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絵空
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(1)
皆電車の中で騒いでいた。
僕は携帯ゲームで遊んでいたけど、美希が構って欲しいらしいので携帯ゲームをしまって美希と話をしていた。
今日から修学旅行。
行き先は関西方面。
小倉まで特急に乗ってそれから新幹線で新大阪まで行く。
大半の人は特急も新幹線も初めてだった。
そして修学旅行という空気が皆のテンションをあげていた。
美希も浮かれている。
対面には光太と麗華がいた。
4人でトランプして遊んだりしていた。
小倉に近づくにつれて皆は盛り上がる。
初めての都市。
そして駅に着くと新幹線乗り場に行く。
初めて乗る新幹線。
小倉を出るとすぐに関門トンネルをくぐる。
トンネルを抜けると本州に着く。
トンネルと山の中を繰り返していく。
やがて皆飽きが来る。
新大阪に着くまで眠りについていた。
新大阪に着くと。皆驚いていた。
その光景に目を奪われる。
観光バスでホテルに着くと部屋に行く。
僕の部屋には善明、光太、学、沢木君達が一緒だった。
その後ロビーに皆集合して説明がされる。
最近の修学旅行はちょっと特殊だ。
まず奈良、大阪、京都ならどこへも自由に行動していいというのが初日。
そして、二日目はテーマパークで自由行動。
ただし、班で行動する事。
僕達の班は僕、善明、光太、学、翼、美希、麗華の7人だった。
どこへ行くかは事前に決めてあった。
女子の希望で京都に行くことにしてあった。
この時期だから渡月橋を観たいらしい。
あとは清水寺とか晴明神社とか。
自由行動が始まるとすぐに電車に乗る。
事前に調べてあった。
ICカードも事前にチャージしている。
渡月橋に行く。
紅葉がとても綺麗だった。
女子達がはしゃいでいる。
観光ショップなんかも行く。
光太は新選組の羽織を買っていた。
そんなもん何に使うんだ?
その後は神社参りをする。
女子はパワースポットなんかに興味があるらしい。
父さんが言ってた。
女子と行動するときは我慢が必要だと。
時間になると大阪のホテルに戻る。
ホテルで夕食を食べる。
ホテルの食事では満たされないからお土産屋でお菓子を買って食べた。
風呂で一日の疲れを過ごす。
沢木君達も京都に行ったそうだ。
金閣寺なんかに行ったらしい。
やはり女子のお目当てだったそうだ。
この物語では女子には逆らえない。
そういう掟があるらしい。
風呂を出ると、部屋で話す。
女子の部屋に行くなんて真似はしない。
互いの彼女について話をする。
沢木君達は部活でデートにも連れて行ってやれない。
だからこの旅行が良い思い出になる。
そう言っていた。
就寝時間になると眠りにつく。
修学旅行初日は無事に終わった。
(2)
「まずはこれから見なきゃ!」
僕と翼はこのテーマパークに来たことがある。
父さん達に連れられてだけど。
ちょっと内容が変わっていたけど、これだけはまた乗らないとって決めていたものがある。
光太たちは初めてらしい。
だから僕達が先導していた。
修学旅行二日目。
テーマパーク内での自由行動。
僕達は昼食も食べながら園内を周っていた。
昼間のパレードも見れた。
善明はやけに大人しかった。
「乗り物苦手?」
翼が善明に聞いていた。
「そういうわけではないんですが……」
「じゃあ、こういう雰囲気が苦手だったり?」
「昔受けた訓練のせいだと思うんですが、こういう人混みの中だとどうしても警戒してしまうんですよ」
どんな訓練を受けたんだろう?
