姉妹チート

和希

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あの鳥の後へ

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(1)

「天音、着いたよ」

 大地の言葉で目を覚ます。
 そして今日は大地の合格祈願に太宰府天満宮に向かっていたことを思い出した。
 早い話がデートだ。
 しかし大地の運転はパパや空ほどじゃないけど運転が上手い。
 あの二人と比べるのは大地に可哀そうだ。
 そして大地のP社のSUV車は乗り心地がいい。
 九州の高速道路は乗っていると眠くなるほど似たような景色が続く。
 まあ、退屈だったんだ。
 そして見事に爆睡した。
 手で口の周りを拭う。
 私だって年頃の娘だ。
 色々と気を使う。
 幸いにもよだれを垂らしながら寝ているという事は無かった。
 後はいびきだ。

「大地、私いびきかいてた?」
「天音のいびきなんて今まで一度も聞いたことないよ」

 どっちが正しいのやら。
 まあ、大地は優しいからいびきに気付かないふりくらいするだろう。

「悪かったな。折角運転してくれてたのに」
「天音の寝顔可愛いから好きだよ」
「前見て運転してくれ」
「分かってるよ」

 半分以上照れ隠しだった。
 大地と混雑している中をかき分けてお参りをする。
 こんな真似しなくても一浪生活なんてめんどくさい話作るわけないと思うのだが。
 毎年恒例だし、デートの口実になるからまあいいけど。
 参拝を済ませると車に戻る。

「帰りくらい国道通って帰らないか?」
「どうして?」
「国道通ってラーメンとうどん。先に見つけた店で昼食取ろうぜ」

 本当は両方食っても良いけどここは女子っぽいアピールをしておこう。
 ラーメンとうどんで女子アピールが出来るとは思えないけど。
 しかし昼間から水炊き食うのも変な話だし明太子を食わせてくれる店なんて聞いたことがない。

「天音はラーメンは久留米と博多どっちが好きなの?」

 それで帰るルートを決めるらしい。
 大地の優しさは分かるけど残酷な選択だ。
 迷わず「両方!」と答えたくなってしまうじゃないか。
 考えた末久留米にした。
 確か美味いチェーン店があったはず。
 しかし運が悪い事にうどんを引いてしまった。
 地元のうどん屋と違って3玉まで無料とかそういうサービスは無い。
 カツ丼やステーキ丼があるわけでもない。
 ただ大盛りが出来ておにぎりが付いてくる程度のサービス。
 全く物足りないからおでんで誤魔化した。
 そのまま国道を通ってゆっくり帰る。

「天音は参拝ししなくてよかったの?」
「たかが専門学校だしな。金払えば入れるだろ」

 一応試験はあるらしいけど。
 一年で100人近くくらいならまあ入れてもらえるだろ。
 いざとなれば分校にしてしまう勢いだけど。
 大地のお母さんは本当に府内町にある物件を抑えてくれたらしい。
 見学に行ったけど学生が済むようなところじゃなかった。
 3LDKなんてどうしろっていうんだ。
 掃除するのが面倒になるくらいだ。
 学校までは徒歩5分程度ですむから私は助かるけど大地は大丈夫なのか?

「早めに出ればいいから大丈夫」
「その分私は更に早く起きないといけないんだけどな」
「どうして?」
「大地は恋人の手作り弁当が食べたくないのか?」

 大地の朝食だって作ってやらないといけない。

「作ってくれるの?」
「私だってこう見えて調理科出身だぞ。そのくらい出来る」

 3年になってもいまだに暗黒物質を生成する「お前大丈夫か?」と言いたくなる奴もいるけど。

「でも僕の方がやっぱり早く起きないといけないね」
「何でだ?」
「天音の寝顔見たいから」
「……彼女に起こしてもらいたいって願望は無いのか?」

 私は翼と違って朝からしっかりしてるんだぞ。

「そう言われるとそれも悪くないね」
「先に言っとくけど朝から抱きついてきたりしたら殺すからな」
「わ、わかってるよ」
「……しないと言われるのも悲しいけどな」

 大地は返答に困っていた。
 そんな大地を見て笑っていた。
 地元に帰る頃には夜になっていたので外食で済ませる。
 肉を食った。
 高校生の食うものじゃないってくらい高い店。
 鉄板で目の前で焼いてくれる店。
 夕食を食べると家に帰る。

