姉妹チート

和希

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あけまして

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(1)

「いや、参った!」

 遊がそう言って琴音を寝かしつけて戻って来た。
 琴音は遊が困るのを見て喜んでいるらしい。

「ほら、口を開けて」

 そう言って食べ物を差し出すけどぷいっと顔をそむける。
 遊が琴音から目を離したすきにパクッと食べて「もっと食べたい!」と駄々をこねる。

「どれが食べたい?」

 そう言って色々見せるけど全く反応しない。
 どうすればいいか分からず遊がなずなを探してる間に勝手に取って食べてしまう。
 寝かしつける時も同じらしい。
 遊が見てる間は寝たふりをして部屋を出ようとすると「あー!」と騒ぎだす。
 泣いてないところがポイントらしい。

「子育てってこんなに苦労するのか?」

 遊もさすがに自分の娘を叱る事が出来ずに参ってるらしい。

「遊だって小さい時同じだっただろうが」

 遊の母親の亜依さんが言う。
 ちなみに父親はろくに家にいたことがないらしい。

「私が夜勤の時くらい家にいて!」 

 そう注意しても直らなかったそうだ。
 その結果が学が兄弟の面倒を見るというスタイルになった。

「一人で助かった……二人いたら俺ノイローゼになるぜ」
「遊は夜だけだからいいじゃない!私は昼間も琴音の世話をしてるんだから!」
 夜くらいは世話をしないと、たパパの顔忘れたとか言い出してもしらないよと、なずながいうと夜遊びをしなくなったそうだ。

「なずなはまだましだよ……瑛大は全く育児に協力する意思なかった」

 亜依さんが言う。
 育児はしないのに子供の事で水奈の父さんと酒を飲んでいたらしい。
 学の父さんと水奈の父さんに共通してるのは「子供の家に一人で行くな!」と徹底的に監視されてるらしい。
 来たらすぐに電話しろとなずなと水奈は言われたそうだ。

「水奈は他人事だと思ってるけど普通逆なんだぞ」
「あ、その話はここでするな!!」
  
 水奈が慌ててる。

「なんかあったのか?」

 水奈の母さんが聞くと学はため息をついて説明した。
 
「どうせ一日3食になるんだろ?」

 そう言ってお腹が空いて泣いている子供を放置してゲームしていたらしい。
 泣き声が聞こえるわけがない。
 子供が起きないようにヘッドフォンをつけてゲームをしているのだから。
 対戦相手は当然のように天音。
 学が帰ってきて悠翔たちの匂いに気づく。

「水奈、悠翔たちのオムツ替えたか?」
「あ、忘れてた」

 ゲームに熱中して育児放棄してるらしい。

「お前は私の何を見て育って来たんだ!」

 水奈の母さんに叱られている。

「天音も他人事じゃないですよ。育児放棄してゲームって何考えてるの!?」

 天音は母さんに怒られていた。

「結莉達はトイレ行きたくなったら言うようになったから大丈夫だって」

 ヘッドフォンなんてしてないから大丈夫だと主張する。

「子供が見てる前でするゲームじゃないでしょ!」

 天音達がやってるのはバトロワ系と呼ばれるものやFPSのゲーム。
 当然銃声が鳴って血が飛ぶ。
 2人とも大人しく見てるらしい。
 大人しく見てるから問題なのだろう。
 
「秋久と陽葵と菫はどうなの?」

 母さんが翼に聞いていた。

「秋久は普通だよ?」

 さっき言ったようにトイレしたくなったら翼に言うらしい。
 翼と一緒にテレビを観てたり、翼が絵本を読んでいるとボーっと聞いているらしい。
 そして適度な昼寝をちゃんとするそうだ。
 陽葵と菫は二人で絵本を読んでいる。
 一方結莉達は天音がゲームをしてる時は大人しい。
 しかし天音が家事を始めると変わる。
 もちろん天音の邪魔をしない。
 バットを振り回したりモデルガンで遊んだりするそうだ。
 その結果クローゼットの扉に亀裂を入れたり跳んだり跳ねたり暴れまわっている。

