった。
綺麗なドレスに身を包んだ彼女を見て一瞬見間違えたみたいだ。
その事に気付いた彼女は悪戯っぽく笑う。

「空は私を誰だと思った?」
「え?」

いつもと髪形もメイクも衣裳も違うんだから無理もないだろ?
だけど彼女はそうは思わなかったみたいだ。

「やっぱり空は私よりも……」

彼女を不安にさせてしまったらしい。
キスはまずいと思ったから、彼女の唇に人差し指で触れる。

「僕の花嫁は紛れもなく君だよ。僕が自分で選んだのだから」

君だってそうじゃないのか?

「私はまだ夢を見ているようなきがしてならないんだ。空とこんな日を迎える事なんて想像してなかったから」

触れたら泡となって消えてしまうんじゃないか?
今でも彼女は不安なのだそうだ。

「僕の中にあるのは君だけだよ」
「……ありがとう」

彼女はそう言って少し頬を赤らめていた。
僕だって同じことを想っていた。
細くて華奢な彼女に触れるのが怖かった。
でもこれが現実なんだ。
その時彼女は何かを思い出したようだ。

「さっき手紙を受け取ったんだ。空と2人で読んでくれって」
「手紙?」

祝電とかそういうのじゃなくて、エアメールだった。
遠い異国の地に旅立ったあの人からだった。
封を切ると一枚の写真と文章が入ってあった。
元気そうに知らない男性と腕を組んで笑っている彼女。
もう彼女の中に僕はいないんだろうな。
僕の中にも彼女はいない。
あるのは一緒に過ごした思い出達。
思い出していると腕をつねられた。

「普通、花嫁の前で他の女性との思い出に耽る?」

そう言って彼女は笑っている。

「間もなくお時間です」

係員の人がそう告げる。
手紙は後で読もう。

「立てる?」

そう言って彼女に手を差し出す。
彼女は少し照れくさそうにその手を取る。

「私、幸せだよ」
「僕だって同じだよ」

春の光に照らされて僕達は歩き出す。
これまでにあった沢山の思い出達と共に。
これから語るのはそんな僕達の輝いた日々の物語。
いくつもの春を越えてきた青春の足跡。
舞台は小学生のころまで遡る。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元おっさんの幼馴染育成計画

みずがめ
恋愛
独身貴族のおっさんが逆行転生してしまった。結婚願望がなかったわけじゃない、むしろ強く思っていた。今度こそ人並みのささやかな夢を叶えるために彼女を作るのだ。 だけど結婚どころか彼女すらできたことのないような日陰ものの自分にそんなことができるのだろうか? 軟派なことをできる自信がない。ならば幼馴染の女の子を作ってそのままゴールインすればいい。という考えのもと始まる元おっさんの幼馴染育成計画。 ※この作品は小説家になろうにも掲載しています。 ※【挿絵あり】の話にはいただいたイラストを載せています。表紙はチャーコさんが依頼して、まるぶち銀河さんに描いていただきました。

27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?

藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。 結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの? もう、みんな、うるさい! 私は私。好きに生きさせてよね。 この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。 彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。 私の人生に彩りをくれる、その人。 その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。 ⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。 ⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。

イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。

楠ノ木雫
恋愛
 蒸発した母の借金を擦り付けられた主人公瑠奈は、お見合い代行のアルバイトを受けた。だが、そのお見合い相手、矢野湊に借金の事を見破られ3ヶ月間恋人役を務めるアルバイトを提案された。瑠奈はその報酬に飛びついたが……

思い出のチョコレートエッグ

ライヒェル
恋愛
失恋傷心旅行に出た花音は、思い出の地、オランダでの出会いをきっかけに、ワーキングホリデー制度を利用し、ドイツの首都、ベルリンに1年限定で住むことを決意する。 慣れない海外生活に戸惑い、異国ならではの苦労もするが、やがて、日々の生活がリズムに乗り始めたころ、とてつもなく魅力的な男性と出会う。 秘密の多い彼との恋愛、彼を取り巻く複雑な人間関係、初めて経験するセレブの世界。 主人公、花音の人生パズルが、紆余曲折を経て、ついに最後のピースがぴったりはまり完成するまでを追う、胸キュン&溺愛系ラブストーリーです。 * ドイツ在住の作者がお届けする、ヨーロッパを舞台にした、喜怒哀楽満載のラブストーリー。 * 外国での生活や、外国人との恋愛の様子をリアルに感じて、主人公の日々を間近に見ているような気分になれる内容となっています。 * 実在する場所と人物を一部モデルにした、リアリティ感の溢れる長編小説です。

好きだから傍に居たい

麻沙綺
恋愛
前作「ヒ・ミ・ツ~許嫁は兄の親友~(旧:遠回りして気付いた想い)」の続編です。 突如として沸いた結婚話から学校でのいざこざ等です。 まぁ、見てやってください。 ※なろうさんにもあげてあります。

訳あり冷徹社長はただの優男でした

あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた いや、待て 育児放棄にも程があるでしょう 音信不通の姉 泣き出す子供 父親は誰だよ 怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳) これはもう、人生詰んだと思った ********** この作品は他のサイトにも掲載しています

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました

専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。

処理中です...