323 / 535
rege_your_dream
しおりを挟む
(1)
「結、そんなに出ると船から落ちちゃうよ」
母さんが言う。
飛べばいいからいいやと思ったんだけど、親を困らせたらいけないと幼稚園の先生が言っていたので大人しく座っていた。
しかし不思議だ。
なんでこんなに大きな船が浮いているんだろう?
茉奈に聞いてみた。
「それはね、船が大きいからなんだよ」
どういう意味だろう?
船の浮力は船が押しのける水の重さで決まるらしい。
船の重さよりも船が押しのけた水が多かったら船は浮くらしい。
それは船体が鉄だろうがFRPだろうが関係ない。
茉奈はよく知ってるなあ。
「茉奈よくそんなの知ってたな!」
水奈が驚いている。
本を読んで知ったんだそうだ。
「水奈も他人事じゃないぞ。子供の質問くらい答えられるようにしておかないと馬鹿にされるよ」
天音が水奈に忠告している。
でもなんでそんな本を茉奈が?
「結とお船に乗るのが楽しみで幼稚園に船の本が置いてたから」
予習ってやつだろうか?
「今度はお魚いるからな。頑張って釣って食べる量確保しないとな」
天音が言っていた。
お魚食べ放題だそうだ。
楽しみにしていた。
俺達は無人島にキャンプに行く。
バンガローがあるのでテントを持っていく必要は無いらしい。
楽しみだ。
お肉も沢山用意しているって母さんが言ってた。
でも海って広いな。
ずっと海が続いている。
地球は丸いって聞いた。
だから世界の果てなんてないんだそうだ。
世界の広さに比べたら日本なんてちっぽけな島国らしい。
誰かが言ってた
空と海が交わる場所。
どんな場所なんだろう?
茉莉は棒飴をなめながらくつろいでいる。
流石に船の上で暴れるのはまずいと思ったのだろう。
朔の相手をして遊んでいた。
茉奈は僕の隣にいる。
そこは茉奈の位置だと決まっているらしい。
どうしてかは分からないけど、茉奈がそうしたそうにしているから、させているだけ。
やがて島が見えて来た。
岸に船をつけると荷物を降ろす。
俺も手伝う。
別に難しい事はない。
荷物を浮かべて岸の上に持っていくだけ。
その後大人が荷物を整理してる間に僕達は水着に着替える。
でも泳ぐのはダメみたいだ。
理由は海を見たらすぐわかった。
目視できるくらいクラゲが漂っている。
刺されたら痛いらしい。
それでも遊達は飛び込んでいた。
「子供が真似するから止めて!」
そういう風に奥さんから怒られていた。
真似したらいけない事だと分かったので止めておいた。
茉奈達とは別々のバンガローになった。
海に行くとじいじが竿を用意してくれていた。
「魚釣りしたいんだろ?」
じいじがそう言って子供用の小さな竿を貸してくれた。
餌の付け方を習って海に落とす。
餌は食べたらいけないと聞いていた。
「結釣れそう?」
そう言って茉奈が隣に座る。
「茉奈は釣らないのか?」
「餌に触りたくないから」
「俺がつけてやるよ」
「じゃあ、やってみようかな」
茉奈がそう言うと天音が「いいか、たらふく食いたかったら頑張れ」と竿を結莉に渡していた。
しばらくしてると俺の竿に反応があった。
聞いてたように引っ張る。
釣れたみたいだ。
一度に3匹くらい釣りあげていた。
「結はすごいね!」
茉奈が驚いていた。
茉奈も何匹か釣っていた。
茉莉と菫は「面倒」だと言ってお菓子を食っているそうだ。
俺も食べたい。
すると母さんがもってきてくれた。
お菓子を食べながらずっと釣りをしていた。
沢山魚が釣れた。
日が沈む頃釣りを終えて夕食の準備をする。
じいじたちも釣った魚をさばいてた。
「冬夜にはまだ早いから取りあえずシャワー浴びて着替えておいで」
言われたとおりにシャワーを浴びてバンガローで着替える。
茉奈とバンガローが違う理由は男と女で分けてるからだそうだ。
何かあるのかよく意味が分からなかったけど考えないようにしておいた。
バンガローを出ると水奈が旦那さんに怒られている。
「水奈は育児をする気がないのか!?何1人で飲んでるんだ!?」
「1人じゃねーよ!紗理奈も飲んでるよ!」
旦那さんが頭を抱えていた。
しかし水奈のお母さんはそうはいかなかった。
無理矢理水奈からビールを取り上げる。
「少しは母親らしいところを見せる努力をしろ!」
お前は一体誰に似たんだ!?と怒鳴っている。
「母さんはお酒飲まないの?」
母さんに聞いてみた。
「母さんも天音もまだ結達を見ないといけないからね」
僕達が寝た後に飲むらしい。
とりあえず肉と魚が焼ける頃宴が始まった。
美嘉さんが凄い。
本当にいろんなものを作る。
天音もそうなのかな?
