姉妹チート

和希

文字の大きさ
115 / 535

僕達は自由

しおりを挟む
(1)

「何をそんなに必死になってるの?」
「良いからこれ持て!ああ、こっちの方がいいかな!?」

 私達はショッピングモールに買い物に来ていた。
 バーゲンは戦場だ。
 最後に放出されるレア物を手に入れる為に血眼になって争う。
 財布の中身が制限されてる私達女子高生も例外ではない。
 まあ、私の場合は大地が買ってくれるんだけど。
 しかし私が狙っているのは私の服じゃない。
 大地の服だ。
 大地の姉・石原美希から忠告を受けていた。

「大地に服を選ばせたらいけない」

 もちろん私の分も買うけど。
 もちろんシーズン的にそろそろ終わるものが安売りされるのがバーゲンだけどそのくらい知ってる。
 4月末からGW明けまでにあるバーゲンは春物の処分市。
 新作というものにこだわりがないなら秋に使えそうなものを買っておくという手段がある。
 まあ、秋になったら新作を買ったりもするんだけど。
 それに翼から聞いた。
 オールシーズンつかえる物なら安い物を買える今がチャンスだ。
 例えるなら下着とか靴とか。
 男どもは靴に高い金を払うのはいいが、どうしてやたらカラフルなジョギングシューズなどを買うのだろう?
 いわゆるハイテクシューズと呼ばれるものだ。
 大地も例外ではなく履いている。
 黒い学ランにカラフルなジョギングシューズ。
 幸い大地は腰パンはしない。
 光太は相変わらず腰パンだと麗華から聞いた。
「やめて」と言っても直す気が無いらしい。
 せっかく足が長いのにわざわざ短く見せて何のメリットがあるんだ?
 中坊の不良じゃないんだぞ!
 大地も放っておくとインナーにどくろのイラストや英文字、翼や十字架のイラストの服を好む傾向にある。
 美希の言う通りだ。
 あ、このカットソーいいな。
 手に取ると誰かが引っ張る。

「先に手を付けたのは私だ!」
「いや、私の方が2.5秒早かった!」

 そう言いあって2人で引っ張るとどうやら二人共騙された事に気が付いた。
 生地が安物だったようだ。
 ビリビリと音を立てて敗れる。
 そしてその時にお互いの顔を見て声を上げる。

「あれ?天音じゃん!」
「確か、緑川杏香」
「今凄い音鳴ったけど大丈夫か?」

 杏香の連れらしい男子がやって来た。

「あ、綿井君」

 例に漏れず防府高校の大地の友人らしい。
 破れた服の代金は大地が支払った。
 買い物を一通り終えると私達は食事をする。

「杏香にも彼氏いたんだな」
「まあね、いない方が不思議な世界だから」

 それは言えてるな。

「2人ともこの後暇なの?」

 大地が言う。
 綿井は気まずそうだ。
 杏香が言う。

「冗談じゃない!まだ戦争は始まったばかりだよ!」
「杏香の言う通りだ。大地の靴もまだ選んでない!」

 2人でくどくどと説教すると再びバーゲンセールに急ぐ。
 年甲斐もなく派手な服装を選ぶ婆と格闘を繰り広げる。
 もちろん実力行使じゃない。
 お互い毒を吐きまくる。

「あんたみたいな小娘が買う服じゃない!」
「おばさんがいい歳こいて若者ぶってんじゃねーよ!」

 女性にとってバーゲンとは戦場。
 一通り買うとコーヒーショップで休憩する。
 その際にSHに招待した。
 そして店を出るとお互い家に帰る。

「あ、今日だったんだ!」

 家に帰ると部屋にいる茜に告げる。

「私も狙ってるのあったのに!」
「茜はネットショップで買えばいいだろ?」
「やっぱ素材とか触ってみないと怪しくない?」

 茜の言う通りだな。
 食事をして風呂に入って自室に戻る際にパパに呼び止められる。

「ワゴンセールで懐かしいゲームが売ってあってね。面白いからやってみるといいよ」
「冬夜さんはどうしていつもそうなんですか!天音の勉強時間を削るような真似してはいけません」
「そんな事言っても天音はどうせ勉強しないよ」
「それを認めるのは父親としてどうなんですか!?」

