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(1)
「これだけ人がいれば場所は確保出来るよね」
「じゃ、瞳子達後よろしく!」
冬吾と冬莉はそう言って出店に向かっていた。
「冬吾はスポンサー料貰ってるし、冬莉も契約金あるからいいんじゃないか?」
冬吾の父さんはそう言って二人の小遣いの催促の応じたらしい。
「使い過ぎてはいけませんよ。2人とも将来の為の備蓄というのを考えなさい」
冬吾の母さんはそう言って小遣いを与えたらしい。
会場に来て恋人の事を気にしなくていいならこうなる事は明白だった。
志希と瞳子はそれを見て溜息をついている。
今日は地元の花火大会に来ていた。
女子達は浴衣だった。
冬莉は浴衣なのに気づかうことなく出店に向かっていく。
「それが片桐家だ」
父さんはそう言ってた。
冬吾は遠征に行ってる間も何か美味しい物が無いか事前に調べている。
姉に聞いて姉が調べているんだそうだ。
あとは冬吾の父さんが教えてくれるらしい。
そして冬吾の母さんと喧嘩を始めるらしい。
家の両親も似たようなもんだ。
「あの辺に行ったらいい店あったぜ!」
「お前は高校生に何を教えてるんだ!」
でも前に言った通り一通りの事は経験したからあまり興味が無い。
興味が薄れたといったほうが正しいのだろうか?
別に女性に興味が無いわけじゃない。
彼女も欲しくないと言ったら嘘になる。
ただ、日本に彼女を残して海外に行くの可哀そうだと思ったから。
次の彼女はその先にある物を求めたいから。
Hの先にある物は愛だと昔聞いたことがある。
冬吾は既に手にしているのだろうか?
そう考えると少し興味がある事があった。
「なあ、瞳子」
「どうしたの?」
瞳子が振り向いた。
「あいつスペイン行くつもりなんだろ?」
「スカウトが来たとかそういう話はまだ聞かないけど冬吾君は希望してたね」
まあ、多分来年には来るだろう。
あいつの実力なら間違いないだろう。
「瞳子は地元大学受けるんだよな?」
「うん、教師になりたいと思ったから」
「その間一人で不安だったりしないのか?」
冬吾は浮気なんてするような奴じゃない。
だけどそれでも不安になるのが恋だって言ってた。
「不安だよ」
やっぱりそうなのか。
でもその続きがあった。
「でもそれは冬吾君だって同じじゃないかな。スペインに行ってる間に自分の事を忘れちゃうんじゃないかな?とか考えると思う」
確かにそうだな。
だから色んな手段できっと連絡してくると思う。
誰かが言ってた。
今のご時世で遠距離は無理なんてナンセンスだ。
ネットがあるこの世界でそんな事があるわけない。
冬吾だって色々考えてくれるだろうから瞳子はそれを信じるだけという。
「瞳子は強いんだな」
「そうでもないよ、冬吾君に身を預けてるだけ」
心配する事はない。
冬吾君なら大丈夫。
そう信じるだけ。
なるほどな。
「でもそれは今の誠司君にも同じ事が言えると思うよ?」
絶対に浮気なんかしない。
多少遊ぶかもしれないけどあくまでも遊びだ。
それも別の彼女を作るとかじゃなくて風俗に行く程度だろう。
そのくらいで怒るような彼女はそもそも俺が海外に行く時点で無理だろう。
それでも誠司君を信じられるような女子が今の俺にならきっと見つかるはず。
だから今のうちに作っても問題ないんじゃないの?
