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光は進む先にある
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(1)
その日は学校は休みだったけど朝早起きした。
ご飯を食べて身支度を整える。
服装もちょっと背伸びしたのを買ってみた。
そしてその時を待ちわびる。
インターホンが鳴った。
バッグを取って玄関に向かう。
朝倉先生が親と挨拶をしていた。
私に気付くと挨拶してくれる。
服装については何も言ってくれなかった。
もちろん化粧をしている事にも。
少しは褒めて欲しかったのに。
親と話が済むと家を出て先生の車に乗り込む。
先生の車は白いセダン。
別にタイヤが変な角度になっていたり車高が極端に低かったりはしない。
ごく普通のセダン。
内装も購入当初から装備してある物らしくて一体化してた。
シートも座り心地が良い。
シートベルトを締めると車はゆっくりと走り出す。
今日はドライブデート。
普通の高校生では絶対にありえないデートだ。
車をしばらく走らせると先生が突然言った。
「今日は随分お洒落してきたんだな。似合ってるよ」
気づいててくれたんだ。
嬉しかった。
車は無理に飛ばす事もなく軽快に走行していた。
ポップな音楽をBGMに私達のトークも弾む。
お昼になると適当なレストランに寄って食べる。
適当と言ったけど実は最初から予定してたと昼食を食べながら聞いた。
先生が勧めるだけあって美味しい。
そして車はまた走り出す。
静かなエンジン音だった。
足下や天井にゆとりがありゆったりと乗っていられる。
両親に夕食は食べて帰ると伝えてある。
ただし22時には帰る。
先生がそう約束した。
ちなみに先生を呼ぶ時は先生とは言わない
「瑛一」
そう呼んでいる。
私達の交際は世間では良く思わない人の方が多い。
だから教職という立場を隠す必要がある。
そのかわり先生も「美穂」と呼んでくれる。
もちろん学校内では「大垣」だけど。
先生はなるべく混まなくて景色の良い道を選んでくれていたが夕暮れ時になって地元に帰るとなるとどうしても渋滞に巻き込まれる。
その代わり話が弾む。
地元に帰りつく頃には夜になっていた。
夕食の店も探しておいてくれたらしい。
料理を食べると店を出て家に帰る。
私の家に着くと車は止まる。
「こんなデートで良かったのか?」
先生が聞いてきた。
「どうせこの時期どこ行っても混んでるでしょ?別に今行く必要ないし」
「それはドライブだって同じじゃないのか?」
「一度経験してみたかったから。ドライブデートってやつ」
「こんな車で悪かったな」
「全然平気。私この車気に入ったよ」
「とりあえず家に行こうか?」
エンジンを切って車を降りると私達は家に入る。
先生は両親に挨拶して途中で買ったお土産を渡している。
「今度からこういうのは要らない。朝倉さんの事は認めたんだ。余計な気を使わないでくれ」
父さんがそう言っていた。
「じゃあ、美穂。またな」
そう言って車に乗って家に帰る先生を見送る。
風呂に入って部屋に戻るとメッセージがあった。
「今日は楽しかったよ。ありがとう」
礼を言うのはこっちの方なのに。
それからしばらくメッセージをやり取りしてた。
「約束だからな。残りの連休はしっかり勉強しろよ」
瑛一は教師に戻っていた。
「は~い。今日は疲れたから寝ます。おやすみなさい」
「しょうがない奴だな。おやすみ」
スマホを置くと私はベッドに入る。
先生との初めてのデートはこんな感じだった。
これからもこんな感じで思い出を重ねていくのだろう。
次は夏休みかな?
でも暇な休日にも誘って欲しい。
どこに行くかな?
水族館行ってみたいな?
色々考えていたら寝たのは0時過ぎだった。
(2)
「今なら無料お試し期間1週間おまけするよ」
「使い方も教えてあげるからさ」
友達と気晴らしにクラブに入っていた。
お酒は飲まないようにソフトドリンクを注文して大音量のBGMで気を紛らわせていた。
ひょっとしたら出会いもあるかもしれない。
そして今男二人組に絡まれていた。
それは恋の誘いとかではない。
怪しいハーブの販売だった。
用途はアロマやハーブ、お香。
一昔前は合法ドラッグとして売られていたけど中味は成分を少し変えただけの立派な違法。
成分を変えてある分、本物よりも危険な物。
やがて警察から危険ドラッグと呼称を変えられたもの。
用途だけ聞いたら買う人もいるかもしれない。
ただ「気分が良くなるよ」とか「すっきりするよ」とか効用を聞かされたら私でもそれが怪しいものだとわかる。
「私興味ないんで」
そう言ってその場を立ち去ろうとすると腕を掴まれた。
「興味でこの店に入ったんでしょ?子供のくせに」
「そんな怖いものじゃないって一度試してみなよ」
なんでも経験してみるべき。
どうやって断ればいい?
