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SEE THE SKY
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(1)
「あれ?」
片桐君が驚いてた。
愛莉さん達は既に起きていて、コーヒーを飲みながらこっちを見て笑っている。
「また今回も父親だけで話をしようとしてたんでしょ」
愛莉さんがそう言った。
多分バンガローも違うから黙って話してるに決まってる。
だから先に起きていてやろう。
そう言って恵美さんと晶ちゃんを誘ったらしい。
「そんなところで立ってないで、こっちにいらっしゃい」
別に怒ってるわけじゃないのだから。
僕達は言われたとおりに座った。
「愛莉達はそんなに早く起きて大丈夫なの?」
片桐君がそう言っていた。
「冬夜さんも意外と甘いんですね」
「どういう事?」
空や美希はとっくに岸に行って魚釣りをしながらラーメンを食べてるらしい。
天音や大地も一緒だ。
ああ、それがあったね。
「善明達は?」
「秋久達を連れて散歩に行ったわ」
晶ちゃんが答えてくれた。
「来年からはまた増えそうですね」
「どうして?」
石原夫妻が話している。
「今年紗理奈結婚なんでしょ?」
だったら渡辺君もお疲れさまだ。
「それで初期メンバーは皆済むのかな?」
「だろうね」
片桐夫妻が話していた。
「私達の最後の大掃除も済んだし一安心って言ったところかしら?」
アルテミスは当分機能がマヒしているだろう。
最近の株価を見ていたら慌ててるのは明白だった。
そして連日の様に騒がれる汚職疑惑。
止めを刺したに等しい。
後は死にゆくか規模の小さい物になるかのどちらかだ。
だけど片桐君は首を振った。
「アルテミスも問題あるけどもっと厄介なのを残してしまった」
ああ、リベリオンか。
僕達に……というか晶ちゃん達に恨みのある連中。
その実態すら分からない厄介な連中。
恵美さんや晶ちゃんでも分からないという事はそれだけでかいのかもしれない。
原因が原因なだけに僕達も実際どう対処していいか分からない。
だけど片桐君は迷うことなく決断した。
「どんな過去があったか知らないけど、僕達に手を出したなら容赦するつもりはない」
ただ、実態が分からないからどれを標的にしたらいいのか分からない。
それに僕達はもうそろそろ子供達に委ねていいんじゃないのか?
片桐君はそう判断した。
片桐君には空という立派な後継者がいる。
僕にも石原君ももう子供達に任せてもいいだろう。
困った時は力を貸してやればいい。
もっとも空達の事だ。
意地でも自分たちで何とかしようとするだろう。
空も”空の王”の名が示すように自分の判断一つがどれだけ影響するかを知っている。
慎重に行動するだろうし、時期が来たら一撃で仕留めるつもりでいるだろう。
そろそろ空に任せてもいいかもしれないと片桐君は言う。
いつまでも親に頼っている歳じゃないはずだ。
「ついにそんな決断が出来る時が来たんですね」
石原君が言う。
「色んな事があったわね」
色んな事の大半の原因を作った晶ちゃんが言う。
「で、片桐君はこれからどうするつもり?」
「のんびり過ごすよ。まだ空に仕事を教えないといけないけど」
「うちは仕事をさせないように気をつけてるけどね」
石原君が言って笑うと僕も笑っていた。
あの子達の仕事はいかに嫁の機嫌をとるかだから。