瞳子はそう言った。
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、俺はちょっと違うんだ」
「どう違うの?」
「俺の事を全力で好きでいてくれる彼女が欲しい」
俺も全力で彼女に尽くしたい。
遠距離だときっと彼女に辛い思いをさせる。
遠距離でも平気だというような程度の気持ちじゃ物足りない。
そんな彼女を手に入れようと思ったらやっぱり高校生で作るのは難しい。
きっと辛くなってボロボロになっていくのが分かってるから。
そのくらい本気で俺を好きでいてくれる人が欲しいんだ。
「誠司君本当に変わったね」
瞳子はそう言って笑う。
「あとはその軽口が無くなればいう事無いんだけどね」
冴が言う。
「でも、その理屈だと私にはやっぱり誠司は無理だったのかな」
きっと寂しくて他の男性を求めてしまうだろうから。
ちょっと俺が女遊びしてるだけで信じる事が出来なかったのだから。
「……そろそろ花火始まるよ」
泉が言うと花火が打ちあがる。
冬吾達は花火が終った後に戻って来た。
抱えきれないほど食べ物を買ってその場で食べながら花火を見てたらしい。
花火が終ると皆家に帰る。
「10年後の8月か」
「何それ?」
冬莉が聞いてきた。
「父さん達は約束したそうなんだ。10年後に皆でまた集まろうって」
「ああ、その話なら僕も聞いた」
冬吾が言う。
「俺達もまた集まれると良いな」
「きっと集まれるよ」
「じゃあ、皆で約束しようよ」
頼子が言うと皆で誓う。
卒業するまでに最高の思い出を作ろう。
そんな事を話していた。
(2)
私は育人が作った衣裳を着ていた。
動きづらい。
しかしそれが志希のアイデアだからしょうがない。
「もう花嫁みたいな姿だね」
増渕麻里が私を見てそう言った。
今日は遊園地である音楽フェスの日。
私達は麻里達フレーズの前座で出る事になっていた。
デビュー用の新曲を志希はじっくり作っていた。
私と志希のユニットF・SEASONのお披露目だ。
どうせなら派手に一発かましたい。
そんな事を志希は企んでいた。
「あんまり緊張しないでいいから」
恵美さんがそう言う。
それは大丈夫。
片桐家の中では常識になっていた。
同じ恥をかくなら思いっきりかいてこい。
「そろそろ準備して下さい」
スタッフの人が言う。
「じゃあ、皆派手に行くよ!」
スタッフと円陣を組むと皆で叫ぶ。
そして出番が来ると照明が暗くなる。
その間に私と志希がステージに立つ。
スポットライトが私に当たる。
私は思いっきり「行くよ!」と叫ぶ
ショータイムだ。
私が曲名を叫ぶとスポットライトの色が赤に変わる。
そして志希のギターが鳴り響く。
ドラムが鳴り始めて煙が吹き荒れる。
真っ白な私の衣装が照明で赤く染まっていた。
「カモン!」
そう言うと客が盛り上がり始める。
歌詞は全部英語だった。
神様からもらったのはでかい銃だけ。
正義なんて反吐が出る物私には関係ない。
私がムカつくからやりあうだけだ。
相手の事なんて知った事じゃない。
お前が私をこうさせた。
すべてはお前次第だ。
思うがままにやってみろ。
温厚な志希が考える歌詞じゃない。
しかし志希は私を見て作った歌詞らしい。
激しい音楽に乗せられてしっかり歌う。
客のテンションは上がっていた。
そのあと2曲ほど歌って私達の初めてのステージは終った。
「盛り上げてくれてありがとね」
次に歌う麻里達がそう言ってステージに向かう。
衣裳のせいもあってさすがに疲れた。
「良かったよ」
志希が飲み物を持ってきてくれた。
「サンキュー。志希のギターもかっこよかった」
ていうかこういうジャンルも作れるんだね。
「冬莉だからきっと甘ったるいラブソングじゃ物足りないと思って」
「一つ言わせてもらう」
「どうした」
「この衣裳は勘弁してほしい」
私はそう言って笑った。
「あなた達凄いじゃない。上出来よ。早めに契約してよかったわ」
恵美さんがそう言っている。
フェスが終ると家に帰る。
「冬莉!ちょっと来なさい!」
愛莉が呼んでる。
どうしたんだろう?