集合時間まであと1時間というところで女子に付き合ってお土産選び。
色が、形が、あ、これも可愛い。
女子に付き合ってると1時間くらいでは買い物が終らない。
「空、どっちが良いと思う?」
美希が聞いてくる。
こういうとき2タイプある。
本当に悩んでる時と本当は決まってるんだけどなんとなくこっちも気になるって時。
本当に悩んでる時は直感で選ぶしかない。
本当はどっちでもいいんだけど彼の意見も聞いてみたいとき。
だから正解はない。
思った通りにちょっと考えて選んでやればいい。
絶対にどっちでもいいなんて言ったらいけない。
僕達の班にはそういうミスをおかすものなんていなかった。
「学、水奈へのお土産悩んでるんでしょ?一緒に選んであげる」
美希が学に言うと学は「すまんな」と言っていた。
学の買い物が終ると集合時間ぎりぎりになる。
何とか間に合った。
ホテルに帰って夕食を食べて風呂にはいる。
「無事に終わりましたね」
善明がいう。
「土産話も出来たし良かったよ」
学が言う。
「明日水族館行って帰るだけか。短かったな」
「そうだね」
僕は光太に答えた。
「もっと何かあると思ったんだけどな」
「問題は起こさないでほしいけどね」
光太が言うと善明が答える。
何が起こるわけでも無いらしい。
クラスの告白ラッシュは去年終えてる。
皆楽しい思い出を修学旅行で作ってるだろう。
そして明日の水族館でも楽しい思い出を作るんだろう。
しかし何かが起きてしまった。
最初は皆部屋でスマホを操作していたんだけどいつの間にか僕と学だけになってしまった。
皆外で恋人と最後の夜を楽しんでいるのだろうか?
誰かがノックする。
戻ってきたのだろうか?
学が応じる。
そして学が驚いていた。
突然の訪問者は美希だった。
僕と学は部屋に帰るように説得したが美希に聞いてもらえるはずはなく翼は部屋に入る。
「まだ消灯まで時間あるからいいじゃん」
翼はそう言った。
他の皆も外で話してるか美希たちの部屋にいるらしい。
なのに僕から全然誘ってくれない。
だから美希から来たらしい。
学は真面目だ。
だから妙な気を使う。
「俺水奈と電話してくるから」
そう言って部屋を出ていく学。
僕は美希と二人きりになった。
美希は何かをしてくるわけでも無くただ一緒にテレビを見ているだけだった。
「私だって馬鹿じゃないから弁えているよ」
そう言って美希は笑う。
「明日さ、水族館行くじゃない?」
「うん」
「水族館内は自由に動こうって皆で話してた」
「大丈夫なの?」
「どうせ人混みでごちゃごちゃになるからバレっこないって」
それに水族館デートってしたこと無いし。
美希はそう思ったらしい。
断る理由もない。
「集合10分前に皆出口で集合しようって。何かあったらスマホで連絡つくから」
「わかった」
就寝5分前に皆戻って来た。
美希も部屋に戻る。
「じゃ、また明日ね。おやすみ」
そう言って部屋を出て行った。
そしてその晩。皆で話をして夜を過ごす。
次の日寝不足確定だけど移動時間は寝てればいいから問題ないや。
皆水族館でも眠れるだろう。
そんな甘い考えが僕にも会った。
然し水族館デートというのはそんな甘いものじゃなかった。
(3)
次の日凄く眠かった。
それでもしっかり朝ごはんは食べた。
そして出発までの時間寝てた。
バスで移動してる間も寝てた。
水族館でも適当な場所見つけて寝てよう。
どうせ魚が泳いでるだけだ。
そんなの地元の水族館で十分だ。
だけど美希はそうは思っていないらしい。
始めてくる水族館に感激している。
