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addicted
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(1)
「それじゃお疲れ様~!」
俺達は高校卒業の打ち上げをしていた。
茜と壱郎は専門学校。
俺と梨々香と正俊達は地元大学へ進学が決まっていた。
茜達は実家で暮らすらしいけど俺と梨々香は同棲を決めていた。
恵美さんに頼んで家の方は手配してもらった。
バイトもしようかと思ったけど、りえちゃん達に呼び出された。
「純也君もいよいよ大学生。多分空達も同じ事をされてきたでしょうから私達から卒業祝いがあります」
そう言ってりえちゃんが出したのはクレジットカードと銀行の通帳だった。
2人ともバイトで時間のすれ違いなんて悲しい事しないで、思う存分学生生活を楽しみなさい。
お礼は純也君が立派な警察官になってくれたらいい。
空や天音達も愛莉達から受け取っていたらしい。
「将来に対する先行投資だ」
おじさんはそう言っていた。
それを使って大学進学に必要な物を買っていた。
引越しも済ませていた。
正俊達は既に同棲していたので問題なかった。
茜は家にいるけどやっぱり愛莉達から受け取っていたらしい。
「無駄遣いしてはいけませんよ。それと今後りえちゃん達にねだってもいけません。そのお金でやりくりしなさい」
そう言われたらしい。
卒業旅行も考えたけど、出来れば梨々香との同棲生活に慣れておきたい。
そう思ってのんびり過ごすことにした。
俺は梨々香に通帳を預けた。
「小遣いはその中から梨々香が俺にくれよ。後は生活費として梨々香が管理してくれ」
「いいの?」
「俺の梨々香に対する信頼の証だよ」
「そう言う事なら分かった。大事に管理させていただきます」
そう言って梨々香は通帳を預かる。
「今日は徹底的に遊ぼうぜ!」
そう言って盛り上がっていた。
まずはボーリングから始まって、カラオケ、ゲーセンと回る。
真香達も来ていた。
夜は初めての居酒屋に入る。
茜は飲んでいたけど俺は止めておいた。
不祥事がバレていたら警官になるのに不利じゃないかと思ったから自粛しておいた。
梨々香も自分1人飲むわけには行かないと我慢してくれた。
2時間ちょっと喋りながら盛り上がっていた。
最終便が出る前に解散する。
「次は多分花見だと思う」
俺がそう言うと「またね」とそれぞれ家に帰る。
「純也君。寝る前にお風呂に入ってね」
梨々香の言う通りに風呂に入って寝室でテレビを見ていた。
「いよいよだね」
「ああ、そうだな」
梨々香はこの4年間を花嫁修業と思ってるらしい。
普通結婚したら2年は子供を作らないで二人っきりを楽しむんだそうだ。
だけどこの4年間同棲して卒業後に結婚したらその必要が無い。
梨々香は卒業したら子供が欲しいと言う。
「いいのか?俺まだプロポーズもしてないぞ?」
「いつしてくれても大丈夫だよ」
梨々香の中では返事が決まってるそうだ。
「……よろしくな」
「はい」
時間になると2人でベッドに入る。
新生活の準備を着々としていた。
(2)
「じゃあ、元気でな」
美嘉がそう言っていた。
さすがに今日は正俊も来ていた。
今俺達は空港にいる。
「母さんも、無理するなよ。もう年なんだから」
「馬鹿。まだまだ現役だよ」
そう言って美嘉が茉里奈を小突く。
今日は茉里奈がフランスに旅立つ日。
ヘフナーと一緒に暮らしてフランス料理の修行をするらしい。
もう住む場所も働く場所も決めてあった。
「いいか。女にも二言はないんだ。一人前になる前に根をあげて帰ってくるんじゃねーぞ」
「分かってるよ」
「結婚式には呼べよ。フランスでするんだろ?」
「そのつもりだ」
美嘉と茉里奈と紗理奈が話している。
「正志からも何か言ってやれよ」
美嘉が言うと俺は茉里奈に言った。
「今まで我慢してきたんだ。幸せになれよ」
「父さん。今までありがとう」
その時茉里奈が涙を流す。
「せっかくめでたい旅立ちなんだ。泣くんじゃない」
そう言って茉里奈の頭をさすってやった。
空港のアナウンスが流れる。
「じゃ、行ってきます」
そう言って茉里奈は行った。
姿が見えなくなるまで俺達は見送っていた。
帰りにレストランに寄って夕食をして帰る。
正俊は夏希の家に。
紗理奈は西松康介と同棲中。
そして茉里奈もフランスに旅立った。
家には俺と美嘉の2人だけになった。
随分寂しくなったものだ。
とはいえ、まだ余生を楽しむという段階ではない。
それぞれの慶事が済むまで頑張らなければならない。
それでもとりあえず「ご苦労だったな」と美嘉にビールを渡す。
「正志こそ大変だっただろ」
「まあな」
これからも大変だけど。
冬夜たちもこんな気分で空や天音を送り出したのだろうか?
