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夢じゃない現実で
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(1)
制服に着替えて荷物を持って部屋を出る。
慌ただしく朝食をとって洗面所で仕度する。
している最中で呼び鈴が鳴る。
間違いなく水奈だ。
慌ててダイニングに置いてあった鞄を持って玄関に向かう。
「行ってきます」
そう言って私は家を出る。
バス停まで急ぐ。
バスはいつも定刻より4,5分遅れる。
それは良くもあり悪くもあった。
通学、通勤時間だから多少バスの便も多いけどやっぱり少ない。
一本乗り過ごせば大惨事だ。
そして10分もバスが遅れても学校の時間が変わることはない。
かといって駅まで自転車で行くのもめんどくさい。
行きは下り坂で楽だが帰りがきつい。
罠に嵌った気分だ。
始業時間は翼や空の学校と変わらない。
だけど始業時間にバスの時間を合わせてくれるほど甘くない。
通勤時間だから多いと言っても1時間に3本程度。
おまけに通勤ラッシュに巻き込まれるからその分も計算しないといけない。
早めに行って駅のコーヒーショップで時間を潰すという手も考えたが早く起きるのが面倒だ。
高校の入学式があって早1週間が過ぎようとしていた。
専門科目も当然だけど普通の科目も受けなければいけない。
宿題もしっかりある。
普通科の方が楽なんじゃないのか?
私と水奈は全く化粧をしていなかった。
春の時期に唇がかさつく事もないだろうとリップすらしなかった。
してる時間がない。
他の皆がしっかり化粧してくるのが不思議だった。
その謎はすぐ解けたけど。
「すいません、今日お腹が痛くて調子悪いんです」
女子生徒がそう言えばそれ以上遅刻の理由を追及する男性教師はいなかった。
雨の日も濡れるのを嫌って休む奴もいた。
理由は同じ。
私や水奈も雨の日に傘をさすのが面倒だから同じ理由で休もうとした。
「翼や空は臨時休校になるような台風が来ない限り、カッパを着て自転車で通学してるんですよ。甘えたことをいうんじゃありません!」
「今日お腹が痛いんだ」
「痛み止めを飲みなさい!」
水奈も同じことを言われたらしい。
駅前でバスを降りると時計を見る。
まだ間に合う。
だけどコンビニで漫画を立ち読みしてる時間はなさそうだ。
急ぎ足で学校に行く。
水奈とは学科が違うので昇降口で別れる。
教室に入ると異様な光景になる。
ここって女子高だっけ?と思うほどの女子の比率。
もちろん男子もいる。
私の高校には女子だけの学科もあるけど私が入った調理科は普通に男子もいる。
現に先輩は男子もそこそこいる。
そしてそこそこいる男子が新入生を狙っている。
だけどだいたいの女子が既に彼氏持ち。
無駄な努力をしてるな。
席に着くと渡辺紗理奈がやってきた。
「毎日大変だな」
紗理奈はそういって笑う。
紗理奈ははそんなに派手にはしないけど少しだけ化粧をしていた。
そんな時間よくあったなと聞いたら紗理奈は笑って答えた。
「父さんの勤務先が市役所だからバスに遅れたら連れて行ってもらえる」
それも間に合わない時は母さんが送ってくれるらしい。
反則だ。
そして授業が始まる。
昼休みを挟んで午後の授業も終えると水奈と昇降口で待ち合わせて学校を出ようとした。
「帰りはいつものファミレス寄ってく?」
「私はファストフードでもいいんだけどな」
ちなみに人気のファストフード店は駅にはない。
あるのはコーヒーショップとドーナツとハンバーガーもない事はないけど若干高い。
駅ビル4階の店はちょっと買い食い程度にするには高すぎる。
人気のファストフード店は駅から離れたところにある。
もちろんファミレスより安くつく。
たまには水奈に付き合うか。
歩くの面倒だけど。
靴を履き替えて下校しようとした時だった。
「片桐さん、ちょっとだけいいかな?」
入学式の時に知り合った大垣美穂がいた。
隣の席だったのですぐに打ち解けた。
家も近所だった。
同じ中学のはずなのにどうして今まで会わなかったのか不思議なくらいだ。
「水奈達もいるけどそれでもいい?」
私がそう聞くと美穂はうなずいた。
ちょうどファストフード店に行くところだしちょうどいいだろう。
美穂に言うと3人でファストフード店に言った。
美穂は話した。
「片桐さん達の噂は中学校の時に聞いてる。あ、悪い方の噂じゃないよ」
必ず恋が成就する不思議なグループ。
そんな噂も流れていたらしい。
そして私がそのグループの中心にいた。
ていうことはそっち系の相談か。
「好きな人でもできた?」
残念だが、同じクラスの男子なら全員彼女いるぞ。
「あ、違うクラスっていうか。あ、同じクラスといえばそうか……」
どっちだよ!