「あの歌詞本当に志希が考えたの?」
愛莉が聞いてくる。
まあ、普通そう思うよね。
「そうだけど……」
「お願いだからもう少し大人しい曲を歌ってくれませんか?」
茉莉と結莉が気に入ったらしい。
ああ、皆聞いていたんだな。
「私が甘ったるいラブソングじゃ不満だろうからって作ってくれたんだけど」
「フレーズの時の誠や、桐谷君じゃないんだけど」
天音や水奈も気に入ってCDは絶対買うって言ってるらしい。
小さい子供がいるのにあんな歌を聞かせて大丈夫なのかと愛莉が悩んでいるそうだ。
「次はもう少し考えるように志希にお願いするよ」
「お願い」
夕食を食べて風呂に入る。
「ねえ、パパお願いがあるんだけど」
「どうしたの?茜」
「どうせ、結婚したら子供作るよね?」
「まあ、愛莉もそうだったね」
愛莉は結婚式の時には妊娠してたらしい。
「だったら愛莉も心配だろうから結婚したら空の部屋使っていいかな……」
「茜は家事をしたくないだけでしょ!」
愛莉も一緒に聞いていた。
とりあえず茜は毎日風呂に入るように愛莉に言われている。
間違って壱郎の実家に住むようになったらあの癖は直しておかないと危険だ。
そんなやりとりを聞きながら部屋に戻って志希に話をする。
「やっぱり過激だったかな?」
「まあ、志希が作詞したと言っても誰も信じないよ」
「次は少し考える」
「そうだね」
「冬莉が歌詞を作ってもいいんだよ?」
「思いついたら教えるよ」
「分かった」
そう言って話を終えると私はベッドに入る。
しかし体は正直だ。
あの興奮は中々冷めない。
鎮めようと努力しながら眠っていた。
(3)
「じゃあ、今日は乾杯!」
僕達は祝っていた。
理由は簡単。
相手が上手く作戦に嵌ってくれたから。
晴斗達に追い出された原川組はすぐにマスコミにたれ流そうとした。
しかしマスコミもあまりその話題に触れたくなかった。
まあ、当然だろう。
マスコミがダメならまだ手はある。
ネットだ。
ネットでサイトを作って片桐税理士事務所が差別を行っていると噂を流す。
それが彼等の最大のミス。
そのくらい予想していた誠が見事にサイトを作った相手の身柄を抑えた。
そこからは恵美さんが芋づる式に引きずり出す。
するとやっと誠心会とアルテミスに辿り着いた。
ここからが反撃開始。
新聞社に団体と暴力団の原川組との癒着。
原川組の大元の誠心会とアルテミスの繋がり。
アルテミスが誠心会を使って敵対企業を違法行為で妨害していた事。
アルテミスという企業集合体の存在を表に引きずり出した。
その名簿には野党の大物政治家等の名前があった。
当然だ。彼等の力で団体に抗議する活動家を脅したり馬鹿げた法案を通していたのだから。
もちろん野党だけでなく与党の親中派や親韓派をもあぶり出していた。
連日国会が荒れてるみたいだ。
「指揮官様の采配は衰えを知らないね」
公生がそう言っていた。
そんなに難しくは無いと思う。
このご時世だ。
政治家だって出来れば触りたくない話題だ。
揚げ足取って追及する野党だっている。
その言葉はこの世界では禁句だった。
それで相手してもらえないとなればある程度予想は出来る。
マスコミがダメならネットで騒ぐ。
素人でも考えそうなことだ。
それが命取りになった。
ネットに詳しい人間は誠だけじゃなくても茜や真香、公生がいる。
そこに痕跡を残したのが致命傷だ。
もちろんネットで入手できる情報はたかが知れてる。
しかしそのわずかな手掛かりがあれば恵美さんが後は片っ端から引きずり出す。
「そこまで読んでいたのね」
「渡辺班に手を出して無傷でいられると思ったのが油断だね」
恵美さんと公生が言う。
手を出したら当然後が残る。
わずかなものであっても強引に引っ張る力を持っている。
それはSHにも負けない力だ。
いい大人が暴れまわるだけが能じゃない。
ありとあらゆるツテを使って相手を囲んでいく。
SHではやらない渡辺班なりのやり方だ。
「これで当分アルテミスは動けないね」
「そうだね……」
「冬夜さんはまだ何か不安があるのですか?」
愛莉が気づいたみたいだ。
「仮にも日本で1,2を争うグループに手を出したんだよ」
「まさか反撃を恐れてるのか?」
「んなもん返り討ちにしてやらぁ!なあ、皆」
美嘉さんが言うと皆盛り上がる。
公生と奈留は気づいたようだ。
「そんな物を弱体化させたら相手勢力が大きくなる。その勢力の動向が気になるんですね?」