もっとも冬夜たちはまだ大変らしいけど。
孫の世話もしなければならない。
俺達もまだまだ現役を続けなければならない。
「どうする?もう一人くらい私が頑張るか?」
美嘉は冗談を言う。
「神奈や亜依さんは旦那さんに言ったらしいな」
娘に構う時間を私に割いて欲しい。
「……この家にはもう子供はいない。美嘉に構う時間は出来るぞ」
「お前だって構って欲しいんだろうが」
そう言って美嘉は笑っていた。
せめて孫の顔をみるまではがんばらないとな。
そう言って俺達はしばし休息した。
(3)
「ごめん、遅れた」
「いいよ、バスまだ来てないし」
先に志希がバス停で待っていた。
遅れたのには理由がある。
それは昨夜の事だった。
「冬莉、あんた初デートなんでしょ?」
茜が言った。
「そうだけど?」
私がそう言うと茜が少し考えて机から何かを取り出して私に渡した。
志希にそんな度胸無いと思うけど。
「風呂は今日入ったんだよね?」
「……さすがにね」
「じゃあ、後は……」
そう言って茜は引き出しから下着を取り出した。
「適当に好きなの選びなよ」
茜がそう言うので好みなのを選んで試着してみた。
「茜、胸がちょっときつい」
「嘘でしょ!?」
バストのサイズを聞いてきた。
そして天音のじゃだめかとメッセージで報せる。
「何で冬莉の方が私よりデカいんだよ!」
天音がそう言いだした。
そんな風に騒いでいると「明日はデートなんでしょ?早く寝なさい」と愛莉が来る。
そして半裸の私を見て叫ぶ。
「あなた何やってるの!?」
私が事情を説明する。
愛莉はくすっと笑った。
「多分冬莉の予想通りだと思いますよ。冬夜さんもそうでしたし」
初デートでそこまで気負う必要は無いという。
むしろ初デートでそこまで求める中学生なんて止めた方がいいと言っていた。
で、色々話をしていて寝坊する。
寝ぐせも髪形を考えたら問題ないか。
そのまま着替えて家を出ようとすると愛莉に呼び止められる。
「愛莉。もう時間が無い」
「いけません!寝ぐせくらい直しなさい!」
だから早く寝なさいと言ったでしょ!と怒られる。
少しはおしゃれしたつもりだ。
それはパパにも分かったみたいだ。
「楽しんでくるといいよ」
パパはそう言っていたけど少し寂しそうだった。
そんな話を志希としているとバスが来る。
それに乗って街に向かう。
どうして街にする必要があるんだろう?
