姉妹チート

和希

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(1)

「空!朝だぞ!!」

 天音がいつも通り勝手にドアを開けて部屋に入ってくる。
 まあ、天音はまだ4年生だ。そういうのが気にならないんだろう。
 と、思ったら抱きついてくる。お兄さんに甘えたいっていうやつなのか?

「空もちゃんと天音に注意しないとダメでしょ」

 気づいたら翼がいた。

「別に妹ならいいかなって」
「毎朝天音といちゃついてるって美希に言えるの?」
「やっぱりいい気分しないかな?」
「少しくらいは妬くんじゃないの?」

 同じ歳の翼が言うんだからそうなんだろう。
 着替えてダイニングに向かう。
 そして7人で朝食を食べる。
 僕達3人は食事の時間は静かに食べることに集中する。
 食べ終わると準備を始める。
 翼が2階の部屋から降りてくる頃、呼び鈴が鳴る。
 水奈だ。
 僕達は玄関に行くと靴を履いて外に出る。

「いってきま~す!」

 天音はそう言って今日も元気に登校する。
 いつも通りの朝だった。

「しかし昨日のあれは傑作だったな水奈!」
「だな!挙句の果てに校長の奴ヅラってバレてるしな!」

 2人は笑ってた。
 その傑作でまた母さんと水奈の母さんが呼ばれてた。
 校長は激怒してたらしい。
 2人とも怒られてる事より、その怒ってる本人がヅラだって事が面白かったらしく、説教中も笑っていて長引いたらしい。
 昨夜父さんは苦笑してた。

「よく思いついたな」

 そう言って軽く流してた。
 何をやったかって?
 やったことは至って簡単。
 来客用のスリッパの底にボンドを塗って並べて置いたらしい。
 それを校長がはいて歩こうとしたらつんのめってこけてヅラがとれた。
 まあ、誰がやったのかって真っ先に疑われるのが天音と水奈なんだけど、二人ともその場で爆笑していたのが決定打になったらしい。
 今日は何をしてやろうかな。
 そんな二人の相談を傍で聞きながら登校していた。
 昇降口で靴を脱いで靴箱から上履きを取り出す。
 その時二人が何か妙なリアクションをした。

「あれ?」
「なんだ?」

 翼も気づいたらしい。

「どうしたの?」

 翼が聞くと「別に」と返した。

「……そう」
 
 翼はそういうと僕の腕を引っ張って「じゃあね」と言って教室に向かった。

「あの二人なんか変じゃなかった?」

 翼に聞いてみた。

「空も気づいたんだ」

 翼は平静だった。

「なんだと思う?」
「空は本当に鈍いんだね」

 翼はそう言って笑った。

「朝の登校で靴箱で”あれ?”って答えはほとんど出てるじゃない」

 空だって一度経験したでしょ?と翼は言う。
 そういう事か。

「で、どうするの?」

 翼に聞いた。

「どうもしないよ」
「あの二人に恋人出来るかもしれないんだよ?」
「いいじゃん。あの2人だってそういう年頃でしょ?」
「そう言われたらそうだけど」
「空にも美希がいるんだから気にすることじゃないでしょ」
「そうだね」

 翼は僕を見て言った。

「空が美希を選んだ時に天音も同じ思いをしたはずだよ」
「……翼も」
「ま、少し寂しかったね」

 翼は笑顔だった。 
 それでいいんだろうか?
 それにあの二人に恋人……なんか実感わかない。
 そんな僕の気持ちを読み取った翼が言った。

「じゃあ、あとつけてみる?」
「出来るの?」
「天音たちも今日は6限まであるって言ってた。そしてこういう場合人目のつかない場所と言ったら大体予想着くでしょ?」
「……放課後の体育館裏?」
「だと思う」
「でもそういうことしていいのかな?盗み見してるみたいで気が引けるんだけど」
「じゃあ、気にしないで先に帰る?」
「……放課後まで考えさせて」
「わかった」