叫んで騒ぎになれば私はこのクラブに入れなくなってしまう。
友達も巻き込んでしまう。
学校に知れたらきっと厳しい処分が待っている。
「美砂、探したぞ。こんなところにいたのか?」
男の声がした。
聞き覚えのある声。
振り返ると背筋が凍った。
中学の教師の浅井耕太。
なんでこんなところに。
「そろそろ時間だ。帰ろう。これ以上は保護者同伴でも無理だ」
そう言って私を男たちから引き離す。
「俺の妹に何か用か?」
浅井が言うと男たちは黙って去っていった。
「じゃ、店を出よう。美砂一人で来たのか?」
浅井が聞くと私は友達とその彼氏と来てる事を伝えた。
2人で楽しそうだから一人離れて楽しんでいたら声をかけられた。
「その2人に店を出るように伝えなさい」
「わかった」
2人の場所に行って先に帰ると伝えると店を出る。
その間に浅井も一緒に来てた友達に事情を説明していた。
「じゃ、帰るぞ」
「いやだ、帰りたくない」
私は拒絶した。
家に帰れば一人になる。
家族はいるけど孤独なのに変わりはない。
1人でいると寂しくなる。
不安が襲う。
「それでこんな場所に来たのか。でもだめだ。お前はまだ18にすらなってないだろ?深夜徘徊を認めるわけにはいかない」
浅井はそう言うと私の腕を掴んで駐車場に連れて行った。
車に乗り込む。当然運転席には浅井が。
「浅井、酒飲んでるんじゃないのか?」
「心配するな。俺はハンドルキーパーだよ」
クラブで遊んだ後朝までドライブするつもりだったらしい。
「それより家に電話しろ。今から帰るって。親御さん心配してるだろうから」
素直に電話する。
両親ともそんなに心配してないらしい。
近頃の高校生なら当たり前だ。
明日も休みだしオールくらいするのかと思ってこれから寝るところだったらしい。
「美砂、俺に電話貸してもらえないか?」
浅井にそう言われると私はスマホを渡す。
事情を説明して、これから送り届けると伝える浅井。
電話を終えると私にスマホを返して車を出す。
「中学の時は真面目だったのに急にどうしたんだ?」
浅井に4月に起きたことを伝える。
私が教師に恋をして振られたことも。
「お前年上が好きなのか?」
「そうみたい。でも私はまだ未熟……子供扱いされて誰にも相手してもらえない」
だからこんな真似をしたんだ。
「一人でいるのが不安なのか?」
「不安じゃない人なんているの?」
「強がる奴はたくさんいるよ。弱さを認めることが出来るやつの方が少ないんだ」
「浅井にとっても、私はまだ子供なんだろ?」
「そう思うか?」
「え?」
どういう意味だ?
「美砂、約束しないか?二度とこんな真似しないと約束するなら俺がお前の不安を解消してやる」
そんなことできるのか?
「どうだ、できるか?」
浅井はいつもと変わらない表情だった。
そう、私が中学生だった頃と全然変わらない。
「わかった……。で、浅井は私に何をしてくれるんだ?」
「それはこれから分かるよ。とりあえず急いで家に帰ろう」
そう言って浅井は私の家の前に車を止めた。
浅井はエンジンを止めて車を降りると私と一緒に家に入る。
「お帰り、思ったより早かったわね。あれ?確か中学の時の」
「はい、浅井ともうします。娘さんが中学の時は勉強させてもらいました」
浅井はそう言って礼をする。
「先生が一緒って事は娘が何か問題を起こしたのですか?」
「大したことじゃないです。ただ偶然鉢合わせただけです。それよりお願いがあるんですけどいいですか?」
「お願い?」
母さんは首をかしげる。
私にも話が分からない。
「娘さんとの交際を許してもらいたくて着ました。もちろん遊びなんかじゃないちゃんと最後まで責任もって面倒見ます」
は?