ショッピングモールでいいじゃない。
「実はさ……」
志希が理由を説明した。
志希もただ私に選ばせるのはまずいと思ったみたいだ。
だからネットで調べた。
その結果やっぱり中学生ならお菓子でいいだろうと思った。
だけど、ただのお菓子じゃ申し訳ない。
そこで調べたら街の駅ビルの中に有名なチョコレート屋さんがある。
それがいいと思って街に決めたらしい。
でもそこまで決めたなら買ってきたらいいのに。
理由は簡単だった。
「僕も初デート楽しみにしてたから」
恥ずかしそうに志希が言う。
ちなみに冬吾は止めたらしいけど誠司が「パンツをプレゼントするといいらしいぞ」と吹き込んだらしい。
もちろん志希に一人でランジェリーショップに入る度胸はない。
「じゃ、私と一緒なら選んでくれる?」
答えは分かっていたけど悪戯してみた。
「ご、ごめん。まだ無理」
「まだって事はいつか選んでくれるの?」
「そういう関係になれたら」
「なる意思はあるんだ?」
「……僕だって男だよ?」
志希がそう言うと私はにやりと笑った。
「茜からアレ貰って来た」
いつでもいいよ。
志希は慌ててた。
そんな志希を見て笑っていた。
街でバスを降りると駅ビルに向かう。
志希が決めていたチョコレート屋さんに行く。
種類は豊富なんだけど……。
前にも言ったけど私の手作りチョコレートは原価が知れてる。
明らかにこのチョコの方が高いぞ。
3倍返しなんて生温いものじゃない。
「本当にいいの?」
「うん、小遣いは貰って来た」
息子の初めてのデートだからと特別にくれたらしい。
それを聞いた私は一番安いチョコを選んだ。
「そんなのでいいの?」
「うん、これで十分」
その代わり今日は私にお返しの日なんでしょ?
私が納得するまで付き合ってもらうから。
「分かった」
志希がそう言うとまずは昼ご飯。
中学生が無理して4階で食事する必要は無い。
3階のフードコートで十分だ。
志希はラーメンを選んでいた。
私は一々説明するのも面倒なくらい食べた。
それを見て志希は驚いていた。
それが終るとゲーセンに行く。
一度やってみたかったこと。
「志希、これ取って欲しいな」
そう言ってクレーンゲームのぬいぐるみをねだってみる。
志希は苦戦しながらも取ってくれた。
「ありがとう」
こういう時間が楽しいのか。
その後もリズムゲーとかをしていた。
普段の私じゃないもう一人の私が騒いでいる。
志希にだけの特別な私がいる。
その後カラオケで楽しむ。
志希はやっぱり歌が上手い。
でも、上手い下手は関係ない。
二人っきりの密室。
そして私達の初デート。
そんな状況になれば否応でも志希も意識していた。
それを感じた私は志希とキスをする。
「大好きだよ」
志希の一言が私を喜ばせてくれる。
そんな時間もあっという間に過ぎる。
バスを待ちながらなんか寂しくなっていた。
すると志希が動いてくれた。
私の手を握っている。
少し照れくさそうにしていたけど。
「それならこっちの方がいい!」
そう言って志希の腕に抱きつく。
私は茜よりは大きいらしい。
その膨らみに気づいたのだろう。
志希は慌ててた。
「彼氏に触ってもらえずに私は誰に触ってもらえば良いの?」
「ま、まだ早いよ!」
志希は焦ってた。
大丈夫。
今日の志希を見て確信した。
きっとその日が来たら志希から誘ってくれる。
それを待てばいいだけの話だ。
バスに乗ると家に帰る。
家の前で志希と別れようとした時だ。
玄関の扉が開いた。
愛莉がいる。
「あなたが松原志希君?」
「そうですけど。初めまして」
「挨拶は抜きにして上がってくれない?志希君の親には連絡してあるから」
どうしたんだろう?