茉奈に聞いてみた。
「私の家はパパが作ってくれるの、後は優翔と一緒に作ったり……」
茉奈が?
「うん、母さんはゲームして疲れてるから」
それを聞いていた神奈と学が怒り出す。
「水奈、後でゆっくり話を聞かせてもらおうか?」
「ゲームで疲れてたとはな……そんな話一度も聞いてないぞ?」
2人が怒っているのを不思議そうに見ている茉奈。
そんな茉奈に優翔が一言言う。
「茉奈。それは父さん達には内緒だって言っただろ?」
もちろん神奈たちはさらに怒る。
「お前は子供にどういう教育をしてるんだ!」
むしろ何もしてないんじゃないだろうか?
それにしても気になる事がある。
それは魚の食べ方だった。
「ちゃんと綺麗に食べないとお魚さんに失礼だよ」
母さんはいつもそう言ってる。
だけど誠や瑛大は食べやすい所だけ食べて後は捨てていた。
「こんだけあるんだからうまい所だけ食べたらいいんだよ」
誠が言っていたけど神奈は違うみたいだ。
「ふざけるな!結達が見てるんだぞ!ちゃんと食え」
「お願いだから結の前で妙な真似しないで下さい」
神奈と母さんが抗議していた。
「もったいない食べ方をしたらお化けになって出てくるんだって」
「茉奈はお化けが怖いの?」
「あのね、お化けは成仏できないからお化けになるんだって」
そんなの可哀そうでしょ?と茉奈が言う。
茉奈の言う通りかもしれない。
綺麗に食べる事にした。
片桐家では文字通り骨しか残さない食べ方をする。
その後片づけてバンガローに入って寝る事にした。
パパが「朝早いから早めに寝ておきなさい」と言うから。
疲れていたのですぐに眠れた。
(2)
「なんか意外ですね」
桜子がそう漏らした。
「やっぱりそう思った?」
翼が聞くと頷いた。
驚いたのは結が本当に片桐家かと思うくらい素直だからだろう。
「それに茉奈も本当に水奈の娘なのってくらい大人しいし……」
「それは私も分からないんだ。桜子」
結は怒らせなかったら大丈夫だ。
結莉達も冬夜の前では絶対に大人しくしてる。
問題は怒らせる馬鹿がまだこの世界にはいるという事。
小学校で結を怒らせたらシャレにならない。
それは多分僕や天音が暴れていた時とは段違いで恐ろしい。
その為に多分茉莉や菫に陽葵、秋久や朔がいるんだろう。
2人が機嫌を損ねる前に処分するつもりなのだろう。
その結果が今幼稚園で起きていた。
「結はどうしてああなったんだ?」
遊の父さんが聞いていた。
「私達にも分からないんです」
欠点は殆ど食べ物以外に興味を示さない。
茉奈と付き合っているのも多分茉奈の気持ちを読みとっているんだろう。
本人が自覚しているかどうか分からないけどそれがとても居心地がいいものなのだろう。
そんな幼稚園児いるのかどうか疑問だけど。
「学の所はどうなんだ?」
「優翔と茉奈は多分大丈夫なんですけど……」
そう言って学は水奈を睨む。
学が家にいる間は学が見てるからいい。
だけど学がいない日中何をしているか水奈が把握していない。
学が水奈の母さんに学がいない間様子を見てやって欲しいと訴えるくらいだ。
その水奈は子供がまだ食事をしているのに酒をのんで紗理奈達と騒いでいた。
「お前は子供を育てる気があるのか!?」
水奈の母さんが叱っている。
「冬夜さん。何か力を貸してやってもらえませんか?」
母さんが父さんに言っていた。
すると父さんが水奈の説得を試みていた。
「なあ、水奈?水奈にとって誠はどうだった?」
「どうしようもない変態」
水奈の父さんが落ち込む。
「自業自得だ」
水奈の母さんはそう切り捨てる。
「水奈の子供も同じかもしれないぞ?」
「どういうことですか?」
水奈が父さんの話に興味を示した。
そんな難しい事ではなかった。
水奈や学の父さんは育児を全く手伝わなかった。
その結果父親を嫌うという意思を示した。
水奈も同じじゃないのか?
