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LASTSEASON
COLLAR
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(1)
「ほら、しっかり見届けろ。お前の自慢の娘の晴れの舞台だぞ」
「わ、わかってるよ」
「泣くな!」
父さんは私を見るなり泣いている。
父親とはそういう生き物らしい。
やっぱり父さんは私の父親なんだな。
「父さん、母さん。今までありがとう」
色々あったけどここまでこれたのは両親のお蔭だ。
私は頭を下げる。
「そうだな、早いところ孫の顔でも見せてくれ」
それが最高の親孝行だと母さんは言う。
「母さんに聞いてみたかったんだ」
「どうした?」
「母さんが父さんの下に嫁ぐ時ってどうだった?」
「そうだな、多分今の水奈の心境と同じだったと思うよ」
期待と不安が入り混じったよく分からない気分。
白と黒が織り成すモザイク。
最愛の人と一緒になれるから幸せになれるだろう。
だけど私は空に対して何をしてやれるかわからない。
何もしてやれないんじゃないかという不安。
「……私はこれからどうしたらいいんだろう」
「何もしなくていいよ」
母さんはそう言って笑った。
「ただ隣で笑顔でいてやればいいんだ。空の背中を支えてやればいい」
「母さんはそうしてきたの?」
「何度もこの馬鹿を許して来たよ」
馬鹿だけど、駄目な奴だけど、何度も同じミスを繰り返すけど、それでも母さんには父さんの替わりなんていなかった。
だから何度も衝突してひび割れをうになっても同じレールを転がっていく。
傷だらけでも良い。
その先が奈落でも共に落ちて行こう。
そう言う人が夫だと母さんは言う。
私に同じ事が出来るか不安だった。
「その不安を取り除くのは母さんじゃない。空だよ」
不安だらけの毎日を支え合って生きて、明日はきっとって前に進んでいけばいい。
それが出来るのが夫婦なんだ。
「じゃあ、母さん達はトーヤ達に挨拶してくる。空を入れてもいいよな?」
母さんが言うと私は頷いた。
そんな私を見てまだ泣いている父さんを引きずって外に出て行った。
空のやつきっと私を見て驚くだろうな。
私も今日初めて知った史上最高のサプライズ。
(2)
「お、トーヤ!」
「ああ、カンナ」
僕を見つけたカンナが声をかけてきた。
かつて渡辺班と呼ばれた、僕と同期の仲間。
僕の小学生の頃からの幼馴染。
今はやはり僕の友達の多田誠と結婚している。
今日は僕の息子、片桐空の結婚式に来ていた。
誠も一緒にいる。
僕の隣には僕の妻の愛莉が立っていた。
空の希望は6月19日……水奈の誕生日に挙式したいとの事。
僕が愛莉の誕生日に挙式したように。
場所も僕達が式を挙げた海辺の式場。
血筋ってあるんだな。
しかし6月は式場が混んでいる。
ダメもとで恵美さんに掛け合ってみた。
すると恵美さんは如月伊織さんに電話した。
「何がなんでも6月19日に海辺の式場を準備しなさい!私の親戚以上に重要な客がいるっていうなら今すぐ呼び出しなさい!」
そんなこんなで格安で式場を抑える事が出来た。
「空の様子はどうだった?」
「今頃、水奈の姿に見とれてるんじゃないですか?」
愛莉はそう言って笑っていた。
まさかそんなサプライズを考えていたとはね。
「しかし本当にあの二人が結婚するとは思わなかったぜ」
誠がそう言う。
僕も最初は驚いた。
誰も想像しなかったこと。
運命というのは何が起こるか分からない。
最後の最後まであきらめない者に女神という存在は微笑むのだろう。
僕のかつての友達は、子供を育てて、そして子供同士で集まってこの日まで共に歩んできた。
その子供たちが空の晴れ舞台に駆けつけてくれている。
空も色々あったけどようやくこの時がきた。
「冬夜さんもお疲れ様でした。あの子達も立派に育ってくれました」
「一番頑張ってたのは愛莉だよ。お疲れ様」
「そういうしけた話は無しにしようぜ!せっかくのめでたい日なんだから」」
「お前だってさっきまで泣いてたろうが!」
カンナがそう言って誠の頭を小突いている。
今は誠は笑っている。
それもそうだな。
僕の両親もあの日僕と同じ心境だったのだろうか?
今は数々の苦難を乗り越えた空達を祝福してあげよう。
そしてこれからも数々の困難を乗り越える空達にエールを送ろう。
「これからは1人じゃない。2人で歩いていくんだ」
言わなくてもきっとあの2人は分かっているはず。
今までも2人だったのだから……。
(3)
あれ?