「元気があるんだからいいだろ」

 天音はそう判断した。
 海翔は大人しく天音が家事してる間に寝てる。
 
「あのさあ……多分年齢的にそうなると思うんだけど」

 翼が言う。

「どうかしたの?」

 母さんが聞いていた。

「秋久達が小学校に上がったら多分桜子担任だよね?」
「かもしれませんね」

 秋久は多分迷惑はかけないだろう。
 
「やっぱり愛莉に悪い事したかなぁって……」
「翼もそんな風に思う時がきたのね」

 母さんがそう言っていた。

「その桜子の事でちょっと相談に乗って欲しいのですが……」

 高槻千歳の旦那さんの翔先生が来た。
 中学の時に担任だった先生。

「何かあったのか?」

 水奈の母さんが言っている。
 すると、翔先生が桜子を連れて来た。
 酷く落ち込んでいるようだ。

「どうしたんだ?桜子」

 水奈の母さんが聞くと桜子は答えた。

「私教師を続ける自信がなくなりました」
 
 え?
 みんな驚いていた。
 この先天音の子供が入学する事に怯えてるらしい。

「気にするな。お前はちゃんと教師やれてるって。相手が片桐家じゃしょうがねーよ」
「母さんの言う通りだ。気にする事ねーって」
「そんな事で悩むと本当に禿げるぞ」

 水奈と天音が桜子を慰めている。
 発端はこの2人なんだけど……。

「結莉はそっとしておけば暴れる事はねーよ」

 結の前で喧嘩なんてまずしないはずだ。
 でも茉莉はどうなんだ?
 母さんが聞くと天音は笑って誤魔化した。

「水奈!お前もだぞ!少しは母親って自覚もて」

 それ水奈の母さんが言って説得力あるのだろうか?
 大体運動会で宴会騒ぎして桜子を困らせてるのって渡辺班じゃないのか。

「……まあ、そのうちいいことあるよ」

 父さんも他に言いようがなかった。

「んな細かい事で悩むくらいなら、飲んで忘れてしまえ!!」

 美嘉さんがそう言って、桜子に酒を勧める。
 桜子はそれを一気に飲んだ。

「大体子供の手本になる親が問題起こして何考えてるんですか!」

 桜子がそう言うと水奈の母さん達は笑って誤魔化していた。

「そういえば来年入学する子いたんじゃなかったっけ?」

 翼が言い出した。

「あ、私の娘。母さんの孫だよ」
「それは千歳が多分見る事になると思う」

 桜子はそう言って千歳先生を見る。

「千歳も覚悟したほうがいいよ!光太達の子供達もいっしょなんだから」
「俺の子供なら問題ないって。何でも自分でするし幼稚園でも問題起こしてないし。なあ、麗華?」

 そう言って光太は麗華を見た。
 しかし麗華はそうは思ってなかったみたいだ。

「光聖は大丈夫だと思う。怒らせなかったら大人しいから。問題は玲衣の方」

 昔の粋に似てるから不安だと麗華が言う。
 粋は小学生の時よく教室から脱走していたな。
 その粋も話を聞いてたみたいだ。

「快は……多分大丈夫じゃないか?」
「まだ、先の話だもんね」

 粋と花が笑って誤魔化そうとしてる。

「やっぱり最悪の世代が来るわけだね……」

 善明が溜息をついていた。
 悪夢どころか地獄のような日々がきそうだ。
 母さんは天音を厳重に注意していた。

「だ、大丈夫だって!しょうもない悪戯はしねーよ」
「あなたそう言って男子を一人ベランダから投げ捨てようとしてたでしょ!」

 冬吾が真似しだして大変なのよ。
 冬吾も警察署に連行されたり大変だもんな。
 と、なるとやっぱり問題は結か。
 もうすでに勝手に部屋に戻って寝てる結の事を考えた。

「やっぱり問題は片桐家なんだろうな」
「他人事のように言うなこの馬鹿!私も水奈や誠司の為に何回学校に呼び出されたと思ってるんだ!」

 水奈の父さんと母さんが言っている。
 そのあとSHの教師チームも加わって必死に桜子の愚痴に付き合ったらしい。

「子供が成長するってそういう事だから、空や天音も注意しなさい」

 父さんがそう言っていた。
 結は特にそうだ。
 本気で校舎を破壊くらいしかねない。
 しかし肝心の結の中に芽生えた感情に親である僕と美希は気づけないままだった。

(2)

「あら?冬夜さん年賀状が届いてますよ」

 朝玄関のポストを見に行った愛莉が戻って来た。

「誰から?」
「……あ、冬夜さん見て下さい」

 そう言って愛莉が嬉しそうに年賀はがきをみせる。
 差出人は翼達と天音達だ。
 裏面を見る。
 ……驚いた。

「あけましておめでとうございます。さかいあきひさ」

 あの子もう字を書けるのか。
 凄いな。
 年越しパーティの時に何も言わなかったのはそういう事か。
 一方天音の方の年賀はがきをみた愛莉は……様子がおかしい。

「どうしたの?」

 僕が聞くと「……見て下さい」と僕に渡す。
 裏面を見ると絶句した。

「いしはらゆり、まり。がっでむ!」

 ああ、やっちゃったね。
 あの子の中ではやっぱりあれは挨拶だと思ってるのだろうか?
 しかしそれより心配しなくちゃいけないことがある。
 空達は問題ない。
 愛莉も多分大丈夫。
 しかしこんなの石原君の家に送ったら大変だ。
 愛莉もその事に気づいて恵美さんに電話していた。
 やっぱり同じ物が届いていたみたいだ。