細かい事は部下にやらせておけばいい。
嫁の機嫌を損ねてまでやるべき事じゃない。
そんなことしたら仕事自体が消失してしまう。
「あとは、あれだよ。育児で悩む子供の姿を見て笑うくらいじゃないかな?」
「麻耶さん達もそうでしたね」
片桐君が言うと愛莉さんも言う。
「大地はどうなの?」
「子供達には好かれてるみたいですよ」
中でも結莉が一番大地の事がお気に入りらしい。
それでも恋人が出来た。
空と飲みに言ったそうだ。
「望さん。それ本当か?」
気づいたら釣りを終えて空達が戻ってきていた。
「あ……天音達は一緒じゃなかったの?」
本気で知らなかったようだ。
天音が激怒する。
「そういう事に嫁をおいていくってどういうつもりだ!?」
「旦那様もです!そんな事一言も言ってなかったじゃないですか!」
天音と美希が怒り出す。
「い、いや。なんか父親って娘に対して色々思うところがあるみたいで」
「父さん達がそうしてるって聞いたからいいかなって」
大体子供を残していけないだろと大地が自爆した。
その回答はアウトだよ。大地。
「ふざけんな!母親に育児を任せて自分はお楽しみか!」
予想通り天音が怒り出す。
怒り出したのは天音だけじゃなかった。
「大地!そういうところが嫁に対する配慮が欠けてるっていうの!」
恵美さんまで怒り出した。
必死に3人を宥める僕達。
静まる頃には水奈達も起きて来た。
「やっぱ頭痛い……気分悪い」
「いつも飲み過ぎるなと言ってるだろ!」
「紗理奈が誘って来たから仕方ないだろ」
そう言いながらも優奈と愛菜の面倒を見てる。
有言実行してるらしい。
朝食を食べ終わると片付けて船に荷物を積み込む。
船に乗って帰ってる途中に悠翔が水奈に聞いていた。
「母さん、海は青いって絵本に書いてたんだけど青くないよ?」
水奈は早速難問にぶつかったようだ。
学も天音もじっと見守っていた。
「良いか、自分の目で見た物が正しいんだ。本なんてあてにしたらだめだ!」
「分かった」
無茶苦茶だ……。
学が頭を悩ませる。
すると茉奈がにこりと笑って答えた。
「悠翔、遠くの海を見て」
茉奈がそう言うと悠翔は遠くを見る。
「青いでしょ?」
茉奈が言うと悠翔は頷いた。
実は海水が青いわけじゃない。
分かりやすく言うと赤い光は吸収してしまうけど青い光は跳ね返る。
表面で青い光だけが反射しているから青く見えるだけ。
だから実際にすくったりすると色なんてついてない。
それは海水だけじゃない。
水は透明なのに青色に見えるのはそういう理由。
深海魚が赤かったりするのは赤という色を深海では認識できないから見えない。
「うーん、難しいかな?」
悠翔は不思議そうにしていた。
「分かりやすく言うと、水は透明だけど青い光だけを跳ね返すから青色に光ってるの」
悠翔は何となく理解したようだ。
海水が青いんじゃなくて光を放ってるだけ。
若干意味が違うけど子供ならそう思っていれば問題ないだろう。
あとは小学生にでもなって教師に聞いてみればいいよ。
坂ノ市に着くと積み荷を降ろして車に乗せる。
途中ファミレスで昼食を食べて家に帰る。
家に帰ると子供達は夕食までゆっくりしてる。
「茉奈は凄いわね」
「きっと海にキャンプって知ってるからあらかじめ調べていたんだろうね」
昨日の船の解説といい、あの子は将来先生にでもなれるんじゃないだろうか。
それとも研究者への道を選ぶのだろうか?