「誰を好きになったんだ?私達の知っている人か?」
どっちつかずの返答に水奈もいら立ちを覚えたようだ。
「先生を好きになった」
は?
「先生ってまさか朝倉?」
水奈が確認している。
朝倉瑛一。
私達の担任の教師。
確かに女子生徒には人気がある。
まだ未婚だという噂も聞いたことがある。
私はちょっと複雑な心境だった。
あ、私が朝倉のことを好きになったとかそんなんじゃない。
とりあえず美穂の話を聞く事にした。
「どうしてそうなったんだ?」
私が聞くと美穂は話し出した。
話は先週の金曜日の事だった。
(2)
「美穂、今日夜空いてる?」
友達に誘われた。
高校生なら良くあることだろう。
「空いてるよ」
「私の先輩がさ、どうしても合コンの人数あわせに来て欲しいって言ってるんだよね。一緒にきてくれないかな?」
「合コンって……」
私達まだ高校生だよ。
「私服で行ったらバレやしないからって言うからさ。その代わり絶対にお酒は飲まないから!って言ってるから」
2次会にも出席しない。
ちゃんと約束するから来て欲しい。
まあ、ちょっとは興味があった。
そんな年頃なのだからしょうがない。
2次会に行かないなら大丈夫だろう。
今日は金曜だし友達とちょっと遅くまで遊んでたと言えば通用すると思う。
うちの門限はどんなに遅くても23時。
21時を過ぎる場合には連絡を入れなさい。
23時を過ぎるとさすがに交通手段が無くなってしまう。
自転車で行ったらすぐに高校生ってバレてしまう。
「会費は友達が出してくれるからタダで食い放題だよ」
「わかった」
そして家に帰ると着替えて街の居酒屋に行く。
高校生ってわからないように少し化粧をして行った。
店の前で友達と待ち合わせすると店に入る。
「あ、いらっしゃい!君が美穂ちゃん?」
幹事の人が言うと私はうなずいた。
「助かったよ。楽しんで行ってね」
そう言って席に案内してもらった。
席に私と友達は同席にしてもらった。
そして席に着いた瞬間背筋が凍った。
目の前にいるのは朝倉瑛一。
私のクラスの担任。
内心ひやひやした。化粧してるからバレなかったのだろうか?
少し私達を見ていたけど朝倉は気づかなかったようだ。
しかし災難は続く。
「君、名前は?」
やっぱりバレてる!?
偽名を使うか悩んだ。
しかしさっきの幹事が余計な事をした。
「なんだよ、早速目をつけたのか?大垣美穂さん20歳。あ、こいつうちの大学のOBで朝倉瑛一って言うんだ。未だに彼女もいないらしくて招待したのよ。よろしくね」
「よろしく、美穂さん」
ウィッグくらいつけて来るべきだったか。
しかし本名バラされたらそんなの関係ないか。
「こいつ高校教師になりたてなんだ。しかもいきなり担任任されてさ。女子高生だらけで羨ましいぜ」
隣にいた男がべらべら喋る。
年は23歳。
高校の近くに住んでるらしい。
爽やかだけどどこか生真面目な部分がある。
そこがうちのクラスの女子に人気が高い部分なんだけど。
幹事の人が挨拶すると合コンは始まった。
皆が自己紹介する。
「大垣美穂、20歳です」
幹事が言った証言を貫くしかない。
「2人ともどこから来たの?」とか「彼氏いない歴何年?」とか私達2人は質問攻めにあっていた。
そしてまた試練がやってくる。
「2人ともソフトドリンクばっかりで全然飲んでないじゃん。どうしたの?」
「あ、私達飲めないんです」
友達が返事した。
「飲んだ事無いの?」
「そうです」
「だったらとりあえず一杯いっといたほうがいいよ。何事も経験ていうだろ?軽めの奴にするからさ。すいません、こっちウーロンハイ二つ」
まずい。
どうやって回避する?