「まあ、孫が字を書けるようになったって喜べばいいんじゃない」

 恵美さんはそう言って笑っていた。
 石原君がハラハラしていたみたいだ。
 すぐに愛莉は天音達を呼び出す。
 ちょうど翼達も挨拶に来たみたいだ。

「秋久はもう字が書けるようになったのね」

 愛莉はそう言って秋久の頭を撫でる。

「うん、絵本とか読み聞かせたら自然と覚えたみたい」

 翼が説明した。
 善明と誰に年賀状を送ろうか相談していた時に「年賀状って何?」と陽葵が質問してきたらしい。 
 翼が年賀状について説明すると「じゃ、私達も書く」というので住所だけ翼達が書いてやればいいだろうと、誰に出すか聞いたらしい。

「じいじとばあば!」
「秋久も書かなきゃだめだよ」

 陽葵が言うと秋久も巻き込まれる形で書いたそうだ。
 簡単なひらがななら大丈夫だろうと字を教えたらしい。
 一生懸命に覚えたらしい。
 本当に素直な子だな。
 それにひきかえ。

「よう、愛莉。なんかあったか?」

 天音達が家に茉莉達を連れて来た。

「何かあったの?じゃありません!何ですかこの年賀状は!」
「あ、結莉達が字を書けるようになったみたいだからさ」
「だからってどうして年賀状にこんな言葉書く事になるわけですか!?」

 天音は説明を始めた。
 字を書けるようになったのは少し前の話だ。
 クレヨンで家中に落書きをしている。
 天下統一とかそういうどこで覚えたかのような漢字も書くらしい。
 なら、その事を愛莉に伝えたい。
 そこで年賀状なんかちょうどいいんじゃないかなと大地が提案したらしい。
 そこまでは普通だ。
 
「年賀状って何?」
「そうだな、お正月に送る挨拶みたいなものだよ」
「私も書きたい!」
「誰に送る?」
「あーりとえみ」

 なんとか「ババア」は解決したと安心していた。

「じゃあ、住所は母さんが描いてあげるから裏に自由に挨拶の文を書けばいいよ」

 そう言うと2人で色々書き始めた。
 天音は油断していた。
 家で結莉達にお絵かきさせていたら腹に刃物が刺された愛莉の絵を描いてたのを忘れていたようだ。
 良くも悪くも絵が上手だ。
 だから質が悪い。
 ご丁寧に首を吊るされた愛莉の絵といっしょに「がっでむ」だ。
 恵美さんにもちゃんと恵美さんの顔に変えておいたらしい。
 そりゃ石原君もヒヤヒヤするだろうな。
 
「どうしてそれをそのまま送ろうと思ったの!?」

 愛莉ならまだいい。
 しかし恵美さんなら一歩間違えたら大惨事が待っている。
 自分の孫だから甘いのだろう。
 恵美さんにも晶さんにも物怖じしない結莉達がやっぱり最強なんだろうか?

「いや、せっかく書いたんだし葉書もったいないじゃん」

 それに3歳でここまで書くってすごくないか?
 天音はそう言うけど大地は必死に頭を下げていた。
 2人が口論を続けていたところで話は進まない。
 僕は結莉と茉莉を呼んだ。

「どうしたの?じいじ」
「これを見てごらん?」

 そう言って秋久の年賀状を見せる。

「誰が書いたの?」
「ふーん」

 よく分かってないらしい。
 そこで結莉に結莉達の送って来た葉書を見せた。

「もし結が結莉にこれ送ってきたらどう思う?」
「うぅ……」

 少し寂しそうにしている。
 そういう唸り声をあげるのは愛莉に似たんだな。

「愛莉はね。これを結莉から送られてきて困ってるんだよ」
「じゃあ、なんて書けばよかったの?」

 茉莉が聞くのでもう一度秋久の葉書を見せる。

「どういう意味?」

 茉莉が聞くと説明した。
 新年も無事迎える事ができておめでたいですね。今年もよろしくお願いします。
 そういう意味だと2人に教えた。

「そうだったんだ」
「まだ、間に合うから書き直して送ればいいよ」

 結にも送ったら喜ぶかもしれないよ。

「わかった!」

 結莉が答える。
 割と普通に素直な子なんだな。

「愛莉、何枚か余りがあっただろ?」
「はい、持ってきますね」
「さすがパパだな」

 天音が感心している。

「本来なら天音が教えるべき事なんだよ」

 翼が天音に注意している。
 愛莉が戻ってきて年賀はがきを天音に渡す。

「今度はちゃんと教えなさい」
「分かった」

 すると様子を見ていた陽葵と菫が僕に抱きついて来る。

「じいじ。お年玉~」

 まだ3歳の女の子に何を期待するのだろう?
 ない胸を足にこすりつけて来る。

「そんなことしなくてもちゃんと用意してるよ」

 僕はにこりと笑って愛莉に取ってこさせる。
 秋久や結莉と茉莉の分もある。

「ありがとう」
「これでお菓子買えるからママが預かっておくね」

 そう言って秋久がもっているお年玉を預かっていた。
 そのタイミングでやってくるのが厄介な娘たち。

「パパ~、私達にもあるよね?」
「茜はいい加減独立しなさい!といつも言ってるでしょ!?」

 そんないつも通りの新年を迎えていた。
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