志希の家の電話番号は茜が調べたらしい。
ダイニングに案内されるとテーブルにご馳走が並んでいる。
冬吾達もいた。
「君が松原君?」
パパが聞いていた。
さすがに緊張したらしい。
「は、はい。お嬢さんと交際させていただいて……」
どもりながらもパパに挨拶する志希。
そんな志希をパパはじっと見ていた。
「せっかくだから夕食くらい一緒にどうかな?って僕が誘ってみたんだ。さあ、座って」
パパがそう言うと私と志希は並んで座る。
食事をしてその後リビングで色々話をしている様だ。
私はさすがに今日くらい手伝おうとキッチンにいたけど……。
「あなたは志希君と一緒にいなさい」
こういう時男と言うのはしょうがない事を話すから。
愛莉が言うのでリビングに行った。
私がリビングに行くとパパ達が慌てている。
私は志希の隣に座った。
「何を話していたの?」
志希は中々言わない。
「どうしてそんなに彼女に怯えるの?」
「な、何で分かったの!?」
「なんとなくカマかけてみた」
志希は慌てて口をふさぐ。
「そういう事だろうと思いました」
愛莉も片づけを終えてやって来た。
「冬夜さん。冬莉の彼氏に何を吹き込んだのですか!?」
パパが慌てている。
そして白状した。
「冬莉はどうも愛莉に近いものがあるからね。いつ何があっても大丈夫なように心構えだけはしておきなさい」
後はすぐに拗ねたりするところもあるから、他の女性に見とれたりしたらいけない。
そんなことを志希と話していたようだ。
志希も笑うしかないと言った感じだった。
それからパパは愛莉の説教を受けていた。
その間に時間が遅くなったので私は志希を送る。
「今日は突然でごめんね。それとありがとう」
「僕の方こそごめん。あとありがとう」
「ありがとうって何が?」
「デートって初めてだったから」
「私だって初めてだよ」
「そっか……」
もう一人の私が背中を押す。
私は志希に抱きついてキスをしていた。
「……また誘ってくれる?」
「う、うん。誘ってもいい?」
「志希が誘わないで、私は誰とデートすればいいの?」
「そ、そうだね」
「じゃあ、また」と言って志希は帰っていった。
「やっぱり冬莉は私に似たのね」
振り返ると愛莉が玄関から私達を見ていた。
さすがに恋人とはいえキスしたところを親に見られるのは戸惑う。
「とりあえず上がりなさい」
愛莉が言うから私は家に入って着替えてお風呂に入る。
すると愛莉が呼び止めた。
私はリビングのソファに座る。
「母さんも自分の家の前だったの」
愛莉のファーストキスは愛莉の家の前だったらしい。
パパがなかなか誘ってくれない上に幼馴染が東京から戻ってきて焦った結果の行動らしい。
それで結果的には良かった。
その後すぐ幼馴染もパパにキスをしたらしいから。
「冬莉も躊躇っちゃだめ。今だと思った時が最高の瞬間だから」
彼の方から誘ってくれるなんて真似したって、なかなかしてくれない。
それは嫌いなんじゃなくて彼女に対して奥手になるから。
大事にされてる証拠だから。
だから自分から訴えるの。
「あなたの物だよ」
受け身だけじゃダメ。
積極的に行きなさい。
隣で聞いてたパパはただ笑っていた。
愛莉の話が終ると私は部屋に戻る。
「今日はどうだったの?」
茜が聞いてきた。
「楽しかったよ」
「どこまでいったの?」
初デートだよ?