「じゃ、受検頑張れよ」
「ありがとう。天音もあと少し。学校頑張ってね」
「わかった」
「じゃあまた」

 家に帰ると風呂に入って部屋でゲームをしている。
 片桐家でこの時期に宿題に追われる者なんていない。
 茜も部屋でのんびりPCを見ていた。
 冬休みが終れば最後の高校生活が始まる。

(2)

「ただいま~」

 家に帰ると莉子と冬眞がやって来た。

「いらっしゃい」
「ちょっとだけお邪魔するね」

 そう言って自分の部屋に戻る。
 壱郎や大地が泊りに来たときに使用しているらしい。
 荷物を置くとリビングに降りて母さん達にお土産を渡す。

「あら?ありがとう。お茶入れるから待っててね」

 母さんがそう言ってキッチンに行く。
 その間お爺さんやお婆さんと話をしていた。
 夜になると家族そろっての夕食になる。
 今日はキムチ鍋にしてくれた。

「学校生活はどう?」

 父さんが聞いてきた。
 父さんに言われていた通りの事態になったという。
 父さんは母さんに履修上限ぎりぎりまで単位を詰め込まれて大変だったらしい。
 それどころか単位を取れなくても授業を受けるとごねたそうだ。
 宥めるのに苦労したと笑っている。

「だってもったいないじゃないですか。折角受けられるのに」

 翼も同じような事を言って善明が苦労してると聞いた。

「今年は純也と茜が高校入試だからね。大丈夫かな?」

 父さんが聞いた。

「絶対落ちない」

 断言する茜。
 それでも私立高校の受験は受けておくらしい。
 夕食を食べた後リビングで父さん達と話をする。
 美希がいない隙をぬって父さんが色々レクチャーしてくれる父さん。

「冬夜さんは息子になんてことを吹き込んでるんですか!?」
 
 母さんに怒られる。
 美希と母さんは本当によく似てるな。
 美希が戻ってくると話題が変わる。
 3月には天音が家を出る。
 そして3年後には茜も家を出る。
 家に残るのは冬吾と冬莉と冬眞と莉子。
 冬吾と冬莉も高校を卒業したらこの家には冬眞と莉子しかいなくなる。
 誰が父さん達やお爺さん達の面倒を見るか相談していた。
 お爺さん達の面倒は母さんが見るにしたって遠坂家だって見なきゃいけない。
 その母さんもいずれは老いていく。
 そんな先の事を心配していた。
 話が終ると、部屋に戻って美希と寝る。
 その時美希が言った。

「空、何かおかしくなかった?」
「何が?」
「どう言ったらいいのか分からないけど……空のお婆さん、なんか様子が変なの」
「おかしいって何が?」
「分からないけどなんか嫌な予感がする」

 美希は本当に不安みたいだ。

「母さん達が見ているから心配ないよ」

 そう言って美希を落ち着かせる事しかできない。

「それもそうだね」

 美希は笑っていた。
 次の日の夕食まで一緒に過ごしてそして家に帰る。

「空兄さん待って!」

 冬吾がやってきた。

「どうしたの?」
「お婆さんの胸のあたりに闇が見える。それが全身を蝕んでいくんだ」
「心配いらないよ」

 そう言って冬吾の頭を撫でてる。

「またいつでも帰ってらっしゃい」

 お婆さんは見た感じ元気そうだ。
 母さんも特に気にしてる様子はない。
 やっぱり冬吾の思い過ごしじゃないのか?
 だけど今年は夏休みは空けておいた方が良いかな。
 そんな予感が僕にもした。
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