 そういうと翼は席について授業の準備を始める。
 翼は真面目だ。
 実際授業受けなくても教科書見ただけで大体理解してしまうのに生真面目にノートを取る。
 前に「どうして?」って聞いたら「私空に教えるの苦手だから出来る限り分かりやすいようにノート取っておこうと思って」と答えた。
 正直な話僕も自分である程度は理解できてるから大丈夫なんだけどな。
 でも今日は助かった。
 天音と水奈に恋人が出来る。
 その事が妙に気になった。
 そして複雑な思いだった。
 そんな事を考えてると……。

「兄なんだからもっとしっかりしなさい」

 翼の心の声が聞こえてくる。
 そして放課後になった。
 帰り支度を終えた翼がスマホを見せる。

「今日先に帰ってて」

 天音からのメッセージだ。

「どうする?」

 翼は僕の返事を予想していたかのように笑みをこぼす。

「……見に行く」

 僕は決断した。
 そして二人で体育館裏に行く。
 様子がおかしい。
 先に来てる人がいる。
 確か美希の弟の石原大地君だ。
 小学校4年生なのに気配を消すのが得意とか凄い特技がある。
 そして周りの気配を正確に察知する。
 大地君は僕達に気付くと人差し指を口に当て手招きする。
 小学生の告白の割には異様な光景。
 天音と水奈と二人の男子。
 それを取り囲む中学生。
 どういう事だろう?

(2)

「あれ?」
「なんだ?」

 私と水奈は同じリアクションをした。

「どうしたの?」

 翼が聞いてくる。

「別に」

 平静を装った。

「そう」

 翼はそういうと空を連れて教室に向かった。
 それを見届けると水奈に聞いた。

「水奈、お前もか?」
「てことは天音もだな?」

 差出人不明の手紙。

「放課後体育館裏で待ってます」

 その一言だけが書いてある手紙。
 教室に着くと私達の周りに人が集まる。

「これなんだと思う?」

 皆に聞いてみた。

「2人そろってラブレターか?」

 粋が言う。
 いくらなんでもそれはねーだろ。

「じゃあなんだと思うんだよ」

 遊が聞いた。

「古典的なネタだけど呼び出して袋にしようって魂胆か?」

 私達にうらみのある人間……たくさんいるし一々覚えてない。

「で、2人ともどうするの?」

 花となずなが聞いた。

「そんなの決まってるじゃん……返り討ちだよ!」

 水奈がそういう。

「それはさすがにヤバくないか?」

 粋が言う。
 多分「どんな奴が何人いるか?」じゃない。「手加減を知らない二人が乱闘はじめたら絶対骨折るとかする」という意味だ。

「それに、本当に偶然の告白だったらどうするの?」

 花が言う。
 それも考えておかないとな。

「誰か一人ついて来てもらうってのはどうだ?」

 水奈が言う。

「ヤバかったら助けを呼んでもらう。告白だったら写真撮ってばらまいてやろうぜ」

 水奈のアイデアに皆が乗った。
 確かに保険にはなる。
 さすがに大勢で来たら手に負えない。
 問題は誰がついてくるか。
 意外な奴が手を挙げた。

「ぼ、僕が行きます」

 石原大地だ。
 大地なら護身術習ってるし頭数に入るか。
 話は決まった。
 今日の暇つぶしも決まったし。放課後に備えて授業中寝てた。
 授業?
 睡眠学習てあるだろ?
 放課後体育館裏に行くと二人の男子と中学生の学ランをきた男が何人かいた。
 一つずつ整理していこう。

「お前誰?」

 私が言った。

「如月天だ!覚えて置け。まあ、忘れられないようにしてやるけどな!」
「小泉優だ!万倍にして借りを返してやる」
「……もう一人はどうした?」

 水奈が聞いていた。知り合いか?