私達の前にお酒が置かれる。
友達もさすがに躊躇っている。
さっきの幹事に助けを求めてるけど幹事は気分良くなっている。
私も友達の心配をしている場合じゃない。
どうにか回避しないと。
「ひょっとして車で来た?」
「いえ、そういうわけでは……」
「じゃあ、問題ないって!ぐいっといっちゃって」
少し飲んだだけでも倒れる人がいるという。
毒を飲むわけじゃないけどさすがにヤバいと思った。
だけど回避策がない。
友達と顔を見合わせる。
観念して飲もうとした時だった。
「美穂ちゃん飲まないなら俺もらうよ」
そう言って朝倉が私の目の前にあったジョッキを持つと飲んだ。
「お前が飲んだら意味ないだろ?」
「飲めない奴に無理強いするのはよくないだろ。そっちの子も飲めないなら俺もらうよ」
「そういうところが固いんだよお前は」
私達は朝倉に助けられた。
その後は何事もなく1次会が終了した。
そして私達は駅前に向かおうとした。
するとさっきの人達に絡まれる。
「帰るにはまだ早いよ。ちょっと遊んでいかない?」
「酒飲まなくてもカラオケとかなら出来るでしょ?」
「ごめんなさい。門限があるから」
私が言うと男たちは笑った。
「20歳にもなって門限なんて関係ないでしょ」
男はそう言って腕を掴んで引っ張る。
急いでいたので定期付きICカードを落としてしまう。
やばい。
しっかり高校の名前が書いてある。
「女子高生か。まあ、そんな気はしたんだよな」
「子供なら俺達が保護してやらないとな」
初めて男性に恐怖を覚えた。
私達どうなるんだろう?
「これで少しは懲りたか?悪ガキども」
朝倉は私達がちゃんと家に帰ったか気になってついてきたらしい。
「お前らも、早くしないと皆二次会の場所に移動してるぞ」
「ちっ……行こうぜ」
そう言って元の場所に戻る二人を見送ると朝倉は私達に付き添ってバス停まであるいた。
その間きっちり叱られた。
バス停に着くと朝倉も帰るらしい。
今から店に行っても誰もいないだろうから。
朝倉は酔い覚ましに歩いて帰るらしい。
「寄り道せずにまっすぐ帰れよ」
朝倉はそう言って去っていった。
その時笑顔を見て私は胸が締め付けられる思いをした。
その正体が恋だと知ったのは家に帰りついた後だった。
(3)
「なるほどな」
私はそう言った。
美穂が朝倉を好きになった理由は分かった。
次はこの後どうするかだ。
「で、美穂はどうしたいんだ?」
私は美穂に聞いていた。
「そりゃ出来れば交際したいけど……」
そんなの無理だよね。と美穂は泣き出す。
「泣くほど好きなんだろ。同じ泣くならすっきりしてから泣け!」
水奈も美穂もきょとんとしていた。
私は食べていたポテトを全部食べると席を立つ。
「今から学校に戻るぞ」
「学校に戻るぞってまさかお前……」
水奈が言うと私はうなずく。
「教師はまだ残ってるはずだ。今から特攻するぞ」
「そんなの無理だって」
美穂が抵抗する。
「ずっとモヤモヤを抱えて生きていくつもりか?すっきりさせた方が楽になれる。それに美穂は私達を縁結びと信じたんだろ?」
だったら私を信じろ!
美穂も決意したようだ。
私達3人は学校に戻り職員室に行く。
職員室には思った通り朝倉が残っていた。
「片桐に多田、それに大垣まで……こんな時間にどうした?」
朝倉が私達を見て言った。
美穂はこの期に及んでまだ言い出せないでいる。
背中を押すなんて生易しいものじゃだめだ。
谷底に突き落としてやる!
