姉妹チート:RE

和希

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4thSEASON

全てを包む空

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(1)

「茜!お客さんがいらしてるのになんて恰好しているのですか!?早く部屋に戻りなさい」
「は~い」

我が家では見慣れた光景。
茜は家の中では本当に自由にやってる。
Tシャツの下には下着を穿いているだけ。
もう高校生だ、女性らしい体形になってきた。
けどそんな事を思っていると。

ぽかっ

久しぶりだな。

「冬夜さんは自分の娘をどういう目で見てるのですか!」

愛莉に怒られる。

「冬夜は羨ましいぜ。娘に恵まれてるよ」
「お前は自業自得だ誠!他人様の娘を変な目で見るんじゃない!」

誠もカンナに叱られている。
そもそもどうして誠がうちに来てるのか?
誠司達にも関係する事らしい。
それは多分誠が連れて来た男の人が関係しているのだろう。

「俺はいい機会だから是非試してみるべきだと思うんだけどな」

ただ、今から酷使して故障したら元も子もない。
誠1人では判断がつかないから僕に相談に来たらしい。
とりあえずは本人の意思確認だな。

「愛莉、冬吾を呼んできてくれないか?」
「わかりました」

愛莉が冬吾を連れてくる。
冬吾に説明を始めた。
トレセン。
日本のサッカーの強化・発展のためのプログラム。
優秀な選手の発掘・育成。
選手のレベルアップ。
平たく言えば将来有望な選手を見つけ出して強化を図る指導だ。
通常はトレセン研修会に呼ばれて選ばれるのだけどたまたま冬吾や誠司が出ていた公式試合を関係者がみていたらしい。
2人のプレイは常に目立つ。
そして招待された。
日本代表に近づくいい機会だ。
冬吾達が招待されているのはU-12ナショナルトレセンと呼ばれるもの。
僕と誠は冬吾達のさらなる成長を試みていた。
同年代の相手はもちろん年上を相手にしても余裕のプレイをみせる冬吾達に何かいい手はないか模索していた。
確かに好都合だ。
年末にある大会に出ようとも考えていたそうだが、今更8人制サッカーなんてしてシステムを崩したくない。
代表はU-15からだ。
当分冬吾達が呼ばれることはないだろう。
体格的にも故障する危険がある。
冬吾達のプレイを見ればそれが危険なことくらい分かってもらえるだろう。
だけど冬吾達の意思確認も必要だ。
だから冬吾を呼んで説明する。
冬吾はよく理解できてないみたいだったけど。

「要するに、日本中の凄い人とプレイできるって事?」
「そうだよ」

その程度の認識で問題ないだろう。

「行く!」

冬吾は即決した。

「冬吾、やるからには真面目にやるんだぞ。すぐ遊び感覚で楽しんでるのがお前の悪い癖だ」

逆を言えばプレッシャーを微塵も感じない強いメンタルを持っているということなんだけど冬吾を慢心させるわけにはいかない。
誠もその事を意識して冬吾に接している。

「はい!で、いつからやるの?」
「来月にあるそうだよ」
「わかった。楽しみだな~。誠司達も来るの?」

冬吾が聞いている。
地元から呼ばれたのは冬吾、誠司、隼人、伽夜の4人。
同じ県内から4人も呼ばれるなんて異例だ。

「じゃあ、もういいよ。ゆっくり休みなさい」

僕がそう言うと冬吾は部屋に戻っていった。

「あんなまだ子供がピッチに立つと変わるんですね」

スカウトに来た人が驚いていた。
普段はまだ小学3年生。あんなものだろう。
恐ろしいのはピッチの中でも普段と変わらないところなのだけど。
その後しばらく関係者と話をした。
トレーニングメニューの説明を受けていた。
チームプレイではなく個の強化が主らしい。
それが冬吾にプラスになるのか疑問だったけど。
話が終ると誠達は帰って行った。