今はただ、結の注目を引きたいが為に頑張っているようにも思えたけど。
「善明達はどうなの?」
晶ちゃんが聞くと「どうだろうね?」と笑って誤魔化した。
多分善明は翼の機嫌を取るのに四苦八苦してるだろう。
さらに子供の面倒も見ないといけない。
僕が言うのもなんだけどよく出来たなと今さら思う。
やっと僕達にも休息の時が来たんだなと実感していた。
(2)
「父さん」
悠翔が体を揺すっているのでどうしたんだろうと起きた。
まだ薄暗いくらいの早朝だ。
「トイレでも行きたくなったか?」
「そうじゃなくて」
結が外に出ていったから気になったらしい。
この子も男の子だしな。
体験させてやるのもいいかもしれない。
俺も息子とそういう事をしてみたかったし。
「んじゃ悠翔も行ってみるか?」
「うん」
そう言うと悠翔に着替えるように指示する。
まだ少し寒いかもしれないから薄手の上着を着せておいた。
俺も着替えると外に出る。
岸に行くとやっぱり空達が釣りをしながらラーメン食べて楽しんでいた。
美希や天音、結莉達や茉奈もいる。
どうせ水奈は飲み過ぎて苦しんでるだろう。
空達に挨拶すると竿と釣り糸と仕掛けを用意してやる。
悠翔はじっと見ていた。
流石にまだ餌をつけるのは早いだろう。
俺がつけてやると竿を持つように言った。
「行くぞー」
「うん」
そんなに沖の方まで投げる釣りじゃない。
そばに落とし込むだけの簡単な釣り。
「いいか、竿の先を見るんだ」
「うん」
「そしたら、ちょこっとだけ動くからその時にぐいって引っ張るんだ」
「わかった」
「今朝は結構釣れるみたいだよ」
美希がそう言っていた。
天音と茉莉達を見てれば分かる。
結莉は冬夜の隣に座ってじっと見ていた。
空達を見てると手に感触があった。
本当にかかった。
「ほら、引っ張ってみろ」
悠翔に言うと悠翔は思いっきり引っ張る。
かかったみたいだ。
「このリールをまわして釣り糸を捲んだ」
「うん」
初めての釣りで若干興奮してるみたいだ。
見事に2匹連れていた。
「へえ、悠翔すごいじゃん」
「私も負けてらんねーな!」
結莉と茉莉が言っていた。
「いいか!いっぱい釣ったら美嘉さんが油用意してたからアジフライ食い放題だぞ!」
天音が言っている。
朝からアジフライを食べる年頃なんだろうか?
空の子供ならそうなんだろうな。
空が言っていたように沢山釣れる。
悠翔と釣りを楽しんでいると、悠翔が質問してきた。
「母さんは僕達の事嫌いなのかな?」
やっぱりそう感じるか。
「……悠翔は今いくつかな?」
美希が聞いていた。
「3歳」
「そっか、……悠翔はこれから色々学んでいかないといけないことが沢山あるの」
これからいろいろな体験をして色々なところに行って知らなきゃいけないことがある。
それは一生続いていく。
それは真上にある空の様に果てしなく続く。
空と海が交わる場所がどこにあるのか分からないくらいに続いていく。
そのなかでいつか悠翔が知らないといけないのが、悠翔がいつか結婚して子供が出来た時にもある。
悠翔の母さんは今それを一生懸命考えて悩んでいるの。
だから悠翔が教えてあげたらいい。
何がしたくて、何が知りたくて、どんな風になりたいのかを伝えていけばいい。
自分の希望を思いっきり母さんに知らせてやったらいい。
そしたらきっと母さんは応えてくれる。
「分かった」
「良い子だね」
そう言って美希は悠翔の頭を撫でている。
「美希は慣れてるんだな」
「こう見えても結の母親だからね」
あの子の力はまだあの歳で自制できるものじゃない。
人間の行動のあらゆる凡例を持って一つずつ教えていくしかない。
その為に膨大な時間がかかるだろう。
美希も苦労してるんだな。
「天音。これ以上釣っても食べられないよ多分」
茉莉が言うと竿をなおしてバンガローに戻る。
翼と天音が大地の父さんの話を聞いて怒り出している。
「学も他人事じゃないんじゃないか?」
空が言う。
俺もいつか茉奈や優奈や愛菜を嫁に送り出すんだろうな。
「僕達も父さん達みたいになれるといいね」
昔話を語ってのんびり酒を飲む時期がいつか来るから。
その時に笑って過ごせるようになれたらいいな。
空がそう言って笑った。
「まだそんな事を考えるのは早いよ、空」
空の父さんがそう言って笑っていた。
朝食を食べて片づけている間に水奈は早速母親らしい行動をしていた。
「4人とも歯磨き行こうか?」
「なんで?」
「虫歯になって美味しい物を食べれなくなっても知らないぞ」
「分かった!」
そう言って5人で手洗い場に行く。