そんな美希に「眠い」「退屈」なんて言えるはずがない。
美希に付き合って魚を見て回る。
この水族館ではイルカやアシカのショーはない。
ひたすら魚たちを見るだけ。
美希はひたすら写真を撮り続ける。
時間いっぱいまで楽しんで出口で皆と集合した。
男子達は疲れ果てていた。
そんな男子達の心を覗いたのだろう。
翼は悪戯をする。
「みんな楽しかったね!」
男子達はとりあえず笑っとけといった感じだった。
昼食を食べて新大阪駅に向かう。
最後の記念にとバスガイドさんと写真をとってもらう男子達。
僕はしなかったよ。
だって隣にいる美希がそれを許してもらえなかったから。
たかが写真で美希の機嫌を損ねたくない。
光太は連絡先を交換しようとして麗華の機嫌を損ねる。
新幹線の中でひたすら頭を下げたそうだ。
高校生ならいざ知らずまだ中学生の僕達の相手をしてもらえるはずがない。
馬鹿な事を、と思いながら新幹線では眠っていた。
喚問トンネルを抜ける頃美希に起こしてもらう。
そして特急で地元に帰る。
「お疲れ様」
美希がそう言った。
「美希もね」
「空は楽しかった?」
「うん、楽しかったよ」
「どこが?」
「やっぱりテーマパークかな」
「やっぱりそうなるか」
男子ならそうだよね。
翼はそう言って笑う。
「翼は違うの?」
僕が翼に聞いていた。
「私は京都かな」
「どうして?」
「あんなに綺麗だとは思わなかったから」
だから大切な想い出だと美希は言う。
なるほどね。
「京都にはまた行きたいね。京料理全然食べてないし」
「空にはきっと不満だよ。少しずつしか出てこないし」
味だって薄味で空には物足りないんじゃないの?
美希はそう言って笑う。
「今の僕にはきっと物足りないかもしれないけど大人になればきっと変わるよ」
「わかった。じゃあ、そうなったら行こうね。まだいけなかったところいっぱいあるし」
美希と約束した。
電車が地元駅に着いた。
バスで中学校に向かう。
父さん達が迎えに来ていた。
車で家に帰る。
そしてお土産を父さんと遠坂のお爺さんの家に渡す。
着替えるとお風呂に入ってすぐに寝る。
次の日の朝旅の土産話を父さん達に話していた。
父さん達の思い出も聞かせてもらえた。
「神戸牛はうまいぞ」
父さんが言ってた。
父さんはフェリーで関西旅行に母さんと行ったらしい。
僕もいつか車を買ったら美希と旅に行こう。
車種はどんなのがいいかな?
「五月蠅い車とか乗り心地の悪い車は私いやだからね」
美希がそう言った。
ちゃんと覚えておこう。
(3)
校門で学が待っていた。
学は私を見つけると手を振った。
「おつかれ」
手には何かを持っている。
「じゃ、私ら先に帰るからあとはゆっくり過ごせ」
天音がそう言って先に帰った。
それを見送ると学は行った。
「これ、お土産」
学は修学旅行のお土産を渡してくれた。
「ありがとう」
私は受け取る。
それから家に帰りながら学の土産話を聞いていた。
楽しかったらしい。
ただ、一つ悔やんだでいたことがある。
私と一緒にいれなかったこと。
他の皆は恋人と一緒に回ってる中、学は一人でいたらしい。
やっぱり同い年の恋人に憧れるのだろうか?
私じゃ不満?
学はそんな疑問の答えを用意していた。
「きっと高校でも同じ思いをするかもしれない」
「そうだな……」
「でもそれは水奈だって同じじゃないのか?」
「私は平気。スマホがあるから」
「それは俺も同じだ」
「そうか」
「俺はいつか高校を卒業する」
当然だろうな。
「そしたら旅行に行こうと思うんだ。皆と行くかもしれないけど」
それがどうかしたのか?