自分たちに構ってくれないで遊んでばかりいる。
自分たちの親は学だけだ。
そういう風に意識するかもしれない。
あとは言わなくてもわかるだろ?
水奈が誠を信用するのにどれだけの時間を要した?
「……今からでも間に合うかな?」
「まだ、ママって言ってくれるんだろ?」
だったら大丈夫。だと父さんが言った。
「明日からちゃんと面倒見るよ」
水奈だって自分の娘と買い物を楽しみたいとかそういう要望があるみたいだ。
「私も協力してやるから」
天音が言う。
育児なら天音の方が上手だろう。
もう3歳と1歳なんだ。
家に連れてきたらいい。
水奈は一人で退屈だから遊んでるんだろうし。
「悪いな」
水奈がそう言った。
「これでいいか?カンナ」
父さんが聞くと水奈の母さんが笑った。
「本気で結婚相手間違えたかもしれねーな」
「そ、そんな事言うなよ神奈。俺だって傷つくぞ」
「やかましい!人が見てないところで変な真似しやがって」
海にキャンプ行った時に発覚したこと。
まだ赤ちゃんの頃の娘の胸を揉むという凶行。
学の父さんは違っていたらしい。
「亜依は意外とあるからな。どうやって膨らんでいくのか興味あったんだ」
「お前は娘をそういう目で見ていたのか!?」
すると天音と翼は不思議だったらしい。
「父親ってそうなんですか?」
父さんは娘の裸を見ても驚きはするけど特殊な興味は示さない。
「どっちの方がいい?」
翼達が聞いても父さんは「愛莉が一番だから」とかわすらしい。
娘の裸なんて興味ないのが父親だと思っていたらしい。
翼も僕がそうだし、天音も大地がだから。
「あのね、天音ちゃん。あなた達が特別なの」
恵美さんが説明した。
片桐家はそういう欲が殆どない。
彼女が強請るまで気づかないことがある。
ねだっても気づかないくらいだ。
そういう欲望は全て食欲に向けられている。
だからその致命的なまでの大食いがなかったら理想の男性に間違いない。
「結局片桐君が勝ち組なわけ!?」
学の母さんが叫ぶ。
「くそ……愛莉に遠慮せずもっと押すべきだったか」
水奈の母さんも後悔してる様だ。
「でも、片桐家の娘は大変だよ」
母さんが言った。
裸で家をうろうろする。
目を離すと父親を誘惑する。
いい年頃の娘が着替えようとすらしない。
天音達の様にとにかく問題を起こす。
母さんも苦労してきたんだな……。
「何で冬夜だけそんな羨ましい事になるんだよ!」
水奈の父さんが叫んでいた。
「お前は自業自得だって何度言わせるんだ!?誠」
「でも片桐家は色々問題ですよやっぱり」
桜子が言う。
結はいい。
問題は茉莉と結莉だ。
でも……。
「聞いた話だと陽葵と菫も問題な気がしたんだけど」
大地が言う。
「小学生になったら変わるんじゃないかな。性の意識もするだろうし」
美希の自分の体験談で言ってるんだろうけど忘れてる事がある。
「美希は小学生の時は大人しいお嬢様だったろ?」
スカートを捲られても抵抗出来なかったし。
「つまり空は元が違うって言いたいわけだね」
善明が言うと頷いた。
どう考えても天音と水奈のコンビの再来だ。
絶対に何かしでかすだろう。
そう言うと桜子は頭を抱え出す。
「やっぱり、あのアニメがまずかったのでしょうか?」
「まあ、普通子供に見せるアニメじゃなかったからね……」
翼の血だと言わないのは善明が危険を感じたからだろうな。
「でも、桜子も残念だったね。自分の孫教えたかったんじゃないの?」