奈留が言うと僕は頷いた。
なんせ僕達はその相手勢力すら知らないのだから。
「片桐君が気にするのも分かるけど、そこまで気にする必要は無いと思うよ」
公生が言う。
アルテミスを大混乱に陥れた渡辺班。
その敵対勢力だって渡辺班に手を出したらどうなるか分かっているはず。
少なくとも地元で鬱陶しい真似はしてこないだろう。
「冬夜、その件なら俺達に任せてくれないか?」
誠が言った。
「どうするんだ?」
「アルテミスの敵対勢力なんだろ?だったらアルテミスの中にある程度情報が残っているだろ」
それを恵美さんと掘り起こしてやるという。
そういう事なら任せてもよさそうだ。
「誠、無理して刺激するなよ。手の内が分からない奴を相手にするほど難しい事はないんだ」
「分かってる」
「冬夜さんはこれからどうなると思ってるんですか?」
愛莉が聞いてきた。
「愛莉の思ってる通りだと思うよ」
アルテミスはとりあえずこの騒動を無理にでも鎮めようと躍起になってるだろう。
下手すれば株価にまで影響しかねない問題なんだから。
「それが静まった後はどうなるんだ?」
カンナが聞いてきた。
「まあ、復讐くらいは考えるだろうね」
「その時に返り討ちするのか?」
渡辺君が聞いた。
「手札なら多分あるからそれを出すだけだ」
「まだ奥の手があるのか?」
「そんなに難しい事じゃないよ」
アルテミスが騒動を鎮圧しようとするなら何らかの手札を切るだろう。
それを見逃すような仲間じゃないと僕は信じてるけど。
もっというなら、さっき誠が言ってた敵対勢力とやらに仕掛けていた手段を抑えてやればいい。
そこまでいったら、次に反撃する力なんて残ってるはずがない。
本体が逃げ切る為に色々切り捨てに来るだろうから。
仕返しに誠心会とやらが仕掛けてくるだろうけど、そんなものSHでどうにかするだろう。
「さすがだな……」
丹下さんが驚いている。
「じゃ、今夜は徹底的に騒ぐぞ!」
「大丈夫だよ!私も明日は休み取った!」
「今夜は押せ押せだな!」
カンナと亜依さんと美嘉さんが言う。
やけに晴斗が大人しいな。
「晴斗、何かやらかしたのか?」
僕が晴斗に聞いてみた。
「い、いや……なんでもありません」
そんな様子を見て春奈さんが笑っていた。
「春奈、晴斗に何かしたのか?」
カンナが春奈さんが聞いていた。
晴斗ももうじき50。
いつまでも「~っす」はみっともないんじゃないのか?
そう言ったら言葉遣いを変え出した。
ただ癖で言ってしまうから無口になっただけ。
皆で大笑いしていた。
しかしみんなそんな歳だ。
流石に朝まで騒ぐなんて無理だった。
適当な時間で帰る。
「これで一安心なんですよね?」
愛莉がベッドの中で聞いてきた。
「多分あらかた掃除できたと思う」
気になるのはリベリオンだけど、それはSHに任せて問題だろう。
「やっとのんびり生活出来るんですね」
「そうだね」
「でも、まだ冬夜さんには頑張ってもらわないと」
「わかってる」
まだ冬吾や冬莉、冬眞や莉子が残っている。
でもゴールは見えてきた。
「莉子達が家を出たら愛莉パパみたいに旅行でも行こうか?」
「そうですね」
そんな平穏な日々が来ると信じていた。
「これだけ人がいれば場所は確保出来るよね」
「じゃ、瞳子達後よろしく!」
冬吾と冬莉はそう言って出店に向かっていた。
「冬吾はスポンサー料貰ってるし、冬莉も契約金あるからいいんじゃないか?」
冬吾の父さんはそう言って二人の小遣いの催促の応じたらしい。
「使い過ぎてはいけませんよ。2人とも将来の為の備蓄というのを考えなさい」
冬吾の母さんはそう言って小遣いを与えたらしい。
会場に来て恋人の事を気にしなくていいならこうなる事は明白だった。
志希と瞳子はそれを見て溜息をついている。
今日は地元の花火大会に来ていた。
女子達は浴衣だった。
冬莉は浴衣なのに気づかうことなく出店に向かっていく。
「それが片桐家だ」
父さんはそう言ってた。
冬吾は遠征に行ってる間も何か美味しい物が無いか事前に調べている。
姉に聞いて姉が調べているんだそうだ。
あとは冬吾の父さんが教えてくれるらしい。
そして冬吾の母さんと喧嘩を始めるらしい。
家の両親も似たようなもんだ。
「あの辺に行ったらいい店あったぜ!」
「お前は高校生に何を教えてるんだ!」
でも前に言った通り一通りの事は経験したからあまり興味が無い。
興味が薄れたといったほうが正しいのだろうか?