「その時は水奈も一緒に来てくれないか?」
そんな事を考えていたのか。
「私の時にも来てくれるって約束してもらえるなら」
「当然だ」
家に着くと「じゃ、またな」と言って部屋に入る。
寝る前にいつものようにチャットをして寝る。
行く道が違ってもゴールは一緒だ。
学はそういう。
終着点がずっと変わらないことを祈って。
いや、変わるだろう。
長い人生の通過点に過ぎないのだから。
それでも両親のように変わらない想いがあるのなら。
私はその想いに期待しよう。
学と同じ景色を見よう。
(4)
「泉!今日こそ風呂に入りなさい!」
母さんが言ってる。
「この本読んでからじゃダメ?」
「お風呂入ってから読みなさい。あなたもう1週間も風呂に入ってないのよ!」
別に風呂に入らなかったって死にはしないのに。
あんまり母さんの小言が長引いて本に没頭する時間を削られるのも得策じゃない。
大人しく母さんとお風呂に入る。
姉妹はみんなそれなりに身なりに気を配る。
私は平気で一日中幼稚園の制服でいる。
着替えるのが面倒だから。
私は機械が大好きだ。
色んな仕組みが施されてあって、色んな動きをする。
その仕組みが知りたくて設計図なんかを手に入れては見ている。
梓姉さんの自転車を分解したこともある。
母さんに怒られた。
でもちゃんと元通りに直した。
岬姉さんの車を分解しようとしたこともある。
岬姉さんは怒らなかった。
「16歳になったら免許取ってバイク買ってもらえ。そこからだな」
岬姉さんはそう言って笑った。
母さんに相談してみた。
「そうね。ただあまり音が五月蠅いのとかは許しませんからね」
態々うるさい音にしようと思わないからもんだいない。
私は別に特攻服を着てる人に憧れてバイクに乗りたいわけじゃない。
バイクそのものに興味があるだけだ。
風になりたいとかそういう感情は一切ない。
まだ幼稚園の遊具を分解する力はなかった。
幼稚園に工具を持ち込むことも禁止されていた。
工具は母さんが買ってくれた。
「子供の長所を伸ばすのが親の仕事でしょ」
母さんはそう言って父さんを説得してた。
父さんはそれを理解したのか色んな機械の設計図や家の設計図を持ってきてくれる。
「お願いだから家を分解するのはやめておくれ」
そんな力はない。
幼稚園児なのだから。
梁を一本持つことすらおぼつかないのに。
梓姉さんの自転車のメンテナンスをとりあえずしてる。
繭姉さんや祈姉さんのもメンテしている。
祈姉さんは結構扱いが雑だ。
繭姉さんのは電動自転車だったけど仕組みを理解するのにさほど時間はかからなかった。
機械となのつくものだったら何でも分解してみる。
それを理解すると元に戻す。
まだ子供だからと限界はあるけど
それでもとりあえず目の前にある物を分解してみないと気が済まない。
家の電話を分解して父さんに怒られた事がある。
家の電話が通じなくて取引先との連絡がおくれて取引先が傾きかけたそうだ。
「そんな雑魚の為に泉の時間を割く必要はない!」
母さんがそう言って弁護してくれた。
でもそれ以来電話を分解したりはしてない。
だって理解しちゃったから。
家の中の方が幼稚園にいるよりよほど楽しかった。
だって様々な興味の対象があるのだから。
たとえ幼稚園にあったとしてもそれをバラすことはできない。
工具が無いから。
幼稚園では絵本を読んでる。
「働く車」という絵本だ。
色んな作業車が載ってある。
肝心の仕組みは書いてないけど。
どうやって動くんだろう?