「美穂が先生にどうしても伝えたい事があるそうです」
私がそう言うと「大垣が?」と美穂を見る朝倉。
美穂は決意して言った。
「女子高生と高校教師は付き合ったらダメなんですか?」
美穂が言うと朝倉は驚いたようだ。
「どういう意味だ?」
朝倉が美穂に聞いた。
「私先生の事が好きです。一目惚れしました。付き合ってください!」
美穂が叫ぶと職員室にいた職員が皆こっちを見ていた。
朝倉はしばらく考えていた。
「悪い。その話は無理だ」
まあ、そうなるだろうな。
ここは私立高校。
下手すれば職を失う。
美穂をみると今にも泣きそうだ。
私が美穂の肩を叩くと美穂は肩を落として家に帰って行く。
「片桐達と大垣は家が近かったな。ちゃんと家に送ってやってくれ」
朝倉が言う。
私達は黙って職員室を出た。
職員室を出ると美穂は私にしがみ付いて号泣する。
しばらくそのまま泣かせてやった。
落ち着いたのか泣き止むと3人で下校する。
「ありがとう、天音のおかげですっきりした」
バスの中でそう言った。
私のやったことは正しかったのだろう。
美穂を家の前まで送ると私も家に帰った。
しかしその晩、メッセージを見て私は驚いていた。
同じ部屋の茜もスマホを見て驚いている。
私と茜はグルチャにメッセージを送った。
「おめでとう」
(4)
不思議とスッキリしていた。
諦めがついた。
やっぱりダメもとでも言ってよかったんだ。
ただ、しばらく恋愛をする気にはなれなかった。
食欲もあまりなかった。
今日あった事だ。
引きずっていてもしょうがないだろう。
風呂に入って部屋でテレビでも見て寝ようと思った
寝たらきっと次の日の朝にはすっきりしてる。
そう思った。
2階に上がろうとしたときインターホンが鳴る。
時間は21時を回っていた。
こんな時間に誰だろう?
母さんが出たみたいだ。
誰が予想しただろう?
扉の向こうに立っていたのは私のクラスの担任の朝倉先生だった。
「夜分遅くに大変申し訳ありません。どうしても今日中に片づけておきたい用件がありまして」
「用件ですか……。まあ、立ち話もあれですから上がってください。美穂、先生が来てるわよ」
「はい」
母さんに呼ばれて私はリビングに行く。
リビングには両親と私と朝倉先生。
朝倉先生は淡々と話し始めた。
「今日私は美穂さんから告白されました。ですが教師という立場で生徒と遊ぶなんて真似できません」
それをわざわざ言いに来たのか?
さっさと忘れてしまいたいのに。
胸が再び痛む。
だが、朝倉先生の話はまだ続いた。
「……ですから、交際するのであればはっきりした関係を築きたい。単刀直入にお願いします。娘さんと結婚させてください」
朝倉先生はそう言って頭を深く下げる。
当然両親は激怒する。
「娘を誑かしてなんて言い分だ。この子はまだ16だぞ!結婚なんてできるか!この件は明日学校に抗議する」
父さんは立ち上がってそう朝倉先生に怒鳴りつける。
朝倉先生は散々罵倒されながらもひたすら頭を下げ続けて耐えていた。
そんな朝倉先生を見ていられなかった。
私も朝倉先生と一緒に頭を下げる。
これが最後のチャンスだ。
絶対に離さない。
私も一緒に2時間ほど頭を下げ続けた。
そしてようやく父さんが折れた。
条件を付けられた。
高校は絶対に卒業させる事。
卒業するまで結婚は認めない。
まあ、卒業しないと18歳にならないのだから当たり前だろう。
そして結婚するまでは妊娠は認めない。
最後に父さんは朝倉先生を近所の公園に呼び出した。
「腹を殴られたよ」
あとで朝倉先生が教えてくれた。
朝倉先生は笑っていた。
2人が家に戻ると先生は自分の車で家に帰る。
「あ、そうだ。連絡先交換しておかないとね」
朝倉先生と連絡先を交換した。
朝倉先生は帰って行った。
その事をSHに報告する。
みんな「おめでとう」と祝ってくれた。
週末白いセダンで迎えに来た。
どうしても一緒に行きたい場所があるという。
それは山の中にある遊園地の観覧車だった。
そして観覧車の中で私はプレゼントを受ける。
私にはまだ高い指輪だった。
そこで改めてプロポーズを受ける。
「よろしくお願いします」
「こちらこそ」
夕食を食べて家に帰った。
妊娠は認めない。
だから先生は絶対に要求してこなかった。
噂は瞬く間に学校中に広がった。
学校の中では普通に教師と生徒として接していたのに隠しきれるものでもなかった。
原因は私にあった。
どうしても食べて欲しくて先生に手作りの弁当を手渡したのを見られたから。
私達は校長室に呼ばれた。
先生は毅然とした態度で私達の関係を言った。
免職も覚悟していたらしい。
しかしお咎めは無かった。
理由は分からないままでいた。
しかし学校内では節度を持って、他の生徒に示しがつくように。
