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幼い奇跡
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(1)
「社長!後は私達で対応するので急いで帰って下さい」
「待て!まだ結論は出てないぞ!!」
取引先の社長が呼び止める。
そんなのに付き合ってる場合じゃないんだ。
「申し訳ありません、社長は今緊急事態なので」
「この話を無かったことにしてもいいのだぞ」
あまりごねると商談どころか会社が潰れてもしらないよ。
「御社がそう言われるのでしたら我々は一向に構いませんよ」
僕の秘書の佐瀬さんも随分強気になって来た。
今日はいくつかあるアミューズメント施設に入れる筐体について話していた。
新型だろうがそうじゃなかかろうが僕はどっちでもいいんだけどね。
人気のある筐体らしいので相手は強気でいた。
他に客を取られても知らないぞと脅しをかけて来る。
「社長急いでください!」
早く病院に言ってくれと佐瀬さんが言う。
客よりも社員の命の方が優先だ。
僕は無視して会社を出て病院に向かった。
病院には繭たちがいる。
「遅かったわね?」
母さんが言う。
「こ、これでも急いだつもりなんだよ」
「善明や、また何か問題あったのかい?」
志水グループの総裁になった父さんが言った。
会社での取引の話を父さんに説明した。
「この緊急時にそんなふざけた事言った馬鹿は誰!?」
「さ、佐瀬さんは頼むから早く行ってくれと言ったんだよ」
母さんを宥めないと大惨事になる。
それがそもそも間違いだった。
「兄貴、翼の奴陣痛で苦しんでるから顔を見せてやった方がいい」
祈がこんな時こそ夫の出番だと言う。
母さんも「早く行きなさい」と言うから僕は部屋に入った。
苦しそうな翼と落ち着かせようとしている翼の母さんがいる。
翼の母さんが僕に気づくと立ち上がってタッチした。
「善明君にはわからないだろうけど、一番頼りにしてるのは夫だから」
そう言って翼の母さんは出て行った。
確か習ったな。
腰のあたりをマッサージしてやる。
「あ、善明。まだ仕事の時間じゃないの?」
「翼がこんな状態なのに仕事してたら僕は永遠に子供を見ることが出来なくなる」
「……ありがとう」
翼は笑っているけど偶に思いっきりつらそうになる。
「大丈夫?出産って何時間もかかるんだよ?」
退屈じゃないの?
翼はそう言うけど、退屈だからとスマホを弄って海に沈められるのは避けたい。
「僕の事はいいから頑張って」
「……はい」
しばらく翼の話し相手になっているとなんか今までとは違う苦しみ方になった。
何か異変を感じたらナースコールを押せ。
とどめは翼が「……産まれそう」と言った事。
慌ててナースコールを押す。
医者たちが入って来た。
医者が翼に色々聞いている。
「分娩室に入れます。旦那さんは立ち合いますか?」
絶対にノーと言えない選択肢。
光太達が言ってたな。
「立ち合いはいいけど生まれるところは絶対に見るな」
「善明、励ますくらいは出来るでしょ」
母さんがそう言うので立会いする。
翼がこれまで見せた事のない苦しそうな表情をする。
思わず助産師に「だ、大丈夫なのでしょうか?」と聞いていた。
助産師はにこりと笑って言う。
「初めてなんですね。このくらいは普通ですよ」
とにかく翼の手を握っていた。
余り色々言うと「五月蠅いから外で待ってて!」と光太は言われたらしいから。
翼の僕の手を握る握力が半端ない。
これもやっぱり長丁場だった。
そしてようやく赤子の声が聞こえてくる。
「まだですよ!あと2人いますから!」
そういえば三つ子って言ってたな。
残った2人もいつの間にか生まれていた。
「お疲れさまだったね」
「ありがとうございます。赤ちゃん見せてもらっていいですか?」
翼が言うので助産師の人と一緒に翼が見えるところに抱きかかえた。
翼はうっすらと泣いていた。
それから少し様子を見て病室に戻る。
翼も少し休んでそれから授乳を始める。
「善明。名前考えてる?」
「考えてるけど美希の意見も聞こうと思ってね」
「うーん。……じゃあ、女の子は善明が決めてよ。私は男の子決めるから」
そして女の子は菫と陽葵、男の子は秋久という名前になった。
「よろしくね」
翼はそう語りかけるように乳を吸わせていた。
後で聞いたんだけど取引先は破滅するかと思ったら免れたらしい。
翼の子供が生まれた目出たい日だから。
ただしかなりの破格で商談を済ませたらしい。
やはり僕達の子供は尊い命の様だ。
これから誘拐されたりサバイバル術を覚えたり大変なんだろうなと他人事の様に考えていた。
(2)
「片桐君、ちょっと来なさい」
僕は社長に呼び出された。
何だろう?