「交際っていくら先生が若いからと言っても……」
「もちろん私も教職者です、それなりの節度を守った交際をするつもりです。それは約束します」
話が長くなりそうだと浅井をリビングに案内した。
既に寝室で寝ていた父さんを起こすと母さんが父さんに事情を説明する。
「そんなことか」
たった一言で片づける父親。
「娘が良いって言うなら別にいいんじゃないのか?相手が教職者なら馬鹿な真似はしないだろう」
「もちろんそれは固く約束します。それでいいか美砂?」
普通言う順番が逆じゃないのか?
「美砂は俺にこういった。1人でいるのが寂しいと。だったら俺が一緒にいてやる。それならいいだろ?」
そう言って微笑む浅井。
うちじゃなかったら修羅場だぞ。
でも、そんな浅井を頼もしく思えたのも事実だ。
相手が浅井なら……。
「私はまだ15歳だ。これから先どうなるか分からないよ?」
「その時はその時だ」
「……父さんお願いします」
そんな私と浅井のやり取りを見ていた父さんはうなずく。
「じゃ、俺は眠いから寝るぞ」
そう言って寝室に向かう父さん。
そんな父さんを見届けると深夜遅くに長居は悪いと浅井も立ち上がる。
「そんな仲になったのなら今晩泊っていただいても」
「私も教師の端くれです。良からぬ噂を立てなくないのでお気持ちだけ受け取っておきます」
浅井はそう言って玄関に向かう。
「じゃあ、今日はもう寝ろよ」
「浅井、待って」
私は浅井を呼び止めた。
「どうした?」
「連絡先くらい交換しよう」
「あ、そうだな」
私は浅井と連絡先を交換する。
「じゃ、また」
そう言って浅井は帰って行った。
その後風呂からでて部屋に戻ると浅井からメッセージが届いてた。
「連休いつ空いてる?」
「いつでも空いてる」
「じゃあ、最終日に海でも観に行こうか?」
「わかった」
「じゃあ、おやすみ」
私はスマホを置くとベッドに入って寝た。
連休最終日に浅井はやって来た。
それまでは大人しくしていた。
「ちゃんと勉強しているか?」
とか、何かと用件を作っては連絡を入れてくれる浅井だった。
浅井が家に来ると浅井の車に乗って家を出た。
車は赤いセダン。
私がシートベルトをすると、車はゆったりと動き出した。
「連休中なにしてた?」
「買い物行ったりしてた。浅井は?」
「俺は部活指導はしてないから楽な方だよ」
部活指導をしている浅井は大変らしい。
連休も生徒の練習につきあうのだから。
そうでない教師も平日は忙しいらしい。
下校後家に帰っていない生徒を探し回ったりと大変なんだそうだ。
それに事務仕事やテストの作成もある。
高校には伝家の宝刀「退学処分」がある。
だけど中学は義務教育だからできない。
「教師も大変なんだな?」
「そう思うなら問題を増やしてくれるな」
「あれからちゃんと約束守ってるよ」
ちゃんと門限には帰ってる。
ああいう店には入ってない。
誘われても断ってる。
車は海岸線沿いを走り空港を越えて国東半島を一周する。
途中でレストランで昼食を取った。
ゆっくりしていたらあっという間に夜になる。
帰りは高速で帰って夕食を食べて帰った。
家の前に車を止める。
「じゃあ、また連絡する」
「わかった」
「明日からまた頑張れよ」
浅井はそう言って家に帰った。
私も家に入ると風呂に入ってテレビを見てた。
浅井の定時連絡を待っていた。
いつも通りの時間にいつも通りのメッセージ。
私も返事を送るとベッドに入って眠りにつく。
無我夢中で進んだ先に光があった。
その光を頼りにこれからは進もう。
(3)
私達は駅前で集合した。
昔ネットで知り合った江口真香とその恋人西松大介。
同じ中学校で知り合ったらしい。
だから付き合って日も浅い。
この連休もデートすら誘おうとしない西松君だったので真香が先に動いた。
見ての通り全然話す気が無いので二人だと間が持たない。
なので私達も一緒にと誘われた。
お互いに自己紹介しあう。
「時間すぐだしそろそろ行こうか」
私が言うと4人で駅ビルに入る。
映画館でチケットを買うと飲み物を買って館内にはいる。
予告が始まってそして映画が始まる。
毎年ある探偵アニメの映画版。
私は大好きだったので毎年見てる。
そして映画が終わった後パンフレットとピンバッジを買う。
丁度お昼の時間だ。
私達は3階のフードコートで食事にする。
私と真香はサンドイッチとドリンクを、壱郎と西松君はラーメンを頼んでいた。
