姉妹チート

和希

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傷跡

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(1)

 連休前。
 私のグループはしょうもない事をしていた。
 相坂利香に対するイジメ。
 理由なは何となく。
 何となくでイジメられる相坂さんを可哀そうだと思ったけど行動はしなかった。
 そんな私をグループの仲間は見過ごさなった。

「佐上もやれよ!」

 普通に断った。

「下らないから付き合ってられない」

 そんな事を言ったら楽しんでる連中は不愉快だったのだろう。
 私はその日のうちにグループを追放された。
 別にいいやと思ってた。
 そして連休が明け教室に行くと標的が私に変わったことがすぐにわかった。
 机に思いっきり落書きされている。
 席に向かおうとすると足を引っかけられる。
 上履きに仕掛けられた画鋲。
 トイレに入ると上から水を浴びせられる。
 お昼休みになると私は一人で弁当を食べていた。
 皆がくすくすと笑っている。
 そんな中声をかけてくれたのが相坂さんだった。

「こっちおいでよ」

 そこには少人数ながらも誰も手が出せない桜丘高校最悪のグループSHのメンバーがいた。
 手出ししたら容赦しない。
 誰も手が出せないグループ。
 現に私が席を移動すると元居たグループは誰も何も言わなかった。

「話は聞いたぜ。お前あいつらに混ざって利香を虐めなかったんだってな」

 相坂さんから聞いたんだろう。
 1年生のリーダーらしい渡辺茉里奈が言った。

「しょうもない事に付き合いたくなかっただけだよ」
「それを面と向かって言える勇気が凄いって言ってんだよ」

「そんなに水遊びしたいなら私も混ざってやるよ!」と言って私に水を浴びせた後のグループに徹底的に水をかけていた茉里奈の方が凄いと思うけど。

「ま、いいや。どうせぼっちなんだろ?私達のグループに入れよ」

 多分拒否権はないんだろうな。
 どうせ暇だしいいか。
 私はSHに入った。

「じゃ、今日はゲーセンでも寄って帰るか!」

 皆楽しそうにしていた。
 華の女子高生生活というものだろうか?
 その日の帰り、下足箱を開けると口にするのもおぞましいものが詰め込まれていた。
 よくこんなにため込んでいたなと感心するくらいだ。
 明らかな異臭が辺りを包み込む。

「なんだこれ!?」

 茉里奈達もそれを察知したらしい。
 私の下足箱を見て驚く。
 誰の仕業は大体わかる。
 こんな屈辱は初めてだ。
 悔しい……。
 気づいたら涙があふれていた。
 茉里奈達がそれを片付けてくれた。
 そして茉里奈達はそれだけで済ませなかった。
 SHに手を出したらただじゃ済まない。
 それは事実だったようだ。
 翌日教室にはいると「佐上!!」と怒声が聞こえる。
 グループの連中だ。
 彼女達の机の上には昨日下足箱に詰め込まれていた汚物が入ったビニール袋と「てめえの後始末くらい自分でしろ!小学校の時に習わなかったのか!?」と書か  れたメモがあった。

「お前の仕業だろうが!ふざけやがって」
「それやったの私だけどなんか文句あるなら聞いてやるぜ」

 私の背後に立っていた茉里奈が言った。
 グループの連中は何も言わずに席に戻った。
 それ以来授業中も何もしてこなくなった。
 お昼休みはSHの皆と楽しく過ごしてる。

「今日は2年生と合流だってよ」

 茉里奈が言う。
 私はやっと自分の居場所を見つけたようだった。

(2)

「なんでお前が有村君と付き合ってるんだよ!」

 そんな思いが詰まった手紙が今日も下足箱の中に詰め込まれていた。

「死ね」「この尻軽女」「盗人」

 言われたい放題だった。
 全部読むのも面倒なので纏めて燃えるゴミに捨てたいけど、中にはカッターナイフの刃やカミソリの刃が入ってるのもあるので一つ一つ確認するしかなかった。