「水奈もやっと母親なんだって自覚したか?」
天音が言っていた。
「まだ分からんよ」
だけどそうなろうとしている努力を始めた。
悩んだら俺が相談に乗ってやればいいだろう。
片づけが終ると船に積み荷を乗せて坂ノ市に戻る。
途中ファミレスで昼食をとって家に帰る。
「ねえママ?」
優奈が水奈に聞いていた。
「どうした?」
「お昼ご飯のあとは歯磨きしないでいいの?」
「そうだな。どうしてだろうな?」
水奈が悩んでる。
「優奈本当は食後にした方がいいんだ。でもそんな時間もない人がいるんだ」
「じゃあ、いつすればいいの?」
「寝る前と起きた後」
その時間が一番菌が繁殖しやすいから。
毎食後するのもベストだけど、ただすればいいってわけじゃない。
やり方が問題になる。
しっかりしていれば大丈夫。
「パパの方が物知りだね」
優奈が笑って言うと水奈が落ち込んでいた。
「ママも一緒に勉強しようね」
「そうだな」
水奈はそう言って優奈の頭を撫でていた。
家に帰って夕食までのんびりする。
「夕飯どうしようか?」
水奈が聞いていた。
「ママ料理出来るの?」
「そのくらいママでも出来るよ。何が食べたい?」
「お肉!!」
「……散々BBQで食ったからカレーでもいいんじゃないか?」
「そうだな。よし、任せとけ」
「私もやる!!」
「優奈達はまだ危ないから。大きくなったら教えてやるよ」
多田家直伝のスパイスのカレーだ。
夕食後風呂に入れて優奈達を寝かしつけるとリビングでテレビを観ている水奈に缶ビールを渡した。
「いいのか?」
「飲み過ぎるなよ」
「分かってるよ」
俺も水奈の隣に座ってテレビを観ていた。
「どうだ、母親らしいことを始めてみた感想は?」
「しんどいけど楽しいんだ」
子供の言葉や行動に右往左往しながら悩んで考える。
子供が喜んでくれると嬉しいみたいだ。
「頑張れよ。これからまだ続くんだからな」
「ああ、ところで気になっていたんだけど」
「どうした?」
「お前さ、実はロリだったりするのか?」
何でそうなったんだ?
娘を風呂に入れていたから。
そんな事言いだしたら娘を持つ父親は皆ロリコンだぞ。
困った母親だな。
「で、俺がロリコンじゃないって事を証明すればいいのか?」
「出来るのか?」
「分かってて言ってるだろ」
そう言ってテレビを消すと寝室に行く。
もうすぐ夏休みが終わる。
「あれ?」
片桐君が驚いてた。
愛莉さん達は既に起きていて、コーヒーを飲みながらこっちを見て笑っている。
「また今回も父親だけで話をしようとしてたんでしょ」
愛莉さんがそう言った。
多分バンガローも違うから黙って話してるに決まってる。
だから先に起きていてやろう。
そう言って恵美さんと晶ちゃんを誘ったらしい。
「そんなところで立ってないで、こっちにいらっしゃい」
別に怒ってるわけじゃないのだから。
僕達は言われたとおりに座った。
「愛莉達はそんなに早く起きて大丈夫なの?」
片桐君がそう言っていた。
「冬夜さんも意外と甘いんですね」
「どういう事?」
空や美希はとっくに岸に行って魚釣りをしながらラーメンを食べてるらしい。
天音や大地も一緒だ。
ああ、それがあったね。
「善明達は?」
「秋久達を連れて散歩に行ったわ」
晶ちゃんが答えてくれた。
「来年からはまた増えそうですね」
「どうして?」
石原夫妻が話している。
「今年紗理奈結婚なんでしょ?」
だったら渡辺君もお疲れさまだ。
「それで初期メンバーは皆済むのかな?」
「だろうね」
片桐夫妻が話していた。
「私達の最後の大掃除も済んだし一安心って言ったところかしら?」
アルテミスは当分機能がマヒしているだろう。
最近の株価を見ていたら慌ててるのは明白だった。
そして連日の様に騒がれる汚職疑惑。
止めを刺したに等しい。
後は死にゆくか規模の小さい物になるかのどちらかだ。
だけど片桐君は首を振った。
「アルテミスも問題あるけどもっと厄介なのを残してしまった」
ああ、リベリオンか。
僕達に……というか晶ちゃん達に恨みのある連中。
その実態すら分からない厄介な連中。
恵美さんや晶ちゃんでも分からないという事はそれだけでかいのかもしれない。
原因が原因なだけに僕達も実際どう対処していいか分からない。
だけど片桐君は迷うことなく決断した。
「どんな過去があったか知らないけど、僕達に手を出したなら容赦するつもりはない」
ただ、実態が分からないからどれを標的にしたらいいのか分からない。
それに僕達はもうそろそろ子供達に委ねていいんじゃないのか?