男子って本当にラーメンが好きだな。
それぞれ食べながら話をしていた。
しかし西松君は話に乗ってこない。
クールぶってるけど一人浮いてるだけだ。
そんな西松君の態度に私はイライラしていた。
そして、我慢の限界が来た。
「西松君ってかっこいいね。さぞモテるんだろうね」
「別にモテたいと思った事ないよ」
「どうして真香を選んだの?」
「真香が付き合ってって言うから」
「本当にそれだけ?真香の事なんて気にも留めてなかったって誓える?」
そんなはずはない。だったら断ればいいんだから。
「まあ、真香も見た目も良いし頭も良いから付き合ってやってもいいかなって……」
「その上から目線止めた方がいいよ。何様のつもり?」
「別にそんなつもり言ったわけじゃねーよ」
「つもりが無くても周りからはそう見えるんだから十分だよ。それにクールぶって気取ってるけど傍から見たらただのノリの悪いつまんない男だよ」
そして私達の世界では”中二病”って言う。
「あなたは自分で真香を選んだつもりなんだろうけど、あなたが真香に選ばれただけ。そして今日という日をセッティングしたのも真香。少しくらい感謝の気持ちを持っても罰が当たらないんじゃない?」
「茜、もういいから」
真香が私を止めようとする。
だけど私は許せなかった。
「真香は一生懸命場を盛り上げようと努力してる。初めてのデートだもん。当たり前。なのにあなたは全くその気がない」
真香の努力に甘えてるだけで自分では何もしようとしない。
楽しい思い出にしようという気が無い。
どっちが誘うのは自由だけど誘いを受けたからには真香に合わせるべきだ。
「今の西松君はクールでも何でもない。デートで彼女をリードする事すらできないつまんない最低な男だよ」
私は言い切った。
それでもついてくる女子はいるだろう。
見た目に釣られてついてくる子もいるだろう。
けれどそんな子が嫌で今までやって来たんじゃないの?
そして真香を好きになって告白を受けたんじゃないの?
「ごめん、気を付ける」
西松君は一言そう言った。
「飯も食ったしまだ時間ある。カラオケでも行かないか?」
壱郎が提案した。
私達は壱郎の提案に乗った。
カラオケ店に入る。
部屋に入ると私と壱郎はマイクと端末を取る。
先にどっちから歌うかじゃんけんしてた。
その間に、フードコートからこの部屋にくるまでに、2人の距離は縮まったようだ。
「真香はどんなの歌うんだ?」
「うーん、ボカロとか西方系とかが多いかな。大介は?」
「俺はヴィジュアル系バンドの歌が多いかな。あまりカラオケに来たこと無いんだけどな」
「じゃあ、あのバンドの曲歌える?」
「ああ、大丈夫」
「歌って!茜、端末貸して」
私は真香に端末を渡す。
4人で4時間はあっという間に過ぎるもので時間になると店を出る。
真香と西松君は電車で来たらしい。
2人とも駅から自転車で帰るそうだ。
「茜さん、今日はありがとう。危うく真香に悲しい思い出を残すところだった」
西松君は私に謝っていた。
「今度は西松君から誘ってあげなよ。次は2人きりでも大丈夫だよね」
「ああ」
「大介!急がないと電車の時間」
真香たちの路線は1時間に一本あればいい方の超ローカル路線。
一本乗り過ごすと大変なことになる。
私たちも自転車で15分も移動すれば電車に乗れる。
そして運賃も安い。
ただ真香たちと同じ様に本数が少ない。
そしてバスの運賃と100円くらいしか変わらない。
なので私達の校区で電車を使う人はバス停がそばにない人くらいだ。
駅まで自転車で行くなら街まで行くという人も多い。
2人を改札口まで見送る。
「また夏休みにでも会おうよ」
真香はそう言って改札口の向こうへと消えていった。
それを見送ると私達はバス停へむかう。
いい時間のがあった。
到着まであと5分と表示されてある。
バスが来るとバスに乗って帰る。
私の方が先に降りる。
家に帰ると夕食を食べてお風呂に入る。
壱郎とメッセージを交わしながら天音のゲームを見ていた。
やがて天音もメッセージをしだす。
連休もあとわずか。
連休が過ぎれば嘘のように慌ただしい日がやってくる。
その日は学校は休みだったけど朝早起きした。
ご飯を食べて身支度を整える。
服装もちょっと背伸びしたのを買ってみた。
そしてその時を待ちわびる。
インターホンが鳴った。
バッグを取って玄関に向かう。
