姉妹チート

和希

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狂気の果実

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「あれ~由衣じゃん!」

 由衣の友達らしい。
 だけど……

「ひ、久しぶり……」

 由衣の態度がおかしい。
 まるで会いたくない人に会ってしまったような感じがした。
 今日はお祭りの日。
 あれから気まずい関係が続いていて、それを改善しようと思って誘ってみた。

「行く!!」

 二つ返事だった。
 お互い勝手に気まずい空気を作っていただけの様だった。
 実際手を繋いで出店を見て回ってた。
 由衣の友達に会うまでは楽しかった。
 由衣の変化に気づいたのか気づいてないのか、由衣の友達は話を進める。

「隣の男の子って由衣の彼氏?」
「ち、違います!」

 思わず否定してしまった。

「またまた~手を繋ぐくらいの仲なんでしょ?」

 由衣は手を離そうとするけど思わず掴んでしまった。
 ここで離したらせっかく祭りでいい雰囲気になったのに台無しだから。

「で、やっぱり魅惑の魔眼の関係者なの?そんなに強そうには思えないけど」
「違うよ」

 由衣が否定した。
 由衣は魅惑の魔眼の関係者なのだろうか?
 それはすぐに分かった。

「去年は大変だったけど今年はどうなの?」
「ご、ごめん。その話はまたにしてくれないかな?」

 由衣は僕に話を聞かれたくないらしい。
 その事にようやく気づいたのか気づいてないのかこれ以上話すのはまずいと思ったらしい。

「じゃ、創世神の連中には気を付けてね。総長さん」

 え?
 思わず由衣の顔を見る。
 目線が落ちていた。
 聞かれたくない事を聞かれたと思ったのだろうか?
 僕が創世神のリーダーだから?
 それとも総長っていうのは……。

「私達も行こっか」

 由衣がそう言うので僕達は再び祭りを見て回った。
 しかし、一度抱いてしまった疑問は解決されるまでしこりが残る。
 家に帰るまで笑ってはいるものの口数が明らかに減っていた。
 家に帰るとお互い風呂に入って部屋に戻る。
 だけど戻ろうとする由衣を呼び止めていた。

「どうしたの?」
「さっきの件、片付けて置きたくて」

 でないとまた気まずい二人になってしまう。

「な、なんでもないよ」

 でも由衣の態度はそうは見えない。

「僕が創世神のリーダーになった事、あのリストバンドを受け取った事、翔和さんに会った時の態度……何でもないとは思えない」
「そ、それは……」
「今までみたいな気まずい中で一緒に過ごすのは嫌だ。この際ハッキリさせたい」

 僕がそう言うと由衣は座った。

「……今から話すことは内緒にしておいてほしい」
「そういう話なんだね?」

 僕が言うと由衣は頷いた。
 そしてある人物の名前を言った。

「武内利花」

 誰だろう……武内?

「武内翔和の妻。……そして私の姉」

 え?
 驚いた。
 そんな関係だったのか?
 でも、血は繋がってないらしい。
 孤児だった由衣を利花さんが引き取ったらしい。
 でもそれならなぜ創世神を敵視しているのだろうか?

「それは私が創世神と敵対する組織、魅惑の魔眼の総長だから」

 やっぱりそうだったのか。
 信じたくなかったけど。
 でも姉の所属するグループと敵対っておかしくないか?

「創世神はもともとは魅惑の魔眼のメンバーだったの。それがある事件が起きて分裂した」

 理由はイーリス。
 魅惑の魔眼はイーリスを守護するために結成された組織。
 しかし、武内翔和の真の狙いに気付いた魅惑の魔眼のメンバー・宮田キリクが造反。
 武内翔和の一派は魅惑の魔眼を抜け創世神を結成した。
 と、言う事は……

「由衣はイーリスの正体を知ってる?」
「……知らない」

 知っていたとしても言えないものなのだろう。
 そんなに重要な事なのだろうか?
 あんまり問い詰めるのも悪いと思ったので止めておいた。
 話題を変えよう。

「どうしてその事を黙っていたの?」

 SHに知らせれば手掛かりになる。

「お願い!SHにも言わないで。あれは人が手にしていい物じゃない」

 誰かが手に入れたら、待ってるのは血塗れた抗争。
 だから誰もが手に届かない場所に置いておく必要がある。
 そういうものこそSHの手の中に入れておくべきものじゃないのか?

「私はまだSHを本当に信用していいのかわからない。キリクもまだ早いと判断してる」
「キリクって人はどんな人なの?」
「……私の姉の夫」

 今の魅惑の魔眼のブレイン。
 武内翔和の暴走を止めた本人。
 正体が分からないけどイーリスとは誰もが夢見るような宝物じゃない。
 少なくとも地元の闇を支配する狂気の果実。
 誰かが手に入れたら必ず抗争が起きる。
 それを守るのが魅惑の魔眼の役目。

「……分かった」
「じゃ、創世神を抜けてくれる?」
「その逆だよ」
「え?」
「僕がリーダーなら少なくともイーリスを狙おうとするのを止める事が出来るかもしれないし、少なくとも創世神の行動を把握できる」
「……私達に協力してくれるって事?」

 由衣が言うと僕は頷いた。
 少なくとも由衣の理解者ではありたいと思った。

「……ありがとう」

 由衣は僕を抱きしめる。

「その代わり時期が来たら僕達にも教えて欲しい。イーリスというものの在処を」
「……わかった。キリクと相談する」

 そう言って由衣は何やら考え出した。

「これは魅惑の魔眼の総長の判断と受け取って欲しい。もちろん景太郎も創世神のリーダーとして」
「……わかった」
「いつにするかは私がキリクと相談して決める。トロパイオンに景太郎を招待したい」
「トロパイオン?」
「私達のアジト……イーリスが鎮座する場所」

 イーリスを隠している魅惑の魔眼のアジトだと言う。

「分かった。その話受けるよ」
「ありがとう」

 もちろんSHには教えなかった。
 僕と由衣だけの密約。
 この騒乱の真実に近づける。
 そう舞い上がっていた僕は自分がまだ神の手の中で踊っているに過ぎない事に気付かなかった。
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