ウェディングドレスを着た水奈を見て最初に思った感想だった。
「似合ってないかな?」
「いや、そんな事無いけど……どうしたの?」
花嫁がウェディングドレスを着ているのは凄く当たり前の事。
ただそのドレスに違和感があった。
似合ってはいるんだけど打ち合わせの時に決めたドレスと違う。
僕の思い違いだろうか。
「気づいた?」
水奈は笑顔で手紙を見せてくれた。
祝電とかそういうのじゃなくて、エアメールだった。
遠い異国の地にいる翼からだった。
封を切ると一枚の写真と文章が入ってあった。
元気そうに知らない男性と腕を組んで笑っている翼。
もう翼の中に僕はいないんだろうな。
僕の中にも翼はいない。
あるのは一緒に過ごした思い出達。
思い出していると腕をつねられた。
「普通、花嫁の前で他の女性との思い出に耽るのか?」
そう言って水奈は笑っている。
「手紙、私も読んでいないんだ。一緒に読んでって言われたらしいから」
「誰に?」
「空のお母さん」
このドレスを手配したのも母さん達の仕組んだ事らしい。
翼は美希の両親の芸能事務所に所属している。
だから翼とはいつでも連絡が取れる。
僕達の結婚を知らせると翼から申し出があったらしい。
「水奈のドレス私に作らせて」
翼はモデル業が何十年も続けられる職業じゃない事くらい分かっていた。
だから林田さんの下で修業してファッションデザイナーの道を目指していた。
翼は何でもこなす。
翼のセンスは間違いないと見込んだ林田さんは早々に翼のモデルの仕事を減らして翼のブランドを立ち上げようとしていたらしい。
水奈のドレスはそのブランドが起業して最初の仕事。
水奈のドレスは翼が手がけた物。
水奈も今日になって初めて知らされたらしい。
そんなサプライズを用意していたのか。
翼の手紙を読んでいる。
お久しぶりです。
まずは2人ともおめでとう。
ちゃんと上手くやっていけるようだね。
心から祝福しています。
私は今パリでファッションショーの準備で大忙しです。
厳しい道のりだけど自分で選んだ道だから最後までやり遂げるつもり。
だから空達もどんな困難も2人で乗り越えていってね。
今日まで2人で来れたんだからこれから先も大丈夫。
私が保証します。
私にも恋人が出来ました。
建築デザイナーのフランス人だけど空に似て女性の扱いが苦手みたい。
だから私の事はもう心配いらないよ。
空へ。
おめでとう。
私のプレゼントちゃんと受け取ってくれたみたいだね。
空がこれから心を通わせるべきなのは私じゃない。水奈だよ。
水奈を泣かせたりしたら私が承知しないからね。
パパの会社を2人で継ぐって夢は果たせなかったけど、空に任せて大丈夫だよね?
パパに愛莉がいたように空には水奈がいるんだから。
弱音を吐きたくなったら水奈にぶつけなさい。
水奈を頼りなさい。
1人で無理する事なんてないんだから。
その代わり水奈が迷っていたら一緒に悩んであげて。
何をするのも水奈と一緒にしなさい。
パパと愛莉を見て来たからその方法は分かるでしょ。
私も2人を応援してます。
頑張れ。
水奈へ。
私のお願いを叶えてくれてありがとう。
空に代わって私からも礼を言わせてください。
空はすぐに悩んだり立ち止まったりするけど、しっかり支えてあげて。
うじうじしてたら尻を叩いてあげて。
きっと水奈なら出来る。
頼りない旦那かもしれないけど、水奈も空を頼ってあげて。
2人で信じあい支え合う事が大事だよ。
空は私としか交信することができないからいつも不安そうにしていたけど、今はそんな事無い。
ちゃんと水奈の気持ちを汲み取ってるはず。
片桐家の男子は頼りないけどいざという時は空ほど心強い存在はないから。
2人で一緒ならどんな困難も笑って蹴飛ばしていけるはず。
2人の子供を楽しみにしてるね。
私も負けずに頑張ります。
私からは以上です。
これからの2人の未来に光が差しますように。
片桐翼
追伸、私からのプレゼントちゃんと受け取ってね。
「ねえ、空……」
「どうした?」
「私今凄く不安なんだ」
「どうして?」
「本当に空を幸せにすることができるのか?って」
本当は空はまだ翼の事を……。
驚いた。
翼の言った通りだ。
水奈の考えてることが手に取るようにわかる。
だからどうしてやればいいのかも答えが導かれている。
口はまずいよな。
僕の人差し指を軽く水奈の唇に触れる。
「僕の花嫁は紛れもなく水奈だよ。僕が選んだんだから」
水奈だって一緒だろ?