そんな事を考えていると話しかけられた。
「酒井さんは車好きなの?」
そう聞いてきたのは片桐冬莉ちゃん。
冬莉ちゃんも表には出さないけど色々な事に興味があるみたいだ。
「好きだよ」
走ることに興味はないけど、仕組みには興味がある。
機械なら何でも好きだ。
「そうなんだ。私も好きなんだよね。機械」
どうやら同じ趣味を持っているようだ。
それから意気投合した。
幼稚園にいる間はずっと話をしていた。
その事を家で話す。
「お友達が出来て良かったね」
母さんはそう言っていた。
私が家の外で始め作り出した世界。
私だけの社会を形成しようとしていた。
皆電車の中で騒いでいた。
僕は携帯ゲームで遊んでいたけど、美希が構って欲しいらしいので携帯ゲームをしまって美希と話をしていた。
今日から修学旅行。
行き先は関西方面。
小倉まで特急に乗ってそれから新幹線で新大阪まで行く。
大半の人は特急も新幹線も初めてだった。
そして修学旅行という空気が皆のテンションをあげていた。
美希も浮かれている。
対面には光太と麗華がいた。
4人でトランプして遊んだりしていた。
小倉に近づくにつれて皆は盛り上がる。
初めての都市。
そして駅に着くと新幹線乗り場に行く。
初めて乗る新幹線。
小倉を出るとすぐに関門トンネルをくぐる。
トンネルを抜けると本州に着く。
トンネルと山の中を繰り返していく。
やがて皆飽きが来る。
新大阪に着くまで眠りについていた。
新大阪に着くと。皆驚いていた。
その光景に目を奪われる。
観光バスでホテルに着くと部屋に行く。
僕の部屋には善明、光太、学、沢木君達が一緒だった。
その後ロビーに皆集合して説明がされる。
最近の修学旅行はちょっと特殊だ。
まず奈良、大阪、京都ならどこへも自由に行動していいというのが初日。
そして、二日目はテーマパークで自由行動。
ただし、班で行動する事。
僕達の班は僕、善明、光太、学、翼、美希、麗華の7人だった。
どこへ行くかは事前に決めてあった。
女子の希望で京都に行くことにしてあった。
この時期だから渡月橋を観たいらしい。
あとは清水寺とか晴明神社とか。
自由行動が始まるとすぐに電車に乗る。
事前に調べてあった。
ICカードも事前にチャージしている。
渡月橋に行く。
紅葉がとても綺麗だった。
女子達がはしゃいでいる。
観光ショップなんかも行く。
光太は新選組の羽織を買っていた。
そんなもん何に使うんだ?
その後は神社参りをする。
女子はパワースポットなんかに興味があるらしい。
父さんが言ってた。
女子と行動するときは我慢が必要だと。
時間になると大阪のホテルに戻る。
ホテルで夕食を食べる。
ホテルの食事では満たされないからお土産屋でお菓子を買って食べた。
風呂で一日の疲れを過ごす。
沢木君達も京都に行ったそうだ。
金閣寺なんかに行ったらしい。
やはり女子のお目当てだったそうだ。
この物語では女子には逆らえない。
そういう掟があるらしい。
風呂を出ると、部屋で話す。
女子の部屋に行くなんて真似はしない。
互いの彼女について話をする。
沢木君達は部活でデートにも連れて行ってやれない。
だからこの旅行が良い思い出になる。
そう言っていた。
就寝時間になると眠りにつく。
修学旅行初日は無事に終わった。
(2)
「まずはこれから見なきゃ!」
僕と翼はこのテーマパークに来たことがある。
父さん達に連れられてだけど。
ちょっと内容が変わっていたけど、これだけはまた乗らないとって決めていたものがある。
光太たちは初めてらしい。
だから僕達が先導していた。
修学旅行二日目。
テーマパーク内での自由行動。
僕達は昼食も食べながら園内を周っていた。
昼間のパレードも見れた。
善明はやけに大人しかった。
「乗り物苦手?」
翼が善明に聞いていた。
「そういうわけではないんですが……」
「じゃあ、こういう雰囲気が苦手だったり?」
「昔受けた訓練のせいだと思うんですが、こういう人混みの中だとどうしても警戒してしまうんですよ」
どんな訓練を受けたんだろう?