片桐君はそう判断した。
片桐君には空という立派な後継者がいる。
僕にも石原君ももう子供達に任せてもいいだろう。
困った時は力を貸してやればいい。
もっとも空達の事だ。
意地でも自分たちで何とかしようとするだろう。
空も”空の王”の名が示すように自分の判断一つがどれだけ影響するかを知っている。
慎重に行動するだろうし、時期が来たら一撃で仕留めるつもりでいるだろう。
そろそろ空に任せてもいいかもしれないと片桐君は言う。
いつまでも親に頼っている歳じゃないはずだ。
「ついにそんな決断が出来る時が来たんですね」
石原君が言う。
「色んな事があったわね」
色んな事の大半の原因を作った晶ちゃんが言う。
「で、片桐君はこれからどうするつもり?」
「のんびり過ごすよ。まだ空に仕事を教えないといけないけど」
「うちは仕事をさせないように気をつけてるけどね」
石原君が言って笑うと僕も笑っていた。
あの子達の仕事はいかに嫁の機嫌をとるかだから。
細かい事は部下にやらせておけばいい。
嫁の機嫌を損ねてまでやるべき事じゃない。
そんなことしたら仕事自体が消失してしまう。
「あとは、あれだよ。育児で悩む子供の姿を見て笑うくらいじゃないかな?」
「麻耶さん達もそうでしたね」
片桐君が言うと愛莉さんも言う。
「大地はどうなの?」
「子供達には好かれてるみたいですよ」
中でも結莉が一番大地の事がお気に入りらしい。
それでも恋人が出来た。
空と飲みに言ったそうだ。
「望さん。それ本当か?」
気づいたら釣りを終えて空達が戻ってきていた。
「あ……天音達は一緒じゃなかったの?」
本気で知らなかったようだ。
天音が激怒する。
「そういう事に嫁をおいていくってどういうつもりだ!?」
「旦那様もです!そんな事一言も言ってなかったじゃないですか!」
天音と美希が怒り出す。
「い、いや。なんか父親って娘に対して色々思うところがあるみたいで」
「父さん達がそうしてるって聞いたからいいかなって」
大体子供を残していけないだろと大地が自爆した。
その回答はアウトだよ。大地。
「ふざけんな!母親に育児を任せて自分はお楽しみか!」
予想通り天音が怒り出す。
怒り出したのは天音だけじゃなかった。
「大地!そういうところが嫁に対する配慮が欠けてるっていうの!」
恵美さんまで怒り出した。
必死に3人を宥める僕達。
静まる頃には水奈達も起きて来た。
「やっぱ頭痛い……気分悪い」
「いつも飲み過ぎるなと言ってるだろ!」
「紗理奈が誘って来たから仕方ないだろ」
そう言いながらも優奈と愛菜の面倒を見てる。
有言実行してるらしい。
朝食を食べ終わると片付けて船に荷物を積み込む。
船に乗って帰ってる途中に悠翔が水奈に聞いていた。
「母さん、海は青いって絵本に書いてたんだけど青くないよ?」
水奈は早速難問にぶつかったようだ。
学も天音もじっと見守っていた。
「良いか、自分の目で見た物が正しいんだ。本なんてあてにしたらだめだ!」
「分かった」
無茶苦茶だ……。
学が頭を悩ませる。
すると茉奈がにこりと笑って答えた。
「悠翔、遠くの海を見て」
茉奈がそう言うと悠翔は遠くを見る。
「青いでしょ?」
茉奈が言うと悠翔は頷いた。
実は海水が青いわけじゃない。
分かりやすく言うと赤い光は吸収してしまうけど青い光は跳ね返る。