翼が話題を変えていた。
「さすがに自分の孫に教育なんて無理だよ」
どうしても甘やかしてしまうと桜子は言った。
「紗理奈ももうすぐ結婚するんだっけ?」
天音が聞いた。
今年の11月に結婚するらしい。
「結婚したらすぐ子供製造するからな!待ってろよ。天音の子供を越える子供にしてやるからな」
「それだけはやめてくれ……」
渡辺さんが言うとみんな笑っていた。
「そういう勝負なら受けて立つぞ!大地もう一人いくぞ!」
天音が言うと大地が驚く。
「天音は対抗意識で子供を作るのは止めなさい!」
母さんが言う。
「勝負……か」
「ああ、水奈も心配してたんだな」
水奈と水奈の母さんが悩んでいる様だ。
「どうしたんだ?」
天音が聞く。
不思議だった。
どうしてそんな事で悩むんだろう?
水奈も天音も娘がいる。
誰が一番胸が大きくなるか。
天音の娘に勝てたら嬉しいけど、すると別の問題が発生する。
水奈を追い越すことを意味する。
「あんまり大きくてもいい事無いよ。服とかも自由が利かなくなるし下着だって高くなるし……」
それに変な目で見られる。
そんな目で見ないのは僕と善明くらいだったと美希が言う。
……あれ?
皆自然と学を見る。
「ま、まあ俺も年頃だったからな。やっぱり美希を見ると視線がどうしてもな」
「お前!やっぱりでかいのが好きなのか!?」
水奈が怒り出す。
「ま、待て。小学生の時の話だ」
今は水奈以外に興味は無いと弁明するけど自分の父親が敵に回るとは思わなかっただろう。
「やっぱりでかい方がいいよな!?今度そう言うの貸してやろうか……いてぇ!」
「瑛大もそうなのか?だったらすぐ離婚してやるから勝手に納得いく大きさの嫁さん探してこい!」
「お父さん最低!女性は少なからず気にするんだよ?」
学の母さんと恋から叱られる学の父さん。
「お、俺は大丈夫だぜ。どっちでもいけるからな」
「お前は黙ってろこの変態!」
すると隣にいた美希が聞いてきた。
「旦那様は違うのですか?」
「学が言ったろ?やっぱりクラスメートでそういう人いたら気にするよ」
気づかれないように男子でひそひそ話をする程度だけど。
光太達とプールの時間にそんな話をして盛り上がってた程度。
まさか自分の嫁に美希がなるなんて予想しなかった。
でも交際してる間も不思議とそんなに気にしたことはない。
だって……
「美希とそういう関係になったのは割と早かったし」
いつでも見たいときに見れると思えば気にならない。
「そうだったのですね」
その割には誘ってくれないじゃないですかと微笑んでいた。
代わりに翼が善明に聞いていた。
「善明はあまり興味を示してくれないけどやっぱり物足りない?」
「なんですって?」
善明の母さんが一言言う。
「善明、あなたまさかそういう趣味を持っていたの!?」
「あ、晶ちゃん。毎日がっつくような男も考え物だと思わないかい?」
そう言って善明の父さんが宥めている。
「琴音はどうなるんだろうな?」
「遊は娘の胸しか興味ないの?」
「そりゃ、普通成長を期待してるものじゃないか?母さんもなずなも小さくはないから大丈夫だろ?」
「そもそも遊は誰を基準に大小を決めてるの?」
恋が自分はどっちだ?と聞いている。
「そ、そりゃなずなに決まってるだろ」
「この馬鹿!お前は何を聞いていたんだ?」
子供がどういう風に育っていくんだろう。
どんな思いを託していくのだろう。
子供がどんな夢を描いているのだろう?
