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僕達は自由
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(1)
「何をそんなに必死になってるの?」
「良いからこれ持て!ああ、こっちの方がいいかな!?」
私達はショッピングモールに買い物に来ていた。
バーゲンは戦場だ。
最後に放出されるレア物を手に入れる為に血眼になって争う。
財布の中身が制限されてる私達女子高生も例外ではない。
まあ、私の場合は大地が買ってくれるんだけど。
しかし私が狙っているのは私の服じゃない。
大地の服だ。
大地の姉・石原美希から忠告を受けていた。
「大地に服を選ばせたらいけない」
もちろん私の分も買うけど。
もちろんシーズン的にそろそろ終わるものが安売りされるのがバーゲンだけどそのくらい知ってる。
4月末からGW明けまでにあるバーゲンは春物の処分市。
新作というものにこだわりがないなら秋に使えそうなものを買っておくという手段がある。
まあ、秋になったら新作を買ったりもするんだけど。
それに翼から聞いた。
オールシーズンつかえる物なら安い物を買える今がチャンスだ。
例えるなら下着とか靴とか。
男どもは靴に高い金を払うのはいいが、どうしてやたらカラフルなジョギングシューズなどを買うのだろう?
いわゆるハイテクシューズと呼ばれるものだ。
大地も例外ではなく履いている。
黒い学ランにカラフルなジョギングシューズ。
幸い大地は腰パンはしない。
光太は相変わらず腰パンだと麗華から聞いた。
「やめて」と言っても直す気が無いらしい。
せっかく足が長いのにわざわざ短く見せて何のメリットがあるんだ?
中坊の不良じゃないんだぞ!
大地も放っておくとインナーにどくろのイラストや英文字、翼や十字架のイラストの服を好む傾向にある。
美希の言う通りだ。
あ、このカットソーいいな。
手に取ると誰かが引っ張る。
「先に手を付けたのは私だ!」
「いや、私の方が2.5秒早かった!」
そう言いあって2人で引っ張るとどうやら二人共騙された事に気が付いた。
生地が安物だったようだ。
ビリビリと音を立てて敗れる。
そしてその時にお互いの顔を見て声を上げる。
「あれ?天音じゃん!」
「確か、緑川杏香」
「今凄い音鳴ったけど大丈夫か?」
杏香の連れらしい男子がやって来た。
「あ、綿井君」
例に漏れず防府高校の大地の友人らしい。
破れた服の代金は大地が支払った。
買い物を一通り終えると私達は食事をする。
「杏香にも彼氏いたんだな」
「まあね、いない方が不思議な世界だから」
それは言えてるな。
「2人ともこの後暇なの?」
大地が言う。
綿井は気まずそうだ。
杏香が言う。
「冗談じゃない!まだ戦争は始まったばかりだよ!」
「杏香の言う通りだ。大地の靴もまだ選んでない!」
2人でくどくどと説教すると再びバーゲンセールに急ぐ。
年甲斐もなく派手な服装を選ぶ婆と格闘を繰り広げる。
もちろん実力行使じゃない。
お互い毒を吐きまくる。
「あんたみたいな小娘が買う服じゃない!」
「おばさんがいい歳こいて若者ぶってんじゃねーよ!」
女性にとってバーゲンとは戦場。
一通り買うとコーヒーショップで休憩する。
その際にSHに招待した。
そして店を出るとお互い家に帰る。
「あ、今日だったんだ!」
家に帰ると部屋にいる茜に告げる。
「私も狙ってるのあったのに!」
「茜はネットショップで買えばいいだろ?」
「やっぱ素材とか触ってみないと怪しくない?」
茜の言う通りだな。
食事をして風呂に入って自室に戻る際にパパに呼び止められる。
「ワゴンセールで懐かしいゲームが売ってあってね。面白いからやってみるといいよ」
「冬夜さんはどうしていつもそうなんですか!天音の勉強時間を削るような真似してはいけません」
「そんな事言っても天音はどうせ勉強しないよ」
「それを認めるのは父親としてどうなんですか!?」
パパはそう言っていつも愛莉に怒られている。
貰ったゲームをして遊んでいたら大地からメッセージが届いた。
大地に渡した紙袋の中に私の分で買った下着が入ってたらしい。
そんな趣味を見つけたのか!?と追及される大地をフォローして欲しいと言っている。
大地にそんな度胸ねーよ。