表面で青い光だけが反射しているから青く見えるだけ。
だから実際にすくったりすると色なんてついてない。
それは海水だけじゃない。
水は透明なのに青色に見えるのはそういう理由。
深海魚が赤かったりするのは赤という色を深海では認識できないから見えない。
「うーん、難しいかな?」
悠翔は不思議そうにしていた。
「分かりやすく言うと、水は透明だけど青い光だけを跳ね返すから青色に光ってるの」
悠翔は何となく理解したようだ。
海水が青いんじゃなくて光を放ってるだけ。
若干意味が違うけど子供ならそう思っていれば問題ないだろう。
あとは小学生にでもなって教師に聞いてみればいいよ。
坂ノ市に着くと積み荷を降ろして車に乗せる。
途中ファミレスで昼食を食べて家に帰る。
家に帰ると子供達は夕食までゆっくりしてる。
「茉奈は凄いわね」
「きっと海にキャンプって知ってるからあらかじめ調べていたんだろうね」
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「善明達はどうなの?」
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さらに子供の面倒も見ないといけない。
僕が言うのもなんだけどよく出来たなと今さら思う。
やっと僕達にも休息の時が来たんだなと実感していた。
(2)
「父さん」
悠翔が体を揺すっているのでどうしたんだろうと起きた。
まだ薄暗いくらいの早朝だ。
「トイレでも行きたくなったか?」
「そうじゃなくて」
結が外に出ていったから気になったらしい。
この子も男の子だしな。
体験させてやるのもいいかもしれない。
俺も息子とそういう事をしてみたかったし。
「んじゃ悠翔も行ってみるか?」
「うん」
そう言うと悠翔に着替えるように指示する。
まだ少し寒いかもしれないから薄手の上着を着せておいた。
俺も着替えると外に出る。
岸に行くとやっぱり空達が釣りをしながらラーメン食べて楽しんでいた。
美希や天音、結莉達や茉奈もいる。
どうせ水奈は飲み過ぎて苦しんでるだろう。
空達に挨拶すると竿と釣り糸と仕掛けを用意してやる。
悠翔はじっと見ていた。
流石にまだ餌をつけるのは早いだろう。
俺がつけてやると竿を持つように言った。
「行くぞー」
「うん」
そんなに沖の方まで投げる釣りじゃない。
そばに落とし込むだけの簡単な釣り。
「いいか、竿の先を見るんだ」
「うん」
「そしたら、ちょこっとだけ動くからその時にぐいって引っ張るんだ」
「わかった」
「今朝は結構釣れるみたいだよ」
美希がそう言っていた。
天音と茉莉達を見てれば分かる。
結莉は冬夜の隣に座ってじっと見ていた。
空達を見てると手に感触があった。
本当にかかった。
「ほら、引っ張ってみろ」
悠翔に言うと悠翔は思いっきり引っ張る。
かかったみたいだ。
「このリールをまわして釣り糸を捲んだ」
「うん」
初めての釣りで若干興奮してるみたいだ。
見事に2匹連れていた。
「へえ、悠翔すごいじゃん」
「私も負けてらんねーな!」
結莉と茉莉が言っていた。
「いいか!いっぱい釣ったら美嘉さんが油用意してたからアジフライ食い放題だぞ!」
天音が言っている。
朝からアジフライを食べる年頃なんだろうか?