別に女性に興味が無いわけじゃない。
彼女も欲しくないと言ったら嘘になる。
ただ、日本に彼女を残して海外に行くの可哀そうだと思ったから。
次の彼女はその先にある物を求めたいから。
Hの先にある物は愛だと昔聞いたことがある。
冬吾は既に手にしているのだろうか?
そう考えると少し興味がある事があった。
「なあ、瞳子」
「どうしたの?」
瞳子が振り向いた。
「あいつスペイン行くつもりなんだろ?」
「スカウトが来たとかそういう話はまだ聞かないけど冬吾君は希望してたね」
まあ、多分来年には来るだろう。
あいつの実力なら間違いないだろう。
「瞳子は地元大学受けるんだよな?」
「うん、教師になりたいと思ったから」
「その間一人で不安だったりしないのか?」
冬吾は浮気なんてするような奴じゃない。
だけどそれでも不安になるのが恋だって言ってた。
「不安だよ」
やっぱりそうなのか。
でもその続きがあった。
「でもそれは冬吾君だって同じじゃないかな。スペインに行ってる間に自分の事を忘れちゃうんじゃないかな?とか考えると思う」
確かにそうだな。
だから色んな手段できっと連絡してくると思う。
誰かが言ってた。
今のご時世で遠距離は無理なんてナンセンスだ。
ネットがあるこの世界でそんな事があるわけない。
冬吾だって色々考えてくれるだろうから瞳子はそれを信じるだけという。
「瞳子は強いんだな」
「そうでもないよ、冬吾君に身を預けてるだけ」
心配する事はない。
冬吾君なら大丈夫。
そう信じるだけ。
なるほどな。
「でもそれは今の誠司君にも同じ事が言えると思うよ?」
絶対に浮気なんかしない。
多少遊ぶかもしれないけどあくまでも遊びだ。
それも別の彼女を作るとかじゃなくて風俗に行く程度だろう。
そのくらいで怒るような彼女はそもそも俺が海外に行く時点で無理だろう。
それでも誠司君を信じられるような女子が今の俺にならきっと見つかるはず。
だから今のうちに作っても問題ないんじゃないの?
瞳子はそう言った。
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、俺はちょっと違うんだ」
「どう違うの?」
「俺の事を全力で好きでいてくれる彼女が欲しい」
俺も全力で彼女に尽くしたい。
遠距離だときっと彼女に辛い思いをさせる。
遠距離でも平気だというような程度の気持ちじゃ物足りない。
そんな彼女を手に入れようと思ったらやっぱり高校生で作るのは難しい。
きっと辛くなってボロボロになっていくのが分かってるから。
そのくらい本気で俺を好きでいてくれる人が欲しいんだ。
「誠司君本当に変わったね」
瞳子はそう言って笑う。
「あとはその軽口が無くなればいう事無いんだけどね」
冴が言う。
「でも、その理屈だと私にはやっぱり誠司は無理だったのかな」
きっと寂しくて他の男性を求めてしまうだろうから。
ちょっと俺が女遊びしてるだけで信じる事が出来なかったのだから。
「……そろそろ花火始まるよ」
泉が言うと花火が打ちあがる。
冬吾達は花火が終った後に戻って来た。
抱えきれないほど食べ物を買ってその場で食べながら花火を見てたらしい。
花火が終ると皆家に帰る。
「10年後の8月か」
「何それ?」
冬莉が聞いてきた。
「父さん達は約束したそうなんだ。10年後に皆でまた集まろうって」
「ああ、その話なら僕も聞いた」
冬吾が言う。
「俺達もまた集まれると良いな」
「きっと集まれるよ」
「じゃあ、皆で約束しようよ」
頼子が言うと皆で誓う。
卒業するまでに最高の思い出を作ろう。
そんな事を話していた。
(2)
私は育人が作った衣裳を着ていた。
動きづらい。
しかしそれが志希のアイデアだからしょうがない。
「もう花嫁みたいな姿だね」
増渕麻里が私を見てそう言った。
今日は遊園地である音楽フェスの日。
