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4thSEASON
曝け出す感情
しおりを挟む「凄く似合ってますよ。天音」
「ありがとう……」
今日は私の記念すべき日。
大地との結婚式。
私は真っ白のドレスを着て座っていた。
冬だというのに肩を露出させたドレス。
こういうドレスを着てると改めて自分の胸が貧相に見える。
うぬぬ……。
「冬夜さんに見てもらってもいい?」
愛莉が言うので私は頷いた。
愛莉が部屋にパパを呼ぶ。
パパは私に見とれていた。
「……なるほどね」
「どうされたのですか?」
愛莉がパパに聞いていた。
「いや、愛莉の父さんも愛莉のドレス姿を見た時こんな気持ちだったんだなぁって」
「どんな気持ちなんだ?」
私がパパに聞いた。
「そうだね、肩の荷が下りた感じかな。この日の為に今まで頑張ってきてよかったって思えるんだ」
私が産まれた時から、私が悪戯ばかりしてた時も、そして今日までパパはずっと見守って来てくれた。
その成果が今日出たんだという。
昔のゲームにあったそうだ。
神様に与えられた少女をいつか大人になるまでじっと育てるゲーム。
いざ花嫁として送り出すときに手放したくないと思うらしい。
それでもいつかは娘を送り出す時が来る。
「娘は誰にも渡さない」
パパはそうは思わなかったそうだ。
「いつか誰かに娘を任せる時が来る。その瞬間はとてもかけがえのない物」
愛莉のパパが言ったらしい。
だから娘は大切なんだ。
いつまでも愛おしいんだ。
パパはいつも私の味方でいてくれた。
私はパパの自慢の娘になれたらしい。
……ダメだ。
そんな事思ってたらこみあげてくるものがある。
我慢しろ!
今日はめでたい日なんだ。
その証拠にパパは泣かない。
ずっと笑顔を絶やさないでいてくれる。
今日まで何度も言ってきた事。
最後にもう一度だけ伝えたい。
「パパ、今日までありがとう。今の私があるのはパパと愛莉のお蔭です」
「……愛莉のしつけはちゃんと実ったみたいだね」
「冬夜さんが天音をずっと信じ続けてきた結果ですよ」
幸せってどんな気持ちなんだろう?
今ならその問いに答えられる気がする。
今が正にその時間なんだ。
私たちじっと静かに過ごしていると、愛莉がその時間の終わりを告げた。
「そろそろ大地君を呼んできますね」
「うん」
「冬夜さん私達は……」
「あ、ああ。それはいいんだけど……」
パパは何かあるみたいだ。
どうしたんだろう。
「どうされたのですか?」
「いや、愛莉との結婚式の時を思い出してね」
「それがどうかされたのですか……あっ」
愛莉もパパが何を考えていたのか分かったらしい。
「大地君はまだ学生です。それは無いですよ」
「何が無いの?」
2人で納得してても私にはさっぱりだ。
「母さんはね、結婚式の日には翼と空を身ごもっていたの……」
愛莉はそう言って笑っていた。
それで私もまさかと思ったのか。
「大地はそんなことしないよ」
したら大地の母さんが黙っていない。
「さ、行きましょう」
「そうだね」
そうして両親が出て行ってしばらくして誰かがノックしていた。
「天音、入ってもいいかな?」
大地の声だ。
「いいよ」
大地は部屋に入ってくると私に見とれていた。
「……綺麗だよ」
「ありがとう」
「おじさん達と話はした?」
「ああ、十分した。……それでさ」
「どうかしたの?」
「私のお腹に大地の赤ちゃんがいるんじゃないかって疑われたよ」
「ま、まさか」
「大丈夫だよ。いたって普通だ」
残念だったな。
「大地はあと3年学校があるけど、私は1年で専門学校卒業する。大地が望むなら」
心配するな。パパは「俺の娘に傷つけやがって!」なんて怒鳴り込んでくる親じゃない。
「せめて大学卒業するまで待って欲しいかな」
「わかってるよ。……ねえ大地」
「どうしたの?」
「私は今凄い幸せ。私を選んでくれてありがとう。あれからずっと大地は私を支えてくれて守ってくれた」
「……最後に僕を選んでくれたのは天音だよ」
そっか……。
「そろそろ時間ですけど」
式が始まるらしい。
「行こうか……」
大地が手を差し出す。
「はい」
大地の手を取ってチャペルに向かった。
神聖な式が厳かに行われ、そして披露宴の会場に向かう。
お色直しでいくつものドレスを着た。
美希が言ってた「疲れるよ」ってこういう事か。
披露宴の中で両親への挨拶というのがあった。
私は前もって準備していた手紙をとってマイクの前に立つ。
パパに初めて会わせた人。
とても優しくて、私の事を愛してくれる人。
パパの事だから何となく気づいてた?
パパにどこか似ているんだ。
背中もふとした仕草も。
きっとパパも気に入ってくれるはず。
私が産まれた日の写真には慣れない手つきで私を抱くパパの笑顔。
私がどんなに悪戯や悪さをしても私を庇ってくれたパパ。
パパの子に生まれてよかったって心の底から思ってる。
これからはパパの代わりに大地が私を守ってくれる。
私も少しは愛莉に似てきたかな。
今はそれが嬉しい。
パパも気に入ってくれたよね?大地の事。
適当に並べた上辺だけの手紙じゃない。
昨夜一生懸命に考えた私なりの両親への感謝の言葉。
「幸せになりなさい」
パパが最後に言ってくれた言葉、ずっと大事にする。
「冬夜さん?」
パパに何か異変があったみたいだ。
目頭をハンカチで押さえている。
「天音」
大地が私にハンカチをそっと渡してくれた。
私も気づいたら泣いていた。
そんなパパを見て嬉しくて泣いてしまった。
「パパ、ありがとう」
皆が祝福してくれた。
「天音ちゃん、もし大地が悪さしたらいつでもおばさんに言うのよ」
大地の母さんがそう言う。
「きっと大丈夫です」
私はそう返事した。
その後は2次会に行った。
祈や花たちも余興をしてくれた。
空と水奈もいた。
空のセンスはパパに似たんだろうな。
分かってるのか空。
次はお前が水奈を幸せにする番なんだぞ?
水奈を泣かせたら私が承知しないからな。
2次会が終ると私たちは先に帰る事にした。
夫婦になって初めての夜だから。
「お疲れ様」
大地が飲み物を用意してくれたけど私は断った。
「どうしたの?」
「今夜は取り乱したくないから」
初めての夜だから。
大地は察してくれたらしい。
「疲れてるんじゃないのかい?」
「ああ、疲れた。もう二度としたくない」
「そうか」
「……する必要もないんだけどな」
私がそう言うと大地は笑った。
「頑張るよ」
「お前誓いの言葉忘れたのか?」
死がふたりを分かつまで。
「分かってるよ」
「じゃあ、そろそろ寝ようぜ」
「そうだね」
新婚初夜は大地に優しく包まれて温かい感情の中で眠りについた。
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