「失礼します」
社長室に入る。
社長は怒っている様だ。
僕を見ると机の上に書類を出す。
先日客先に提出したものだ。
何かトラブルか?
「僕は片桐君に言ったよね?ここは調整しておいてって」
それが出来てないという。
僕が書類を確認すると確かに調整がされていなかった。
社長から指示は受けていたのは覚えている。
そしてそれを高槻さんに指示して任せてあった。
高槻さんが指示を忘れて調整せずに作成したらしい。
その事で客先から社長が怒られた。
「どうしてこんな事になったのか説明しなさい」
社長が言うと様子をうかがっていた高槻さんが入って来た。
「それは私のミスです。先輩のせいじゃありません」
申し訳ありませんと高槻さんが頭を下げる。
だけど社長は関係ないと言った。
「高槻さんは何してるの?片桐君に仕事を渡されてないの?」
「いえ……」
受付の女性の電話を聞いていて、相手が自分が書類を作成した客先だと知って嫌な予感がしたから様子を見に来たらしい。
案の定高槻さんのミスだった。
だから僕は悪くないと高槻さんが僕を庇おうとした。
「今は業務時間。そういう無駄な時間を費やして残業するつもりなの?」
「いえ、ただ私の責任だと思って」
「高槻さんは何か勘違いをしてないかい?」
「え?」
さすがに高槻さんに社長の意図が分からなかったらしい。
確かに学生時代なら高槻さんの行動は正しかったのかもしれない。
だけどここは会社だ。
社長は言う。
「片桐君が高槻さんに仕事を渡したのならそれは片桐君の判断。片桐君が責任を取るのが当たり前だ」
仕事を任せるというのはそういう事。
だから最終的には社長が責任を取る。
責任を取れる人間が上の立場になる最低条件。
部下の責任、ましてやまだ仕事について一月に満たない新人に責任を押しつけるような人間に仕事は任せられない。
高槻さんが作成した書類でも、その後に片桐君がチェックしておけば防げたミスだ。
どうしてそうしなかった?
社長は僕と高槻さんを叱る。
高槻さんは泣いている。
しかし社長は冷徹だった。
「そうやって泣いている間も給料は発生しているんだ。この件は高槻さんが関わる事じゃない。さっさと仕事に戻りなさい」
社長がそう言うと高槻さんは礼をして退室した。
「片桐君も同じだよ。自分がミスをしたら最終的には会社が信用を失うという事を理解していないんじゃないのかい?」
部下をつけるという事はそれだけの責任を僕に委ねるという事。
その事に責任をもつのは最終的には社長にいきつく。
どんな些細な作業でもその事を常に頭の隅に置いておきなさい。
今回の件は社長が頭を下げて来たからいい。
今後は僕も一緒に頭を下げに行かせるよ。と社長は言う。
「分かったら仕事に戻りなさい」
「申し訳ありませんでした」
そう言って社長室を出る。
僕の席の隣で高槻さんが作業している。
かなり落ち込んでる様だ。
このままだとまた他のミスを作る。
そう思って15時の休憩時間に高槻さんを呼び出した。
やっぱり落ち込んでいる。
学生時代では、バスケでは絶対に経験してないだろう。
自分のせいで他の人が怒られる。
申し訳ありませんでしたと高槻さんは謝る。
「僕も最初の年はそうだったよ」
高槻さんと違うのは僕は社長の下で仕事をしていたというだけ。
だからきっと僕のミスを全部社長が責任とっていたんだろう。
でもそれを後悔するだけじゃダメだ。
今後同じ事をしなかったらいい。
高槻さんはまだ見習い期間。
仕事を覚える段階だ。
何度もミスしてそれを僕が指摘して、そうやって仕事を覚えていく。
社会ってそういうものなんだよ。
「わかりました。本当にごめんなさい」
そう言って高槻さんは僕に抱きつく。
僕は笑顔で高槻さんの背中をさすっていた。
その時僕は致命的なミスを犯していたことに気づかなかった。
休憩時間が終ると、怒られるという事に対してどうすればいいのかは高槻さんも分かっているらしい。
同じミスをしなければいい。
気持ちの切り替えは済んでいたようだ。
それは僕も同じ。
高槻さんがやったのだからと放っておくのではなくて、自分に与えられた仕事だと最後まで責任を持ってミスがないかチェックする。
今日の分の仕事が終る頃には丁度終業時間だった。
「お疲れ様でした」
「はい、お疲れさま」
僕も仕事を片付けて事務所を出ようとしていた。
社長がニヤリと笑っているのにも気づかなかった。
そして社長……父さんの仕掛けた罠にすでにはまっていた。
「旦那様!!これはどういう事ですか!?」
美希の機嫌が悪い。
どうしたんだろう?