私達は麻里達フレーズの前座で出る事になっていた。
デビュー用の新曲を志希はじっくり作っていた。
私と志希のユニットF・SEASONのお披露目だ。
どうせなら派手に一発かましたい。
そんな事を志希は企んでいた。
「あんまり緊張しないでいいから」
恵美さんがそう言う。
それは大丈夫。
片桐家の中では常識になっていた。
同じ恥をかくなら思いっきりかいてこい。
「そろそろ準備して下さい」
スタッフの人が言う。
「じゃあ、皆派手に行くよ!」
スタッフと円陣を組むと皆で叫ぶ。
そして出番が来ると照明が暗くなる。
その間に私と志希がステージに立つ。
スポットライトが私に当たる。
私は思いっきり「行くよ!」と叫ぶ
ショータイムだ。
私が曲名を叫ぶとスポットライトの色が赤に変わる。
そして志希のギターが鳴り響く。
ドラムが鳴り始めて煙が吹き荒れる。
真っ白な私の衣装が照明で赤く染まっていた。
「カモン!」
そう言うと客が盛り上がり始める。
歌詞は全部英語だった。
神様からもらったのはでかい銃だけ。
正義なんて反吐が出る物私には関係ない。
私がムカつくからやりあうだけだ。
相手の事なんて知った事じゃない。
お前が私をこうさせた。
すべてはお前次第だ。
思うがままにやってみろ。
温厚な志希が考える歌詞じゃない。
しかし志希は私を見て作った歌詞らしい。
激しい音楽に乗せられてしっかり歌う。
客のテンションは上がっていた。
そのあと2曲ほど歌って私達の初めてのステージは終った。
「盛り上げてくれてありがとね」
次に歌う麻里達がそう言ってステージに向かう。
衣裳のせいもあってさすがに疲れた。
「良かったよ」
志希が飲み物を持ってきてくれた。
「サンキュー。志希のギターもかっこよかった」
ていうかこういうジャンルも作れるんだね。
「冬莉だからきっと甘ったるいラブソングじゃ物足りないと思って」
「一つ言わせてもらう」
「どうした」
「この衣裳は勘弁してほしい」
私はそう言って笑った。
「あなた達凄いじゃない。上出来よ。早めに契約してよかったわ」
恵美さんがそう言っている。
フェスが終ると家に帰る。
「冬莉!ちょっと来なさい!」
愛莉が呼んでる。
どうしたんだろう?
「あの歌詞本当に志希が考えたの?」
愛莉が聞いてくる。
まあ、普通そう思うよね。
「そうだけど……」
「お願いだからもう少し大人しい曲を歌ってくれませんか?」
茉莉と結莉が気に入ったらしい。
ああ、皆聞いていたんだな。
「私が甘ったるいラブソングじゃ不満だろうからって作ってくれたんだけど」
「フレーズの時の誠や、桐谷君じゃないんだけど」
天音や水奈も気に入ってCDは絶対買うって言ってるらしい。
小さい子供がいるのにあんな歌を聞かせて大丈夫なのかと愛莉が悩んでいるそうだ。
「次はもう少し考えるように志希にお願いするよ」
「お願い」
夕食を食べて風呂に入る。
「ねえ、パパお願いがあるんだけど」
「どうしたの?茜」
「どうせ、結婚したら子供作るよね?」
「まあ、愛莉もそうだったね」
愛莉は結婚式の時には妊娠してたらしい。
「だったら愛莉も心配だろうから結婚したら空の部屋使っていいかな……」
「茜は家事をしたくないだけでしょ!」
愛莉も一緒に聞いていた。
とりあえず茜は毎日風呂に入るように愛莉に言われている。
間違って壱郎の実家に住むようになったらあの癖は直しておかないと危険だ。
そんなやりとりを聞きながら部屋に戻って志希に話をする。
「やっぱり過激だったかな?」
「まあ、志希が作詞したと言っても誰も信じないよ」
「次は少し考える」
「そうだね」
「冬莉が歌詞を作ってもいいんだよ?」
「思いついたら教えるよ」
「分かった」
そう言って話を終えると私はベッドに入る。
しかし体は正直だ。
あの興奮は中々冷めない。
鎮めようと努力しながら眠っていた。