空の子供ならそうなんだろうな。
空が言っていたように沢山釣れる。
悠翔と釣りを楽しんでいると、悠翔が質問してきた。
「母さんは僕達の事嫌いなのかな?」
やっぱりそう感じるか。
「……悠翔は今いくつかな?」
美希が聞いていた。
「3歳」
「そっか、……悠翔はこれから色々学んでいかないといけないことが沢山あるの」
これからいろいろな体験をして色々なところに行って知らなきゃいけないことがある。
それは一生続いていく。
それは真上にある空の様に果てしなく続く。
空と海が交わる場所がどこにあるのか分からないくらいに続いていく。
そのなかでいつか悠翔が知らないといけないのが、悠翔がいつか結婚して子供が出来た時にもある。
悠翔の母さんは今それを一生懸命考えて悩んでいるの。
だから悠翔が教えてあげたらいい。
何がしたくて、何が知りたくて、どんな風になりたいのかを伝えていけばいい。
自分の希望を思いっきり母さんに知らせてやったらいい。
そしたらきっと母さんは応えてくれる。
「分かった」
「良い子だね」
そう言って美希は悠翔の頭を撫でている。
「美希は慣れてるんだな」
「こう見えても結の母親だからね」
あの子の力はまだあの歳で自制できるものじゃない。
人間の行動のあらゆる凡例を持って一つずつ教えていくしかない。
その為に膨大な時間がかかるだろう。
美希も苦労してるんだな。
「天音。これ以上釣っても食べられないよ多分」
茉莉が言うと竿をなおしてバンガローに戻る。
翼と天音が大地の父さんの話を聞いて怒り出している。
「学も他人事じゃないんじゃないか?」
空が言う。
俺もいつか茉奈や優奈や愛菜を嫁に送り出すんだろうな。
「僕達も父さん達みたいになれるといいね」
昔話を語ってのんびり酒を飲む時期がいつか来るから。
その時に笑って過ごせるようになれたらいいな。
空がそう言って笑った。
「まだそんな事を考えるのは早いよ、空」
空の父さんがそう言って笑っていた。
朝食を食べて片づけている間に水奈は早速母親らしい行動をしていた。
「4人とも歯磨き行こうか?」
「なんで?」
「虫歯になって美味しい物を食べれなくなっても知らないぞ」
「分かった!」
そう言って5人で手洗い場に行く。
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天音が言っていた。
「まだ分からんよ」
だけどそうなろうとしている努力を始めた。
悩んだら俺が相談に乗ってやればいいだろう。
片づけが終ると船に積み荷を乗せて坂ノ市に戻る。
途中ファミレスで昼食をとって家に帰る。
「ねえママ?」
優奈が水奈に聞いていた。
「どうした?」
「お昼ご飯のあとは歯磨きしないでいいの?」
「そうだな。どうしてだろうな?」
水奈が悩んでる。
「優奈本当は食後にした方がいいんだ。でもそんな時間もない人がいるんだ」
「じゃあ、いつすればいいの?」
「寝る前と起きた後」
その時間が一番菌が繁殖しやすいから。
毎食後するのもベストだけど、ただすればいいってわけじゃない。
やり方が問題になる。
しっかりしていれば大丈夫。
「パパの方が物知りだね」
優奈が笑って言うと水奈が落ち込んでいた。
「ママも一緒に勉強しようね」
「そうだな」
水奈はそう言って優奈の頭を撫でていた。
家に帰って夕食までのんびりする。
「夕飯どうしようか?」
水奈が聞いていた。
「ママ料理出来るの?」
「そのくらいママでも出来るよ。何が食べたい?」
「お肉!!」
「……散々BBQで食ったからカレーでもいいんじゃないか?」
「そうだな。よし、任せとけ」
「私もやる!!」
「優奈達はまだ危ないから。大きくなったら教えてやるよ」
多田家直伝のスパイスのカレーだ。
夕食後風呂に入れて優奈達を寝かしつけるとリビングでテレビを観ている水奈に缶ビールを渡した。
「いいのか?」
「飲み過ぎるなよ」
「分かってるよ」
俺も水奈の隣に座ってテレビを観ていた。
「どうだ、母親らしいことを始めてみた感想は?」
「しんどいけど楽しいんだ」
子供の言葉や行動に右往左往しながら悩んで考える。
子供が喜んでくれると嬉しいみたいだ。
「頑張れよ。これからまだ続くんだからな」
「ああ、ところで気になっていたんだけど」
「どうした?」
「お前さ、実はロリだったりするのか?」
何でそうなったんだ?
娘を風呂に入れていたから。
そんな事言いだしたら娘を持つ父親は皆ロリコンだぞ。
困った母親だな。
「で、俺がロリコンじゃないって事を証明すればいいのか?」
「出来るのか?」
「分かってて言ってるだろ」
そう言ってテレビを消すと寝室に行く。
もうすぐ夏休みが終わる。
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