 パパはそう言っていつも愛莉に怒られている。
 貰ったゲームをして遊んでいたら大地からメッセージが届いた。
 大地に渡した紙袋の中に私の分で買った下着が入ってたらしい。
 そんな趣味を見つけたのか!?と追及される大地をフォローして欲しいと言っている。
 大地にそんな度胸ねーよ。
 まあ、大地のお母さんと話をして私の物だと伝えた。
 それだけじゃ面白くない。

「大地の家に泊まることもあると思うので置いておいてください」
「そういう事ならわかったわ」

 大地のお母さんは意外と理解がある。
 一通りすむと私達はベッドに入る。
 もう連休も終わりを告げていた。

(2)

 桜丘高校に入学してから毎日の事だった。
 平日は彼の姿を見て胸が締め付けられる想いをする。
 休日は彼の姿を見れなくてただただ切なくて泣きたくなる。
 私は彼の虜になっていた。
 その事はを友達の渡辺茉里奈に相談したら「それって恋じゃね?」と言われた。
 ああ、私は初恋をしたんだ。
 初恋は実らないという言葉をよく耳にする。
 お互いどう接していいか分からなくて気持ちが空回りして想いがすれ違って上手くいかないんだそうだ。
 現に私は彼にどう話しかけていいか分からずにいた。
 そして一月が過ぎて連休に入った。
 会えない日が続く。
 意味もなく泣いてしまう日々を過ごす。
 どうしたらいいか分からない。

「だいたいそれ誰だよ?」

 茉里奈が聞いていた。
 名前すら知らない。
 桜丘高校の制服を着ていたから同じ学校なのは間違いなさそうだけど。

「今度隠し撮りでもいいから写真撮れよ!すぐ特定してやるから!」

 茉里奈はそういうけどそれって犯罪じゃない?

「私、加織と一緒のバスだから確かめるよ!」

 友達の相坂利香が言った。
 まあ、このクラスの大体の女子は同じバスに乗る。
 翌日確かめる事にした。
 そしてその人を教える。
 利香は一目見て言った。

「特定するまでもないじゃん!加織知らなかったの?」

 彼の名前は有村蒼汰。
 名前を聞いてああ、と思うほどの有名人。
 桜丘高校の1年生女子なら一度は耳にしたことがある有名人。
 一番人気のある男子だった。
 当然沢山の人が告白した。
 そして振られた。
 理由は簡単。
 有村君には彼女がいるから。
 さすがに絶望的だった。
 勝負を挑む前から勝敗が決まっていた。
 その日はさすがに落ち込んでいた。
 やはり初恋は実らないのだろうか?
 帰りに利香がいつもと違うバス停で降りる。

「行くよ」

 行くってどこに?
 そこは住宅地にある一件の喫茶店。
 ドアを開けて入るとテーブルに着く。
 注文を聞きに来た男性は……有村蒼汰君だった。

「とりあえずコーヒーを二つ。それと、有村君仕事何時に終わるかな?」
「お客様、そういう個人情報はお教えできません」
「固い事言わないでさ。ちょっとだけ時間欲しいんだけど」
「蒼汰、今日はもう上がって良いぞ!どうせ今日はお客さんあまり来ないし」

 店のマスターが言う。

「……じゃあ、すぐ着替えてくるから」

 そう言って有村君は奥の部屋に行く。
 着替えてくると私の隣に座った。
 そんな大胆な人だったの?
 簡単な勘違いだ。
 有村君は利香が用事があると思ったらしい。
 だから利香の向かいの……私の隣に座った。

「で、どういう用なの?」

 うんざりした様子は全く見せない。
 本当は気づいているはず。
 何度も経験しているはずなのだから。

「それは加織にきいて」

 利香が言うと有村君は私の顔を見る。
 ここまで来たら玉砕するしかないな。
「桜丘高校万歳!」とでも叫びたいくらいだ。
 実際特攻した人は「お母さん!!」とか大切な人の名前を叫びながら散っていったらしいけど。
 覚悟を決めて想いを打ち明ける。
 そして予想した通りの解答が返って来た。

「ごめん、俺今付き合ってる人いるから無理だ」

 噂は本当だったらしい。
 誠実な人なんだな。

「お友達でも構いません。だめですか?」

 見苦しくすがる私。

「そういうのってお互い辛いだけだと思う。だからごめんね」

 そう言って席を立つと店を出ようとする。
 そんな有村君に「待って」と呼び止める。

「今日はごめんね。ありがとう。すっきりした」

 そう言って無理矢理笑顔を作る。 

「……うん」

 有村君はそう言って店を出て行った。

「……そのいっぱいはおじさんの奢りにしといてやるよ。ゆっくりしてけ」

 店のマスターが言う。
 私は思いっきり泣いていた。
 利香が何か慰めの言葉をかけてくれている。
 スッキリしたとは言えない心境。
 まだ、終わってない。終わらせたくない。
 そんな思いを抱いたまま一夜を過ごしそして翌日の放課後また1人で喫茶店を訪ねた。