まあ、大地のお母さんと話をして私の物だと伝えた。
それだけじゃ面白くない。
「大地の家に泊まることもあると思うので置いておいてください」
「そういう事ならわかったわ」
大地のお母さんは意外と理解がある。
一通りすむと私達はベッドに入る。
もう連休も終わりを告げていた。
(2)
桜丘高校に入学してから毎日の事だった。
平日は彼の姿を見て胸が締め付けられる想いをする。
休日は彼の姿を見れなくてただただ切なくて泣きたくなる。
私は彼の虜になっていた。
その事はを友達の渡辺茉里奈に相談したら「それって恋じゃね?」と言われた。
ああ、私は初恋をしたんだ。
初恋は実らないという言葉をよく耳にする。
お互いどう接していいか分からなくて気持ちが空回りして想いがすれ違って上手くいかないんだそうだ。
現に私は彼にどう話しかけていいか分からずにいた。
そして一月が過ぎて連休に入った。
会えない日が続く。
意味もなく泣いてしまう日々を過ごす。
どうしたらいいか分からない。
「だいたいそれ誰だよ?」
茉里奈が聞いていた。
名前すら知らない。
桜丘高校の制服を着ていたから同じ学校なのは間違いなさそうだけど。
「今度隠し撮りでもいいから写真撮れよ!すぐ特定してやるから!」
茉里奈はそういうけどそれって犯罪じゃない?
「私、加織と一緒のバスだから確かめるよ!」
友達の相坂利香が言った。
まあ、このクラスの大体の女子は同じバスに乗る。
翌日確かめる事にした。
そしてその人を教える。
利香は一目見て言った。
「特定するまでもないじゃん!加織知らなかったの?」
彼の名前は有村蒼汰。
名前を聞いてああ、と思うほどの有名人。
桜丘高校の1年生女子なら一度は耳にしたことがある有名人。
一番人気のある男子だった。
当然沢山の人が告白した。
そして振られた。
理由は簡単。
有村君には彼女がいるから。
さすがに絶望的だった。
勝負を挑む前から勝敗が決まっていた。
その日はさすがに落ち込んでいた。
やはり初恋は実らないのだろうか?
帰りに利香がいつもと違うバス停で降りる。
「行くよ」
行くってどこに?
そこは住宅地にある一件の喫茶店。
ドアを開けて入るとテーブルに着く。
注文を聞きに来た男性は……有村蒼汰君だった。
「とりあえずコーヒーを二つ。それと、有村君仕事何時に終わるかな?」
「お客様、そういう個人情報はお教えできません」
「固い事言わないでさ。ちょっとだけ時間欲しいんだけど」
「蒼汰、今日はもう上がって良いぞ!どうせ今日はお客さんあまり来ないし」
店のマスターが言う。
「……じゃあ、すぐ着替えてくるから」
そう言って有村君は奥の部屋に行く。
着替えてくると私の隣に座った。
そんな大胆な人だったの?
簡単な勘違いだ。
有村君は利香が用事があると思ったらしい。
だから利香の向かいの……私の隣に座った。
「で、どういう用なの?」
うんざりした様子は全く見せない。
本当は気づいているはず。
何度も経験しているはずなのだから。
「それは加織にきいて」
利香が言うと有村君は私の顔を見る。
ここまで来たら玉砕するしかないな。
「桜丘高校万歳!」とでも叫びたいくらいだ。
実際特攻した人は「お母さん!!」とか大切な人の名前を叫びながら散っていったらしいけど。
覚悟を決めて想いを打ち明ける。
そして予想した通りの解答が返って来た。
「ごめん、俺今付き合ってる人いるから無理だ」
噂は本当だったらしい。
誠実な人なんだな。
「お友達でも構いません。だめですか?」
見苦しくすがる私。
「そういうのってお互い辛いだけだと思う。だからごめんね」
そう言って席を立つと店を出ようとする。
そんな有村君に「待って」と呼び止める。
「今日はごめんね。ありがとう。すっきりした」
そう言って無理矢理笑顔を作る。
「……うん」
有村君はそう言って店を出て行った。
「……そのいっぱいはおじさんの奢りにしといてやるよ。ゆっくりしてけ」
店のマスターが言う。
私は思いっきり泣いていた。
利香が何か慰めの言葉をかけてくれている。
スッキリしたとは言えない心境。
まだ、終わってない。終わらせたくない。
そんな思いを抱いたまま一夜を過ごしそして翌日の放課後また1人で喫茶店を訪ねた。
「蒼汰なら今日付けでやめたよ」
私とそんなにかかわりを持ちたくないんだろうか?