「あの子はまだ8歳です。大丈夫なのでしょうか?」

愛莉は心配している。

「冬吾に限って心配することは無いよ。愛莉の子なんだから」
「冬夜さんの子でもあるんですよ」

きっと今頃その日が来るのが待ち遠しいんだろうな。
冬吾の代表への挑戦が始まろうとしていた。

(2)

相変わらず綺麗に片付いている部屋だ。
私のやる事なんて食事の世話くらい。
空はすぐに手間を省こうとレトルトとかで済ませようとする。
それが終ると私に勉強を教えてくれる。
空の説明は授業よりもわかりやすい。
私の癖を見抜いてるようだ。
要点をしっかり教えてくれる。
お昼ご飯や夕飯は私が作ってやる。
そして一泊する。

「おはよう、水奈。そろそろ起きないか?」

そう言って頭を撫でてくれる時間が幸せだった。
口では「やっぱり妹扱いしてるだろ?」と言って空を困らせているけど。
空なりに私の事を気づかってくれる。
服を着ると朝食を準備して食べて勉強を教わる。
昼近くになると出かける準備をする。
今日は別府で花火がある日だ。
空が連れて行ってくれるという。
花火は夜だけど車が混むから早めに会場に行っておこうという。
昼飯は別府のファミレスでいいだろう。
私は準備すると出来たと空に言う。

「じゃあ行こうか」

皆考えてることは同じで駐車場がどこも混んでる。
少なくとも近くの駐車場はもちろんスーパーなどの駐車場も満車だ。
少し離れたところにあるコインパーキングに止める。
空の車が普通の車で助かる。
車高の低い車はこういうパーキングには向かないから駐車する場所に困る。
ファミレスで昼食を食べた後フリマが開催されていたので見る事にする。
色々なものがあった。
しかも安い。
空は退屈そうだったけどたまには我儘もいいだろ?
私は空と買い物をしていることが楽しいんだ。

「早めに夕食にしようか?」

空が言うので夕食にする。
適当に空いてる店を探して食べた。
昼食が遅かったのでそんなにお腹が空いているわけでもなかったし、天音の様に大食いでもなかったから。
いまさら夕食に気を使うような仲でもなかったから本当に何でも良かった。
それでもそれなりに気を使ってくれたようだけど。
来月の花火はどっちにするか悩んだけどどうせ天音達はパーティでいないし社会人組に混ざることにした。
空だけ1人だってのも可愛そうな気がしたから。

「大学生活はどうだ?」

偶には空の話も聞かせてくれ。

「驚くくらい平和だよ」

本当に何もないらしい。
バイトも私の家庭教師をやってるくらいだし語ることが無いのだそうだ。
当然週末は私と過ごしている。

「私の事迷惑に思ってる?」

そんな不安を打ち明けていた。

「どうして彼女と一緒にいる事が迷惑になるの。毎日会えてうれしいよ」

空は私の不安を笑い飛ばした。
言っておくけど空は運転手だ。
当たり前だけど飲んでいない。
ただ、今はテスト前で大変らしい。
私の家庭教師も少し時間を減らして自分の勉強に時間を割いてる。
それならなおさらと空の家には通ってる。
空がテスト勉強してる間に身の回りの世話をしている。
それを口実にただ私が空に会いたいだけなんだけど。
テストが明けたら長期休暇だそうだ。
大学生は夏休みが長い。
2ヶ月近くあるんだそうだ。
とはいえ、私は学校がある
大人しくバイトをするらしい。

「浮気考えてないだろうな」
「そんなわけないだろ。水奈以上の女性なんていないよ」

わかってるけど、真顔でそんな事言われたら私でも照れるぞ。
夕食を食べて店を出ると人が混んでいた。
学はしっかりと私の手を繋いで誘導してくれる。
連休の時から恋人繋ぎをしてくれるようになった。
風呂で光太が空に吹き込んだのは知ってる。
それを律義に守っている空が嬉しかった。
会場についてしばらく待っていると花火があがりだす。
空を彩る無数の花火に人々は夢中になっていた。
もちろん私達も。
花火が終るとみんな一斉に帰り出す。
帰りも道路は渋滞を始める。
だけど全然苦にはならなかった。
その分一秒でも長く空といられるんだから。
明日は学校がある。
泊まるわけにはいかなかった。
家に着くと車を降りる。