「ただいま。どうしたの?」
「どうしたの?じゃありません!どうしてただの部下とこうなるのですか!?」
美希はそう言ってスマホを見せる。
それは高槻さんが僕に抱きついてる画像だった。
美希に送ったのは父さんだ……。
またやられた。
その後必死に美希に言い訳してた。
何とか美希に解ってもらえた。
「旦那様に限ってそれはないと信じてるけど……やっぱり他の女性とこんな事してるの見たら良い気しませんよ」
「だから不可抗力だって」
「まあ、先輩に庇ってもらったらこうなるのかな……ひょっとして冬夜さんはそこまで計算して桃花を空の下につけたんじゃ……」
そう言って美希は何か考えて母さんにメッセージを打っている。
すると意外な答えが返って来た。
「そんな事だろうと思いました」
母さんが知っていた。
なぜ?
父さんは片桐家のグルチャに画像を乗せていた。
「空もいよいよ美希に飽きたのか!?」
天音がそんな事を言ってる。
「冬夜さん!美希を揶揄うのは止めなさいと前も言ったでしょ!」
母さんがそう言っている。
って前も……?
何でその事まで知ってるの?
「ああ、ちょっと不安だったから愛莉さんに相談したの」
「……なるほどね」
今夜も父さんは母さんに大目玉を食らったらしい。
(3)
「あの、彼女嫌がってませんか?」
僕は男の集団に向かって声をかけた。
「なんだお前?」
男の一人が僕を睨みつける。
「いや、たまたま通りかかっただけなんですけどね」
「10秒時間をやる。数えているうちに失せろ」
そう言われても困ってる女性を放っておくなんてできない。
彼等に事情を聞いても無駄だと思ったので彼女に聞いてみた。
授業が終わってこれからバイトに行こうかと思ったら彼等に囲まれたらしい。
「金を払うか、SHに入るか選べ」
金を払ったら無事に済むとは思えない。
再び絡まれるリスクがある。
しかしSHというのがどういう集団なのか分からない。
怪しい集団じゃないのか?
セイクリッドハートと名乗る集団は地元大にはうようよいる。
九州最悪のギャングともネットでは噂されている。
「お前何勝手な事してんだ?SH舐めてるんじゃねー……」
男はセリフを全部言わずに吹き飛んだ。
「何勝手にSH名乗ってるんだ?そんなに避暑地に行きたいならすぐに叩き込んでやるぞ!?」
この集団と同じ様な事を言う男が殴り飛ばしたようだ。
「なんだてめぇは?」
集団の一人が男に聞いていた。
聞かれた男は名乗った。
「片桐」
男は名字だけ名乗った。
それだけで効果は十分だったようだ。
「何なら学生証見せてやろうか?」
そういう時には集団は立ち去って行った。
「いや、悪いね。どうもこの手の馬鹿が毎日現れるんだよね」
「ありがとうございます」
「でさ、君誰?彼女の連れ?」
「いや、たまたま通りがかっただけで……」
「なるほどね」
そう言って片桐さんは女性の方をじっと見る。
「君、北村彩音さん?」
「……そうですけど。それが何か?」
「よし、任務完了。北村さん俺達のグループに入ってよ」
「何てグループですか?」
「セイクリッドハート」
さっきの連中と同じじゃないのか?
それは北村さんも思ったようだ。
でも片桐さんは平然と答える
「亀梨麗華って知ってる?」
北村さんは知っていたようだ。
その亀梨さんも入っているらしい。
北村さんは僕を見て考えていた。
そして僕の腕を掴んで言う。
「彼と一緒でいいなら入ります」
はい?