朝倉先生が親と挨拶をしていた。
私に気付くと挨拶してくれる。
服装については何も言ってくれなかった。
もちろん化粧をしている事にも。
少しは褒めて欲しかったのに。
親と話が済むと家を出て先生の車に乗り込む。
先生の車は白いセダン。
別にタイヤが変な角度になっていたり車高が極端に低かったりはしない。
ごく普通のセダン。
内装も購入当初から装備してある物らしくて一体化してた。
シートも座り心地が良い。
シートベルトを締めると車はゆっくりと走り出す。
今日はドライブデート。
普通の高校生では絶対にありえないデートだ。
車をしばらく走らせると先生が突然言った。
「今日は随分お洒落してきたんだな。似合ってるよ」
気づいててくれたんだ。
嬉しかった。
車は無理に飛ばす事もなく軽快に走行していた。
ポップな音楽をBGMに私達のトークも弾む。
お昼になると適当なレストランに寄って食べる。
適当と言ったけど実は最初から予定してたと昼食を食べながら聞いた。
先生が勧めるだけあって美味しい。
そして車はまた走り出す。
静かなエンジン音だった。
足下や天井にゆとりがありゆったりと乗っていられる。
両親に夕食は食べて帰ると伝えてある。
ただし22時には帰る。
先生がそう約束した。
ちなみに先生を呼ぶ時は先生とは言わない
「瑛一」
そう呼んでいる。
私達の交際は世間では良く思わない人の方が多い。
だから教職という立場を隠す必要がある。
そのかわり先生も「美穂」と呼んでくれる。
もちろん学校内では「大垣」だけど。
先生はなるべく混まなくて景色の良い道を選んでくれていたが夕暮れ時になって地元に帰るとなるとどうしても渋滞に巻き込まれる。
その代わり話が弾む。
地元に帰りつく頃には夜になっていた。
夕食の店も探しておいてくれたらしい。
料理を食べると店を出て家に帰る。
私の家に着くと車は止まる。
「こんなデートで良かったのか?」
先生が聞いてきた。
「どうせこの時期どこ行っても混んでるでしょ?別に今行く必要ないし」
「それはドライブだって同じじゃないのか?」
「一度経験してみたかったから。ドライブデートってやつ」
「こんな車で悪かったな」
「全然平気。私この車気に入ったよ」
「とりあえず家に行こうか?」
エンジンを切って車を降りると私達は家に入る。
先生は両親に挨拶して途中で買ったお土産を渡している。
「今度からこういうのは要らない。朝倉さんの事は認めたんだ。余計な気を使わないでくれ」
父さんがそう言っていた。
「じゃあ、美穂。またな」
そう言って車に乗って家に帰る先生を見送る。
風呂に入って部屋に戻るとメッセージがあった。
「今日は楽しかったよ。ありがとう」
礼を言うのはこっちの方なのに。
それからしばらくメッセージをやり取りしてた。
「約束だからな。残りの連休はしっかり勉強しろよ」
瑛一は教師に戻っていた。
「は~い。今日は疲れたから寝ます。おやすみなさい」
「しょうがない奴だな。おやすみ」
スマホを置くと私はベッドに入る。
先生との初めてのデートはこんな感じだった。
これからもこんな感じで思い出を重ねていくのだろう。
次は夏休みかな?
でも暇な休日にも誘って欲しい。
どこに行くかな?
水族館行ってみたいな?
色々考えていたら寝たのは0時過ぎだった。
(2)
「今なら無料お試し期間1週間おまけするよ」
「使い方も教えてあげるからさ」
友達と気晴らしにクラブに入っていた。
お酒は飲まないようにソフトドリンクを注文して大音量のBGMで気を紛らわせていた。
ひょっとしたら出会いもあるかもしれない。
そして今男二人組に絡まれていた。
それは恋の誘いとかではない。
怪しいハーブの販売だった。
用途はアロマやハーブ、お香。
一昔前は合法ドラッグとして売られていたけど中味は成分を少し変えただけの立派な違法。
成分を変えてある分、本物よりも危険な物。
やがて警察から危険ドラッグと呼称を変えられたもの。
用途だけ聞いたら買う人もいるかもしれない。
ただ「気分が良くなるよ」とか「すっきりするよ」とか効用を聞かされたら私でもそれが怪しいものだとわかる。
「私興味ないんで」
そう言ってその場を立ち去ろうとすると腕を掴まれた。
「興味でこの店に入ったんでしょ?子供のくせに」
「そんな怖いものじゃないって一度試してみなよ」
なんでも経験してみるべき。
どうやって断ればいい?