ただそれだけ注意されて私達は解放された。
校長室を出ると私たちは笑顔でいた。
これからの3年間が楽しくなる。
私の高校生活が約束された。
制服に着替えて荷物を持って部屋を出る。
慌ただしく朝食をとって洗面所で仕度する。
している最中で呼び鈴が鳴る。
間違いなく水奈だ。
慌ててダイニングに置いてあった鞄を持って玄関に向かう。
「行ってきます」
そう言って私は家を出る。
バス停まで急ぐ。
バスはいつも定刻より4,5分遅れる。
それは良くもあり悪くもあった。
通学、通勤時間だから多少バスの便も多いけどやっぱり少ない。
一本乗り過ごせば大惨事だ。
そして10分もバスが遅れても学校の時間が変わることはない。
かといって駅まで自転車で行くのもめんどくさい。
行きは下り坂で楽だが帰りがきつい。
罠に嵌った気分だ。
始業時間は翼や空の学校と変わらない。
だけど始業時間にバスの時間を合わせてくれるほど甘くない。
通勤時間だから多いと言っても1時間に3本程度。
おまけに通勤ラッシュに巻き込まれるからその分も計算しないといけない。
早めに行って駅のコーヒーショップで時間を潰すという手も考えたが早く起きるのが面倒だ。
高校の入学式があって早1週間が過ぎようとしていた。
専門科目も当然だけど普通の科目も受けなければいけない。
宿題もしっかりある。
普通科の方が楽なんじゃないのか?
私と水奈は全く化粧をしていなかった。
春の時期に唇がかさつく事もないだろうとリップすらしなかった。
してる時間がない。
他の皆がしっかり化粧してくるのが不思議だった。
その謎はすぐ解けたけど。
「すいません、今日お腹が痛くて調子悪いんです」
女子生徒がそう言えばそれ以上遅刻の理由を追及する男性教師はいなかった。
雨の日も濡れるのを嫌って休む奴もいた。
理由は同じ。
私や水奈も雨の日に傘をさすのが面倒だから同じ理由で休もうとした。
「翼や空は臨時休校になるような台風が来ない限り、カッパを着て自転車で通学してるんですよ。甘えたことをいうんじゃありません!」
「今日お腹が痛いんだ」
「痛み止めを飲みなさい!」
水奈も同じことを言われたらしい。
駅前でバスを降りると時計を見る。
まだ間に合う。
だけどコンビニで漫画を立ち読みしてる時間はなさそうだ。
急ぎ足で学校に行く。
水奈とは学科が違うので昇降口で別れる。
教室に入ると異様な光景になる。
ここって女子高だっけ?と思うほどの女子の比率。
もちろん男子もいる。
私の高校には女子だけの学科もあるけど私が入った調理科は普通に男子もいる。
現に先輩は男子もそこそこいる。
そしてそこそこいる男子が新入生を狙っている。
だけどだいたいの女子が既に彼氏持ち。
無駄な努力をしてるな。
席に着くと渡辺紗理奈がやってきた。
「毎日大変だな」
紗理奈はそういって笑う。
紗理奈ははそんなに派手にはしないけど少しだけ化粧をしていた。
そんな時間よくあったなと聞いたら紗理奈は笑って答えた。
「父さんの勤務先が市役所だからバスに遅れたら連れて行ってもらえる」
それも間に合わない時は母さんが送ってくれるらしい。
反則だ。
そして授業が始まる。
昼休みを挟んで午後の授業も終えると水奈と昇降口で待ち合わせて学校を出ようとした。
「帰りはいつものファミレス寄ってく?」
「私はファストフードでもいいんだけどな」
ちなみに人気のファストフード店は駅にはない。
あるのはコーヒーショップとドーナツとハンバーガーもない事はないけど若干高い。
駅ビル4階の店はちょっと買い食い程度にするには高すぎる。
人気のファストフード店は駅から離れたところにある。
もちろんファミレスより安くつく。
たまには水奈に付き合うか。
歩くの面倒だけど。
靴を履き替えて下校しようとした時だった。
「片桐さん、ちょっとだけいいかな?」
入学式の時に知り合った大垣美穂がいた。
隣の席だったのですぐに打ち解けた。
家も近所だった。
同じ中学のはずなのにどうして今まで会わなかったのか不思議なくらいだ。
「水奈達もいるけどそれでもいい?」
私がそう聞くと美穂はうなずいた。
ちょうどファストフード店に行くところだしちょうどいいだろう。
美穂に言うと3人でファストフード店に言った。
美穂は話した。
「片桐さん達の噂は中学校の時に聞いてる。あ、悪い方の噂じゃないよ」
必ず恋が成就する不思議なグループ。
そんな噂も流れていたらしい。
そして私がそのグループの中心にいた。
ていうことはそっち系の相談か。
「好きな人でもできた?」
残念だが、同じクラスの男子なら全員彼女いるぞ。
「あ、違うクラスっていうか。あ、同じクラスといえばそうか……」
どっちだよ!