「私はまだ夢を見てるような気がしてならないんだ。空とこんな日を迎えるなんて思わなかったから」
触れたら泡になって消えちゃいそうで不安らしい。
「……僕の中にあるのは水奈だけだよ」
「……ありがとう」
水奈はそう言って少し頬を赤らめていた。
本当は僕だって同じことを考えていた。
細くて華奢な水奈に触れるのが怖かった。
でも今ここにあるのは紛れもない現実。
「間もなくお時間です」
係員の人が知らせてくれた。
「立てる?」
そう言って水奈に手を差し出す。
少し照れくさそうに僕の手を取る。
「私、今凄い幸せだよ」
「僕も同じだよ」
いくつもの春を越えて今がある。
悲しみの上にある今がある。
部屋を出ようとした時に水奈が僕を呼び止めた。
「どうしたの?」
「母さんが言ってた。私の心は期待と不安の入り交ざった、白と黒の織り成すモザイクだって」
「うん」
「でも私は今思った。そんなモノクロの世界に色を付けてくれるのは空だって」
水奈は言う。
それは僕と水奈が初めて出会った時だった。
水奈にとって初めての異性。
とても眩しく見えたそうだ。
それが恋だというのに時間がかかったけれども、水奈は初めて恋をした。
恋をして世界が変わった。
恋をして世界に色がついた。
きっと素晴らしい色なんだろう。
きっと空の様に澄み渡った青色なんだろう。
水奈はそう言う。
世界さえも変えてしまいそうな瞬間が今ここにある。
迷いながら悩みながら悔みながら決めればいい。
水奈がくれた言葉一つで戸惑いは消える。
僕の言葉で水奈の心に光が射す。
閉ざした心を開こう。
眩い陽射しの中水奈が微笑んでいる。
僕を変えてくれる存在は今目の前に。
ドアを開ける。
その向こうにある光へと両手を目指して。
吹き抜けるのは空の色と香る風。
Fin。
「ほら、しっかり見届けろ。お前の自慢の娘の晴れの舞台だぞ」
「わ、わかってるよ」
「泣くな!」
父さんは私を見るなり泣いている。
父親とはそういう生き物らしい。
やっぱり父さんは私の父親なんだな。
「父さん、母さん。今までありがとう」
色々あったけどここまでこれたのは両親のお蔭だ。
私は頭を下げる。
「そうだな、早いところ孫の顔でも見せてくれ」
それが最高の親孝行だと母さんは言う。
「母さんに聞いてみたかったんだ」
「どうした?」
「母さんが父さんの下に嫁ぐ時ってどうだった?」
「そうだな、多分今の水奈の心境と同じだったと思うよ」
期待と不安が入り混じったよく分からない気分。
白と黒が織り成すモザイク。
最愛の人と一緒になれるから幸せになれるだろう。
だけど私は空に対して何をしてやれるかわからない。
何もしてやれないんじゃないかという不安。
「……私はこれからどうしたらいいんだろう」
「何もしなくていいよ」
母さんはそう言って笑った。
「ただ隣で笑顔でいてやればいいんだ。空の背中を支えてやればいい」
「母さんはそうしてきたの?」
「何度もこの馬鹿を許して来たよ」
馬鹿だけど、駄目な奴だけど、何度も同じミスを繰り返すけど、それでも母さんには父さんの替わりなんていなかった。
だから何度も衝突してひび割れをうになっても同じレールを転がっていく。
傷だらけでも良い。
その先が奈落でも共に落ちて行こう。
そう言う人が夫だと母さんは言う。
私に同じ事が出来るか不安だった。
「その不安を取り除くのは母さんじゃない。空だよ」
不安だらけの毎日を支え合って生きて、明日はきっとって前に進んでいけばいい。
それが出来るのが夫婦なんだ。
「じゃあ、母さん達はトーヤ達に挨拶してくる。空を入れてもいいよな?」
母さんが言うと私は頷いた。
そんな私を見てまだ泣いている父さんを引きずって外に出て行った。
空のやつきっと私を見て驚くだろうな。
私も今日初めて知った史上最高のサプライズ。
(2)
「お、トーヤ!」
「ああ、カンナ」
僕を見つけたカンナが声をかけてきた。
かつて渡辺班と呼ばれた、僕と同期の仲間。
僕の小学生の頃からの幼馴染。
今はやはり僕の友達の多田誠と結婚している。
今日は僕の息子、片桐空の結婚式に来ていた。
誠も一緒にいる。
僕の隣には僕の妻の愛莉が立っていた。
空の希望は6月19日……水奈の誕生日に挙式したいとの事。
僕が愛莉の誕生日に挙式したように。
場所も僕達が式を挙げた海辺の式場。
血筋ってあるんだな。
しかし6月は式場が混んでいる。