そんな事を話しながら遅くまで楽しんでいた。
「結、そんなに出ると船から落ちちゃうよ」
母さんが言う。
飛べばいいからいいやと思ったんだけど、親を困らせたらいけないと幼稚園の先生が言っていたので大人しく座っていた。
しかし不思議だ。
なんでこんなに大きな船が浮いているんだろう?
茉奈に聞いてみた。
「それはね、船が大きいからなんだよ」
どういう意味だろう?
船の浮力は船が押しのける水の重さで決まるらしい。
船の重さよりも船が押しのけた水が多かったら船は浮くらしい。
それは船体が鉄だろうがFRPだろうが関係ない。
茉奈はよく知ってるなあ。
「茉奈よくそんなの知ってたな!」
水奈が驚いている。
本を読んで知ったんだそうだ。
「水奈も他人事じゃないぞ。子供の質問くらい答えられるようにしておかないと馬鹿にされるよ」
天音が水奈に忠告している。
でもなんでそんな本を茉奈が?
「結とお船に乗るのが楽しみで幼稚園に船の本が置いてたから」
予習ってやつだろうか?
「今度はお魚いるからな。頑張って釣って食べる量確保しないとな」
天音が言っていた。
お魚食べ放題だそうだ。
楽しみにしていた。
俺達は無人島にキャンプに行く。
バンガローがあるのでテントを持っていく必要は無いらしい。
楽しみだ。
お肉も沢山用意しているって母さんが言ってた。
でも海って広いな。
ずっと海が続いている。
地球は丸いって聞いた。
だから世界の果てなんてないんだそうだ。
世界の広さに比べたら日本なんてちっぽけな島国らしい。
誰かが言ってた
空と海が交わる場所。
どんな場所なんだろう?
茉莉は棒飴をなめながらくつろいでいる。
流石に船の上で暴れるのはまずいと思ったのだろう。
朔の相手をして遊んでいた。
茉奈は僕の隣にいる。
そこは茉奈の位置だと決まっているらしい。
どうしてかは分からないけど、茉奈がそうしたそうにしているから、させているだけ。
やがて島が見えて来た。
岸に船をつけると荷物を降ろす。
俺も手伝う。
別に難しい事はない。
荷物を浮かべて岸の上に持っていくだけ。
その後大人が荷物を整理してる間に僕達は水着に着替える。
でも泳ぐのはダメみたいだ。
理由は海を見たらすぐわかった。
目視できるくらいクラゲが漂っている。
刺されたら痛いらしい。
それでも遊達は飛び込んでいた。
「子供が真似するから止めて!」
そういう風に奥さんから怒られていた。
真似したらいけない事だと分かったので止めておいた。
茉奈達とは別々のバンガローになった。
海に行くとじいじが竿を用意してくれていた。
「魚釣りしたいんだろ?」
じいじがそう言って子供用の小さな竿を貸してくれた。
餌の付け方を習って海に落とす。
餌は食べたらいけないと聞いていた。
「結釣れそう?」
そう言って茉奈が隣に座る。
「茉奈は釣らないのか?」
「餌に触りたくないから」
「俺がつけてやるよ」
「じゃあ、やってみようかな」
茉奈がそう言うと天音が「いいか、たらふく食いたかったら頑張れ」と竿を結莉に渡していた。
しばらくしてると俺の竿に反応があった。
聞いてたように引っ張る。
釣れたみたいだ。
一度に3匹くらい釣りあげていた。
「結はすごいね!」
茉奈が驚いていた。
茉奈も何匹か釣っていた。
茉莉と菫は「面倒」だと言ってお菓子を食っているそうだ。
俺も食べたい。
すると母さんがもってきてくれた。
お菓子を食べながらずっと釣りをしていた。
沢山魚が釣れた。
日が沈む頃釣りを終えて夕食の準備をする。
じいじたちも釣った魚をさばいてた。
「冬夜にはまだ早いから取りあえずシャワー浴びて着替えておいで」
言われたとおりにシャワーを浴びてバンガローで着替える。
茉奈とバンガローが違う理由は男と女で分けてるからだそうだ。
何かあるのかよく意味が分からなかったけど考えないようにしておいた。
バンガローを出ると水奈が旦那さんに怒られている。
「水奈は育児をする気がないのか!?何1人で飲んでるんだ!?」
「1人じゃねーよ!紗理奈も飲んでるよ!」
旦那さんが頭を抱えていた。
しかし水奈のお母さんはそうはいかなかった。
無理矢理水奈からビールを取り上げる。
「少しは母親らしいところを見せる努力をしろ!」
お前は一体誰に似たんだ!?と怒鳴っている。
「母さんはお酒飲まないの?」
母さんに聞いてみた。
「母さんも天音もまだ結達を見ないといけないからね」
僕達が寝た後に飲むらしい。
とりあえず肉と魚が焼ける頃宴が始まった。
美嘉さんが凄い。
本当にいろんなものを作る。
天音もそうなのかな?