「誰を好きになったんだ?私達の知っている人か?」
どっちつかずの返答に水奈もいら立ちを覚えたようだ。
「先生を好きになった」
は?
「先生ってまさか朝倉?」
水奈が確認している。
朝倉瑛一。
私達の担任の教師。
確かに女子生徒には人気がある。
まだ未婚だという噂も聞いたことがある。
私はちょっと複雑な心境だった。
あ、私が朝倉のことを好きになったとかそんなんじゃない。
とりあえず美穂の話を聞く事にした。
「どうしてそうなったんだ?」
私が聞くと美穂は話し出した。
話は先週の金曜日の事だった。
(2)
「美穂、今日夜空いてる?」
友達に誘われた。
高校生なら良くあることだろう。
「空いてるよ」
「私の先輩がさ、どうしても合コンの人数あわせに来て欲しいって言ってるんだよね。一緒にきてくれないかな?」
「合コンって……」
私達まだ高校生だよ。
「私服で行ったらバレやしないからって言うからさ。その代わり絶対にお酒は飲まないから!って言ってるから」
2次会にも出席しない。
ちゃんと約束するから来て欲しい。
まあ、ちょっとは興味があった。
そんな年頃なのだからしょうがない。
2次会に行かないなら大丈夫だろう。
今日は金曜だし友達とちょっと遅くまで遊んでたと言えば通用すると思う。
うちの門限はどんなに遅くても23時。
21時を過ぎる場合には連絡を入れなさい。
23時を過ぎるとさすがに交通手段が無くなってしまう。
自転車で行ったらすぐに高校生ってバレてしまう。
「会費は友達が出してくれるからタダで食い放題だよ」
「わかった」
そして家に帰ると着替えて街の居酒屋に行く。
高校生ってわからないように少し化粧をして行った。
店の前で友達と待ち合わせすると店に入る。
「あ、いらっしゃい!君が美穂ちゃん?」
幹事の人が言うと私はうなずいた。
「助かったよ。楽しんで行ってね」
そう言って席に案内してもらった。
席に私と友達は同席にしてもらった。
そして席に着いた瞬間背筋が凍った。
目の前にいるのは朝倉瑛一。
私のクラスの担任。
内心ひやひやした。化粧してるからバレなかったのだろうか?
少し私達を見ていたけど朝倉は気づかなかったようだ。
しかし災難は続く。
「君、名前は?」
やっぱりバレてる!?
偽名を使うか悩んだ。
しかしさっきの幹事が余計な事をした。
「なんだよ、早速目をつけたのか?大垣美穂さん20歳。あ、こいつうちの大学のOBで朝倉瑛一って言うんだ。未だに彼女もいないらしくて招待したのよ。よろしくね」
「よろしく、美穂さん」
ウィッグくらいつけて来るべきだったか。
しかし本名バラされたらそんなの関係ないか。
「こいつ高校教師になりたてなんだ。しかもいきなり担任任されてさ。女子高生だらけで羨ましいぜ」
隣にいた男がべらべら喋る。
年は23歳。
高校の近くに住んでるらしい。
爽やかだけどどこか生真面目な部分がある。
そこがうちのクラスの女子に人気が高い部分なんだけど。
幹事の人が挨拶すると合コンは始まった。
皆が自己紹介する。
「大垣美穂、20歳です」
幹事が言った証言を貫くしかない。
「2人ともどこから来たの?」とか「彼氏いない歴何年?」とか私達2人は質問攻めにあっていた。
そしてまた試練がやってくる。
「2人ともソフトドリンクばっかりで全然飲んでないじゃん。どうしたの?」
「あ、私達飲めないんです」
友達が返事した。
「飲んだ事無いの?」
「そうです」
「だったらとりあえず一杯いっといたほうがいいよ。何事も経験ていうだろ?軽めの奴にするからさ。すいません、こっちウーロンハイ二つ」
まずい。
どうやって回避する?