「北村さんの知ってる人?」
片桐さんが聞いていた。
「いえ、さっき助けてくれようとしてたんです。かっこいいですよね~。で、名前なんて言うんですか?」
北村さんが名前を聞いてきた。
「南原調」
「じゃあ、しらべって呼ぶね。私の事彩音でいいから」
ひょっとして僕はとんでもないことに巻き込まれているんじゃないか?
「別に南原君が良いなら俺は良いけど」
片桐君が言う。
でも乱立してるSHの中で彼を信じていいのか僕にはまだ判断材料が足りない。
北村さんは亀梨さんが入ってるからって信用したらしいけど。
「ああ、入会金とかそんなのいらねーから」
「そうじゃなくてですね」
そもそもどういうサークルなんですか?
すると片桐君は笑った。
「お前、地元出身じゃないだろ?」
「ええ、別府でした」
「じゃ、取りあえず説明してやるから……車ある?」
「はい」
「じゃあ、国道沿いに青い鳥って喫茶店あるからそこで待ってて」
片桐君はそう言うと「またあとで」と去っていった。
面倒事に巻き込まれた様だ。
とりあえず話だけ聞くのもありか。
そう言って僕も駐車場に向かうと北村さんは呼び止めた。
「連絡先の交換済んでない!」
「どうしてそうなるの?」
「私はしらべが気に入ったから」
「……それだけ?」
「そうだよ。しらべは私の事嫌?」
それとも彼女がいる?
「いないけど」
「じゃあ、決まりだね」
そんな軽いノリでいいのか?
まあ、連絡先くらいならと北村さんと交換した。
「じゃ、早く行こう?」
そう言って僕達は指定された青い鳥についた。
随分大柄な男性とその彼女っぽい人がいた。
「まさ君ちょっとは食べる量考えようよ」
「お腹空いちゃうよ」
「夕飯いっぱい作ってあげるから」
同棲してるのかな?
「あ、わりぃわりぃ」
片桐君が入ってくると2人も反応した。
「んじゃこっち来て」
片桐君が言うと僕達は2人のテーブルに座った。
「純也、この女性が北村さん?」
太った男性が言ったら頷いた。
「ああ、やっと見つかったぜ」
そう言いながら片桐君はアイスコーヒーを頼んでいた。
「一つずつ片付けて行こうか。まず俺の名前は片桐純也」
SHのリーダー片桐空の弟。
だから片桐を名乗ってなお逆らう奴は海に捨ててこい。
姉の天音から言われてるらしい。
さらっと物騒な事言うな。
「で、彼女が北村彩音さん。俺が探していた人」
亀梨麗華さんは栗林美里さんの娘。
北村彩音さんは栗林美里さんの弟北村彩人さんの娘。
地元大に入るって聞いた時から亀梨麗華さんの旦那の亀梨光太……SHの元リーダーに確保するように頼まれていた。
「今地元でSHに逆らう奴はほとんどいない」
だから偽って悪さする連中が跡を絶たない。
その駆除を任されているのが純也らしい。
探すのは簡単らしい。
適当に歩いていればそれっぽい男が誰かに絡んでいる。
話を聞いてSHと名乗った時点で始末する。
本物のSHは自分からSHを名乗って恐喝なんて絶対にしない。
だから大体間違っていないはずだと片桐君は話す。
「で、君はどうするの?」
片桐君が聞いたら僕……じゃなくて北村さんが僕と腕を組んで答えた。
「彼と一緒に入りまーす」
僕に選択権はないらしい。
「付き合ってたの?」
太った人の隣にいる女性が言う。
「さっき付き合い始めました」
そんな簡単に決めて良いの?
「だって、住み別府なんでしょ?一緒じゃん。運命だよ」
それだけで運命って、君の運命の人は一体どんだけいるの?