「あいつはビビッて逃げやがったんだよ!」

 如月とか言う奴がそう言った。

「そいつは結構お利口さんなんだな?」

 水奈が戦闘態勢に入る。
 周りの中坊が構える。

「カツアゲで懲りたかと思えば中坊呼び出すとか情けなくて同情するぞ」

 水奈が言う。
 カツアゲ?……ああ、遠足の時にぼこぼこにしてやったやつか。

「おい、こいつら好きにしていいんだよな」
「割と可愛いじゃん。精々楽しませてもらおうぜ」

 呼び出された中坊も小者感半端ない。
 相手が年上なら骨の一本や二本折っても怒られないだろ?
 私も構える。
 だが、中坊が動き出したとほぼ同時に小さな人影が間に割り込んだ。
 同級生でも一際背丈の低い男子・石原大地だった。

「2人とも下がってて!」

 私達をちらっとみる隙を狙って金属バットを大地に向かって振り下ろす中坊A

「馬鹿!危ない!!」

 私が叫ぶけど、大地はにこりと笑って攻撃を紙一重で躱し、拳を中坊Aの鳩尾に目掛けて打ち上げる。
 中坊A終了。
 次に中坊B。
 殴りかかってきたけどそれを躱して腕を取り関節を決めて投げ飛ばす。
 正確に中坊Cにぶつけて二人始末
 次にすでに戦意をなくしつつある中坊Dにむかって飛び掛かりふわりと飛び跳ねると回し蹴りを中坊Dのこめかみに当てる。
 そんな感じで一人で暴れまわり中坊Fくらいまで倒すと残りの中坊は逃げ出した。
 如月と小泉は既に逃げ出していた。
 意識を失った中坊達を確認すると私達を見る。

「怪我無い?」

 私は大地を見つめていた。
 気持ちが乱れてる。
 なんだこの気持ち。
 もし空と”共鳴”する事が出来るなら聞いてみたい。

「なんだ!またお前たちの仕業か!?」

 教師たちが来た。ヤバい!!
 だが、大地が教師たちを見て言う。

「すいません、むしゃくしゃしてたんで僕がやりました」
「石原が!?つまらん嘘はよせ。お前ひとりで出来る事じゃないだろ!」

 それが本当なんだよ。
 信じられないけど。

「本当です。私達見てました」

 翼と空が出てきた。つけてたのか。

「職員室で詳しい話を聞く。お前らちょっと来い!」

 そうして私達は職員室で話をすることになった。

(3)

 気づいたら自分から名乗り出ていた。
 不安だったから。
 不吉な予感がしたから。
 そして放課後体育館裏に物陰に隠れていると翼と空が来た。
 2人に静かにしてるようにお願いして。成り行きを見ていた。
 予感は当たった。
 中学生を利用した復讐。
 いくら天音でも危険だ。
 まずい!
 そう思う前に両者の間に割り込んでいた。
 年上とは言え素人。
 新條さんから叩きこまれた戦闘術が役に立った。
 何人か叩きのめすとあとは自然と散っていった。
 倒れてる中学生を確認すると天音達を見て言った。

「怪我無い?」

 すると先生達が駆け付けた。
 先生達は天音達の犯行だと決めつけてた。
 だから名乗り出た。

「すいません、むしゃくしゃしてたんで僕がやりました」

 先生たちは信じてくれなかった。
 でも翼と空が証人になってくれた。
 僕達は職員室に呼ばれた。
 生まれて初めての経験。
 母さんを呼ばれた。
 中学生を叩きのめした。
 怒られるかな?と思った。
 でも母さんは褒めてくれた。

「あなたも望に似て立派な男になったのね!よくやったわ大地!」

 母さんは僕を抱きしめる。

「お母さんお気持ちは分かりますが立派な傷害事件ですよ」

 先生たちが言う。

「だから何?この子に非があるというなら徹底的に争ってやるわよ。その如月とかいうのも小泉とか言うのも……小泉?」

 母さんは思い当たる人物がいたらしい。
 先生たちを無視してスマホを操作する。

「美月!あなたの子供に優っていなかったっけ?あなたね、仕事もいいけど子供の躾くらいちゃんとしなさい!!」

 母さんは先生たちを無視して小泉さんを叱りつける。
 そういや年末のパーティであったっけ?
 うちの事務所のお笑い芸人コンビ「ますたーど」のボケ役小泉美月。
 電話は終わった。が、母さんはまだ思い当たる節があるらしい。