「キスだけだよ」
「ファーストキス?」
「それは前に済ませた」
「どんな味だった?」
うーん……よくわからないな。
「茜の時はどんな味したの?」
「味なんてするわけないじゃん」
精々福神漬けとか食べてたらその風味がわかるくらいだ。
初デートで福神漬け食べる男子とキスしたいかと言われると疑問だけど。
「愛莉が前に言ってた『味の正体は味覚じゃなくて心』なんだって」
茜が言うと急に志希とのキスの感覚を思い出す。
それは中毒みたいなもので何度でも確かめたくなるもの。
急に胸が苦しくなる。
志希に取ってもらったぬいぐるみを抱きしめる。
話だけでもいいからしたい。
すると志希からメッセージが来た。
「ごちそうさまでした。って両親に伝えておいて。後今日は楽しかった。またデートしてください。それじゃおやすみ」
他人がどんな気分でいるのかも知らずに……。
「勝手に寝るな!私はもっと志希と話がしたいの!!」
そう言って眠くなるまで志希とメッセージを楽しんでいた。
「それじゃお疲れ様~!」
俺達は高校卒業の打ち上げをしていた。
茜と壱郎は専門学校。
俺と梨々香と正俊達は地元大学へ進学が決まっていた。
茜達は実家で暮らすらしいけど俺と梨々香は同棲を決めていた。
恵美さんに頼んで家の方は手配してもらった。
バイトもしようかと思ったけど、りえちゃん達に呼び出された。
「純也君もいよいよ大学生。多分空達も同じ事をされてきたでしょうから私達から卒業祝いがあります」
そう言ってりえちゃんが出したのはクレジットカードと銀行の通帳だった。
2人ともバイトで時間のすれ違いなんて悲しい事しないで、思う存分学生生活を楽しみなさい。
お礼は純也君が立派な警察官になってくれたらいい。
空や天音達も愛莉達から受け取っていたらしい。
「将来に対する先行投資だ」
おじさんはそう言っていた。
それを使って大学進学に必要な物を買っていた。
引越しも済ませていた。
正俊達は既に同棲していたので問題なかった。
茜は家にいるけどやっぱり愛莉達から受け取っていたらしい。
「無駄遣いしてはいけませんよ。それと今後りえちゃん達にねだってもいけません。そのお金でやりくりしなさい」
そう言われたらしい。
卒業旅行も考えたけど、出来れば梨々香との同棲生活に慣れておきたい。
そう思ってのんびり過ごすことにした。
俺は梨々香に通帳を預けた。
「小遣いはその中から梨々香が俺にくれよ。後は生活費として梨々香が管理してくれ」
「いいの?」
「俺の梨々香に対する信頼の証だよ」
「そう言う事なら分かった。大事に管理させていただきます」
そう言って梨々香は通帳を預かる。
「今日は徹底的に遊ぼうぜ!」
そう言って盛り上がっていた。
まずはボーリングから始まって、カラオケ、ゲーセンと回る。
真香達も来ていた。
夜は初めての居酒屋に入る。
茜は飲んでいたけど俺は止めておいた。
不祥事がバレていたら警官になるのに不利じゃないかと思ったから自粛しておいた。
梨々香も自分1人飲むわけには行かないと我慢してくれた。
2時間ちょっと喋りながら盛り上がっていた。
最終便が出る前に解散する。
「次は多分花見だと思う」
俺がそう言うと「またね」とそれぞれ家に帰る。
「純也君。寝る前にお風呂に入ってね」
梨々香の言う通りに風呂に入って寝室でテレビを見ていた。
「いよいよだね」
「ああ、そうだな」
梨々香はこの4年間を花嫁修業と思ってるらしい。
普通結婚したら2年は子供を作らないで二人っきりを楽しむんだそうだ。
だけどこの4年間同棲して卒業後に結婚したらその必要が無い。
梨々香は卒業したら子供が欲しいと言う。
「いいのか?俺まだプロポーズもしてないぞ?」
「いつしてくれても大丈夫だよ」
梨々香の中では返事が決まってるそうだ。
「……よろしくな」
「はい」
時間になると2人でベッドに入る。
新生活の準備を着々としていた。
(2)
「じゃあ、元気でな」
美嘉がそう言っていた。
さすがに今日は正俊も来ていた。
今俺達は空港にいる。
「母さんも、無理するなよ。もう年なんだから」
「馬鹿。まだまだ現役だよ」
そう言って美嘉が茉里奈を小突く。
今日は茉里奈がフランスに旅立つ日。
ヘフナーと一緒に暮らしてフランス料理の修行をするらしい。
もう住む場所も働く場所も決めてあった。
「いいか。女にも二言はないんだ。一人前になる前に根をあげて帰ってくるんじゃねーぞ」
「分かってるよ」
「結婚式には呼べよ。フランスでするんだろ?」
「そのつもりだ」
美嘉と茉里奈と紗理奈が話している。
「正志からも何か言ってやれよ」
美嘉が言うと俺は茉里奈に言った。
「今まで我慢してきたんだ。幸せになれよ」
「父さん。今までありがとう」
その時茉里奈が涙を流す。
「せっかくめでたい旅立ちなんだ。泣くんじゃない」
そう言って茉里奈の頭をさすってやった。
空港のアナウンスが流れる。
「じゃ、行ってきます」
そう言って茉里奈は行った。
姿が見えなくなるまで俺達は見送っていた。
帰りにレストランに寄って夕食をして帰る。
正俊は夏希の家に。
紗理奈は西松康介と同棲中。
そして茉里奈もフランスに旅立った。
家には俺と美嘉の2人だけになった。
随分寂しくなったものだ。
とはいえ、まだ余生を楽しむという段階ではない。
それぞれの慶事が済むまで頑張らなければならない。
それでもとりあえず「ご苦労だったな」と美嘉にビールを渡す。
「正志こそ大変だっただろ」
「まあな」
これからも大変だけど。
冬夜たちもこんな気分で空や天音を送り出したのだろうか?