叫んで騒ぎになれば私はこのクラブに入れなくなってしまう。
友達も巻き込んでしまう。
学校に知れたらきっと厳しい処分が待っている。
「美砂、探したぞ。こんなところにいたのか?」
男の声がした。
聞き覚えのある声。
振り返ると背筋が凍った。
中学の教師の浅井耕太。
なんでこんなところに。
「そろそろ時間だ。帰ろう。これ以上は保護者同伴でも無理だ」
そう言って私を男たちから引き離す。
「俺の妹に何か用か?」
浅井が言うと男たちは黙って去っていった。
「じゃ、店を出よう。美砂一人で来たのか?」
浅井が聞くと私は友達とその彼氏と来てる事を伝えた。
2人で楽しそうだから一人離れて楽しんでいたら声をかけられた。
「その2人に店を出るように伝えなさい」
「わかった」
2人の場所に行って先に帰ると伝えると店を出る。
その間に浅井も一緒に来てた友達に事情を説明していた。
「じゃ、帰るぞ」
「いやだ、帰りたくない」
私は拒絶した。
家に帰れば一人になる。
家族はいるけど孤独なのに変わりはない。
1人でいると寂しくなる。
不安が襲う。
「それでこんな場所に来たのか。でもだめだ。お前はまだ18にすらなってないだろ?深夜徘徊を認めるわけにはいかない」
浅井はそう言うと私の腕を掴んで駐車場に連れて行った。
車に乗り込む。当然運転席には浅井が。
「浅井、酒飲んでるんじゃないのか?」
「心配するな。俺はハンドルキーパーだよ」
クラブで遊んだ後朝までドライブするつもりだったらしい。
「それより家に電話しろ。今から帰るって。親御さん心配してるだろうから」
素直に電話する。
両親ともそんなに心配してないらしい。
近頃の高校生なら当たり前だ。
明日も休みだしオールくらいするのかと思ってこれから寝るところだったらしい。
「美砂、俺に電話貸してもらえないか?」
浅井にそう言われると私はスマホを渡す。
事情を説明して、これから送り届けると伝える浅井。
電話を終えると私にスマホを返して車を出す。
「中学の時は真面目だったのに急にどうしたんだ?」
浅井に4月に起きたことを伝える。
私が教師に恋をして振られたことも。
「お前年上が好きなのか?」
「そうみたい。でも私はまだ未熟……子供扱いされて誰にも相手してもらえない」
だからこんな真似をしたんだ。
「一人でいるのが不安なのか?」
「不安じゃない人なんているの?」
「強がる奴はたくさんいるよ。弱さを認めることが出来るやつの方が少ないんだ」
「浅井にとっても、私はまだ子供なんだろ?」
「そう思うか?」
「え?」
どういう意味だ?
「美砂、約束しないか?二度とこんな真似しないと約束するなら俺がお前の不安を解消してやる」
そんなことできるのか?
「どうだ、できるか?」
浅井はいつもと変わらない表情だった。
そう、私が中学生だった頃と全然変わらない。
「わかった……。で、浅井は私に何をしてくれるんだ?」
「それはこれから分かるよ。とりあえず急いで家に帰ろう」
そう言って浅井は私の家の前に車を止めた。
浅井はエンジンを止めて車を降りると私と一緒に家に入る。
「お帰り、思ったより早かったわね。あれ?確か中学の時の」
「はい、浅井ともうします。娘さんが中学の時は勉強させてもらいました」
浅井はそう言って礼をする。
「先生が一緒って事は娘が何か問題を起こしたのですか?」
「大したことじゃないです。ただ偶然鉢合わせただけです。それよりお願いがあるんですけどいいですか?」
「お願い?」
母さんは首をかしげる。
私にも話が分からない。
「娘さんとの交際を許してもらいたくて着ました。もちろん遊びなんかじゃないちゃんと最後まで責任もって面倒見ます」
は?