「伊織!あなた教師でありながら自分の息子の躾も出来ないなんてどうかしてるわよ!」

 如月伊織。如月天のお母さん。中学校教師。
 母さんは電話を終えると逆に教師たちを叱りつける。

「事の真相も確かめないで天音や水奈。それに大地を最初から悪いと決めつけるなんて無礼にもほどがあるわよ!」

 平謝りする先生達。
 母さんの怒りはとどまることを知らない。

「その気になったら教育委員会くらいどうとでもなるわよ!」

 母さんの言ってることは本当だ。
 なんせ「家族団欒の休日くらい考えてあげなさい!」と県知事とのゴルフをも父さんに断らせた猛者なのだから。
 母さんの気が済むと僕達は学校を出る。

「天音と水奈も気を付けて帰ってね。両親によろしく」

 母さんはそういうと車に乗り込もうとした。
 その時水奈が僕の腕を掴んだ。
 そして小さな声で言った。
 いつもの元気な声じゃなかった。

「どうしてこんな馬鹿な真似をした?私は助けを呼べと言ったはずだぞ?」

 水奈が言う。
 天音の顔を見た。
 凄く不安そうな顔をしていた。
 そんな顔をさせたくてこんな事をしたんじゃないのに。
 いつもの明るい天音に憧れてた。
 やってる事は無茶苦茶だけど元気で明るい女の子だった。

「大地。行くわよ」

 母さんが呼んでいる。
 いかなきゃ……。
 いや、ダメだ。ここで言ったらもう二度とこんなチャンスないかもしれない。
 父さんが言ってた。
 天音のお父さんから聞いたらしい。

「ラーメンはのびないうちに食え」

 僕に今一度勇気を!

「僕が戦闘術を学んだのはたった一つの目的の為」
「は?」

 水奈が言う。

「僕のたった一つの目的。大切な人を守るため」

 水奈は僕を見ていた。
 そして僕の視線の先に天音がいることに気付く。
 天音も気づいてた。

「僕の大切な人……それは片桐天音さんです」

 言ってしまった。後戻りはできない。

「ずっと見てきました。気づいたら恋に落ちていました」

 天音は黙って僕の言葉を聞いている。
 ずっと見てきたから分かる。天音が僕と同じように空の事を見ていたことくらい分かる。
 でもいいんだ。これで僕の初恋に整理がつく。
 だから言おう。

「天音さん。ずっと好きでした。付き合ってください」

 終わった。
 返事はいいよ。
 困らせてごめんね。
 最後に笑って欲しかった。
 その要望に応えてくれた。そして彼女の口から出た言葉。

「ごめん、今は自分の気持ちが分からないんだ。友達からって事でいいか?」

 え?

「スマホの連絡先くらい交換しようぜ」

 天音はそう言ってスマホを取り出す。
 僕もスマホを取り出した。

「よろしくな大地」

 天音は手を差し出す。
 その手を掴んで僕は天音に言う。

「こちらこそよろしく天音さん」
「さんなんてつけなくていい。天音でいいよ」
「わかった。じゃあまた明日。天音」
「ああ」

 僕が車に乗り込むと車は走り出す。
 そして母さんは無言で頭を撫でてくれた。

「これが終わりじゃないんだからね。ここからが始まりなのよ」

 母さんが言う。
 僕達の恋の物語が幕を開けた。

(4)

