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4thSEASON
君に響け何度でも
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(1)
「晃也起きろ!!朝だぞ」
知代は朝から機嫌が良いらしい。
珍しく朝食を作ってくれた。
いつもは休前日は遅くまで飲んでそして朝気分が悪そうにしてる。
そんな知代におかゆを用意してやるのが日課だった。
朝食を食べながら知代は言う。
「朝食食べ終わったら出かける準備してね。一泊するから」
は?
「いや、幸運ってあるんだね。飛び込みだから絶対無理だと思ったんだけど」
ごめん、話が全然見えないんだけど。
「知代、分かりやすく説明してくれないかな」
俺がそう言うと知代は得意気に話す。
別府のリゾートホテルの部屋が取れたから一泊するという話。
クリスマスだ、普通は予約で一杯なのに良い部屋が取れたらしい。
「夕食は食い放題だぞ!」
「昼間はどうするの?」
チェックインは大体3時前後から始まることが多い。
それまではどうするのか聞いてみた。
「ちょっと寒いけど湯布院観光とかどう?」
地元のデートスポットじゃそうなるよな。
「不満ならテーマパークでもいいけど」
生徒の前で燥ぐのは微妙じゃないかと考えたそうだ。
生徒の前で酔って醜態晒してるけど。
「湯布院でいいよ。でも大丈夫なの?」
他の生徒にバレたらまずいんじゃない?
「大丈夫だよ。あれだけ人がいればバレっこない」
まあ、知代が言うならそうなんだろう。
ああいう場所に大人の女性と行ってみたいとは思っていた。
知代とデートするのも滅多にないし。
相変わらず知代の運転は飛ばす。
山道なんて関係ないくらいに飛ばす。
これでゴールド免許って言うんだから不思議だ。
車は遊園地を越えて山を下っていく。
湯布院に着くと昼食を食べる。
爆弾焼きやらコロッケを食べる程度だけど。
あとはデザートに目がない。
ジェラートやらソフトクリームを食べてお菓子屋さんでお菓子を買って行く。
金鱗湖が見渡せるカフェで一服した後トリックアートを見に行く。
写真を撮った。
湯布院で楽しく過ごすとまた山を越えてリゾートホテルに着く。
部屋に荷物を置くとレジャー施設のある温泉に入る。
ここでは水着を着ての混浴になる。
色んな温泉を楽しむ。
夜が楽しみなんだそうだ。
また入るの!?
楽しんだ後はビュッフェで夕食。
和洋中何でもある。
知代はひたすら飲んでいたけど。
食べ終わると外を歩いて回る。
イルミネーションが綺麗だった。
部屋に戻るとまだ忙しい。
さっきの温泉に入る。
今度は服を着たままはいる。
水蒸気に光が当てられるレーザーショーが綺麗だった。
それを見終わると温泉に入って体を休める。
出口で待っていると知代がやってくる。
帰りにゲーセンでぬいぐるみを取ったりしていた。
知代くらいの世代になるとプリはとらないらしい。
さっきもそうだったけどスマホのアプリで済ませるんだそうだ
「さすがにプリ機でキャッキャしている歳でもないからね」
知代は麻雀をやらせるとべらぼうに強い。
たまに徹夜でやってくるほどだ。
もちろん仲間内で遊ぶだけ。
雀荘とかには行かない。
部屋に戻るとテレビを見てくつろぐ。
今日一日疲れていたのかすぐに寝た。
朝になると知代が起こしてくれる。
朝食を食べに行って荷物をまとめると少し寛いでそれからチェックアウトする。
「寄りたいところあるんだけどいいかな?」
知代が言う
「良いけど、どこ?」
「水族館」
大人になっても女性は水族館が好きらしい。
でもなんで今さら地元の水族館なんかに?
「独身最後の恋人と一度くらい行っておきたいじゃない」
今なんて言った?