「交際っていくら先生が若いからと言っても……」
「もちろん私も教職者です、それなりの節度を守った交際をするつもりです。それは約束します」
話が長くなりそうだと浅井をリビングに案内した。
既に寝室で寝ていた父さんを起こすと母さんが父さんに事情を説明する。
「そんなことか」
たった一言で片づける父親。
「娘が良いって言うなら別にいいんじゃないのか?相手が教職者なら馬鹿な真似はしないだろう」
「もちろんそれは固く約束します。それでいいか美砂?」
普通言う順番が逆じゃないのか?
「美砂は俺にこういった。1人でいるのが寂しいと。だったら俺が一緒にいてやる。それならいいだろ?」
そう言って微笑む浅井。
うちじゃなかったら修羅場だぞ。
でも、そんな浅井を頼もしく思えたのも事実だ。
相手が浅井なら……。
「私はまだ15歳だ。これから先どうなるか分からないよ?」
「その時はその時だ」
「……父さんお願いします」
そんな私と浅井のやり取りを見ていた父さんはうなずく。
「じゃ、俺は眠いから寝るぞ」
そう言って寝室に向かう父さん。
そんな父さんを見届けると深夜遅くに長居は悪いと浅井も立ち上がる。
「そんな仲になったのなら今晩泊っていただいても」
「私も教師の端くれです。良からぬ噂を立てなくないのでお気持ちだけ受け取っておきます」
浅井はそう言って玄関に向かう。
「じゃあ、今日はもう寝ろよ」
「浅井、待って」
私は浅井を呼び止めた。
「どうした?」
「連絡先くらい交換しよう」
「あ、そうだな」
私は浅井と連絡先を交換する。
「じゃ、また」
そう言って浅井は帰って行った。
その後風呂からでて部屋に戻ると浅井からメッセージが届いてた。
「連休いつ空いてる?」
「いつでも空いてる」
「じゃあ、最終日に海でも観に行こうか?」
「わかった」
「じゃあ、おやすみ」
私はスマホを置くとベッドに入って寝た。
連休最終日に浅井はやって来た。
それまでは大人しくしていた。
「ちゃんと勉強しているか?」
とか、何かと用件を作っては連絡を入れてくれる浅井だった。
浅井が家に来ると浅井の車に乗って家を出た。
車は赤いセダン。
私がシートベルトをすると、車はゆったりと動き出した。
「連休中なにしてた?」
「買い物行ったりしてた。浅井は?」
「俺は部活指導はしてないから楽な方だよ」
部活指導をしている浅井は大変らしい。
連休も生徒の練習につきあうのだから。
そうでない教師も平日は忙しいらしい。
下校後家に帰っていない生徒を探し回ったりと大変なんだそうだ。
それに事務仕事やテストの作成もある。
高校には伝家の宝刀「退学処分」がある。
だけど中学は義務教育だからできない。
「教師も大変なんだな?」
「そう思うなら問題を増やしてくれるな」
「あれからちゃんと約束守ってるよ」
ちゃんと門限には帰ってる。
ああいう店には入ってない。
誘われても断ってる。
車は海岸線沿いを走り空港を越えて国東半島を一周する。
途中でレストランで昼食を取った。
ゆっくりしていたらあっという間に夜になる。
帰りは高速で帰って夕食を食べて帰った。
家の前に車を止める。
「じゃあ、また連絡する」
「わかった」
「明日からまた頑張れよ」
浅井はそう言って家に帰った。
私も家に入ると風呂に入ってテレビを見てた。
浅井の定時連絡を待っていた。
いつも通りの時間にいつも通りのメッセージ。
私も返事を送るとベッドに入って眠りにつく。
無我夢中で進んだ先に光があった。
その光を頼りにこれからは進もう。
(3)
私達は駅前で集合した。
昔ネットで知り合った江口真香とその恋人西松大介。
同じ中学校で知り合ったらしい。
だから付き合って日も浅い。
この連休もデートすら誘おうとしない西松君だったので真香が先に動いた。
見ての通り全然話す気が無いので二人だと間が持たない。
なので私達も一緒にと誘われた。
お互いに自己紹介しあう。
「時間すぐだしそろそろ行こうか」
私が言うと4人で駅ビルに入る。
映画館でチケットを買うと飲み物を買って館内にはいる。
予告が始まってそして映画が始まる。
毎年ある探偵アニメの映画版。
私は大好きだったので毎年見てる。
そして映画が終わった後パンフレットとピンバッジを買う。
丁度お昼の時間だ。
私達は3階のフードコートで食事にする。
私と真香はサンドイッチとドリンクを、壱郎と西松君はラーメンを頼んでいた。
