姉妹チート

和希

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光り続けるもの

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(1)

「ただいま~」
「おかえり……ってどうしたの冬莉!?」

 私が家に帰ると愛莉が驚いていた。

「どうしたの?って髪切って来ただけだけど?」
「何かあったの?いくらなんでも急すぎるでしょ?」

 パパも私の髪を見て驚いてた。
 愛莉の悲鳴を聞いた冬吾や莉子達も唖然としていた。
 普通の髪形だと思うんだけどな。
 栗色のベリーショートにしていた。
 理由はそんなに難しい事じゃない。
 髪が長いと手入れに時間がかかる。
 それがまず面倒臭い。
 朝起きて寝ぐせがついていようものなら直すのに苦労する。
 だったらいっそのこと切ってしまえ。
 校則で長すぎる髪形はダメだとあっても、短い分には文句をいわれる筋合いが無い。
 部活生は大体ショートだ。
 偶に髪をゴムで纏めてる子もいるけど。
 それにこれなら……
 おっと、これは愛莉に言うのは止めておこう。
 怒られる。

「似合ってないかな?」

 パパに聞いてみた。

「そんな事無いけど……」

 パパは何か考え込んでる。
 愛莉にはすぐわかったらしい。

「冬夜さんは知ってるんじゃないですか?冬莉はまだ恋をしてないのですよ」

 どういう事だろう?
 単純だった。
 私が失恋したから髪を切った。
 そう心配していたらしい。
 パパらしい悩みだ。

「女性は失恋しないと髪を切ったらいけないの?」
「いや、それはないと思うんだけど、随分思い切ったね」
「そうか、その手があったか……」
  
 茜は私が髪を切った最大の理由を見抜いたみたいだ。
 
「別に何かイジメられて切ったとかないから」

 天音が高校の時やたらと女子の髪を切りたがる女子がいたらしい。
 天音は報復に丸刈りにしていたけど。
 部屋に戻ると茜と話をする。

「でももう少し待てなかったの?この時期だと寒くない?」
「出かけるときはニット帽でも被ってたらいいかなって」
「なるほどねぇ。私もそうしようかな?」
「それは止めておいた方がいいんじゃない?」
「どうして?」

 茜が言うと私が答えた。

「パパですら失恋をイメージするんだし、壱郎が誤解するんじゃない?」
「それもそうか」

 そんな話をすると夕食を食べる。
 そして順番にお風呂に入るんだけど茜と愛莉がいつものようにごねていた。

「今日汗かくようなことしてないから大丈夫だって!」
「茜は汗をかいても風呂に入らないでしょ!」

 そんなやりとりをしている間にリビングでテレビを見ているパパに聞いてみた。

「どうして、男の人って女性が髪を切ると失恋したって思いこむの?」

 男はいつでも構わず髪形変えるのに。
 ぼさぼさに伸ばし放題の男子も見苦しいけど。
 パパは答えてくれた。

「冬莉は違うみたいだけど普通女子は気分転換に髪を切るもんなんだろ?」
「そうだね」

 と、言う事はパパは私の髪を切った本当の理由を知っているのか。

「女性が気分転換したい=失恋ってイメージが強いんだ」

 パパも突然愛莉が髪を切ってびっくりして失恋したの?って聞いたらしい。

「冬夜君がいるのに失恋するわけないでしょ!」

 そう愛莉に怒られたそうだ。

「そんな事もありましたね」

 愛莉が戻って来た。
 茜は諦めて風呂に入ったようだ。

「ところでちょうど冬莉もいるし、冬夜さんにお聞きしたいのですが」
「どうしたの愛莉」

 嫌な予感がする。
 私は部屋に戻ろうとすると愛莉が私の腕を掴んだ。

「冬夜さんは冬莉が髪を切った本当の理由を知っているみたいですけど教えてもらえませんか?」
「そ、それは冬莉が気分転換に切ったんだろ?」

 それ以上の事はパパは知らないと言うが……。

「忘れてませんか?私にも冬夜さんの気持ちくらい理解してますよ」

 愛莉は笑顔だ。
 完全にばれてると私は確信した。

「……どうやら僕の娘はお風呂に入るのが嫌なようだね」

 パパは作り笑いをしながら言った。
 やっぱりバレてた。
 それから私は愛莉からしっかり説教を受けて風呂に入る羽目になった。
 幸いにもドライヤーを使うまでもなくすぐに乾く。
 ただし寒い。

「寒いと思うならちゃんと部屋着を着なさい!」

 と、愛莉に怒られるわけだけど。
 部屋に戻ると先に戻っていた茜がいた。
 当然乾燥なんで面倒な真似はしない。
 寝るまでには乾くだろうと放置している。
 この家でまともに風呂に入る娘は莉子くらいだ。

「風呂に入ると寒いから大変なんだよ」
「ちゃんと部屋着を着て暖房つけたらいいでしょ!」
「それだと今度は暑いじゃん!」
「室温の調節くらいしなさい!」

 パパは娘の事はあまり口出ししない。
 無関心なわけじゃない。
 どう対応したらいいのか分からないらしい。
 私はすぐに髪が乾いたので寝る事にした。

「茜はまだ寝ないの?」
「ちょっと気になるコメントがあってさ」

 SHの事かな?
 それなら大地が処理したんじゃない?