まさか学校を辞めたりしないよね?
罪悪感に苛まされる一日だった。
それから少ししてある噂が学校に流れた。
有村蒼汰がフリーになった。
彼女に別れを告げたらしい。
真偽は定かではないけどチャンスは来たみたいだ。
一度玉砕してるんだ。恐れる事は何も無い。
HRが終ったらすぐに有村君に話をしよう。
教室に行った方がいいのか?それとも昇降口で待つべきか。
そんな事を考えているうちに時間が来た。
教室に行こう!
HRが終るその前に。
しかしそうはさせてもらえなかった。
「加織!ちょっと待って」
茉里奈が私を呼び止める。
急いでるんだけどな。
「どうしたの?」
「放課後空いてない?」
「ごめん今日ちょっと急いでるの」
「なんか急用か?今日じゃないと駄目なのか?」
「駄目ってわけじゃないけど」
素直に言えば行かせてもらえるよね?
そう思ってこれから有村君の所に行くところだと説明した。
茉里奈達は笑っていた。
「加織少しはスマホ見ろよ!そういう話なら好都合だ今から昇降口行くぞ」
どういう事?
考える暇もなく茉里奈は私の腕を引っ張っていた。
「紗理奈!連れて来たぞ!」
茉里奈がそう言うと茉里奈の姉の渡辺紗理奈とその友達の多田水奈、そしてなぜか有村君が待っていた。
有村君は多田先輩の教室に来たらしい。
理由は調理科にツテがないから。
同じ普通科の先輩である多田先輩ならSHに所属しているからひょっとしてと思って相談に行ったらしい。
私を探していたそうだ。
どうしてだろう?
「あの、用件って?」
私の気持ちを伝えたかったけど先に聞くべきなんじゃないのかと思った。
有村君は私をじっと見ている。
なぜか心臓が音を立てている。
「蒼汰!ここまできたんだからシャキッとしろ!」
多田先輩が言うと有村君は決意したようだ。
「今更こんな事を俺が言うのもおかしいし間違っているかもしれない。でもちゃんと伝えないと俺も気持ちがすっきりしないんだ」
「回りくどい事は止めろ!」
「……俺は佐賀原さんの事が好きになりました。付き合ってください」
え?
「どういう事?」
思ったことを口にしていた。
有村君から説明を受けた。
違和感を感じたのはあの日有村君が店を出たときに作った笑顔だったそうだ。
それが無理していて痛々しい物だとすぐにわかった。
そんな顔いくつも見てきたはずなのにその夜頭から消し去ることはできなかった。
また私が来るかもしれない。
ちゃんときっぱり縁を切らないと。
そう思ってバイトを止めた。
でもその事を後悔していたらしい。
有村君の本音は既に変わっていた。
私に会いたいと願っていた。
その願いは好きだという気持ちだと気づいてしまった。
有村君の彼女は幼馴染。
幼馴染=恋人だと錯覚していたらしい。
有村君は私に一目惚れをしてしまったのだと自覚した。
だから彼女に別れを告げた。
ちゃんと気持ちを整理してから私に告白しようと思ったらしい。
「自分勝手な話だと思うけど俺と付き合ってくれないか?」
私は神に見捨てられたわけじゃないらしい。
上手く言葉が出てこない。
だから行動で示した。
私は有村君を抱きしめる。
「ありがとう、加織って呼んでもいいか?」
「うん、私も蒼汰って呼ぶ」
「じゃあ、用件済んだ事だしSAPにでも寄って帰るか!天音達も校門で待ってる」
紗理奈先輩が言うと私達は靴を履き替えて学校を出る。
あなたの選んだ道は私で良かったの?