茉奈に聞いてみた。
「私の家はパパが作ってくれるの、後は優翔と一緒に作ったり……」
茉奈が?
「うん、母さんはゲームして疲れてるから」
それを聞いていた神奈と学が怒り出す。
「水奈、後でゆっくり話を聞かせてもらおうか?」
「ゲームで疲れてたとはな……そんな話一度も聞いてないぞ?」
2人が怒っているのを不思議そうに見ている茉奈。
そんな茉奈に優翔が一言言う。
「茉奈。それは父さん達には内緒だって言っただろ?」
もちろん神奈たちはさらに怒る。
「お前は子供にどういう教育をしてるんだ!」
むしろ何もしてないんじゃないだろうか?
それにしても気になる事がある。
それは魚の食べ方だった。
「ちゃんと綺麗に食べないとお魚さんに失礼だよ」
母さんはいつもそう言ってる。
だけど誠や瑛大は食べやすい所だけ食べて後は捨てていた。
「こんだけあるんだからうまい所だけ食べたらいいんだよ」
誠が言っていたけど神奈は違うみたいだ。
「ふざけるな!結達が見てるんだぞ!ちゃんと食え」
「お願いだから結の前で妙な真似しないで下さい」
神奈と母さんが抗議していた。
「もったいない食べ方をしたらお化けになって出てくるんだって」
「茉奈はお化けが怖いの?」
「あのね、お化けは成仏できないからお化けになるんだって」
そんなの可哀そうでしょ?と茉奈が言う。
茉奈の言う通りかもしれない。
綺麗に食べる事にした。
片桐家では文字通り骨しか残さない食べ方をする。
その後片づけてバンガローに入って寝る事にした。
パパが「朝早いから早めに寝ておきなさい」と言うから。
疲れていたのですぐに眠れた。
(2)
「なんか意外ですね」
桜子がそう漏らした。
「やっぱりそう思った?」
翼が聞くと頷いた。
驚いたのは結が本当に片桐家かと思うくらい素直だからだろう。
「それに茉奈も本当に水奈の娘なのってくらい大人しいし……」
「それは私も分からないんだ。桜子」
結は怒らせなかったら大丈夫だ。
結莉達も冬夜の前では絶対に大人しくしてる。
問題は怒らせる馬鹿がまだこの世界にはいるという事。
小学校で結を怒らせたらシャレにならない。
それは多分僕や天音が暴れていた時とは段違いで恐ろしい。
その為に多分茉莉や菫に陽葵、秋久や朔がいるんだろう。
2人が機嫌を損ねる前に処分するつもりなのだろう。
その結果が今幼稚園で起きていた。
「結はどうしてああなったんだ?」
遊の父さんが聞いていた。
「私達にも分からないんです」
欠点は殆ど食べ物以外に興味を示さない。
茉奈と付き合っているのも多分茉奈の気持ちを読みとっているんだろう。
本人が自覚しているかどうか分からないけどそれがとても居心地がいいものなのだろう。
そんな幼稚園児いるのかどうか疑問だけど。
「学の所はどうなんだ?」
「優翔と茉奈は多分大丈夫なんですけど……」
そう言って学は水奈を睨む。
学が家にいる間は学が見てるからいい。
だけど学がいない日中何をしているか水奈が把握していない。
学が水奈の母さんに学がいない間様子を見てやって欲しいと訴えるくらいだ。
その水奈は子供がまだ食事をしているのに酒をのんで紗理奈達と騒いでいた。
「お前は子供を育てる気があるのか!?」
水奈の母さんが叱っている。
「冬夜さん。何か力を貸してやってもらえませんか?」
母さんが父さんに言っていた。
すると父さんが水奈の説得を試みていた。
「なあ、水奈?水奈にとって誠はどうだった?」
「どうしようもない変態」
水奈の父さんが落ち込む。
「自業自得だ」
水奈の母さんはそう切り捨てる。
「水奈の子供も同じかもしれないぞ?」
「どういうことですか?」
水奈が父さんの話に興味を示した。
そんな難しい事ではなかった。
水奈や学の父さんは育児を全く手伝わなかった。
その結果父親を嫌うという意思を示した。
水奈も同じじゃないのか?
