姉妹チート:RE

和希

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PRELUDE

いくつもの春を越えて

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(1)

「お、トーヤ!」
「ああ、カンナ」

僕を見つけたカンナが声をかけてきた。
かつて渡辺班と呼ばれた、僕と同期の仲間。
僕の小学生の頃からの幼馴染。
今はやはり僕の友達の多田誠と結婚している。
今日は僕の息子、片桐空の結婚式に来ていた。
誠も一緒にいる。
僕の隣には僕の妻の愛莉が立っていた。

「空の様子はどうだった?」
「今頃お嫁さんの姿に見とれてるんじゃないですか?」

愛莉はそう言って笑っていた。

「しかし本当にあの二人が結婚するとは思わなかったぜ」

誠がそう言う。
僕も最初は驚いた。
誰も想像しなかったこと。
運命というのは何が起こるか分からない。
最後の最後まであきらめない者に女神という存在は微笑むのだろう。
僕のかつての友達は、子供を育てて、そして子供同士で集まってこの日まで共に歩んできた。
その子供たちが空の晴れ舞台に駆けつけてくれている。
空も色々あったけどようやくこの時がきた。
この式場を選んだのは僕と愛莉が結婚式を挙げた場所だったから。
同じ場所で式を挙げたいと思っていたそうだ。

「冬夜さんもお疲れ様でした。あの子達も立派に育ってくれました」
「一番頑張ってたのは愛莉だよ。お疲れ様」
「そういうしけた話は無しにしようぜ!せっかくのめでたい日なんだから」」

誠がそう言って笑う。
それもそうだな。
僕の両親もあの日僕と同じ心境だったのだろうか?
今は数々の苦難を乗り越えた空達を祝福してあげよう。
そしてこれからも数々の困難を乗り越える空達にエールを送ろう。

「これからは1人じゃない。2人で歩いていくんだ」

言わなくてもきっとあの2人は分かっているはず。
今までも2人だったのだから……。

(2)

「え?」

僕は夢を見ているようだった。
綺麗なドレスに身を包んだ彼女を見て一瞬見間違えたみたいだ。
その事に気付いた彼女は悪戯っぽく笑う。

「空は私を誰だと思った?」
「え?」

いつもと髪形もメイクも衣裳も違うんだから無理もないだろ?
だけど彼女はそうは思わなかったみたいだ。

「やっぱり空は私よりも……」

彼女を不安にさせてしまったらしい。
キスはまずいと思ったから、彼女の唇に人差し指で触れる。

「僕の花嫁は紛れもなく君だよ。僕が自分で選んだのだから」

君だってそうじゃないのか?

「私はまだ夢を見ているようなきがしてならないんだ。空とこんな日を迎える事なんて想像してなかったから」

触れたら泡となって消えてしまうんじゃないか?
今でも彼女は不安なのだそうだ。

「僕の中にあるのは君だけだよ」
「……ありがとう」

彼女はそう言って少し頬を赤らめていた。
僕だって同じことを想っていた。
細くて華奢な彼女に触れるのが怖かった。
でもこれが現実なんだ。
その時彼女は何かを思い出したようだ。

「さっき手紙を受け取ったんだ。空と2人で読んでくれって」
「手紙?」

祝電とかそういうのじゃなくて、エアメールだった。
遠い異国の地に旅立ったあの人からだった。
封を切ると一枚の写真と文章が入ってあった。
元気そうに知らない男性と腕を組んで笑っている彼女。
もう彼女の中に僕はいないんだろうな。
僕の中にも彼女はいない。
あるのは一緒に過ごした思い出達。
思い出していると腕をつねられた。

「普通、花嫁の前で他の女性との思い出に耽る?」

そう言って彼女は笑っている。

「間もなくお時間です」

係員の人がそう告げる。
手紙は後で読もう。

「立てる?」

そう言って彼女に手を差し出す。
彼女は少し照れくさそうにその手を取る。

「私、幸せだよ」
「僕だって同じだよ」

春の光に照らされて僕達は歩き出す。
これまでにあった沢山の思い出達と共に。
これから語るのはそんな僕達の輝いた日々の物語。
いくつもの春を越えてきた青春の足跡。
舞台は小学生のころまで遡る。
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