「天音!どうしたんだよ!あんなくそ真面目で面白くない奴お前にあわねーって!まだ粋とか遊とか選択肢あるだろ!」

 水奈が言う。
 私は何も言わなかった。
 自分の心に芽生えた気持ち。
 その正体を探るのに必死だった。
 大地の告白を受け入れたのは衝動的だった。
 多分理由を説明する自信はない。
 言ったところで納得してもらえないだろう。
 帰りが遅くなった。
 母さんたちに何があったのか聞かれた。
 翼が説明してくれた。
 翼と私は部屋に戻る。

「大地の事が気になる?」
「まあな。どうしてだろう?」
「……今空の事をどう思ってる?」
「え?」

 翼は笑顔だった。

「それが答えだよ。天音にもちゃんと相手がいたんだね」

 私にも先を越されたと悔しがっている翼。
 夕食の間は考えないことにした。
 食べ物に罪はない。
 我が家の家訓。
 だけど……
 
「ちょっと今日は愛莉に相談があるんだけど」
「私に?」

 愛莉が聞くと私はうなずいた。
 愛莉は少し考えてから言った。

「じゃあ、久しぶりに母さんとお風呂に入る?」

 娘と一緒にお風呂なんていつぶりだと愛莉は嬉しそうだ。

「じゃあ、翼と空さっさと入ってきなさい」

 一緒にお風呂に入る。
 その一言で察したんだろう。
 パパは何も口を挟まなかった。
 パパ達が入った後愛莉は一番最後に入る。
 そして言った。

「誰か好きな人が出来た?」

 愛莉は普通に話してた。
 この感情を恋というのだろうか?
 今までの私は単なる兄に甘えていただけ?
 美希に空を独り占めされるのが嫌なだっただけ?
 私は今日あったことを話した。
 大地に告白された事も。
 愛莉は黙って聞いていた。
 いつもの事だ。私達の言い分を最後まで聞いてくれる。

「そうね、いつ恋に落ちるか誰にも分からない。だからその時の自分の勘を信じて動くしかない」

 愛莉は言う。

「じっくり考えなさい。まだ時間はあるのだから」
「うん」

 それにしても石原君の息子さんか。さぞかし強いのでしょうね。
 愛莉は笑ってた。
 そうして一日が終る。

「翼。私は多分大地に恋をした」
「うん」
「きっと翼にもいい人が出来るよ」

 でも私はその先の世界を先に見てくる。

「だといいね」

 翼は言う。
 私達は眠りについた。
 新しい一日に夢を馳せていた。

(5)

 その晩美希と電話をしていた。

「へえ、大地が天音を好きだったなんて私も聞いてなかった」

 姉弟で交際って不思議だね。
 美希はそう言って笑っていた。
 今なら自信を持って言える。
 僕は美希が好きだ。
 それは変わらない。
 ただ、なんか寂しい。
 妹にが彼氏が出来るってそういう事なんだろうか?
 ひょっとしたら翼もいずれは誰かと恋をするんじゃないだろうか?
 
「翼だけずっと一人なんて可哀そうだよ」

 空には私がいるんだから翼も自由にさせてあげようよ。
 美希がそう言っていた。
 僕も時間が来ると寝た。
 翌日。
 いつも通り天音が飛びついてくる。

「空起きろ!朝だぞ!!」
「だから着替える時間くらいくれよ!」

 そして遅れて翼が来る。

「天音!どうしていつも空に迷惑かけるの?大地に言いつけるよ」
「いいじゃん兄妹のスキンシップだよ。翼が起きるのが遅いんだよ」
「天音は甘える相手を間違えてる」
「甘えてるよ。朝からおはようってメッセージきた」
「……天音一つ聞いて良いか?」
「どうした空?」
「恋に落ちるってどんな感じ?」
「分かんね」

 聞いた僕が悪いのか?

「そうだな、落雷が落ちたような衝撃だな」

 よく分からない。

「頭が真っ白だった。じっと大地に見とれてた」

 それなら分かる気がする。
 僕も美希の告白を受けたときそうだったから。
 そして朝食を食べて準備をして翼が遅れてくる。
 翼の準備が終る頃。水奈がやってくる。
 僕達は今日もいつもと変わらない朝を迎える。
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