自分たちに構ってくれないで遊んでばかりいる。
自分たちの親は学だけだ。
そういう風に意識するかもしれない。
あとは言わなくてもわかるだろ?
水奈が誠を信用するのにどれだけの時間を要した?
「……今からでも間に合うかな?」
「まだ、ママって言ってくれるんだろ?」
だったら大丈夫。だと父さんが言った。
「明日からちゃんと面倒見るよ」
水奈だって自分の娘と買い物を楽しみたいとかそういう要望があるみたいだ。
「私も協力してやるから」
天音が言う。
育児なら天音の方が上手だろう。
もう3歳と1歳なんだ。
家に連れてきたらいい。
水奈は一人で退屈だから遊んでるんだろうし。
「悪いな」
水奈がそう言った。
「これでいいか?カンナ」
父さんが聞くと水奈の母さんが笑った。
「本気で結婚相手間違えたかもしれねーな」
「そ、そんな事言うなよ神奈。俺だって傷つくぞ」
「やかましい!人が見てないところで変な真似しやがって」
海にキャンプ行った時に発覚したこと。
まだ赤ちゃんの頃の娘の胸を揉むという凶行。
学の父さんは違っていたらしい。
「亜依は意外とあるからな。どうやって膨らんでいくのか興味あったんだ」
「お前は娘をそういう目で見ていたのか!?」
すると天音と翼は不思議だったらしい。
「父親ってそうなんですか?」
父さんは娘の裸を見ても驚きはするけど特殊な興味は示さない。
「どっちの方がいい?」
翼達が聞いても父さんは「愛莉が一番だから」とかわすらしい。
娘の裸なんて興味ないのが父親だと思っていたらしい。
翼も僕がそうだし、天音も大地がだから。
「あのね、天音ちゃん。あなた達が特別なの」
恵美さんが説明した。
片桐家はそういう欲が殆どない。
彼女が強請るまで気づかないことがある。
ねだっても気づかないくらいだ。
そういう欲望は全て食欲に向けられている。
だからその致命的なまでの大食いがなかったら理想の男性に間違いない。
「結局片桐君が勝ち組なわけ!?」
学の母さんが叫ぶ。
「くそ……愛莉に遠慮せずもっと押すべきだったか」
水奈の母さんも後悔してる様だ。
「でも、片桐家の娘は大変だよ」
母さんが言った。
裸で家をうろうろする。
目を離すと父親を誘惑する。
いい年頃の娘が着替えようとすらしない。
天音達の様にとにかく問題を起こす。
母さんも苦労してきたんだな……。
「何で冬夜だけそんな羨ましい事になるんだよ!」
水奈の父さんが叫んでいた。
「お前は自業自得だって何度言わせるんだ!?誠」
「でも片桐家は色々問題ですよやっぱり」
桜子が言う。
結はいい。
問題は茉莉と結莉だ。
でも……。
「聞いた話だと陽葵と菫も問題な気がしたんだけど」
大地が言う。
「小学生になったら変わるんじゃないかな。性の意識もするだろうし」
美希の自分の体験談で言ってるんだろうけど忘れてる事がある。
「美希は小学生の時は大人しいお嬢様だったろ?」
スカートを捲られても抵抗出来なかったし。
「つまり空は元が違うって言いたいわけだね」
善明が言うと頷いた。
どう考えても天音と水奈のコンビの再来だ。
絶対に何かしでかすだろう。
そう言うと桜子は頭を抱え出す。
「やっぱり、あのアニメがまずかったのでしょうか?」
「まあ、普通子供に見せるアニメじゃなかったからね……」
翼の血だと言わないのは善明が危険を感じたからだろうな。
「でも、桜子も残念だったね。自分の孫教えたかったんじゃないの?」
翼が話題を変えていた。
「さすがに自分の孫に教育なんて無理だよ」
どうしても甘やかしてしまうと桜子は言った。