そんな事分からないけど、ただ泣いて笑って過ごす日々に隣に立っていられることが私が生きる意味になる。
この広い空の下で私達は出逢ってこいをしていつまでも……。
「何をそんなに必死になってるの?」
「良いからこれ持て!ああ、こっちの方がいいかな!?」
私達はショッピングモールに買い物に来ていた。
バーゲンは戦場だ。
最後に放出されるレア物を手に入れる為に血眼になって争う。
財布の中身が制限されてる私達女子高生も例外ではない。
まあ、私の場合は大地が買ってくれるんだけど。
しかし私が狙っているのは私の服じゃない。
大地の服だ。
大地の姉・石原美希から忠告を受けていた。
「大地に服を選ばせたらいけない」
もちろん私の分も買うけど。
もちろんシーズン的にそろそろ終わるものが安売りされるのがバーゲンだけどそのくらい知ってる。
4月末からGW明けまでにあるバーゲンは春物の処分市。
新作というものにこだわりがないなら秋に使えそうなものを買っておくという手段がある。
まあ、秋になったら新作を買ったりもするんだけど。
それに翼から聞いた。
オールシーズンつかえる物なら安い物を買える今がチャンスだ。
例えるなら下着とか靴とか。
男どもは靴に高い金を払うのはいいが、どうしてやたらカラフルなジョギングシューズなどを買うのだろう?
いわゆるハイテクシューズと呼ばれるものだ。
大地も例外ではなく履いている。
黒い学ランにカラフルなジョギングシューズ。
幸い大地は腰パンはしない。
光太は相変わらず腰パンだと麗華から聞いた。
「やめて」と言っても直す気が無いらしい。
せっかく足が長いのにわざわざ短く見せて何のメリットがあるんだ?
中坊の不良じゃないんだぞ!
大地も放っておくとインナーにどくろのイラストや英文字、翼や十字架のイラストの服を好む傾向にある。
美希の言う通りだ。
あ、このカットソーいいな。
手に取ると誰かが引っ張る。
「先に手を付けたのは私だ!」
「いや、私の方が2.5秒早かった!」
そう言いあって2人で引っ張るとどうやら二人共騙された事に気が付いた。
生地が安物だったようだ。
ビリビリと音を立てて敗れる。
そしてその時にお互いの顔を見て声を上げる。
「あれ?天音じゃん!」
「確か、緑川杏香」
「今凄い音鳴ったけど大丈夫か?」
杏香の連れらしい男子がやって来た。
「あ、綿井君」
例に漏れず防府高校の大地の友人らしい。
破れた服の代金は大地が支払った。
買い物を一通り終えると私達は食事をする。
「杏香にも彼氏いたんだな」
「まあね、いない方が不思議な世界だから」
それは言えてるな。
「2人ともこの後暇なの?」
大地が言う。
綿井は気まずそうだ。
杏香が言う。
「冗談じゃない!まだ戦争は始まったばかりだよ!」
「杏香の言う通りだ。大地の靴もまだ選んでない!」
2人でくどくどと説教すると再びバーゲンセールに急ぐ。
年甲斐もなく派手な服装を選ぶ婆と格闘を繰り広げる。
もちろん実力行使じゃない。
お互い毒を吐きまくる。
「あんたみたいな小娘が買う服じゃない!」
「おばさんがいい歳こいて若者ぶってんじゃねーよ!」
女性にとってバーゲンとは戦場。
一通り買うとコーヒーショップで休憩する。
その際にSHに招待した。
そして店を出るとお互い家に帰る。
「あ、今日だったんだ!」
家に帰ると部屋にいる茜に告げる。
「私も狙ってるのあったのに!」
「茜はネットショップで買えばいいだろ?」
「やっぱ素材とか触ってみないと怪しくない?」
茜の言う通りだな。
食事をして風呂に入って自室に戻る際にパパに呼び止められる。
「ワゴンセールで懐かしいゲームが売ってあってね。面白いからやってみるといいよ」
「冬夜さんはどうしていつもそうなんですか!天音の勉強時間を削るような真似してはいけません」
「そんな事言っても天音はどうせ勉強しないよ」
「それを認めるのは父親としてどうなんですか!?」
パパはそう言っていつも愛莉に怒られている。
貰ったゲームをして遊んでいたら大地からメッセージが届いた。
大地に渡した紙袋の中に私の分で買った下着が入ってたらしい。
そんな趣味を見つけたのか!?と追及される大地をフォローして欲しいと言っている。
大地にそんな度胸ねーよ。
まあ、大地のお母さんと話をして私の物だと伝えた。
それだけじゃ面白くない。