そんな僕達の様子を見ていた片桐君はにこりと笑う。
「ま、いいんじゃね?」
他人事の様だった。
その場でグルチャに誘われると僕達は家に帰る。
想定外の時間を使ったので、急いでバイトに向かわないといけない。
そんな時に北村さんからメッセージが入った。
「宜しく、これから一緒に頑張ろうね」
「よろしく」
そうやって僕達の大学生活は始まった。
「社長!後は私達で対応するので急いで帰って下さい」
「待て!まだ結論は出てないぞ!!」
取引先の社長が呼び止める。
そんなのに付き合ってる場合じゃないんだ。
「申し訳ありません、社長は今緊急事態なので」
「この話を無かったことにしてもいいのだぞ」
あまりごねると商談どころか会社が潰れてもしらないよ。
「御社がそう言われるのでしたら我々は一向に構いませんよ」
僕の秘書の佐瀬さんも随分強気になって来た。
今日はいくつかあるアミューズメント施設に入れる筐体について話していた。
新型だろうがそうじゃなかかろうが僕はどっちでもいいんだけどね。
人気のある筐体らしいので相手は強気でいた。
他に客を取られても知らないぞと脅しをかけて来る。
「社長急いでください!」
早く病院に言ってくれと佐瀬さんが言う。
客よりも社員の命の方が優先だ。
僕は無視して会社を出て病院に向かった。
病院には繭たちがいる。
「遅かったわね?」
母さんが言う。
「こ、これでも急いだつもりなんだよ」
「善明や、また何か問題あったのかい?」
志水グループの総裁になった父さんが言った。
会社での取引の話を父さんに説明した。
「この緊急時にそんなふざけた事言った馬鹿は誰!?」
「さ、佐瀬さんは頼むから早く行ってくれと言ったんだよ」
母さんを宥めないと大惨事になる。
それがそもそも間違いだった。
「兄貴、翼の奴陣痛で苦しんでるから顔を見せてやった方がいい」
祈がこんな時こそ夫の出番だと言う。
母さんも「早く行きなさい」と言うから僕は部屋に入った。
苦しそうな翼と落ち着かせようとしている翼の母さんがいる。
翼の母さんが僕に気づくと立ち上がってタッチした。
「善明君にはわからないだろうけど、一番頼りにしてるのは夫だから」
そう言って翼の母さんは出て行った。
確か習ったな。
腰のあたりをマッサージしてやる。
「あ、善明。まだ仕事の時間じゃないの?」
「翼がこんな状態なのに仕事してたら僕は永遠に子供を見ることが出来なくなる」
「……ありがとう」
翼は笑っているけど偶に思いっきりつらそうになる。
「大丈夫?出産って何時間もかかるんだよ?」
退屈じゃないの?
翼はそう言うけど、退屈だからとスマホを弄って海に沈められるのは避けたい。
「僕の事はいいから頑張って」
「……はい」
しばらく翼の話し相手になっているとなんか今までとは違う苦しみ方になった。
何か異変を感じたらナースコールを押せ。
とどめは翼が「……産まれそう」と言った事。
慌ててナースコールを押す。
医者たちが入って来た。
医者が翼に色々聞いている。
「分娩室に入れます。旦那さんは立ち合いますか?」
絶対にノーと言えない選択肢。
光太達が言ってたな。
「立ち合いはいいけど生まれるところは絶対に見るな」
「善明、励ますくらいは出来るでしょ」
母さんがそう言うので立会いする。
翼がこれまで見せた事のない苦しそうな表情をする。
思わず助産師に「だ、大丈夫なのでしょうか?」と聞いていた。
助産師はにこりと笑って言う。
「初めてなんですね。このくらいは普通ですよ」
とにかく翼の手を握っていた。
余り色々言うと「五月蠅いから外で待ってて!」と光太は言われたらしいから。
翼の僕の手を握る握力が半端ない。
これもやっぱり長丁場だった。
そしてようやく赤子の声が聞こえてくる。
「まだですよ!あと2人いますから!」
そういえば三つ子って言ってたな。
残った2人もいつの間にか生まれていた。
「お疲れさまだったね」
「ありがとうございます。赤ちゃん見せてもらっていいですか?」
翼が言うので助産師の人と一緒に翼が見えるところに抱きかかえた。
翼はうっすらと泣いていた。
それから少し様子を見て病室に戻る。
翼も少し休んでそれから授乳を始める。
「善明。名前考えてる?」
「考えてるけど美希の意見も聞こうと思ってね」
「うーん。……じゃあ、女の子は善明が決めてよ。私は男の子決めるから」
そして女の子は菫と陽葵、男の子は秋久という名前になった。
「よろしくね」
翼はそう語りかけるように乳を吸わせていた。
後で聞いたんだけど取引先は破滅するかと思ったら免れたらしい。
翼の子供が生まれた目出たい日だから。
ただしかなりの破格で商談を済ませたらしい。
やはり僕達の子供は尊い命の様だ。
これから誘拐されたりサバイバル術を覚えたり大変なんだろうなと他人事の様に考えていた。
(2)
「片桐君、ちょっと来なさい」
僕は社長に呼び出された。
何だろう?
「失礼します」
社長室に入る。
社長は怒っている様だ。
僕を見ると机の上に書類を出す。
先日客先に提出したものだ。
何かトラブルか?
「僕は片桐君に言ったよね?ここは調整しておいてって」
それが出来てないという。
僕が書類を確認すると確かに調整がされていなかった。
社長から指示は受けていたのは覚えている。
そしてそれを高槻さんに指示して任せてあった。
高槻さんが指示を忘れて調整せずに作成したらしい。
その事で客先から社長が怒られた。
「どうしてこんな事になったのか説明しなさい」
社長が言うと様子をうかがっていた高槻さんが入って来た。
「それは私のミスです。先輩のせいじゃありません」
申し訳ありませんと高槻さんが頭を下げる。
だけど社長は関係ないと言った。
「高槻さんは何してるの?片桐君に仕事を渡されてないの?」
「いえ……」
受付の女性の電話を聞いていて、相手が自分が書類を作成した客先だと知って嫌な予感がしたから様子を見に来たらしい。
案の定高槻さんのミスだった。
だから僕は悪くないと高槻さんが僕を庇おうとした。
「今は業務時間。そういう無駄な時間を費やして残業するつもりなの?」
「いえ、ただ私の責任だと思って」
「高槻さんは何か勘違いをしてないかい?」
「え?」
さすがに高槻さんに社長の意図が分からなかったらしい。
確かに学生時代なら高槻さんの行動は正しかったのかもしれない。
だけどここは会社だ。
社長は言う。
「片桐君が高槻さんに仕事を渡したのならそれは片桐君の判断。片桐君が責任を取るのが当たり前だ」
仕事を任せるというのはそういう事。
だから最終的には社長が責任を取る。
責任を取れる人間が上の立場になる最低条件。
部下の責任、ましてやまだ仕事について一月に満たない新人に責任を押しつけるような人間に仕事は任せられない。
高槻さんが作成した書類でも、その後に片桐君がチェックしておけば防げたミスだ。
どうしてそうしなかった?
社長は僕と高槻さんを叱る。
高槻さんは泣いている。
しかし社長は冷徹だった。
「そうやって泣いている間も給料は発生しているんだ。この件は高槻さんが関わる事じゃない。さっさと仕事に戻りなさい」
社長がそう言うと高槻さんは礼をして退室した。
「片桐君も同じだよ。自分がミスをしたら最終的には会社が信用を失うという事を理解していないんじゃないのかい?」
部下をつけるという事はそれだけの責任を僕に委ねるという事。
その事に責任をもつのは最終的には社長にいきつく。
どんな些細な作業でもその事を常に頭の隅に置いておきなさい。
今回の件は社長が頭を下げて来たからいい。
今後は僕も一緒に頭を下げに行かせるよ。と社長は言う。
「分かったら仕事に戻りなさい」
「申し訳ありませんでした」
そう言って社長室を出る。
僕の席の隣で高槻さんが作業している。
かなり落ち込んでる様だ。
このままだとまた他のミスを作る。
そう思って15時の休憩時間に高槻さんを呼び出した。
やっぱり落ち込んでいる。
学生時代では、バスケでは絶対に経験してないだろう。
自分のせいで他の人が怒られる。
申し訳ありませんでしたと高槻さんは謝る。
「僕も最初の年はそうだったよ」
高槻さんと違うのは僕は社長の下で仕事をしていたというだけ。
だからきっと僕のミスを全部社長が責任とっていたんだろう。
でもそれを後悔するだけじゃダメだ。
今後同じ事をしなかったらいい。
高槻さんはまだ見習い期間。
仕事を覚える段階だ。
何度もミスしてそれを僕が指摘して、そうやって仕事を覚えていく。
社会ってそういうものなんだよ。
「わかりました。本当にごめんなさい」
そう言って高槻さんは僕に抱きつく。
僕は笑顔で高槻さんの背中をさすっていた。
その時僕は致命的なミスを犯していたことに気づかなかった。
休憩時間が終ると、怒られるという事に対してどうすればいいのかは高槻さんも分かっているらしい。
同じミスをしなければいい。
気持ちの切り替えは済んでいたようだ。
それは僕も同じ。
高槻さんがやったのだからと放っておくのではなくて、自分に与えられた仕事だと最後まで責任を持ってミスがないかチェックする。
今日の分の仕事が終る頃には丁度終業時間だった。
「お疲れ様でした」
「はい、お疲れさま」
僕も仕事を片付けて事務所を出ようとしていた。
社長がニヤリと笑っているのにも気づかなかった。
そして社長……父さんの仕掛けた罠にすでにはまっていた。
「旦那様!!これはどういう事ですか!?」
美希の機嫌が悪い。
どうしたんだろう?
「ただいま。どうしたの?」
「どうしたの?じゃありません!どうしてただの部下とこうなるのですか!?」
美希はそう言ってスマホを見せる。
それは高槻さんが僕に抱きついてる画像だった。
美希に送ったのは父さんだ……。
またやられた。
その後必死に美希に言い訳してた。
何とか美希に解ってもらえた。
「旦那様に限ってそれはないと信じてるけど……やっぱり他の女性とこんな事してるの見たら良い気しませんよ」
「だから不可抗力だって」
「まあ、先輩に庇ってもらったらこうなるのかな……ひょっとして冬夜さんはそこまで計算して桃花を空の下につけたんじゃ……」
そう言って美希は何か考えて母さんにメッセージを打っている。
すると意外な答えが返って来た。
「そんな事だろうと思いました」
母さんが知っていた。
なぜ?
父さんは片桐家のグルチャに画像を乗せていた。
「空もいよいよ美希に飽きたのか!?」
天音がそんな事を言ってる。
「冬夜さん!美希を揶揄うのは止めなさいと前も言ったでしょ!」
母さんがそう言っている。
って前も……?
何でその事まで知ってるの?
「ああ、ちょっと不安だったから愛莉さんに相談したの」
「……なるほどね」
今夜も父さんは母さんに大目玉を食らったらしい。
(3)
「あの、彼女嫌がってませんか?」
僕は男の集団に向かって声をかけた。
「なんだお前?」
男の一人が僕を睨みつける。
「いや、たまたま通りかかっただけなんですけどね」
「10秒時間をやる。数えているうちに失せろ」
そう言われても困ってる女性を放っておくなんてできない。
彼等に事情を聞いても無駄だと思ったので彼女に聞いてみた。
授業が終わってこれからバイトに行こうかと思ったら彼等に囲まれたらしい。
「金を払うか、SHに入るか選べ」
金を払ったら無事に済むとは思えない。
再び絡まれるリスクがある。
しかしSHというのがどういう集団なのか分からない。
怪しい集団じゃないのか?
セイクリッドハートと名乗る集団は地元大にはうようよいる。
九州最悪のギャングともネットでは噂されている。
「お前何勝手な事してんだ?SH舐めてるんじゃねー……」
男はセリフを全部言わずに吹き飛んだ。
「何勝手にSH名乗ってるんだ?そんなに避暑地に行きたいならすぐに叩き込んでやるぞ!?」
この集団と同じ様な事を言う男が殴り飛ばしたようだ。
「なんだてめぇは?」
集団の一人が男に聞いていた。
聞かれた男は名乗った。
「片桐」
男は名字だけ名乗った。
それだけで効果は十分だったようだ。
「何なら学生証見せてやろうか?」
そういう時には集団は立ち去って行った。
「いや、悪いね。どうもこの手の馬鹿が毎日現れるんだよね」
「ありがとうございます」
「でさ、君誰?彼女の連れ?」
「いや、たまたま通りがかっただけで……」
「なるほどね」
そう言って片桐さんは女性の方をじっと見る。
「君、北村彩音さん?」
「……そうですけど。それが何か?」
「よし、任務完了。北村さん俺達のグループに入ってよ」
「何てグループですか?」
「セイクリッドハート」
さっきの連中と同じじゃないのか?
それは北村さんも思ったようだ。
でも片桐さんは平然と答える
「亀梨麗華って知ってる?」
北村さんは知っていたようだ。
その亀梨さんも入っているらしい。
北村さんは僕を見て考えていた。
そして僕の腕を掴んで言う。
「彼と一緒でいいなら入ります」
はい?