もっとも冬夜たちはまだ大変らしいけど。
孫の世話もしなければならない。
俺達もまだまだ現役を続けなければならない。
「どうする?もう一人くらい私が頑張るか?」
美嘉は冗談を言う。
「神奈や亜依さんは旦那さんに言ったらしいな」
娘に構う時間を私に割いて欲しい。
「……この家にはもう子供はいない。美嘉に構う時間は出来るぞ」
「お前だって構って欲しいんだろうが」
そう言って美嘉は笑っていた。
せめて孫の顔をみるまではがんばらないとな。
そう言って俺達はしばし休息した。
(3)
「ごめん、遅れた」
「いいよ、バスまだ来てないし」
先に志希がバス停で待っていた。
遅れたのには理由がある。
それは昨夜の事だった。
「冬莉、あんた初デートなんでしょ?」
茜が言った。
「そうだけど?」
私がそう言うと茜が少し考えて机から何かを取り出して私に渡した。
志希にそんな度胸無いと思うけど。
「風呂は今日入ったんだよね?」
「……さすがにね」
「じゃあ、後は……」
そう言って茜は引き出しから下着を取り出した。
「適当に好きなの選びなよ」
茜がそう言うので好みなのを選んで試着してみた。
「茜、胸がちょっときつい」
「嘘でしょ!?」
バストのサイズを聞いてきた。
そして天音のじゃだめかとメッセージで報せる。
「何で冬莉の方が私よりデカいんだよ!」
天音がそう言いだした。
そんな風に騒いでいると「明日はデートなんでしょ?早く寝なさい」と愛莉が来る。
そして半裸の私を見て叫ぶ。
「あなた何やってるの!?」
私が事情を説明する。
愛莉はくすっと笑った。
「多分冬莉の予想通りだと思いますよ。冬夜さんもそうでしたし」
初デートでそこまで気負う必要は無いという。
むしろ初デートでそこまで求める中学生なんて止めた方がいいと言っていた。
で、色々話をしていて寝坊する。
寝ぐせも髪形を考えたら問題ないか。
そのまま着替えて家を出ようとすると愛莉に呼び止められる。
「愛莉。もう時間が無い」
「いけません!寝ぐせくらい直しなさい!」
だから早く寝なさいと言ったでしょ!と怒られる。
少しはおしゃれしたつもりだ。
それはパパにも分かったみたいだ。
「楽しんでくるといいよ」
パパはそう言っていたけど少し寂しそうだった。
そんな話を志希としているとバスが来る。
それに乗って街に向かう。
どうして街にする必要があるんだろう?