「大地の家に泊まることもあると思うので置いておいてください」
「そういう事ならわかったわ」
大地のお母さんは意外と理解がある。
一通りすむと私達はベッドに入る。
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(2)
桜丘高校に入学してから毎日の事だった。
平日は彼の姿を見て胸が締め付けられる想いをする。
休日は彼の姿を見れなくてただただ切なくて泣きたくなる。
私は彼の虜になっていた。
その事はを友達の渡辺茉里奈に相談したら「それって恋じゃね?」と言われた。
ああ、私は初恋をしたんだ。
初恋は実らないという言葉をよく耳にする。
お互いどう接していいか分からなくて気持ちが空回りして想いがすれ違って上手くいかないんだそうだ。
現に私は彼にどう話しかけていいか分からずにいた。
そして一月が過ぎて連休に入った。
会えない日が続く。
意味もなく泣いてしまう日々を過ごす。
どうしたらいいか分からない。
「だいたいそれ誰だよ?」
茉里奈が聞いていた。
名前すら知らない。
桜丘高校の制服を着ていたから同じ学校なのは間違いなさそうだけど。
「今度隠し撮りでもいいから写真撮れよ!すぐ特定してやるから!」
茉里奈はそういうけどそれって犯罪じゃない?
「私、加織と一緒のバスだから確かめるよ!」
友達の相坂利香が言った。
まあ、このクラスの大体の女子は同じバスに乗る。
翌日確かめる事にした。
そしてその人を教える。
利香は一目見て言った。
「特定するまでもないじゃん!加織知らなかったの?」
彼の名前は有村蒼汰。
名前を聞いてああ、と思うほどの有名人。
桜丘高校の1年生女子なら一度は耳にしたことがある有名人。
一番人気のある男子だった。
当然沢山の人が告白した。
そして振られた。
理由は簡単。
有村君には彼女がいるから。
さすがに絶望的だった。
勝負を挑む前から勝敗が決まっていた。
その日はさすがに落ち込んでいた。
やはり初恋は実らないのだろうか?
帰りに利香がいつもと違うバス停で降りる。
「行くよ」
行くってどこに?
そこは住宅地にある一件の喫茶店。
ドアを開けて入るとテーブルに着く。
注文を聞きに来た男性は……有村蒼汰君だった。
「とりあえずコーヒーを二つ。それと、有村君仕事何時に終わるかな?」
「お客様、そういう個人情報はお教えできません」
「固い事言わないでさ。ちょっとだけ時間欲しいんだけど」
「蒼汰、今日はもう上がって良いぞ!どうせ今日はお客さんあまり来ないし」
店のマスターが言う。
「……じゃあ、すぐ着替えてくるから」
そう言って有村君は奥の部屋に行く。
着替えてくると私の隣に座った。
そんな大胆な人だったの?
簡単な勘違いだ。
有村君は利香が用事があると思ったらしい。
だから利香の向かいの……私の隣に座った。
「で、どういう用なの?」
うんざりした様子は全く見せない。
本当は気づいているはず。
何度も経験しているはずなのだから。
「それは加織にきいて」
利香が言うと有村君は私の顔を見る。
ここまで来たら玉砕するしかないな。
「桜丘高校万歳!」とでも叫びたいくらいだ。
実際特攻した人は「お母さん!!」とか大切な人の名前を叫びながら散っていったらしいけど。
覚悟を決めて想いを打ち明ける。
そして予想した通りの解答が返って来た。
「ごめん、俺今付き合ってる人いるから無理だ」
噂は本当だったらしい。
誠実な人なんだな。
「お友達でも構いません。だめですか?」
見苦しくすがる私。
「そういうのってお互い辛いだけだと思う。だからごめんね」
そう言って席を立つと店を出ようとする。
そんな有村君に「待って」と呼び止める。
「今日はごめんね。ありがとう。すっきりした」
そう言って無理矢理笑顔を作る。
「……うん」
有村君はそう言って店を出て行った。
「……そのいっぱいはおじさんの奢りにしといてやるよ。ゆっくりしてけ」
店のマスターが言う。
私は思いっきり泣いていた。
利香が何か慰めの言葉をかけてくれている。
スッキリしたとは言えない心境。
まだ、終わってない。終わらせたくない。
そんな思いを抱いたまま一夜を過ごしそして翌日の放課後また1人で喫茶店を訪ねた。
「蒼汰なら今日付けでやめたよ」
私とそんなにかかわりを持ちたくないんだろうか?