私達の前にお酒が置かれる。
友達もさすがに躊躇っている。
さっきの幹事に助けを求めてるけど幹事は気分良くなっている。
私も友達の心配をしている場合じゃない。
どうにか回避しないと。
「ひょっとして車で来た?」
「いえ、そういうわけでは……」
「じゃあ、問題ないって!ぐいっといっちゃって」
少し飲んだだけでも倒れる人がいるという。
毒を飲むわけじゃないけどさすがにヤバいと思った。
だけど回避策がない。
友達と顔を見合わせる。
観念して飲もうとした時だった。
「美穂ちゃん飲まないなら俺もらうよ」
そう言って朝倉が私の目の前にあったジョッキを持つと飲んだ。
「お前が飲んだら意味ないだろ?」
「飲めない奴に無理強いするのはよくないだろ。そっちの子も飲めないなら俺もらうよ」
「そういうところが固いんだよお前は」
私達は朝倉に助けられた。
その後は何事もなく1次会が終了した。
そして私達は駅前に向かおうとした。
するとさっきの人達に絡まれる。
「帰るにはまだ早いよ。ちょっと遊んでいかない?」
「酒飲まなくてもカラオケとかなら出来るでしょ?」
「ごめんなさい。門限があるから」
私が言うと男たちは笑った。
「20歳にもなって門限なんて関係ないでしょ」
男はそう言って腕を掴んで引っ張る。
急いでいたので定期付きICカードを落としてしまう。
やばい。
しっかり高校の名前が書いてある。
「女子高生か。まあ、そんな気はしたんだよな」
「子供なら俺達が保護してやらないとな」
初めて男性に恐怖を覚えた。
私達どうなるんだろう?
「これで少しは懲りたか?悪ガキども」
朝倉は私達がちゃんと家に帰ったか気になってついてきたらしい。
「お前らも、早くしないと皆二次会の場所に移動してるぞ」
「ちっ……行こうぜ」
そう言って元の場所に戻る二人を見送ると朝倉は私達に付き添ってバス停まであるいた。
その間きっちり叱られた。
バス停に着くと朝倉も帰るらしい。
今から店に行っても誰もいないだろうから。
朝倉は酔い覚ましに歩いて帰るらしい。
「寄り道せずにまっすぐ帰れよ」
朝倉はそう言って去っていった。
その時笑顔を見て私は胸が締め付けられる思いをした。
その正体が恋だと知ったのは家に帰りついた後だった。
(3)
「なるほどな」
私はそう言った。
美穂が朝倉を好きになった理由は分かった。
次はこの後どうするかだ。
「で、美穂はどうしたいんだ?」
私は美穂に聞いていた。
「そりゃ出来れば交際したいけど……」
そんなの無理だよね。と美穂は泣き出す。
「泣くほど好きなんだろ。同じ泣くならすっきりしてから泣け!」
水奈も美穂もきょとんとしていた。
私は食べていたポテトを全部食べると席を立つ。
「今から学校に戻るぞ」
「学校に戻るぞってまさかお前……」
水奈が言うと私はうなずく。
「教師はまだ残ってるはずだ。今から特攻するぞ」
「そんなの無理だって」
美穂が抵抗する。
「ずっとモヤモヤを抱えて生きていくつもりか?すっきりさせた方が楽になれる。それに美穂は私達を縁結びと信じたんだろ?」
だったら私を信じろ!
美穂も決意したようだ。
私達3人は学校に戻り職員室に行く。
職員室には思った通り朝倉が残っていた。
「片桐に多田、それに大垣まで……こんな時間にどうした?」
朝倉が私達を見て言った。
美穂はこの期に及んでまだ言い出せないでいる。
背中を押すなんて生易しいものじゃだめだ。
谷底に突き落としてやる!