ショッピングモールでいいじゃない。
「実はさ……」
志希が理由を説明した。
志希もただ私に選ばせるのはまずいと思ったみたいだ。
だからネットで調べた。
その結果やっぱり中学生ならお菓子でいいだろうと思った。
だけど、ただのお菓子じゃ申し訳ない。
そこで調べたら街の駅ビルの中に有名なチョコレート屋さんがある。
それがいいと思って街に決めたらしい。
でもそこまで決めたなら買ってきたらいいのに。
理由は簡単だった。
「僕も初デート楽しみにしてたから」
恥ずかしそうに志希が言う。
ちなみに冬吾は止めたらしいけど誠司が「パンツをプレゼントするといいらしいぞ」と吹き込んだらしい。
もちろん志希に一人でランジェリーショップに入る度胸はない。
「じゃ、私と一緒なら選んでくれる?」
答えは分かっていたけど悪戯してみた。
「ご、ごめん。まだ無理」
「まだって事はいつか選んでくれるの?」
「そういう関係になれたら」
「なる意思はあるんだ?」
「……僕だって男だよ?」
志希がそう言うと私はにやりと笑った。
「茜からアレ貰って来た」
いつでもいいよ。
志希は慌ててた。
そんな志希を見て笑っていた。
街でバスを降りると駅ビルに向かう。
志希が決めていたチョコレート屋さんに行く。
種類は豊富なんだけど……。
前にも言ったけど私の手作りチョコレートは原価が知れてる。
明らかにこのチョコの方が高いぞ。
3倍返しなんて生温いものじゃない。
「本当にいいの?」
「うん、小遣いは貰って来た」
息子の初めてのデートだからと特別にくれたらしい。
それを聞いた私は一番安いチョコを選んだ。
「そんなのでいいの?」
「うん、これで十分」
その代わり今日は私にお返しの日なんでしょ?
私が納得するまで付き合ってもらうから。
「分かった」
志希がそう言うとまずは昼ご飯。
中学生が無理して4階で食事する必要は無い。
3階のフードコートで十分だ。
志希はラーメンを選んでいた。
私は一々説明するのも面倒なくらい食べた。
それを見て志希は驚いていた。
それが終るとゲーセンに行く。
一度やってみたかったこと。
「志希、これ取って欲しいな」
そう言ってクレーンゲームのぬいぐるみをねだってみる。
志希は苦戦しながらも取ってくれた。
「ありがとう」
こういう時間が楽しいのか。
その後もリズムゲーとかをしていた。
普段の私じゃないもう一人の私が騒いでいる。
志希にだけの特別な私がいる。
その後カラオケで楽しむ。
志希はやっぱり歌が上手い。
でも、上手い下手は関係ない。
二人っきりの密室。
そして私達の初デート。
そんな状況になれば否応でも志希も意識していた。
それを感じた私は志希とキスをする。
「大好きだよ」
志希の一言が私を喜ばせてくれる。
そんな時間もあっという間に過ぎる。
バスを待ちながらなんか寂しくなっていた。
すると志希が動いてくれた。
私の手を握っている。
少し照れくさそうにしていたけど。
「それならこっちの方がいい!」
そう言って志希の腕に抱きつく。
私は茜よりは大きいらしい。
その膨らみに気づいたのだろう。
志希は慌ててた。
「彼氏に触ってもらえずに私は誰に触ってもらえば良いの?」
「ま、まだ早いよ!」
志希は焦ってた。
大丈夫。
今日の志希を見て確信した。
きっとその日が来たら志希から誘ってくれる。
それを待てばいいだけの話だ。
バスに乗ると家に帰る。
家の前で志希と別れようとした時だ。
玄関の扉が開いた。
愛莉がいる。
「あなたが松原志希君?」
「そうですけど。初めまして」
「挨拶は抜きにして上がってくれない?志希君の親には連絡してあるから」
どうしたんだろう?