集合時間まであと1時間というところで女子に付き合ってお土産選び。
色が、形が、あ、これも可愛い。
女子に付き合ってると1時間くらいでは買い物が終らない。
「空、どっちが良いと思う?」
美希が聞いてくる。
こういうとき2タイプある。
本当に悩んでる時と本当は決まってるんだけどなんとなくこっちも気になるって時。
本当に悩んでる時は直感で選ぶしかない。
本当はどっちでもいいんだけど彼の意見も聞いてみたいとき。
だから正解はない。
思った通りにちょっと考えて選んでやればいい。
絶対にどっちでもいいなんて言ったらいけない。
僕達の班にはそういうミスをおかすものなんていなかった。
「学、水奈へのお土産悩んでるんでしょ?一緒に選んであげる」
美希が学に言うと学は「すまんな」と言っていた。
学の買い物が終ると集合時間ぎりぎりになる。
何とか間に合った。
ホテルに帰って夕食を食べて風呂にはいる。
「無事に終わりましたね」
善明がいう。
「土産話も出来たし良かったよ」
学が言う。
「明日水族館行って帰るだけか。短かったな」
「そうだね」
僕は光太に答えた。
「もっと何かあると思ったんだけどな」
「問題は起こさないでほしいけどね」
光太が言うと善明が答える。
何が起こるわけでも無いらしい。
クラスの告白ラッシュは去年終えてる。
皆楽しい思い出を修学旅行で作ってるだろう。
そして明日の水族館でも楽しい思い出を作るんだろう。
しかし何かが起きてしまった。
最初は皆部屋でスマホを操作していたんだけどいつの間にか僕と学だけになってしまった。
皆外で恋人と最後の夜を楽しんでいるのだろうか?
誰かがノックする。
戻ってきたのだろうか?
学が応じる。
そして学が驚いていた。
突然の訪問者は美希だった。
僕と学は部屋に帰るように説得したが美希に聞いてもらえるはずはなく翼は部屋に入る。
「まだ消灯まで時間あるからいいじゃん」
翼はそう言った。
他の皆も外で話してるか美希たちの部屋にいるらしい。
なのに僕から全然誘ってくれない。
だから美希から来たらしい。
学は真面目だ。
だから妙な気を使う。
「俺水奈と電話してくるから」
そう言って部屋を出ていく学。
僕は美希と二人きりになった。
美希は何かをしてくるわけでも無くただ一緒にテレビを見ているだけだった。
「私だって馬鹿じゃないから弁えているよ」
そう言って美希は笑う。
「明日さ、水族館行くじゃない?」
「うん」
「水族館内は自由に動こうって皆で話してた」
「大丈夫なの?」
「どうせ人混みでごちゃごちゃになるからバレっこないって」
それに水族館デートってしたこと無いし。
美希はそう思ったらしい。
断る理由もない。
「集合10分前に皆出口で集合しようって。何かあったらスマホで連絡つくから」
「わかった」
就寝5分前に皆戻って来た。
美希も部屋に戻る。
「じゃ、また明日ね。おやすみ」
そう言って部屋を出て行った。
そしてその晩。皆で話をして夜を過ごす。
次の日寝不足確定だけど移動時間は寝てればいいから問題ないや。
皆水族館でも眠れるだろう。
そんな甘い考えが僕にも会った。
然し水族館デートというのはそんな甘いものじゃなかった。
(3)
次の日凄く眠かった。
それでもしっかり朝ごはんは食べた。
そして出発までの時間寝てた。
バスで移動してる間も寝てた。
水族館でも適当な場所見つけて寝てよう。
どうせ魚が泳いでるだけだ。
そんなの地元の水族館で十分だ。
だけど美希はそうは思っていないらしい。
始めてくる水族館に感激している。
そんな美希に「眠い」「退屈」なんて言えるはずがない。
美希に付き合って魚を見て回る。
この水族館ではイルカやアシカのショーはない。
ひたすら魚たちを見るだけ。
美希はひたすら写真を撮り続ける。
時間いっぱいまで楽しんで出口で皆と集合した。
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そんな男子達の心を覗いたのだろう。
翼は悪戯をする。
「みんな楽しかったね!」
男子達はとりあえず笑っとけといった感じだった。
昼食を食べて新大阪駅に向かう。
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僕はしなかったよ。
だって隣にいる美希がそれを許してもらえなかったから。
たかが写真で美希の機嫌を損ねたくない。
光太は連絡先を交換しようとして麗華の機嫌を損ねる。
新幹線の中でひたすら頭を下げたそうだ。
高校生ならいざ知らずまだ中学生の僕達の相手をしてもらえるはずがない。
馬鹿な事を、と思いながら新幹線では眠っていた。
喚問トンネルを抜ける頃美希に起こしてもらう。
そして特急で地元に帰る。
「お疲れ様」
美希がそう言った。
「美希もね」
「空は楽しかった?」
「うん、楽しかったよ」
「どこが?」
「やっぱりテーマパークかな」
「やっぱりそうなるか」
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「翼は違うの?」
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「どうして?」
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だから大切な想い出だと美希は言う。
なるほどね。
「京都にはまた行きたいね。京料理全然食べてないし」
「空にはきっと不満だよ。少しずつしか出てこないし」
味だって薄味で空には物足りないんじゃないの?