「美穂が先生にどうしても伝えたい事があるそうです」
私がそう言うと「大垣が?」と美穂を見る朝倉。
美穂は決意して言った。
「女子高生と高校教師は付き合ったらダメなんですか?」
美穂が言うと朝倉は驚いたようだ。
「どういう意味だ?」
朝倉が美穂に聞いた。
「私先生の事が好きです。一目惚れしました。付き合ってください!」
美穂が叫ぶと職員室にいた職員が皆こっちを見ていた。
朝倉はしばらく考えていた。
「悪い。その話は無理だ」
まあ、そうなるだろうな。
ここは私立高校。
下手すれば職を失う。
美穂をみると今にも泣きそうだ。
私が美穂の肩を叩くと美穂は肩を落として家に帰って行く。
「片桐達と大垣は家が近かったな。ちゃんと家に送ってやってくれ」
朝倉が言う。
私達は黙って職員室を出た。
職員室を出ると美穂は私にしがみ付いて号泣する。
しばらくそのまま泣かせてやった。
落ち着いたのか泣き止むと3人で下校する。
「ありがとう、天音のおかげですっきりした」
バスの中でそう言った。
私のやったことは正しかったのだろう。
美穂を家の前まで送ると私も家に帰った。
しかしその晩、メッセージを見て私は驚いていた。
同じ部屋の茜もスマホを見て驚いている。
私と茜はグルチャにメッセージを送った。
「おめでとう」
(4)
不思議とスッキリしていた。
諦めがついた。
やっぱりダメもとでも言ってよかったんだ。
ただ、しばらく恋愛をする気にはなれなかった。
食欲もあまりなかった。
今日あった事だ。
引きずっていてもしょうがないだろう。
風呂に入って部屋でテレビでも見て寝ようと思った
寝たらきっと次の日の朝にはすっきりしてる。
そう思った。
2階に上がろうとしたときインターホンが鳴る。
時間は21時を回っていた。
こんな時間に誰だろう?
母さんが出たみたいだ。
誰が予想しただろう?
扉の向こうに立っていたのは私のクラスの担任の朝倉先生だった。
「夜分遅くに大変申し訳ありません。どうしても今日中に片づけておきたい用件がありまして」
「用件ですか……。まあ、立ち話もあれですから上がってください。美穂、先生が来てるわよ」
「はい」
母さんに呼ばれて私はリビングに行く。
リビングには両親と私と朝倉先生。
朝倉先生は淡々と話し始めた。
「今日私は美穂さんから告白されました。ですが教師という立場で生徒と遊ぶなんて真似できません」
それをわざわざ言いに来たのか?
さっさと忘れてしまいたいのに。
胸が再び痛む。
だが、朝倉先生の話はまだ続いた。
「……ですから、交際するのであればはっきりした関係を築きたい。単刀直入にお願いします。娘さんと結婚させてください」
朝倉先生はそう言って頭を深く下げる。
当然両親は激怒する。
「娘を誑かしてなんて言い分だ。この子はまだ16だぞ!結婚なんてできるか!この件は明日学校に抗議する」
父さんは立ち上がってそう朝倉先生に怒鳴りつける。
朝倉先生は散々罵倒されながらもひたすら頭を下げ続けて耐えていた。
そんな朝倉先生を見ていられなかった。
私も朝倉先生と一緒に頭を下げる。
これが最後のチャンスだ。
絶対に離さない。
私も一緒に2時間ほど頭を下げ続けた。
そしてようやく父さんが折れた。
条件を付けられた。
高校は絶対に卒業させる事。
卒業するまで結婚は認めない。
まあ、卒業しないと18歳にならないのだから当たり前だろう。
そして結婚するまでは妊娠は認めない。
最後に父さんは朝倉先生を近所の公園に呼び出した。
「腹を殴られたよ」
あとで朝倉先生が教えてくれた。
朝倉先生は笑っていた。
2人が家に戻ると先生は自分の車で家に帰る。
「あ、そうだ。連絡先交換しておかないとね」
朝倉先生と連絡先を交換した。
朝倉先生は帰って行った。
その事をSHに報告する。
みんな「おめでとう」と祝ってくれた。
週末白いセダンで迎えに来た。
どうしても一緒に行きたい場所があるという。
それは山の中にある遊園地の観覧車だった。
そして観覧車の中で私はプレゼントを受ける。
私にはまだ高い指輪だった。
そこで改めてプロポーズを受ける。
「よろしくお願いします」
「こちらこそ」
夕食を食べて家に帰った。
妊娠は認めない。
だから先生は絶対に要求してこなかった。
噂は瞬く間に学校中に広がった。
学校の中では普通に教師と生徒として接していたのに隠しきれるものでもなかった。
原因は私にあった。
どうしても食べて欲しくて先生に手作りの弁当を手渡したのを見られたから。
私達は校長室に呼ばれた。
先生は毅然とした態度で私達の関係を言った。
免職も覚悟していたらしい。
しかしお咎めは無かった。
理由は分からないままでいた。
しかし学校内では節度を持って、他の生徒に示しがつくように。
ただそれだけ注意されて私達は解放された。
校長室を出ると私たちは笑顔でいた。
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