「紗理奈ももうすぐ結婚するんだっけ?」
天音が聞いた。
今年の11月に結婚するらしい。
「結婚したらすぐ子供製造するからな!待ってろよ。天音の子供を越える子供にしてやるからな」
「それだけはやめてくれ……」
渡辺さんが言うとみんな笑っていた。
「そういう勝負なら受けて立つぞ!大地もう一人いくぞ!」
天音が言うと大地が驚く。
「天音は対抗意識で子供を作るのは止めなさい!」
母さんが言う。
「勝負……か」
「ああ、水奈も心配してたんだな」
水奈と水奈の母さんが悩んでいる様だ。
「どうしたんだ?」
天音が聞く。
不思議だった。
どうしてそんな事で悩むんだろう?
水奈も天音も娘がいる。
誰が一番胸が大きくなるか。
天音の娘に勝てたら嬉しいけど、すると別の問題が発生する。
水奈を追い越すことを意味する。
「あんまり大きくてもいい事無いよ。服とかも自由が利かなくなるし下着だって高くなるし……」
それに変な目で見られる。
そんな目で見ないのは僕と善明くらいだったと美希が言う。
……あれ?
皆自然と学を見る。
「ま、まあ俺も年頃だったからな。やっぱり美希を見ると視線がどうしてもな」
「お前!やっぱりでかいのが好きなのか!?」
水奈が怒り出す。
「ま、待て。小学生の時の話だ」
今は水奈以外に興味は無いと弁明するけど自分の父親が敵に回るとは思わなかっただろう。
「やっぱりでかい方がいいよな!?今度そう言うの貸してやろうか……いてぇ!」
「瑛大もそうなのか?だったらすぐ離婚してやるから勝手に納得いく大きさの嫁さん探してこい!」
「お父さん最低!女性は少なからず気にするんだよ?」
学の母さんと恋から叱られる学の父さん。
「お、俺は大丈夫だぜ。どっちでもいけるからな」
「お前は黙ってろこの変態!」
すると隣にいた美希が聞いてきた。
「旦那様は違うのですか?」
「学が言ったろ?やっぱりクラスメートでそういう人いたら気にするよ」
気づかれないように男子でひそひそ話をする程度だけど。
光太達とプールの時間にそんな話をして盛り上がってた程度。
まさか自分の嫁に美希がなるなんて予想しなかった。
でも交際してる間も不思議とそんなに気にしたことはない。
だって……
「美希とそういう関係になったのは割と早かったし」
いつでも見たいときに見れると思えば気にならない。
「そうだったのですね」
その割には誘ってくれないじゃないですかと微笑んでいた。
代わりに翼が善明に聞いていた。
「善明はあまり興味を示してくれないけどやっぱり物足りない?」
「なんですって?」
善明の母さんが一言言う。
「善明、あなたまさかそういう趣味を持っていたの!?」
「あ、晶ちゃん。毎日がっつくような男も考え物だと思わないかい?」
そう言って善明の父さんが宥めている。
「琴音はどうなるんだろうな?」
「遊は娘の胸しか興味ないの?」
「そりゃ、普通成長を期待してるものじゃないか?母さんもなずなも小さくはないから大丈夫だろ?」
「そもそも遊は誰を基準に大小を決めてるの?」
恋が自分はどっちだ?と聞いている。
「そ、そりゃなずなに決まってるだろ」
「この馬鹿!お前は何を聞いていたんだ?」
子供がどういう風に育っていくんだろう。
どんな思いを託していくのだろう。
子供がどんな夢を描いているのだろう?
そんな事を話しながら遅くまで楽しんでいた。
0
あなたにおすすめの小説
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる