姉妹チート

和希

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(1)

「え?」

 私達はタワーホテルの屋上のレストランにいた。
 彼が選ぶいつものファミレスじゃない。
 何か考えてる?
 そして料理が来る中彼は無言で食べていた。
 よく分からないけど緊張してる事はわかった。

「そんなに緊張しないで。いつも通りでいいから」
「さ、さーせん……」

 しきりにポケットの中味を確認している。
 10月も半ばに入った頃だ。
 特に何かイベントがあるわけじゃない。
 ハロウィンだからと言って軽トラをひっくり返すような馬鹿ではない。
 一体どうしたのだろう?
 とりあえず話しかけてみよう。

「そういえば秋斗君結婚されたんですよね?」

 その言葉にぴくっと反応した。

「そ、そうっすね。羨ましいっす」

 彼でもそう思うんだ。
 確かに羨ましい。
 ちょっと気になったことがある。
 何となくだけど気づいてしまった。
 確認のためにもう一押ししてみる。

「で、夏弥はいつプロポーズしてくれるんですか?」

 答えは何となく分かっていた。
 だから私からそういう流れにしてあげた。
 きっと言い出すタイミングに悩んでいたのだろう。
 結果、夏弥は黙ってしまった。
 いうのが怖いのだろう。

「お願いがあるんだけどいいかな?」
「な、なんすか?」
「夏弥の勇気をもう一度だけ見せて欲しい」

 頑張れ。
 あと一言だけでいいんだよ?
 すると覚悟を決めたのかポケットから何かを取り出した。
 予想通りの物だった。

「俺は七海とつり合いが取れないと思っていた」

 白鳥グループの一角を担う事になる夏弥とつり合いが取れないなんてお世辞だよ。
 それにそんなつもりで夏弥と付き合って来たんじゃない。
 どんな時でも笑顔でいてくれる。
 演奏が上手く出来なくて落ち込んでいる時も元気づけてくれる。

「そんな俺でよかったら結婚してください」

 フロア中に聞こえるような大きな声で叫んでいた。
 よく頑張ったね。
 だから私もこの場で覚悟を決めます。

「あざーっす」
「へ?」
「……使い方間違えたかな?」

 笑顔でいようとしていたけど涙が止まらないの。
 勘違いしないでね。
 これは嬉し涙。
 夏弥とずっと一緒にいられるんだって喜びの印。

「いいんすか?」
「いいっすよ」
「……あざっす」
「こちらこそよろっす」

 それからはいつもの夏弥だった。
 いつも以上にテンションが上がっていた。
 そんなに喜んでもらえて私も幸せだよ。
 今日はお酒入ってるから両親への挨拶は後日にした。
 でも帰って来た私の様子を見て母さんは見抜いたようだ。

「プロポーズでもされた?」

 母さんが聞いてきたので返事の代わりに左手の指輪を見せた。

「おめでとう、よかったね」
「ありがとう」
 
 そう言って部屋に戻って着替えて風呂に入る。
 後日夏弥は挨拶に家に来た。
 反対されても夏弥についていくから。
 でもそんな必要は無いよ。
 がちがちに緊張している夏弥がおかしかったけど、笑いをこらえていた。
 父さんが見かねて言った。

「ああ、七海ももう立派な大人だ。そういうもんだと俺達も理解してくれる。リラックスしてくれ」

 すると夏弥は大声で叫んで頭を下げていた。

「七海さんと結婚させて下さい」

 あまりの大声に両親は驚いていた。
 そして笑っている。

「やっと決意してくれたんだね。ありがとう。娘の事は夏弥君に任せるよ」

 これで育児から解放される。
 そう言って父さんは笑っていた。

「今日は少し祝いをしたい。泊って行ってくれないか?」

 父さんが言った。
 それから寿司を頼んで夏弥は父さんと飲みながら、私の過去を暴露していた。
 不思議と恥ずかしいとかそういう気持ちは無かった。
 
 そんな私だけど大丈夫ですか?

 そんな事を彼に呟いていた。
 
「余裕っす」

 そう言って私の手を握っていた。
 今夜は私の部屋に泊るらしい。

「彼女の部屋なんて初めて入ったっす!」

 多分本当なんだろう。

「そんなに掃除してないから、あまりじろじろ見ないで」
「さ、さーせん!」

 そうじゃなくてさ。
 私は夏弥に抱きつく。

「私だけに夢中になって欲しい」
 
 夏弥は理解してくれた。
 私を抱きしめる。
 SHの皆には報告していた。
 みんな私の幸せを祝ってくれていた。
 これからもきっと大変な事があるだろう。
 だけど私の手には夏弥がいる。
 何があっても恐れる事はない。
 そんな事を感じていた。

(2)

「お疲れ様」

 私は疲れ切った律に声をかけていた。

「琴葉の方が大変じゃなかったのか?」

 律が聞いていた。

「さすがに朝まではきついかな?」

 そう言って笑った。

「琴葉おめでとう!」

 先に結婚をした輝夜と勝利が挨拶に来た。

「ありがとう」
「今日はこの後どうするんだ?」

 勝利が律に聞いていた。

「2次会で帰るつもり。琴葉疲れてるみたいだから」
「まあ、そうなるよな……」

 すると勝利が何か考えていた。

「今日はしょうがない。琴葉が疲れてるだろうし」

 だけど、仕事だからって普段全く構ってやらないなんて真似はよせ。
 勝利の父親がそうだったらしい。
 輝夜の父親もおなじだ。
 趣味に没頭してほとんど母親の相手をしてなかったそうだ。
 その結果が輝夜だ。
 俺だっていつか子供を作るんだろ?
 子供って意外と親の態度を見てるから気をつけろ。

「ま、その前に子作りからだけどな」
「輝夜はどうなの?」
「私は勝利が気を使ってくれるから」

 ただ仕事上輝夜の方が残業が多い。
 疲れてるのは輝夜だ。
 だから休日でのんびりできるときに構ってくれる。
 新婚旅行も行って来たそうだ。
 私達も連休が取れたらどこか行って来ようと2人で話をしていた。
 挨拶に来るのは輝夜だけじゃない。
 律は小学校の同僚、私は中学校の同僚が挨拶に来た。
 そんな中に律の先輩の水島桜子がいた。

「おめでとう、律」
「ありがとうございます」
 
 そんな風に対応しながら余興を楽しんで2次会は終った。
 私達はそのまま帰る。
 家に帰って風呂に入るとベッドに倒れこむ。

「本当に疲れてるみたいだな」
「まあね……」

 2度はしなくていいと思ったよ。

「それは俺も勘弁してくれ」

 そう言って律が笑う。

「これから一緒に幸せになろうな」
「よろしくお願いします」
「こちらこそお手柔らかに」
「ところでさ、相談があるんだけど」

 子供いつ作る?
 そう言うと律は慌ててた。
 
「そ、そんなに慌てなくていいんじゃないか?」
「でも天音達の話きいてたらやっぱり早く欲しいなって」
「でも産むの大変みたいだぞ?」
「他人事みたいに言わないでよ」

 律は私の妊娠中の世話してくれないの?

「そんなわけないだろ?たださ……いいのか?」

 折角教師になれたのに育休するのか?

「いや、退職しようかなって思う」
「いいの?」

 こんなに早く結婚できるって思ってなかったけど、結婚したら育児に専念するつもりだったから。
 自分の子供くらい自分で育てたい。

「まあ琴葉がそう思ってるんだったら協力はするよ」
「うん、ただ今夜だけはごめん」
 
 くたくたで動けない。

「そこまで嫁を酷使するような鬼じゃないよ」
  
 知ってるよ。
 だから夫に選んだのだから。
 話をすませると私達は寝た。
 私が結婚したことは生徒達も知っていた。

「琴葉ちゃん、おめでとう!」

 翌週、子供達がそう祝ってくれた。

「ありがとう」

 そうやって私達の新しい生活が始まった。

(3)

「先にお金ちょうだい」

 私が言うと目の前にいるおっさんが金を出した。
 それを受け取ると「じゃ、行こうか?」と言って私の手を掴む。
 SAPの駐車場にとめてあるおっさんの車の助手席に座ろうとしていた時だった。
 私の手を誰かが掴む。
 振り返ると石原友誼だった。

「お前何やってんの?」

 同級生に見られた。

「お前誰だ?」

 おっさんは友誼を睨む。

「クラスメート。やり取りは一部始終見てた」

 このまま警察に突き出すのも可能だぞとおっさんを脅す。

「俺は金を払ったんだぞ!?」
「全部見てたって言ったはずだけど?」

 そう言うと友誼は自分の財布から金を取り出す。
 中学生の所持金じゃない。

「これだけあれば十分だろ。さっさと失せろ」

 そう言うとおっさんは車で立ち去った。

「ちょっと友誼勝手な真似しないで!」
「ごめん凜」
 
 え?

 その謝罪の意味がすぐ分かった。
 友誼の掌が私の方を打つ。

「中学生のやる事じゃないぞ」

 初体験だってまだじゃないのか?
 もっと自分の体を大事にしろ。
 初めての相手があんなおっさんだったら後々後悔するのはお前だぞ。
 友誼は勘違いをしている。

「私の初めてなんてとっくに済ませた!」

 中2なら普通にあるだろ。
 もちろん相手はロリコン趣味のおっさん。
 最初のうちは下着を売ったりしてた。
 それがエスカレートしてそんな事になった。
 でも友誼の言葉が私の胸に突き刺さる。
 なんて馬鹿な真似をしたんだろう。
 でもそんな風に怒ってくれる人は友誼以外にいなかった。
 当たり前だ。
 こんな馬鹿な真似をしてるなんて事誰にも言えなかった。

「まだ、間に合うよ。これっきりにしとけ」
「ごめんなさい」

 でもなんで友誼がここにいたの?

「幸も彼氏出来て暇だからさ。遊びに来た」
「そうなんだ?友達と?」
「いや、一人だけど」
「じゃあ、お礼させてくれない?」
「何するの?」
「一緒に遊んでよ」
「……俺にあのおっさんと同じ真似をさせたいのか?」

 そんなわけないじゃん。
 友誼とはちゃんと付き合ってからにしたい。

「普通に遊ぶ分ならいいでしょ?」

 友誼が金を払ったからおっさんから受け取った金がある。
 その金でお礼をさせて。

「わかったよ、まず何をする?」

 友誼が聞いていた。
 
「友誼に任せる」

 だって彼氏なんていたことないし。

「じゃあ、べたにボウリングでも行こうか?」

 そう言って私の手を友誼が掴もうとすると、その友誼の腕を誰かが掴んだ。
 友誼が気づいた時には友誼は殴り飛ばされていた。
 もちろん友誼も石原家の男子。
 しかし普段から警戒してる中学生なんてそんなにいない。
 そして友誼が反撃しようと立ち上がろうとすると他の男の群れが友誼を袋叩きにしていた。

「友誼!」

 そう言って友誼を助けようとするけど私は男の手に掴まれて、無理やり車に押し込められた。
 泣き叫んで助けを呼ぶけど誰も助けようとしない。
 彼等はフォーリンググレイス。
 FGに逆らえる人間なんてそんなにいない。
 私は車で連れ去られてそして無理矢理……。
 おっさんから受け取った金も奪われた。
 私の抵抗なんて意にも介さず暴行を受ける私。
 
「友誼、ごめんなさい」

 私が馬鹿だったから友誼を巻き込んでしまった。
 私は周りを不幸をばらまくどうしようもない人間。
 自分の人生を呪っていた。

(4)

「うん、わかった」

 空は友誼から説明を受けるとそう言った。
 友誼が寝ているベッドの側には髪の毛をバッサリ切られた石川凛がいる。
 警察には言わなかった。
 凜の悪事まで暴かれるから。
 空は凜に言った。

「これで後悔するんだったら二度と馬鹿な真似はしちゃいけないよ」
「でもFGが……」
「それは凜が心配しなくていい」

 冬莉が言う。
 僕は茜からの連絡を受けていた。
 FGは狡猾らしい。
 茜の網にはかかったけど引きずり出すのは容易じゃなさそうだ。

「やっぱ学校爆撃する?」

 泉が言った。

「相手は大人もいるんだろ?中学校爆撃したくらいじゃ気が済まない」

 空がそう言う。
 と、なると全面戦争か。
 大体の情報は茜と恵美さんから聞いていた。
 恵美さんは一人残らず戸籍不明にしてやると言ったけど、父さんが「子供に任せよう」と言った。

「で、どうするんだ?あいつらこそこそと本当にゴキブリみたいで中々姿を出さない」

 すると空は冬莉に何か耳打ちする。
 そして僕達に外で待っていようと言う。

「空、まさか何もしないなんて言わないよな?」

 純也が聞く。

「そんな真似するわけないだろ」

 きっちり精算してやる。

「空は何を考えているの?」

 僕が聞いた。

「それを今冬莉にお願いしてもらってる」
「何をするつもり?」
「囮だよ」
「え?」

 まさか……。
 そのまさかだった。
 凜に芝居をしてもらう。
 無理矢理にでも引きずり出して全員ぶっ飛ばす。
 ぶっ飛ばすなんて言葉は生温いくらいに痛めつける。
 そんな話をしているうちに冬莉が出て来た。

「空、ちょっと空と話がしたいって」
「わかった」
 
 そう言って空が病室に入る。
 そんなに時間がかからなかった。
 空と凜が部屋から出てくる。
 空と軽く打ち合わせをして今日は解散した。

(4)

「えーといくらかな?」
「ゴム付きホテル代別五万」
「わかった。じゃあ、何処に行けばいいかな?」
「SAPの駐車場で待ってる」

 そう言って電話を終わると……。

 ぽかっ

「妻の前で援助交際の打ち合わせしますか?普通」

 あ、美希に説明してなかった。
 
「……なんてね。私はさすがに子供がいるからいけないけど」

 恵美さんから聞いていたらしい。
 徹底的にいたぶってやれ。

「そのつもりだよ」

 どのくらいの規模で相手が来るか知らないけど、大人が混ざっていたのは事実らしい。
 どうせ原川組のしのぎの一部なんだろう。

「じゃ、行ってくる」
 
 そう言って車でSAPに向かった。
 すると予定通りに凜が入口で待っていた。
 僕は入口に向かうと凜に話しかけた。

「君がRINさん?」
「……はい」
「じゃ、行こうか?」
「その前にお金を……」
「それって僕のリスク高くない?」
「え?」

 案の定凜が驚いた。
 構わず僕は続ける。
 それで金を払ったところを写真に撮られたら、僕は社会的制裁を受ける。
 凜は怯えている。

「逆のパターンもある。こんな事学校に知れたらRINもただじゃ済まないよ」
「あ、あのどうすれば……」
「とりあえずついておいで」

 そう言って車に凜を乗せようとすると、案の定背後から誰か来た。
 凜を素早く車に押し込んで振り返る。
 やっぱり中坊っぽいのは一人としていなかった。
 そんな連中でおっさんを相手にするのは普通に考えたら無理だしね。

「君達何者?」
「……その女をどうするつもりだ?」

 予想通りの質問だった。
 僕はくすっと笑って答える。

「家まで送るつもりだけど?」

 こんな時間に外を出回っているのは校則に触れるだろうから。
 そんなものを守る中学生は殆どいないだろうけど。

「とぼけるな。未成年の女をホテルに連れていくつもりだったんだろうが?」
「証拠あるの?」

 大体君達誰?

「お前俺達フォーリンググレイスを舐めてるんじゃねーぞ」

 馬鹿が一々名乗ったよ。

「へえ、君達がFGだったんだ。そりゃ都合がいい」
「なんだと?」
「勝次がリーダーの時はもう少し頭がよかったぞ?」
「何?」

 間違っても僕に喧嘩を売るような自殺願望は持ってなかった。

「もういいだろ、空。水奈を野放しにしてると水奈が何をしでかすか分からないんだ」
「僕も翼に無理言ってお願いしてるんだ。あまり遅くなると翼の機嫌取り戻すのに大変なんだ」
「僕も天音が結莉達に何を吹き込むか不安で仕方ない」

 学と善明と大地が言うと皆がぞろぞろと出て来た。
 状況が分からないのか男達は慌てている。
 もちろん彼等の増援もいた。
 でもそんな事は関係ない。

「随分ダサい集団になったな。FGも」

 遊がそう言う。
 なずなが「琴音がいるのに一人で夜遊びなんていい加減にして!」と五月蠅いらしい。
 しかし僕達のSHのグルチャで今回の件はSH全体が周知してる。

「どうせしょうもない事にしか使わないなんだらもぎ取って来い!」

 天音はそう言っていた。
 
「てなわけ。こっちも時間がないんだ。殺してやるからさっさと来い」
「空は動くなよ」

 学が言う。

「なんで?」
「光太から言ってたんだよ。一々雑魚相手に王が動くような規模の小さいグループじゃないって」

 まあ、そう言うなら見てるだけにしとくかな。

「ふざけてんじゃねーぞ!!FG相手にしてただで済むんじゃないぞ」

 そう言った奴を善明がぶん殴った。

「君達何か勘違いしてないかい?それは免罪符なんかじゃない。ただの自殺願望の表現だよ」

 SHの前でFGを名乗った馬鹿は片っ端から殺してやる。

「な、なんでSHが……」

 これほど間抜けなセリフは無いな。

「いい加減気づけよ。お前らは罠にはまった間抜けな鼠だ」

 そう言うと戦闘が開始した。

「とりあえず車には傷入れないでね。ローンは済んだけど気に入ってるんだその車」
「わかりました」

 大地はそう言て車に近づく馬鹿を片っ端から処分していく。
 
「僕も弟を痛めつけられてちょっとイライラしてるから。殺したらごめんね」

 時間はそんなにかからなかった。

「ま、待て。SHには関係ないだろ?」

 そんな事を言ってる間抜けがいる。
 やれやれ。

「お前何を聞いてたんだ?大地の弟に手を出して置いて今さら関係ないは僕達を馬鹿にしてるの?」
「し、知らなかったんだ!」
「……どうせお前らFGなんだろ?」

 だったら関係ない。
 SHに喧嘩売ったらどうなるか壊滅するまで味合わせてやる。

「誰が勝手に喋って良いと言った!?お前如きに空の王が相手してられるか!」

 そう言って最後の一人を純也が蹴り飛ばした。
 残った面子も逃げ出せる……はずがない。
 一人も逃すつもりはない。
 全員片付けると目立つと面倒だから建物の裏に隠しておいた。
 
「もう大丈夫、出ておいで」
 
 そう言うと助手席から凜が出てくる。

「今度また脅しを受けたら僕達に知らせて。片っ端から処分するから」

 大事な人出来たんだろ?
 馬鹿な真似を出来るはずないでしょ?

「……私にその価値があるんでしょうか?」
「それは友誼が決める事だ」

 僕達には関係のない話。
 みんな家に帰ると僕も凜を家に送って家に帰る。
 
「ただいま~」

 僕がそう言うと美希は無言で外に出る。
 どうしたんだろ?
 美希を追うと助手席を調べていた。
 中学生だ。
 香水くらいつけるんだろう。
 その残り香に美希は気づいた。

「私以外の人を助手席に載せたらダメって言いましたよ」

 そういって家で美希にしっかり怒られていた。

(5)

 そんなに長い間入院していたわけじゃなかった。
 修学旅行の前には退院できた。
 母さん達が迎えに来てたけど凜が来てる事に気づいた。

「どうしたの?一人で行動してると危ないよ?」
「それは空さん達が助けてくれたから大丈夫」
「そっか。で、今日はどうしたの?」
「えっと……助けてくれてありがとう」
「気にしないでいいよ。もう馬鹿な真似したらダメだよ」
「それが二つ目の用件なの」
「どういう意味?」

 そう言うと父さん達や幸は笑っている。

「兄貴それくらい察してやれよ」

 岳也もそう言っていた。
 どういう意味だろう?
 すると凜は一言ずつ言葉を選びながら話をした。

「私が馬鹿な真似をしないように、流されないように、傷つかないように見守って欲しい」

 私にその資格があるなら私を包んで欲しい。
 資格?
 すると母さんが僕を睨みつける。

「あなたまだ気づかないの!?望にそっくり!彼女の気持ちくらい察してあげなさい!」

 僕には彼女を守る権利が生まれたようだ。

「ありがとう」
「え?」

 凜が不思議そうに聞き返す。

「僕は修学旅行に一人ぼっちって事はなくなりそうだ」

 そう言って笑うと「こちらこそありがとう」と凜が笑っていた。
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