ダメもとで恵美さんに掛け合ってみた。
すると恵美さんは如月伊織さんに電話した。
「何がなんでも6月19日に海辺の式場を準備しなさい!私の親戚以上に重要な客がいるっていうなら今すぐ呼び出しなさい!」
そんなこんなで格安で式場を抑える事が出来た。
「空の様子はどうだった?」
「今頃、水奈の姿に見とれてるんじゃないですか?」
愛莉はそう言って笑っていた。
まさかそんなサプライズを考えていたとはね。
「しかし本当にあの二人が結婚するとは思わなかったぜ」
誠がそう言う。
僕も最初は驚いた。
誰も想像しなかったこと。
運命というのは何が起こるか分からない。
最後の最後まであきらめない者に女神という存在は微笑むのだろう。
僕のかつての友達は、子供を育てて、そして子供同士で集まってこの日まで共に歩んできた。
その子供たちが空の晴れ舞台に駆けつけてくれている。
空も色々あったけどようやくこの時がきた。
「冬夜さんもお疲れ様でした。あの子達も立派に育ってくれました」
「一番頑張ってたのは愛莉だよ。お疲れ様」
「そういうしけた話は無しにしようぜ!せっかくのめでたい日なんだから」」
「お前だってさっきまで泣いてたろうが!」
カンナがそう言って誠の頭を小突いている。
今は誠は笑っている。
それもそうだな。
僕の両親もあの日僕と同じ心境だったのだろうか?
今は数々の苦難を乗り越えた空達を祝福してあげよう。
そしてこれからも数々の困難を乗り越える空達にエールを送ろう。
「これからは1人じゃない。2人で歩いていくんだ」
言わなくてもきっとあの2人は分かっているはず。
今までも2人だったのだから……。
(3)
あれ?
ウェディングドレスを着た水奈を見て最初に思った感想だった。
「似合ってないかな?」
「いや、そんな事無いけど……どうしたの?」
花嫁がウェディングドレスを着ているのは凄く当たり前の事。
ただそのドレスに違和感があった。
似合ってはいるんだけど打ち合わせの時に決めたドレスと違う。
僕の思い違いだろうか。
「気づいた?」
水奈は笑顔で手紙を見せてくれた。
祝電とかそういうのじゃなくて、エアメールだった。
遠い異国の地にいる翼からだった。
封を切ると一枚の写真と文章が入ってあった。
元気そうに知らない男性と腕を組んで笑っている翼。
もう翼の中に僕はいないんだろうな。
僕の中にも翼はいない。
あるのは一緒に過ごした思い出達。
思い出していると腕をつねられた。
「普通、花嫁の前で他の女性との思い出に耽るのか?」
そう言って水奈は笑っている。
「手紙、私も読んでいないんだ。一緒に読んでって言われたらしいから」
「誰に?」
「空のお母さん」
このドレスを手配したのも母さん達の仕組んだ事らしい。
翼は美希の両親の芸能事務所に所属している。
だから翼とはいつでも連絡が取れる。
僕達の結婚を知らせると翼から申し出があったらしい。
「水奈のドレス私に作らせて」
翼はモデル業が何十年も続けられる職業じゃない事くらい分かっていた。
だから林田さんの下で修業してファッションデザイナーの道を目指していた。
翼は何でもこなす。
翼のセンスは間違いないと見込んだ林田さんは早々に翼のモデルの仕事を減らして翼のブランドを立ち上げようとしていたらしい。
水奈のドレスはそのブランドが起業して最初の仕事。
水奈のドレスは翼が手がけた物。
水奈も今日になって初めて知らされたらしい。
そんなサプライズを用意していたのか。
翼の手紙を読んでいる。
お久しぶりです。
まずは2人ともおめでとう。
ちゃんと上手くやっていけるようだね。
心から祝福しています。
私は今パリでファッションショーの準備で大忙しです。
厳しい道のりだけど自分で選んだ道だから最後までやり遂げるつもり。
だから空達もどんな困難も2人で乗り越えていってね。
今日まで2人で来れたんだからこれから先も大丈夫。
私が保証します。
私にも恋人が出来ました。
建築デザイナーのフランス人だけど空に似て女性の扱いが苦手みたい。
だから私の事はもう心配いらないよ。
空へ。
おめでとう。
私のプレゼントちゃんと受け取ってくれたみたいだね。
空がこれから心を通わせるべきなのは私じゃない。水奈だよ。
水奈を泣かせたりしたら私が承知しないからね。
パパの会社を2人で継ぐって夢は果たせなかったけど、空に任せて大丈夫だよね?