志希の家の電話番号は茜が調べたらしい。
ダイニングに案内されるとテーブルにご馳走が並んでいる。
冬吾達もいた。
「君が松原君?」
パパが聞いていた。
さすがに緊張したらしい。
「は、はい。お嬢さんと交際させていただいて……」
どもりながらもパパに挨拶する志希。
そんな志希をパパはじっと見ていた。
「せっかくだから夕食くらい一緒にどうかな?って僕が誘ってみたんだ。さあ、座って」
パパがそう言うと私と志希は並んで座る。
食事をしてその後リビングで色々話をしている様だ。
私はさすがに今日くらい手伝おうとキッチンにいたけど……。
「あなたは志希君と一緒にいなさい」
こういう時男と言うのはしょうがない事を話すから。
愛莉が言うのでリビングに行った。
私がリビングに行くとパパ達が慌てている。
私は志希の隣に座った。
「何を話していたの?」
志希は中々言わない。
「どうしてそんなに彼女に怯えるの?」
「な、何で分かったの!?」
「なんとなくカマかけてみた」
志希は慌てて口をふさぐ。
「そういう事だろうと思いました」
愛莉も片づけを終えてやって来た。
「冬夜さん。冬莉の彼氏に何を吹き込んだのですか!?」
パパが慌てている。
そして白状した。
「冬莉はどうも愛莉に近いものがあるからね。いつ何があっても大丈夫なように心構えだけはしておきなさい」
後はすぐに拗ねたりするところもあるから、他の女性に見とれたりしたらいけない。
そんなことを志希と話していたようだ。
志希も笑うしかないと言った感じだった。
それからパパは愛莉の説教を受けていた。
その間に時間が遅くなったので私は志希を送る。
「今日は突然でごめんね。それとありがとう」
「僕の方こそごめん。あとありがとう」
「ありがとうって何が?」
「デートって初めてだったから」
「私だって初めてだよ」
「そっか……」
もう一人の私が背中を押す。
私は志希に抱きついてキスをしていた。
「……また誘ってくれる?」
「う、うん。誘ってもいい?」
「志希が誘わないで、私は誰とデートすればいいの?」
「そ、そうだね」
「じゃあ、また」と言って志希は帰っていった。
「やっぱり冬莉は私に似たのね」
振り返ると愛莉が玄関から私達を見ていた。
さすがに恋人とはいえキスしたところを親に見られるのは戸惑う。
「とりあえず上がりなさい」
愛莉が言うから私は家に入って着替えてお風呂に入る。
すると愛莉が呼び止めた。
私はリビングのソファに座る。
「母さんも自分の家の前だったの」
愛莉のファーストキスは愛莉の家の前だったらしい。
パパがなかなか誘ってくれない上に幼馴染が東京から戻ってきて焦った結果の行動らしい。
それで結果的には良かった。
その後すぐ幼馴染もパパにキスをしたらしいから。
「冬莉も躊躇っちゃだめ。今だと思った時が最高の瞬間だから」
彼の方から誘ってくれるなんて真似したって、なかなかしてくれない。
それは嫌いなんじゃなくて彼女に対して奥手になるから。
大事にされてる証拠だから。
だから自分から訴えるの。
「あなたの物だよ」
受け身だけじゃダメ。
積極的に行きなさい。
隣で聞いてたパパはただ笑っていた。
愛莉の話が終ると私は部屋に戻る。
「今日はどうだったの?」
茜が聞いてきた。
「楽しかったよ」
「どこまでいったの?」
初デートだよ?
「キスだけだよ」
「ファーストキス?」
「それは前に済ませた」
「どんな味だった?」
うーん……よくわからないな。
「茜の時はどんな味したの?」
「味なんてするわけないじゃん」
精々福神漬けとか食べてたらその風味がわかるくらいだ。
初デートで福神漬け食べる男子とキスしたいかと言われると疑問だけど。
「愛莉が前に言ってた『味の正体は味覚じゃなくて心』なんだって」
茜が言うと急に志希とのキスの感覚を思い出す。
それは中毒みたいなもので何度でも確かめたくなるもの。
急に胸が苦しくなる。
志希に取ってもらったぬいぐるみを抱きしめる。
話だけでもいいからしたい。
すると志希からメッセージが来た。
「ごちそうさまでした。って両親に伝えておいて。後今日は楽しかった。またデートしてください。それじゃおやすみ」
他人がどんな気分でいるのかも知らずに……。
「勝手に寝るな!私はもっと志希と話がしたいの!!」
そう言って眠くなるまで志希とメッセージを楽しんでいた。
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