「冬莉もスマホで見るといいよ」

 そう言われたので私は起き上がってスマホを取る。

「何でも出来るのに何もしないなんてただのチキンじゃないか」
「何もするなっていうわけじゃない。ダサい真似はするなって言ってるの」
「それは誰が決めるの?」
「決めるのは空」
「全部空の言う通りにしないとダメなわけ?やっぱりダサいじゃん」
「そうだよ」

 私は茜の顔を見た。
 茜も私の顔を見ている。
 ここにきて初めて空が動いた。

「僕が気に入らないなら出て行ってもらってもいいよ」

 その代わり何があってもSHは一切関与しない。
 勝手にSHを名乗ったらお前から潰す。
 空が自分の意思を明確にした。

「……なるほどね」

 反乱分子の主導者になっていた白鳥和志がそう言って話は終った。
 その後皆が空の考えを聞きたがっていた。
 一番の疑問を天音が聞いていた。

「だったらなんで和志を入れたんだよ!?」
「こうなるだろうと思ったから」

 社会人組はあらかじめ空から考えを聞いていたらしい。
 だから何も言わなかった。
 私達は空の意図が分からなかった。

(2)

「おはよう……って冬莉どうしたの!?」

 瞳子が驚いていた。

「髪切った」

 普通に答えた。

「……なんかあったの?」

 瞳子もやっぱり理由が知りたいらしい。
 私も茜も特別手入れしなくても髪が痛んだりはしない。
 だけど愛莉が口うるさい。
 だから手入れが楽だと思って髪を切った。
 そう冬莉に説明する。

「まあ、手入れは大変だよね」

 瞳子は納得したらしい。

「冬吾はどうなんだ?」

 誠司が冬吾に聞いていた。

「何が?」
「髪の毛長い人と短い人どっちが好きなんだ?」

 同じような事を昨夜愛莉がパパに聞いていたな。

「分からない」

 一言だった。

「私の髪形に興味ないのですか?」
「そうじゃなくてさ、愛莉はいつも僕の事を考えてくれるだろ?」

 パパの好みの服を来てパパの好みの髪形にする。
 だからきっと愛莉が髪を切っても僕の好みだよ。
 パパはそう言うと愛莉は「えへへ~」と言ってパパにじゃれついていた。
 子供の前でよくやるよ。
 そんな二人だから喧嘩もろくにしないんだろうな。
 冬吾もパパと同じ意見の様だ。

「そう言うのはあまり男子が口出ししたらいけないって聞いたから」
 
 若干違うらしい。
 その答え方はちょっとアウトだよ?

「嬉しいけど、冬吾君の好みになりたいのにそんなどうでもいい言い方されると傷つくよ?」

 ほらね。

「あ、ごめん。そうだなぁ……」

 冬吾は考え込む。
 そして結論を出した。

「僕の好きな女優がいるんだけどさ」

 最近ドラマや映画に出てる人気女優。

「あの人ロングにしたりショートにしたりするんだけど、どっちも綺麗なんだ」
「それで?」
「きっと瞳子も一緒だよ」
「ありがとう」

 そう言って冬吾の腕に組みつく瞳子。
 そんな二人を羨ましそうに見ている誠司。

「誠司はあれから彼女とは?」

 私が聞いてみた。

「ああ、フラれたよ」

 やっぱり女子大生は難しかったと笑っている。
 振られた割にはあまり落ち込んでない。
 また新しい人を見つける気なんだろうか?

「ちょっと冷静になろうと思ってさ」

 フラれて慌てて焦ってじたばたしても自分の品格を下げるだけ。
 だったら、ゆっくり構えてじっくり探そう。
 次の彼女は何よりも大切にしよう。
 そんな気持ちなんだそうだ。

「何かあったの?」

 誠司をそこまで変えた理由は何?

「父さんに色々聞いてね」

 イケメン同士ならではのトークなんだろうか?
 余り追及しなかった。

「いい人見つかると良いね」
「ありがとう」

 今の誠司なら多分すぐ見つかるんじゃないだろうか?
 そう思っていた。
 教室に入るとやはり私の髪形を見て驚いてる生徒が沢山いた。

「失恋したの?」
 
 決まり文句の様だ。
 
「ただのイメチェン」

 テンプレ的な回答をしておいた。

「長い時もよかったけど、短いのも似合ってるよ」

 そんな感想を貰った。
 確か名前は松原志希。
 特に何の取り柄もなさそうな平凡な男子。
 顔を赤くして照れながら言っていた。

「ありがとう」

 にこりと笑って松原君に礼を言うと、松原君は席に戻っていった。
 冬吾は何か感づいたらしい。
 冬吾が分かるくらいだから私にも分かる。
 ほんの気まぐれが私に出会いを呼び込もうとしていた。
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