まさか学校を辞めたりしないよね?
罪悪感に苛まされる一日だった。
それから少ししてある噂が学校に流れた。
有村蒼汰がフリーになった。
彼女に別れを告げたらしい。
真偽は定かではないけどチャンスは来たみたいだ。
一度玉砕してるんだ。恐れる事は何も無い。
HRが終ったらすぐに有村君に話をしよう。
教室に行った方がいいのか?それとも昇降口で待つべきか。
そんな事を考えているうちに時間が来た。
教室に行こう!
HRが終るその前に。
しかしそうはさせてもらえなかった。
「加織!ちょっと待って」
茉里奈が私を呼び止める。
急いでるんだけどな。
「どうしたの?」
「放課後空いてない?」
「ごめん今日ちょっと急いでるの」
「なんか急用か?今日じゃないと駄目なのか?」
「駄目ってわけじゃないけど」
素直に言えば行かせてもらえるよね?
そう思ってこれから有村君の所に行くところだと説明した。
茉里奈達は笑っていた。
「加織少しはスマホ見ろよ!そういう話なら好都合だ今から昇降口行くぞ」
どういう事?
考える暇もなく茉里奈は私の腕を引っ張っていた。
「紗理奈!連れて来たぞ!」
茉里奈がそう言うと茉里奈の姉の渡辺紗理奈とその友達の多田水奈、そしてなぜか有村君が待っていた。
有村君は多田先輩の教室に来たらしい。
理由は調理科にツテがないから。
同じ普通科の先輩である多田先輩ならSHに所属しているからひょっとしてと思って相談に行ったらしい。
私を探していたそうだ。
どうしてだろう?
「あの、用件って?」
私の気持ちを伝えたかったけど先に聞くべきなんじゃないのかと思った。
有村君は私をじっと見ている。
なぜか心臓が音を立てている。
「蒼汰!ここまできたんだからシャキッとしろ!」
多田先輩が言うと有村君は決意したようだ。
「今更こんな事を俺が言うのもおかしいし間違っているかもしれない。でもちゃんと伝えないと俺も気持ちがすっきりしないんだ」
「回りくどい事は止めろ!」
「……俺は佐賀原さんの事が好きになりました。付き合ってください」
え?
「どういう事?」
思ったことを口にしていた。
有村君から説明を受けた。
違和感を感じたのはあの日有村君が店を出たときに作った笑顔だったそうだ。
それが無理していて痛々しい物だとすぐにわかった。
そんな顔いくつも見てきたはずなのにその夜頭から消し去ることはできなかった。
また私が来るかもしれない。
ちゃんときっぱり縁を切らないと。
そう思ってバイトを止めた。
でもその事を後悔していたらしい。
有村君の本音は既に変わっていた。
私に会いたいと願っていた。
その願いは好きだという気持ちだと気づいてしまった。
有村君の彼女は幼馴染。
幼馴染=恋人だと錯覚していたらしい。
有村君は私に一目惚れをしてしまったのだと自覚した。
だから彼女に別れを告げた。
ちゃんと気持ちを整理してから私に告白しようと思ったらしい。
「自分勝手な話だと思うけど俺と付き合ってくれないか?」
私は神に見捨てられたわけじゃないらしい。
上手く言葉が出てこない。
だから行動で示した。
私は有村君を抱きしめる。
「ありがとう、加織って呼んでもいいか?」
「うん、私も蒼汰って呼ぶ」
「じゃあ、用件済んだ事だしSAPにでも寄って帰るか!天音達も校門で待ってる」
紗理奈先輩が言うと私達は靴を履き替えて学校を出る。
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そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
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