「じゃあまた明日行くから」
「ああ、待ってる」

そう言って空は帰って行った。
家に帰ると風呂に入って部屋に戻る。
グループチャットでは皆盛り上がっている。
一学期も残すところあとわずかとなっていた。

(3)

「それじゃ、お疲れ様でした~」

知代がそう言ってジョッキを掲げる。
大人たちは盛り上がっている。
今日は知代と朝倉先生と浅井先生それに美砂と美穂とビアガーデンに来ていた。
ホテルの屋上にあるので花火が見える。

「花火を観ながらビールを飲む!やっぱり夏はこうじゃなくちゃね」

もちろん美砂と美穂と俺は飲んでない。
大っぴらに飲んだら知代たちが路頭に迷う。
そんな気遣いを無にするのが知代だけど。

「本当に晃也達は飲まなくていいの?今日は電車で来てるから問題ないでしょ」
「あるに決まってるだろ!」
「妙に真面目だな~晃也は」

知代は酒が入ると上機嫌になる。
酒が入ってなくても上機嫌だけど。
仕事のオンオフがしっかりできてると言えばいいのだろうか。
3人とも仕事の話は一切しなかった。
だけど本当は愚痴りたいこともあるんじゃないだろうか?
時間が来ると駅に向かう。
美穂と美砂はバスで家に帰るらしい。
浅井先生と朝倉先生は見送りが出来ない。
バスがそんなにある時間じゃない。
そして明日は平日だから仕事があるし学校もある。
家に泊めるわけにはいかなかった。

「気をつけて帰れよ」

2人はそう言ってバス停で見送る。
そして僕達も帰ると思っていた。
だけど家とは反対の方向、繁華街の方へ向かう。
3人は俺がいる事を忘れているんじゃないだろうか?
何のためらいもなくバーに入る。

「心配しなくてもソフトドリンクもあるから」

本当に教師であることを忘れているらしい。
大人の話を聞きながらジュースを飲んでいた。
そして店を出ると浅井先生達と別れる。
先生達はまだ店をハシゴするらしい。

「彼女がいる事忘れるなよ~」

生徒といる事を忘れている知代が言う。
それから二人で家に帰る。
知代は困った性格がある。
家に帰ると知代は更に甘えてくる。
特別な日を勝手に決めてねだってくる。

「知代は仕事に不満とかないの?」

何となく聞いてみた。

「あるよ」

あっさり答えた。

「あるから、こうして偶に羽を伸ばすの。嫌なことを忘れて酒を飲むの。そして一切忘れる。それが大人の楽しみ方」

お酒に頼らなくても家に帰れば晃也が忘れさせてくれる。
晃也もお酒を覚えたらそのうち分かる時が来る。

「だけど変なお店に通うようになったらさすがに私も怒るからね」

知代はそう言って笑う。
今年のお盆は知代の家に挨拶に行く予定にしてた。
まだ一度も顔を合わせたことがないから緊張する。

「そんなに固くならなくてもいいから」

ちゃんと両親には伝えてあると言う。
だけど一歩間違えたら知代の人生を狂わせかねない危険な爆弾を両親は受け入れてくれるのか?
そんな不安はある。

「人生悩んでもなってみないと分からない事だらけなんだよ」

だからそんな悩み捨ててしまえ。
深い闇に道を失くす夜。
眩しい朝陽の記憶を探し続ける。
時に運命は心を試す風になり、愛は全てを包む空になり明日を映している。
あの時の熱い鼓動を呼び覚ませばいい。
そうしたら凍えた夢がまた輝き始めるから。
時の重さを越えていけばいい。
凍えた夢にまた新しい息吹。
俺はベッドを出ると冷蔵庫から飲み物を取り出す。
そして一気に飲み干す。