美希はそう言って笑う。
「今の僕にはきっと物足りないかもしれないけど大人になればきっと変わるよ」
「わかった。じゃあ、そうなったら行こうね。まだいけなかったところいっぱいあるし」
美希と約束した。
電車が地元駅に着いた。
バスで中学校に向かう。
父さん達が迎えに来ていた。
車で家に帰る。
そしてお土産を父さんと遠坂のお爺さんの家に渡す。
着替えるとお風呂に入ってすぐに寝る。
次の日の朝旅の土産話を父さん達に話していた。
父さん達の思い出も聞かせてもらえた。
「神戸牛はうまいぞ」
父さんが言ってた。
父さんはフェリーで関西旅行に母さんと行ったらしい。
僕もいつか車を買ったら美希と旅に行こう。
車種はどんなのがいいかな?
「五月蠅い車とか乗り心地の悪い車は私いやだからね」
美希がそう言った。
ちゃんと覚えておこう。
(3)
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「ありがとう」
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「そうだな……」
「でもそれは水奈だって同じじゃないのか?」
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「それは俺も同じだ」
「そうか」
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当然だろうな。
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「当然だ」
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着替えるのが面倒だから。
私は機械が大好きだ。
色んな仕組みが施されてあって、色んな動きをする。
その仕組みが知りたくて設計図なんかを手に入れては見ている。
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母さんに怒られた。
でもちゃんと元通りに直した。
岬姉さんの車を分解しようとしたこともある。
岬姉さんは怒らなかった。
「16歳になったら免許取ってバイク買ってもらえ。そこからだな」
岬姉さんはそう言って笑った。
母さんに相談してみた。
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バイクそのものに興味があるだけだ。
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母さんはそう言って父さんを説得してた。
父さんはそれを理解したのか色んな機械の設計図や家の設計図を持ってきてくれる。
「お願いだから家を分解するのはやめておくれ」
そんな力はない。
幼稚園児なのだから。
梁を一本持つことすらおぼつかないのに。
梓姉さんの自転車のメンテナンスをとりあえずしてる。
繭姉さんや祈姉さんのもメンテしている。
祈姉さんは結構扱いが雑だ。
繭姉さんのは電動自転車だったけど仕組みを理解するのにさほど時間はかからなかった。
機械となのつくものだったら何でも分解してみる。
それを理解すると元に戻す。
まだ子供だからと限界はあるけど
それでもとりあえず目の前にある物を分解してみないと気が済まない。
家の電話を分解して父さんに怒られた事がある。
家の電話が通じなくて取引先との連絡がおくれて取引先が傾きかけたそうだ。
「そんな雑魚の為に泉の時間を割く必要はない!」
母さんがそう言って弁護してくれた。
でもそれ以来電話を分解したりはしてない。
だって理解しちゃったから。
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どうやって動くんだろう?
そんな事を考えていると話しかけられた。
「酒井さんは車好きなの?」
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冬莉ちゃんも表には出さないけど色々な事に興味があるみたいだ。
「好きだよ」
走ることに興味はないけど、仕組みには興味がある。
機械なら何でも好きだ。
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どうやら同じ趣味を持っているようだ。
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