「今日もモテてるな」

 そういうのは渡辺茉里奈。
 もちろん彼女は冗談で言ってるだけだ。
 私は有村君の告白を受けてそして返事を返した。
 その事はあっという間に学校内に知れ渡る。
 男女交際禁止なんて馬鹿げた校則は無いからどうでもいいんだけど、嫉妬を買う羽目になったようだ。
 犯人は分かっている。
 有村君……あ、蒼汰って呼ぶんだった。蒼汰に振られた女子が集められて結成されたグループ「ふられ同盟」の仕業。
 私も招待された事があるけど。蒼汰の悪口をただ言い連ねるだけのグループなんて惨めだ。
 当たり前のように拒否した。
 女子の中ではSHのメンバー以外に話しかけてくる者はいなかった。
 あとは男子の目線が気になるくらいか。
 ふられ同盟が流したデマ、はした金で誰にでも股を開く。
 そんな噂を信じているらしい。
 蒼汰ともそんな関係になったことがないのに私はテクニシャンと称されていた。
 学校にいる間はSHの仲間が、登下校は蒼汰がいてくれるから何とも思わなかった。
 それがさらに反感を呼んでいたらしいのだけど。
 ある日男子に呼び出された。
 告白?
 私には蒼汰がいる事は知れ渡っているはずなのに。
 茉里奈達に「先に行ってて」というと呼び出された場所に向かう。
 すると男子数人が待っていた。

「はいこれ」

 お金を渡される。

「場所はどこでもいいんだろ?ここなら人来ないからさ」

 意味を理解した私は怒りを覚えた。

「ふざけないで!」

 私は手を振り払うと踵を返して帰ろうとした。
 しかし私の肩を誰かが抑える。

「離して!」
「いいじゃんか。慣れてるんだろ?こういうの」
「僕の初めて受け取ってください」

 下卑た笑い声がする。
 ちょっとこの人数じゃ逃げきれそうにない。
 こんな下種の前で泣き叫ぶのも嫌だ。
 頭が混乱していると男子の一人が吹き飛んだ。
 赤いショートヘアの多分上級生が立っていた。

「SHに手を出したらどうなるのか知らないのか?今年の新入生は」

 赤髪の子がそういうと蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。
 私は昇降口でメモを落としていたらしい。
 それを見た仲間がやってきた。
 その中には蒼汰もいた。

「大丈夫か!?加織」
「うん、ちょっと危なかったけど」
「全く、金払うんだったら大人しく風俗でも行っとけってんだよな!」

 赤髪の子が言う。

「まあ無事だったみたいだし今日はさっさと帰ろうぜ。蒼汰はちゃんと加織送ってやれよ」

 茉里奈がいうと蒼汰は頷いた。
 駅前のバス停に向かうとバスに乗ってそしてバス停で降りる。
 蒼汰の家の方がバス停から近いのだけど私の家の前まで送ってくれた。
 蒼汰は何か悩んでるみたいだ。
 どうしたのだろう?

「どうしたの?」
「いや、加織が噂になってるような奴じゃないのは分かってるんだけど」

 そんな事を気にしていたの?

「心配しなくても私はまだ処女だよ」
「そうじゃないんだ……」
「じゃあ、どういう事?」
「俺の前でくらいガード緩めてくれてもいいんじゃないかって」
「……それ本気で言ってるの?」
「あ、いや。やっぱり加織は俺のものだって主張くらいしたいだろ?お互いもう高校生なんだしさ」

 もっとスマートに誘ってくれる男子だと思ったのに、男子というのはどうしてこう無様なんだろうか?

「じゃあ、週末に泊まりに行くから準備しておいてね」
「って俺の家で!?」
「娘の父親の方が大変だと思うけど?」

 多分私の父親はエアハンマーもって怒鳴り込んでくるような親じゃないと思うけどね。

「じゃあ、また明日ね」
「分かった」

 そう言って帰る蒼汰を見送る。
 蒼汰と付き合いだして色んな蒼汰を見れるようになった。
 さっきもそうだけど私の前でだけ醜態を曝け出す蒼汰。
 そんな蒼汰がますます好きになっていくのを感じていた。
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