「北村さんの知ってる人?」
片桐さんが聞いていた。
「いえ、さっき助けてくれようとしてたんです。かっこいいですよね~。で、名前なんて言うんですか?」
北村さんが名前を聞いてきた。
「南原調」
「じゃあ、しらべって呼ぶね。私の事彩音でいいから」
ひょっとして僕はとんでもないことに巻き込まれているんじゃないか?
「別に南原君が良いなら俺は良いけど」
片桐君が言う。
でも乱立してるSHの中で彼を信じていいのか僕にはまだ判断材料が足りない。
北村さんは亀梨さんが入ってるからって信用したらしいけど。
「ああ、入会金とかそんなのいらねーから」
「そうじゃなくてですね」
そもそもどういうサークルなんですか?
すると片桐君は笑った。
「お前、地元出身じゃないだろ?」
「ええ、別府でした」
「じゃ、取りあえず説明してやるから……車ある?」
「はい」
「じゃあ、国道沿いに青い鳥って喫茶店あるからそこで待ってて」
片桐君はそう言うと「またあとで」と去っていった。
面倒事に巻き込まれた様だ。
とりあえず話だけ聞くのもありか。
そう言って僕も駐車場に向かうと北村さんは呼び止めた。
「連絡先の交換済んでない!」
「どうしてそうなるの?」
「私はしらべが気に入ったから」
「……それだけ?」
「そうだよ。しらべは私の事嫌?」
それとも彼女がいる?
「いないけど」
「じゃあ、決まりだね」
そんな軽いノリでいいのか?
まあ、連絡先くらいならと北村さんと交換した。
「じゃ、早く行こう?」
そう言って僕達は指定された青い鳥についた。
随分大柄な男性とその彼女っぽい人がいた。
「まさ君ちょっとは食べる量考えようよ」
「お腹空いちゃうよ」
「夕飯いっぱい作ってあげるから」
同棲してるのかな?
「あ、わりぃわりぃ」
片桐君が入ってくると2人も反応した。
「んじゃこっち来て」
片桐君が言うと僕達は2人のテーブルに座った。
「純也、この女性が北村さん?」
太った男性が言ったら頷いた。
「ああ、やっと見つかったぜ」
そう言いながら片桐君はアイスコーヒーを頼んでいた。
「一つずつ片付けて行こうか。まず俺の名前は片桐純也」
SHのリーダー片桐空の弟。
だから片桐を名乗ってなお逆らう奴は海に捨ててこい。
姉の天音から言われてるらしい。
さらっと物騒な事言うな。
「で、彼女が北村彩音さん。俺が探していた人」
亀梨麗華さんは栗林美里さんの娘。
北村彩音さんは栗林美里さんの弟北村彩人さんの娘。
地元大に入るって聞いた時から亀梨麗華さんの旦那の亀梨光太……SHの元リーダーに確保するように頼まれていた。
「今地元でSHに逆らう奴はほとんどいない」
だから偽って悪さする連中が跡を絶たない。
その駆除を任されているのが純也らしい。
探すのは簡単らしい。
適当に歩いていればそれっぽい男が誰かに絡んでいる。
話を聞いてSHと名乗った時点で始末する。
本物のSHは自分からSHを名乗って恐喝なんて絶対にしない。
だから大体間違っていないはずだと片桐君は話す。
「で、君はどうするの?」
片桐君が聞いたら僕……じゃなくて北村さんが僕と腕を組んで答えた。
「彼と一緒に入りまーす」
僕に選択権はないらしい。
「付き合ってたの?」
太った人の隣にいる女性が言う。
「さっき付き合い始めました」
そんな簡単に決めて良いの?
「だって、住み別府なんでしょ?一緒じゃん。運命だよ」
それだけで運命って、君の運命の人は一体どんだけいるの?
そんな僕達の様子を見ていた片桐君はにこりと笑う。
「ま、いいんじゃね?」
他人事の様だった。
その場でグルチャに誘われると僕達は家に帰る。
想定外の時間を使ったので、急いでバイトに向かわないといけない。
そんな時に北村さんからメッセージが入った。
「宜しく、これから一緒に頑張ろうね」
「よろしく」
そうやって僕達の大学生活は始まった。
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