「それでいいんだよ」

そういって背中からそっと抱きしめてくれる知代。
また一つ大人への階段を上った気がした。

(4)

「私のグループに入れ」

入学して間もない頃女子に囲まれそう脅された。
そのグループは桜丘では危険なグループ。
断れば姉さんに危害が及ぶと脅された。
そんなグループに入れば当然誰もが私を避けて通る。
私も他の誰も巻き込みたくなかったので接触を避けてた。
恐喝窃盗暴力、何でもありのグループ。
週末は朝まで外を徘徊して父さんに怒られる。

「何をやってたんだ!?」

父さんに聞かれるけど「何もしてない」と答えるしかなかった。
そして執拗に聞いてくる父さんにいら立ちを覚えて「父さんには関係ない!」と反抗して部屋に戻る。
父さんは部屋に入ろうとしていたけど母さんと姉さんが宥めたらしい。

「反抗期だからしかたないよ」

そうまでしてこのグループに居なければいけない理由は無かったけど姉さんを巻き込みたくないんで黙ってるより他無かった。
誰かがノックする。
姉さんらしい。
姉さんはアイスクリームを持ってきてくれた。
私はそれを受け取り食べる。

「伶菜なんか面倒事に巻き込まれてるんじゃない?」
「別に何でもないって」
「なんかあったら、いつでも相談に乗るから。たとえどんなことがあっても伶菜は私のたった一人の妹だから」

夜更かしは肌に悪いから偶には早く寝ときな。
そう言って姉さんは部屋を出た。
私は涙を流しながらアイスを食べていた。
グループの連中は奇抜な髪の色をして校則?なにそれ?な格好をしている。
一体いつの時代から来たんだと言いたい服装だ。
そんな中私は精一杯の抵抗で服装と髪形だけは自己流を貫いていた。
段々仲間という関係から師弟関係に変わっていく。
パシリに使わされたり同級生の仲間に頭を下げて挨拶されたり。
それは段々エスカレートしていって恐喝されたりしていた。
お金がないなら下着を売れ。
そんな事も言われていた。
出会い系サイトで誘ってやるから体売れとも言われた。
彼氏がいるのにそんな事出来ない。
そう拒否した時事は起こった。
私を人気のない所に連れてくると羽交い絞めにされて私刑が始まる。

「二度と子供を産めない体にしてやろうか!?」

耐えるしかない。
その一心で叫びたい気持ちを堪えていた。
でも心のどこかで願っていた。
誰か助けて。
その想いは通じたらしい。

「何やってんだお前ら」

誰かが叫んでいた。
そこで私の意識は途絶えた。
気が付くと私は病院のベッドの上に居た。
動くと痛む。
姉さんたちがいた。

「どうして黙っていたの!?」

姉さんに叱られた。

「ごめんなさい」

私はそういうしかなかった。
最初に私の異変に気が付いたのは彼氏の真壁乾也だった。
そして彼は友達を通じてSHのグループに調べてもらっていた。
今のグループに入っていたことはすぐにわかった。
だけど私への報復を考えたら迂闊に手を出せずにいた。
こうなる前に強引な手段を取るべきだったと姉は話す。
学校はグループのメンバーを全員停学処分にしたけど、グループは全員退学届を提出していた。
グループのリーダーはSHの手の届かない場所へ逃げ出した。
姉の勧めで私と乾也はSHに入った。
私は夏休みの間は病院のベッドで過ごすことになるらしい。
グループのメンバーも病院のベッドで年を越すことになるそうだ。
誰がやったのかは職員は追及しなかった。

「ちょっと天罰を食らったみたいだね」

姉さんはそう言って笑っていた。
夏休みの間乾也は毎日お見舞いに来てくれた。
もう夏休みは始まっていた。
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