姉妹チート

和希

文字の大きさ
151 / 535

祈り続ける者

しおりを挟む
(1)

「今日も冷えるな~」

 旦那の誠がそう言っている。
 そう思うならもう少し厚着しろ。
 ていうかベッドに入れ。

「そんなに寒いなら暖房少し入れようか?」
「分かってないな神奈は」

 何のことだ?

「こういう時は裸で温め合うのが常識だろ」

 この馬鹿がまた始まった。

「馬鹿な事言ってないでさっさと寝るぞ」
「馬鹿な事って何だよ神奈。俺は身も心も凍えてるぞ」

 本当にどうしようもない奴だ。
 でも最近誠に冷たくしてるかもしれない。
 誠司を産んでからご無沙汰だった。
 浮気されるよりはマシか。

「私はもう若くない。お前の欲求に応えられるか分からんぞ」
「妻に求愛するのに不満なんてあるわけないだろ」
「わかったよ」

 そう言って服を脱いで布団に入る。
 誠も服を脱いで布団に入ってくる。

「言っとくがお前が見てるような女優の動きは無理だからな」
「恥ずかしがってる神奈が溜まらないんだよ」
「お前が言うとどうして変態じみて聞こえで来るんだ?」

 そんな事を話しながら誠が私を抱いた時電話が鳴った。
 親機はリビングに置いてあるが子機を寝室に置いてある。

「いいタイミングでこんな遅い時間に誰だ。間違い電話だったらただじゃおかないぞ」

 ぶつぶつ言いながら誠はベッドを出て電話に出る。

「もしもし、多田ですけどどちら様?え、お母さん?」

 多分私の方のお母さん。
 誠の方の両親は同居しているから。
 何があったのだろう。
 誠の様子がおかしい。

「分かりました今から行きます」

 誠が電話を切ると私は内容を聞いていた。

「神奈、服を着ろ。出かけるぞ」
「どうしたんだ?その気にさせておいてそれは無いんじゃないのか?」
「それは済まないけど別問題だ。流石に妻と寝てましたじゃ恰好が付かない」
「何があった?」
「神奈のおじさんが襲われた。重症らしい」
「お父さんってどっちの?」
「新しい方だよ。百舌鳥さんだ」

 母さんは再婚している。
 前のお父さんは誠以上の変質者だった。

「容体はどうなんだ?」
「詳しい事は病院に行かないとおばさんにも分からないらしい。西松病院に搬送されてるらしいからすぐ行こう」

 動揺している私を誠が支える。

「西松病院ならきっと深雪先生が手当してくれる。心配いらない」

 誠が励ましてくれながら、誠の運転で西松医院に行く。
 母さんが先に着ていた。
 母さんに声をかけた。

「母さん!」
「あ、神奈。太一さんが……」

 母さんも顔が青白かった。
 私よりも母さんを落ち着かせる。
 さっき処置が終って今は意識が快復するのを待っていた。
 深雪先生が出て来て容体を教えてくれた。
 刺された傷は深かったけど処置は出来た。
 最善は尽くしたけど後は本人の体力次第。
 今夜が峠だという。

「カンナ!」

 トーヤ達渡辺班の皆が駆け付けて来てくれた。
 そして県警本部長の渡瀬新次郎も。
 渡瀬さんが事情を説明してくれた。
 父さんが店を閉めて帰ろうとしている時に事件は起きた。
 数人の男に囲まれて売り上げの入ったバッグを盗まれそうになった。
 クリスマスの売り上げだ。
 かなりの金額が入っていた。
 当然父さんは抵抗した。
 それがミスだった。
 相手は父さんの胸をナイフで刺してバッグを奪い逃走した。
 手口はここ最近頻発している中華マフィアの仕業らしい。
 中華マフィアの名前は金竜の眼。
 かなりの武闘派の組織らしい。
 警察もかなり手を焼いているが出来れば渡辺班の力を貸して欲しい。
 私はトーヤが心配だった。
 人の為に平気でキレる奴。
 今回も強硬手段に出るかもしれない。

「トーヤ、私の心配をしてくれるのは嬉しいけど、今は愛莉の心配もしてくれ。愛莉にとってお前は大切な夫なんだぞ」
「……渡辺班に手を出したらただじゃ済まない。相手にどんな事情があるのか知らないけど例外はない。そうだね?渡辺君」
「冬夜の言う通りだな。相手がマフィアだろうがそれなりの償いはしてもらおう」

 渡辺が言う。

「神奈ちゃん。私達に任せて。絶対に相手に償いはさせてやる」
「金竜の眼ね?中華系マフィアね。面白いじゃない?私にいい手がある。任せて」

 恵美と晶が言う。

「まずはおじさんの容態だ」

 冬夜がそう言うと病室から亜依が出てきた。

「先生!患者のバイタルが下がりました!」
「……神奈と誠君とお母さんだけ入ってきて。後は外で待っていて」

 深雪先生が言うと私たちは病室に入る。
 医療機器がアラームを鳴らしている。
 深雪先生が一生懸命処置をしている。
 母さんが父さんの手を握っている。
 母さんにとって大事な人なんだ。
 私にとっても血が繋がってないけど紛れもなく父親だ。

「父さん死なないで!」

 母さんの為にも。
 私が父さんというと状況が一変する。
 医療機器のアラームが止んだ。

「バイタル落ち着きました!」

 亜依が言う。
 そしてゆっくりと目を開ける父さん。

「美香?……それに神奈も……」
「太一さん!」
「父さん!」

 そんな様子を見て深雪先生が言う。

「峠は越えたみたいね。私は外で経過を報告してくる。また何かあったら知らせて」

 亜依がうなずくと深雪先生は外に出る。

「父さん!良かった!無茶な真似しないでくれ。父さんに何かあったら悲しむのは母さんなんだ」
「そうだね。まだ俺を待ってくれる人が2人もいる。2人を残して死ねないな」

 父さんはそう言って笑っていた。
 そんな様子を見て亜依が言う。

「お母さん、何かあったらナースコールを押してください。神奈、二人っきりにしてあげよう?」
「そうだな」

 そう言って私達は病室を出る。
 すると案の定渡辺班の皆は怒っていた。
 特にトーヤは無言で一点を見つめている。
 地元で一番怒らせてはいけない人間を忘れていたようだ。

「誠……相手を特定できるか?」
「任せろ、義理の親をやられたんだ。俺もただで済ます気はない」

 久々に暴れてやると誠は言う。

「神奈さん、今回の件は俺達に任せてくれ。必ず相応の償いをさせてやる」

 渡辺が言う。
 その後の事を少し相談して今日は解散する。
 店の入り口につけてあった防犯カメラを解析してすぐに犯人の特定をするらしい。
 特定しなくても相手の組織は分かっている。
 恵美と晶が動き出す。
 何も心配しないでいい。

「大丈夫だ。神奈には俺が付いてる。どんな状況になっても俺がお前を支えてやる」

 誠が帰りの車の中でそう言ってくれた。
 地元で最強の組織はSHかもしれない。
 だが最恐の組織は渡辺班だ。
 渡辺班に歯向かう物は一切容赦しない。
 犯人は後日その事を思い知ることになる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...