「あれ?晃也は私と結婚してくれる気でいると思ったんだけど」
「まだ先の話だよ」
「そんなに待てないって言ったはずよ」
水族館を見て回って昼食を食べて家に帰る。
さすがに疲れたので少し休憩して買い物に行く。
知代は「外食でいい」と言ったけど腐っても調理科。
毎食外食ってのも間違ってる気がした。
家に帰ると知代は飲んでる。
手伝う気はないらしい。
まあ、俺は世話になってる身だからそのくらいはする。
散らかってる下着を洗濯機に入れるのは慣れた。
夕食を食べると知代が風呂に入ってる間に片づける。
その後風呂に入って二人でテレビを見る。
あと1週間くらいで今年が終る。
来年になれば俺も18になる。
結婚は出来る年齢になるけど知代を養う能力は無い。
その辺どう思っているのだろうか?
「この歳になるとね、不安も出てくるのよ。籍を入れてくれるだけでも嬉しい」
子供はまだ先の話。
晃也が社会人になるまで待つと言ってくれた。
握りしめた手にある夢。
運命のレールをこじ開ける。
今は湧き上がる感情に身を任せ、出せるのか分からない答えを求める。
暗闇を切り裂く稲妻のように高らかに愛を信じて貫き進もう。
たとえ世界から見放され寂寥の矢を射られても、胸に灯る情熱は消えない。
抱き締めたその胸にある希望。
俺達は生れ落ちる前から言葉に出来ない想いを旋律に描いていく。
何かに焦がれるたびに渦巻く明暗のデュエット。
君が望むなら天地が覆すほど叫ぼう。
この空曇らせようとしても君と紡ぐ明日が闇を穿つ。
喧噪に囚われた概念を剥ぎ取って軌跡より特別な君の笑顔を守りたい。
終わる事のない絶唱が嘆きで霞む未来を照らす。
君に響け何度でも。
(2)
「あ、お待たせ」
美穂の家で両親と話していると美穂が仕度を済ませて降りて来た。
荷物がやけに多い。
「じゃあ、今日は泊まっていくから」
聞いてないぞ。
「粗相をするんでないよ」
それでいいのか両親よ。
「まあ、もう将来のパートナーに決めてるみたいだし」
そんな理屈が通用するのがこの世界。
とりあえず美穂を車に乗せてレストランに行く。
街外れの山の上にあるレストラン。
夜景がとても綺麗な店。
相手が子供だからファミレスでもいいなんて思わない。
交際をすると決めた時から美穂を一人の女性として扱おうと決めていた。
もちろん学校にいる間は生徒と教師の関係だけど。
だけど俺の認識は甘かったようだ。
夕食を食べた後夜景スポットに連れて行く。
大在にある夜景スポット。
地元の若者なら一度は見に来る場所。
それを証明するように車がずらりと並んでいる。
「私の初めては車の中なわけ?」
美穂の頭にはそれしかないんだろうか?
まあ、年頃の子供ならそうなんだろうな。
「俺を路頭に迷わせたいのか?」
「瑛一は言ってくれたよ。私を一人の女性として見てくれるって。それともやっぱり子供扱いしてる?」
美穂も気にしているようだ。
好きな人をその気にさせられない自分はまだ子供じゃないんだろうかと。
話を聞いてやると夏休みの間に美穂の大半の友達は経験したらしい。
多分それが焦っている原因なんだろうな。
「……今夜家に泊っていくつもりなんだろ?」
「うん」
「わかったよ」
「ありがとう!」
美穂が助手席で喜んでいる。
まあそんな笑顔が見れるなら多少リスクを背負ってもいいか。
美穂を連れて家に帰る。
部屋はいつも片付けてある。
それが美穂に疑いを持たせたらしい。
「他に女作ってないでしょうね?」
生徒と教師の間で関係を持ったら背負うリスク。
これは2人の関係が拗れたときにその間柄を暴露される危険性だ。
たったそれだけで俺の人生は台無しになる。
そんな馬鹿な真似はしない。
俺も覚悟を決めるか。
美穂を背後から抱きしめる。
「美穂がいるのにそんな真似するわけないだろ?」
「うん……」
美穂の鼓動が激しい事くらい分かる。
「先に風呂に浴びたらいい」
「わかった」
荷物から着替えを取り出すと美穂は浴室に向かう。
テレビをつける。
毎年恒例のバラエティ番組を見る。
美穂が風呂から出てくると次に俺が入る。
「美穂は明日はどうするつもりなんだ?」
美穂と付き合い始めてタバコは辞めた。
最近の若い子の間ではタバコの臭いは不評らしいから。
「皆は集まって騒ぐらしいけど私は瑛一といる予定だよ」
鴨川美砂も浅井耕太と一緒に過ごすそうだ。
「友達と騒ぐのも大事だぞ」
そんな事が出来るのは学生の間だけなんだから。
社会に出るとそういう機会がめっきり減ってしまう。
お互いの仕事のスケジュールが合わなくて疎遠になってしまう。
転勤だってある。
「年明けにどうせ集まるだろうからその時は参加するつもり」
「そうか」
「でさ、瑛一はいつ私を瑛一の両親に紹介してくれるの?」
ああ、そんな事も考えないといけないんだな。
「今度考えておくよ」
驚くだろうな……。
翌朝起きると美穂が朝食を作ってくれた。
「今日はどこに行く?」
「どこにも行かない」
俺の家でのんびり過ごしたいらしい。
「じゃあ、少しでかけないとな」
「だからどこにも行かないって言ったじゃん」
「DVDとか食料とか必要だろ?」
「なるほどね」
その程度なら化粧する必要はないと思ったのだろう。
服だけ着替えて出かけるとDVDを借りて食料と飲み物を調達した。
あとはゆっくりと家で時間を潰す。
明日は仕事だ。
夜には美穂を送り届ける。
あ、そうだ。
「今年は安上がりなプレゼントだけどこれで我慢してくれ」
そう言ってスペアキーを渡す。
「……いつ来ても良いって事?」
「来る前に連絡くれ」
「うん!」
美穂を家に送り届けると一応両親に挨拶する。
そして家に帰る。
美穂から連絡が入る。
「大晦日に家に来てよ。親が一緒に飲みたいって」
「わかった」
「じゃあ、ありがとう。おやすみなさい」
「おやすみ」
高らかに信じた愛を貫き進むか。
君に何度でも響かせよう。
(3)
「美砂はジュースで我慢しとけ」
「は~い」
そう言って美砂は一糸纏わぬ姿で冷蔵庫に向かう。
そして飲み物を取ってくる。
教師が生徒を抱く。
どう考えても破滅のカウントダウンなんだがそれが許される世界らしい。
倫理的な問題というのは無い。
法律すら無視する恋の物語。
永遠に続く愛の歌を美砂から聞かせてもらっていた。
それを静かに受け入れながら夜を過ごす。
クリスマスの特番は終わってニュースの時間になっていた。
クリスマスの日は世界が争いを止める日という歌があったが、今この時も紛争は続いている。
神が生誕したこの日に命を落とす者がいる。
犯罪も無くならない。
経済大国と言われる国でも貧困の差は激しい。
この国でも今日を生きるのに精いっぱいの人間がいる。
栄養不足で困ってる赤ちゃんがいる裏側でクリスマスケーキが大量に廃棄されている。
人は皆何がしかの意味を持って生まれると言われている。
じゃあその子たちはどんな意味を持って生まれてきたのだろうか?
それを彷徨い求めて今もこうして血を通わせ生きている。
あるべくしてある意味を誰が知っているのだろう?
明るい話題と暗い話題が交錯するの光と闇の世界で物語は綴られる。
今俺の腕の中で眠っている少女は未来にどんな色を持っているのだろうか?
「どうしたの?急に黙って。何か考え事?」
「いや、テレビをぼーっと見ていただけだよ」
「女子高生がこんな格好で耕太に抱き着いているのにテレビに夢中になるの?」
「その言い方犯罪にしか聞こえないから止めてくれ」
「別に金貰ってるわけじゃないから平気だよ。愛はもらってるけどね」
「ちゃんと届いてるか」
「私からちゃんと返事しないとわからない?」
美砂はそう言って微笑む。
テレビも面白くなくなってきたな。
チャンネルを適当に弄る。
音楽特番をやっていた。
クリスマスソングが流れている。
羨ましいほどのラブソングか悲しい失恋の歌しかない。
何十年も続いている定番のクリスマスソングも流れている。
ピアノの音色が美しい曲もある。
皆どんな思いでクリスマスを過ごすのだろう?
「また自分の世界に入ってる!」
美砂が拗ねる。
「ごめん」
テレビを消した。
世界の事を気にしていても仕方ない。
今はこの目の前の少女の瞳が幸せに染まるように力を尽くすことにしよう。
「晃也起きろ!!朝だぞ」
知代は朝から機嫌が良いらしい。
珍しく朝食を作ってくれた。
いつもは休前日は遅くまで飲んでそして朝気分が悪そうにしてる。
そんな知代におかゆを用意してやるのが日課だった。
朝食を食べながら知代は言う。
「朝食食べ終わったら出かける準備してね。一泊するから」
は?
「いや、幸運ってあるんだね。飛び込みだから絶対無理だと思ったんだけど」
ごめん、話が全然見えないんだけど。
「知代、分かりやすく説明してくれないかな」
俺がそう言うと知代は得意気に話す。
別府のリゾートホテルの部屋が取れたから一泊するという話。
クリスマスだ、普通は予約で一杯なのに良い部屋が取れたらしい。
「夕食は食い放題だぞ!」
「昼間はどうするの?」
チェックインは大体3時前後から始まることが多い。
それまではどうするのか聞いてみた。
「ちょっと寒いけど湯布院観光とかどう?」
地元のデートスポットじゃそうなるよな。
「不満ならテーマパークでもいいけど」
生徒の前で燥ぐのは微妙じゃないかと考えたそうだ。
生徒の前で酔って醜態晒してるけど。
「湯布院でいいよ。でも大丈夫なの?」
他の生徒にバレたらまずいんじゃない?
「大丈夫だよ。あれだけ人がいればバレっこない」
まあ、知代が言うならそうなんだろう。
ああいう場所に大人の女性と行ってみたいとは思っていた。
知代とデートするのも滅多にないし。
相変わらず知代の運転は飛ばす。
山道なんて関係ないくらいに飛ばす。
これでゴールド免許って言うんだから不思議だ。
車は遊園地を越えて山を下っていく。
湯布院に着くと昼食を食べる。
爆弾焼きやらコロッケを食べる程度だけど。
あとはデザートに目がない。
ジェラートやらソフトクリームを食べてお菓子屋さんでお菓子を買って行く。
金鱗湖が見渡せるカフェで一服した後トリックアートを見に行く。
写真を撮った。
湯布院で楽しく過ごすとまた山を越えてリゾートホテルに着く。
部屋に荷物を置くとレジャー施設のある温泉に入る。
ここでは水着を着ての混浴になる。
色んな温泉を楽しむ。
夜が楽しみなんだそうだ。
また入るの!?
楽しんだ後はビュッフェで夕食。
和洋中何でもある。
知代はひたすら飲んでいたけど。
食べ終わると外を歩いて回る。
イルミネーションが綺麗だった。
部屋に戻るとまだ忙しい。
さっきの温泉に入る。
今度は服を着たままはいる。
水蒸気に光が当てられるレーザーショーが綺麗だった。
それを見終わると温泉に入って体を休める。
出口で待っていると知代がやってくる。
帰りにゲーセンでぬいぐるみを取ったりしていた。
知代くらいの世代になるとプリはとらないらしい。
さっきもそうだったけどスマホのアプリで済ませるんだそうだ
「さすがにプリ機でキャッキャしている歳でもないからね」
知代は麻雀をやらせるとべらぼうに強い。
たまに徹夜でやってくるほどだ。
もちろん仲間内で遊ぶだけ。
雀荘とかには行かない。
部屋に戻るとテレビを見てくつろぐ。
今日一日疲れていたのかすぐに寝た。
朝になると知代が起こしてくれる。
朝食を食べに行って荷物をまとめると少し寛いでそれからチェックアウトする。
「寄りたいところあるんだけどいいかな?」
知代が言う
「良いけど、どこ?」
「水族館」
大人になっても女性は水族館が好きらしい。
でもなんで今さら地元の水族館なんかに?
「独身最後の恋人と一度くらい行っておきたいじゃない」
今なんて言った?
「あれ?晃也は私と結婚してくれる気でいると思ったんだけど」
「まだ先の話だよ」
「そんなに待てないって言ったはずよ」
水族館を見て回って昼食を食べて家に帰る。
さすがに疲れたので少し休憩して買い物に行く。
知代は「外食でいい」と言ったけど腐っても調理科。
毎食外食ってのも間違ってる気がした。
家に帰ると知代は飲んでる。
手伝う気はないらしい。
まあ、俺は世話になってる身だからそのくらいはする。
散らかってる下着を洗濯機に入れるのは慣れた。
夕食を食べると知代が風呂に入ってる間に片づける。
その後風呂に入って二人でテレビを見る。
あと1週間くらいで今年が終る。
来年になれば俺も18になる。
結婚は出来る年齢になるけど知代を養う能力は無い。
その辺どう思っているのだろうか?
「この歳になるとね、不安も出てくるのよ。籍を入れてくれるだけでも嬉しい」
子供はまだ先の話。
晃也が社会人になるまで待つと言ってくれた。
握りしめた手にある夢。
運命のレールをこじ開ける。
今は湧き上がる感情に身を任せ、出せるのか分からない答えを求める。
暗闇を切り裂く稲妻のように高らかに愛を信じて貫き進もう。
たとえ世界から見放され寂寥の矢を射られても、胸に灯る情熱は消えない。
抱き締めたその胸にある希望。
俺達は生れ落ちる前から言葉に出来ない想いを旋律に描いていく。
何かに焦がれるたびに渦巻く明暗のデュエット。
君が望むなら天地が覆すほど叫ぼう。
この空曇らせようとしても君と紡ぐ明日が闇を穿つ。
喧噪に囚われた概念を剥ぎ取って軌跡より特別な君の笑顔を守りたい。
終わる事のない絶唱が嘆きで霞む未来を照らす。
君に響け何度でも。
(2)
「あ、お待たせ」
美穂の家で両親と話していると美穂が仕度を済ませて降りて来た。
荷物がやけに多い。
「じゃあ、今日は泊まっていくから」
聞いてないぞ。
「粗相をするんでないよ」
それでいいのか両親よ。
「まあ、もう将来のパートナーに決めてるみたいだし」
そんな理屈が通用するのがこの世界。
とりあえず美穂を車に乗せてレストランに行く。
街外れの山の上にあるレストラン。
夜景がとても綺麗な店。
相手が子供だからファミレスでもいいなんて思わない。
交際をすると決めた時から美穂を一人の女性として扱おうと決めていた。
もちろん学校にいる間は生徒と教師の関係だけど。
だけど俺の認識は甘かったようだ。
夕食を食べた後夜景スポットに連れて行く。
大在にある夜景スポット。
地元の若者なら一度は見に来る場所。
それを証明するように車がずらりと並んでいる。
「私の初めては車の中なわけ?」
美穂の頭にはそれしかないんだろうか?
まあ、年頃の子供ならそうなんだろうな。
「俺を路頭に迷わせたいのか?」
「瑛一は言ってくれたよ。私を一人の女性として見てくれるって。それともやっぱり子供扱いしてる?」
美穂も気にしているようだ。
好きな人をその気にさせられない自分はまだ子供じゃないんだろうかと。
話を聞いてやると夏休みの間に美穂の大半の友達は経験したらしい。
多分それが焦っている原因なんだろうな。
「……今夜家に泊っていくつもりなんだろ?」
「うん」
「わかったよ」
「ありがとう!」
美穂が助手席で喜んでいる。
まあそんな笑顔が見れるなら多少リスクを背負ってもいいか。
美穂を連れて家に帰る。
部屋はいつも片付けてある。
それが美穂に疑いを持たせたらしい。
「他に女作ってないでしょうね?」
生徒と教師の間で関係を持ったら背負うリスク。
これは2人の関係が拗れたときにその間柄を暴露される危険性だ。
たったそれだけで俺の人生は台無しになる。
そんな馬鹿な真似はしない。
俺も覚悟を決めるか。
美穂を背後から抱きしめる。
「美穂がいるのにそんな真似するわけないだろ?」
「うん……」
美穂の鼓動が激しい事くらい分かる。
「先に風呂に浴びたらいい」
「わかった」
荷物から着替えを取り出すと美穂は浴室に向かう。
テレビをつける。
毎年恒例のバラエティ番組を見る。
美穂が風呂から出てくると次に俺が入る。
「美穂は明日はどうするつもりなんだ?」