「蒼汰なら今日付けでやめたよ」

 私とそんなにかかわりを持ちたくないんだろうか?
 まさか学校を辞めたりしないよね?
 罪悪感に苛まされる一日だった。
 それから少ししてある噂が学校に流れた。
 有村蒼汰がフリーになった。
 彼女に別れを告げたらしい。
 真偽は定かではないけどチャンスは来たみたいだ。
 一度玉砕してるんだ。恐れる事は何も無い。
 HRが終ったらすぐに有村君に話をしよう。
 教室に行った方がいいのか?それとも昇降口で待つべきか。
 そんな事を考えているうちに時間が来た。
 教室に行こう!
 HRが終るその前に。
 しかしそうはさせてもらえなかった。

「加織!ちょっと待って」

 茉里奈が私を呼び止める。
 急いでるんだけどな。

「どうしたの?」
「放課後空いてない?」
「ごめん今日ちょっと急いでるの」
「なんか急用か?今日じゃないと駄目なのか?」
「駄目ってわけじゃないけど」

 素直に言えば行かせてもらえるよね?
 そう思ってこれから有村君の所に行くところだと説明した。
 茉里奈達は笑っていた。

「加織少しはスマホ見ろよ!そういう話なら好都合だ今から昇降口行くぞ」

 どういう事?
 考える暇もなく茉里奈は私の腕を引っ張っていた。

「紗理奈!連れて来たぞ!」

 茉里奈がそう言うと茉里奈の姉の渡辺紗理奈とその友達の多田水奈、そしてなぜか有村君が待っていた。
 有村君は多田先輩の教室に来たらしい。
 理由は調理科にツテがないから。
 同じ普通科の先輩である多田先輩ならSHに所属しているからひょっとしてと思って相談に行ったらしい。
 私を探していたそうだ。
 どうしてだろう?

「あの、用件って?」

 私の気持ちを伝えたかったけど先に聞くべきなんじゃないのかと思った。
 有村君は私をじっと見ている。
 なぜか心臓が音を立てている。

「蒼汰!ここまできたんだからシャキッとしろ!」

 多田先輩が言うと有村君は決意したようだ。

「今更こんな事を俺が言うのもおかしいし間違っているかもしれない。でもちゃんと伝えないと俺も気持ちがすっきりしないんだ」
「回りくどい事は止めろ!」
「……俺は佐賀原さんの事が好きになりました。付き合ってください」

 え?

「どういう事?」

 思ったことを口にしていた。
 有村君から説明を受けた。
 違和感を感じたのはあの日有村君が店を出たときに作った笑顔だったそうだ。
 それが無理していて痛々しい物だとすぐにわかった。
 そんな顔いくつも見てきたはずなのにその夜頭から消し去ることはできなかった。
 また私が来るかもしれない。
 ちゃんときっぱり縁を切らないと。
 そう思ってバイトを止めた。
 でもその事を後悔していたらしい。
 有村君の本音は既に変わっていた。
 私に会いたいと願っていた。
 その願いは好きだという気持ちだと気づいてしまった。
 有村君の彼女は幼馴染。
 幼馴染=恋人だと錯覚していたらしい。
 有村君は私に一目惚れをしてしまったのだと自覚した。
 だから彼女に別れを告げた。
 ちゃんと気持ちを整理してから私に告白しようと思ったらしい。

「自分勝手な話だと思うけど俺と付き合ってくれないか?」

 私は神に見捨てられたわけじゃないらしい。
 上手く言葉が出てこない。
 だから行動で示した。
 私は有村君を抱きしめる。

「ありがとう、加織って呼んでもいいか?」
「うん、私も蒼汰って呼ぶ」
「じゃあ、用件済んだ事だしSAPにでも寄って帰るか!天音達も校門で待ってる」

 紗理奈先輩が言うと私達は靴を履き替えて学校を出る。
 あなたの選んだ道は私で良かったの?
 そんな事分からないけど、ただ泣いて笑って過ごす日々に隣に立っていられることが私が生きる意味になる。
 この広い空の下で私達は出逢ってこいをしていつまでも……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...