パパに愛莉がいたように空には水奈がいるんだから。
弱音を吐きたくなったら水奈にぶつけなさい。
水奈を頼りなさい。
1人で無理する事なんてないんだから。
その代わり水奈が迷っていたら一緒に悩んであげて。
何をするのも水奈と一緒にしなさい。
パパと愛莉を見て来たからその方法は分かるでしょ。
私も2人を応援してます。
頑張れ。
水奈へ。
私のお願いを叶えてくれてありがとう。
空に代わって私からも礼を言わせてください。
空はすぐに悩んだり立ち止まったりするけど、しっかり支えてあげて。
うじうじしてたら尻を叩いてあげて。
きっと水奈なら出来る。
頼りない旦那かもしれないけど、水奈も空を頼ってあげて。
2人で信じあい支え合う事が大事だよ。
空は私としか交信することができないからいつも不安そうにしていたけど、今はそんな事無い。
ちゃんと水奈の気持ちを汲み取ってるはず。
片桐家の男子は頼りないけどいざという時は空ほど心強い存在はないから。
2人で一緒ならどんな困難も笑って蹴飛ばしていけるはず。
2人の子供を楽しみにしてるね。
私も負けずに頑張ります。
私からは以上です。
これからの2人の未来に光が差しますように。
片桐翼
追伸、私からのプレゼントちゃんと受け取ってね。
「ねえ、空……」
「どうした?」
「私今凄く不安なんだ」
「どうして?」
「本当に空を幸せにすることができるのか?って」
本当は空はまだ翼の事を……。
驚いた。
翼の言った通りだ。
水奈の考えてることが手に取るようにわかる。
だからどうしてやればいいのかも答えが導かれている。
口はまずいよな。
僕の人差し指を軽く水奈の唇に触れる。
「僕の花嫁は紛れもなく水奈だよ。僕が選んだんだから」
水奈だって一緒だろ?
「私はまだ夢を見てるような気がしてならないんだ。空とこんな日を迎えるなんて思わなかったから」
触れたら泡になって消えちゃいそうで不安らしい。
「……僕の中にあるのは水奈だけだよ」
「……ありがとう」
水奈はそう言って少し頬を赤らめていた。
本当は僕だって同じことを考えていた。
細くて華奢な水奈に触れるのが怖かった。
でも今ここにあるのは紛れもない現実。
「間もなくお時間です」
係員の人が知らせてくれた。
「立てる?」
そう言って水奈に手を差し出す。
少し照れくさそうに僕の手を取る。
「私、今凄い幸せだよ」
「僕も同じだよ」
いくつもの春を越えて今がある。
悲しみの上にある今がある。
部屋を出ようとした時に水奈が僕を呼び止めた。
「どうしたの?」
「母さんが言ってた。私の心は期待と不安の入り交ざった、白と黒の織り成すモザイクだって」
「うん」
「でも私は今思った。そんなモノクロの世界に色を付けてくれるのは空だって」
水奈は言う。
それは僕と水奈が初めて出会った時だった。
水奈にとって初めての異性。
とても眩しく見えたそうだ。
それが恋だというのに時間がかかったけれども、水奈は初めて恋をした。
恋をして世界が変わった。
恋をして世界に色がついた。
きっと素晴らしい色なんだろう。
きっと空の様に澄み渡った青色なんだろう。
水奈はそう言う。
世界さえも変えてしまいそうな瞬間が今ここにある。
迷いながら悩みながら悔みながら決めればいい。
水奈がくれた言葉一つで戸惑いは消える。
僕の言葉で水奈の心に光が射す。
閉ざした心を開こう。
眩い陽射しの中水奈が微笑んでいる。
僕を変えてくれる存在は今目の前に。
ドアを開ける。
その向こうにある光へと両手を目指して。
吹き抜けるのは空の色と香る風。
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