美穂と付き合い始めてタバコは辞めた。
最近の若い子の間ではタバコの臭いは不評らしいから。
「皆は集まって騒ぐらしいけど私は瑛一といる予定だよ」
鴨川美砂も浅井耕太と一緒に過ごすそうだ。
「友達と騒ぐのも大事だぞ」
そんな事が出来るのは学生の間だけなんだから。
社会に出るとそういう機会がめっきり減ってしまう。
お互いの仕事のスケジュールが合わなくて疎遠になってしまう。
転勤だってある。
「年明けにどうせ集まるだろうからその時は参加するつもり」
「そうか」
「でさ、瑛一はいつ私を瑛一の両親に紹介してくれるの?」
ああ、そんな事も考えないといけないんだな。
「今度考えておくよ」
驚くだろうな……。
翌朝起きると美穂が朝食を作ってくれた。
「今日はどこに行く?」
「どこにも行かない」
俺の家でのんびり過ごしたいらしい。
「じゃあ、少しでかけないとな」
「だからどこにも行かないって言ったじゃん」
「DVDとか食料とか必要だろ?」
「なるほどね」
その程度なら化粧する必要はないと思ったのだろう。
服だけ着替えて出かけるとDVDを借りて食料と飲み物を調達した。
あとはゆっくりと家で時間を潰す。
明日は仕事だ。
夜には美穂を送り届ける。
あ、そうだ。
「今年は安上がりなプレゼントだけどこれで我慢してくれ」
そう言ってスペアキーを渡す。
「……いつ来ても良いって事?」
「来る前に連絡くれ」
「うん!」
美穂を家に送り届けると一応両親に挨拶する。
そして家に帰る。
美穂から連絡が入る。
「大晦日に家に来てよ。親が一緒に飲みたいって」
「わかった」
「じゃあ、ありがとう。おやすみなさい」
「おやすみ」
高らかに信じた愛を貫き進むか。
君に何度でも響かせよう。
(3)
「美砂はジュースで我慢しとけ」
「は~い」
そう言って美砂は一糸纏わぬ姿で冷蔵庫に向かう。
そして飲み物を取ってくる。
教師が生徒を抱く。
どう考えても破滅のカウントダウンなんだがそれが許される世界らしい。
倫理的な問題というのは無い。
法律すら無視する恋の物語。
永遠に続く愛の歌を美砂から聞かせてもらっていた。
それを静かに受け入れながら夜を過ごす。
クリスマスの特番は終わってニュースの時間になっていた。
クリスマスの日は世界が争いを止める日という歌があったが、今この時も紛争は続いている。
神が生誕したこの日に命を落とす者がいる。
犯罪も無くならない。
経済大国と言われる国でも貧困の差は激しい。
この国でも今日を生きるのに精いっぱいの人間がいる。
栄養不足で困ってる赤ちゃんがいる裏側でクリスマスケーキが大量に廃棄されている。
人は皆何がしかの意味を持って生まれると言われている。
じゃあその子たちはどんな意味を持って生まれてきたのだろうか?
それを彷徨い求めて今もこうして血を通わせ生きている。
あるべくしてある意味を誰が知っているのだろう?
明るい話題と暗い話題が交錯するの光と闇の世界で物語は綴られる。
今俺の腕の中で眠っている少女は未来にどんな色を持っているのだろうか?
「どうしたの?急に黙って。何か考え事?」
「いや、テレビをぼーっと見ていただけだよ」
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「その言い方犯罪にしか聞こえないから止めてくれ」
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「ちゃんと届いてるか」
「私からちゃんと返事しないとわからない?」
美砂はそう言って微笑む。
テレビも面白くなくなってきたな。
チャンネルを適当に弄る。
音楽特番をやっていた。
クリスマスソングが流れている。
羨ましいほどのラブソングか悲しい失恋の歌しかない。
何十年も続いている定番のクリスマスソングも流れている。
ピアノの音色が美しい曲もある。
皆どんな思いでクリスマスを過ごすのだろう?
「また自分の世界に入ってる!」
美砂が拗ねる。
「ごめん」
テレビを消した。
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