男子って本当にラーメンが好きだな。
それぞれ食べながら話をしていた。
しかし西松君は話に乗ってこない。
クールぶってるけど一人浮いてるだけだ。
そんな西松君の態度に私はイライラしていた。
そして、我慢の限界が来た。
「西松君ってかっこいいね。さぞモテるんだろうね」
「別にモテたいと思った事ないよ」
「どうして真香を選んだの?」
「真香が付き合ってって言うから」
「本当にそれだけ?真香の事なんて気にも留めてなかったって誓える?」
そんなはずはない。だったら断ればいいんだから。
「まあ、真香も見た目も良いし頭も良いから付き合ってやってもいいかなって……」
「その上から目線止めた方がいいよ。何様のつもり?」
「別にそんなつもり言ったわけじゃねーよ」
「つもりが無くても周りからはそう見えるんだから十分だよ。それにクールぶって気取ってるけど傍から見たらただのノリの悪いつまんない男だよ」
そして私達の世界では”中二病”って言う。
「あなたは自分で真香を選んだつもりなんだろうけど、あなたが真香に選ばれただけ。そして今日という日をセッティングしたのも真香。少しくらい感謝の気持ちを持っても罰が当たらないんじゃない?」
「茜、もういいから」
真香が私を止めようとする。
だけど私は許せなかった。
「真香は一生懸命場を盛り上げようと努力してる。初めてのデートだもん。当たり前。なのにあなたは全くその気がない」
真香の努力に甘えてるだけで自分では何もしようとしない。
楽しい思い出にしようという気が無い。
どっちが誘うのは自由だけど誘いを受けたからには真香に合わせるべきだ。
「今の西松君はクールでも何でもない。デートで彼女をリードする事すらできないつまんない最低な男だよ」
私は言い切った。
それでもついてくる女子はいるだろう。
見た目に釣られてついてくる子もいるだろう。
けれどそんな子が嫌で今までやって来たんじゃないの?
そして真香を好きになって告白を受けたんじゃないの?
「ごめん、気を付ける」
西松君は一言そう言った。
「飯も食ったしまだ時間ある。カラオケでも行かないか?」
壱郎が提案した。
私達は壱郎の提案に乗った。
カラオケ店に入る。
部屋に入ると私と壱郎はマイクと端末を取る。
先にどっちから歌うかじゃんけんしてた。
その間に、フードコートからこの部屋にくるまでに、2人の距離は縮まったようだ。
「真香はどんなの歌うんだ?」
「うーん、ボカロとか西方系とかが多いかな。大介は?」
「俺はヴィジュアル系バンドの歌が多いかな。あまりカラオケに来たこと無いんだけどな」
「じゃあ、あのバンドの曲歌える?」
「ああ、大丈夫」
「歌って!茜、端末貸して」
私は真香に端末を渡す。
4人で4時間はあっという間に過ぎるもので時間になると店を出る。
真香と西松君は電車で来たらしい。
2人とも駅から自転車で帰るそうだ。
「茜さん、今日はありがとう。危うく真香に悲しい思い出を残すところだった」
西松君は私に謝っていた。
「今度は西松君から誘ってあげなよ。次は2人きりでも大丈夫だよね」
「ああ」
「大介!急がないと電車の時間」
真香たちの路線は1時間に一本あればいい方の超ローカル路線。
一本乗り過ごすと大変なことになる。
私たちも自転車で15分も移動すれば電車に乗れる。
そして運賃も安い。
ただ真香たちと同じ様に本数が少ない。
そしてバスの運賃と100円くらいしか変わらない。
なので私達の校区で電車を使う人はバス停がそばにない人くらいだ。
駅まで自転車で行くなら街まで行くという人も多い。
2人を改札口まで見送る。
「また夏休みにでも会おうよ」
真香はそう言って改札口の向こうへと消えていった。
それを見送ると私達はバス停へむかう。
いい時間のがあった。
到着まであと5分と表示されてある。
バスが来るとバスに乗って帰る。
私の方が先に降りる。
家に帰ると夕食を食べてお風呂に入る。
壱郎とメッセージを交わしながら天音のゲームを見ていた。
やがて天音もメッセージをしだす。
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連休が過ぎれば嘘のように慌ただしい日がやってくる。
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