(3)
「じゃあ、今日は乾杯!」
僕達は祝っていた。
理由は簡単。
相手が上手く作戦に嵌ってくれたから。
晴斗達に追い出された原川組はすぐにマスコミにたれ流そうとした。
しかしマスコミもあまりその話題に触れたくなかった。
まあ、当然だろう。
マスコミがダメならまだ手はある。
ネットだ。
ネットでサイトを作って片桐税理士事務所が差別を行っていると噂を流す。
それが彼等の最大のミス。
そのくらい予想していた誠が見事にサイトを作った相手の身柄を抑えた。
そこからは恵美さんが芋づる式に引きずり出す。
するとやっと誠心会とアルテミスに辿り着いた。
ここからが反撃開始。
新聞社に団体と暴力団の原川組との癒着。
原川組の大元の誠心会とアルテミスの繋がり。
アルテミスが誠心会を使って敵対企業を違法行為で妨害していた事。
アルテミスという企業集合体の存在を表に引きずり出した。
その名簿には野党の大物政治家等の名前があった。
当然だ。彼等の力で団体に抗議する活動家を脅したり馬鹿げた法案を通していたのだから。
もちろん野党だけでなく与党の親中派や親韓派をもあぶり出していた。
連日国会が荒れてるみたいだ。
「指揮官様の采配は衰えを知らないね」
公生がそう言っていた。
そんなに難しくは無いと思う。
このご時世だ。
政治家だって出来れば触りたくない話題だ。
揚げ足取って追及する野党だっている。
その言葉はこの世界では禁句だった。
それで相手してもらえないとなればある程度予想は出来る。
マスコミがダメならネットで騒ぐ。
素人でも考えそうなことだ。
それが命取りになった。
ネットに詳しい人間は誠だけじゃなくても茜や真香、公生がいる。
そこに痕跡を残したのが致命傷だ。
もちろんネットで入手できる情報はたかが知れてる。
しかしそのわずかな手掛かりがあれば恵美さんが後は片っ端から引きずり出す。
「そこまで読んでいたのね」
「渡辺班に手を出して無傷でいられると思ったのが油断だね」
恵美さんと公生が言う。
手を出したら当然後が残る。
わずかなものであっても強引に引っ張る力を持っている。
それはSHにも負けない力だ。
いい大人が暴れまわるだけが能じゃない。
ありとあらゆるツテを使って相手を囲んでいく。
SHではやらない渡辺班なりのやり方だ。
「これで当分アルテミスは動けないね」
「そうだね……」
「冬夜さんはまだ何か不安があるのですか?」
愛莉が気づいたみたいだ。
「仮にも日本で1,2を争うグループに手を出したんだよ」
「まさか反撃を恐れてるのか?」
「んなもん返り討ちにしてやらぁ!なあ、皆」
美嘉さんが言うと皆盛り上がる。
公生と奈留は気づいたようだ。
「そんな物を弱体化させたら相手勢力が大きくなる。その勢力の動向が気になるんですね?」
奈留が言うと僕は頷いた。
なんせ僕達はその相手勢力すら知らないのだから。
「片桐君が気にするのも分かるけど、そこまで気にする必要は無いと思うよ」
公生が言う。
アルテミスを大混乱に陥れた渡辺班。
その敵対勢力だって渡辺班に手を出したらどうなるか分かっているはず。
少なくとも地元で鬱陶しい真似はしてこないだろう。
「冬夜、その件なら俺達に任せてくれないか?」
誠が言った。
「どうするんだ?」
「アルテミスの敵対勢力なんだろ?だったらアルテミスの中にある程度情報が残っているだろ」
それを恵美さんと掘り起こしてやるという。
そういう事なら任せてもよさそうだ。
「誠、無理して刺激するなよ。手の内が分からない奴を相手にするほど難しい事はないんだ」
「分かってる」
「冬夜さんはこれからどうなると思ってるんですか?」
愛莉が聞いてきた。
「愛莉の思ってる通りだと思うよ」
アルテミスはとりあえずこの騒動を無理にでも鎮めようと躍起になってるだろう。
下手すれば株価にまで影響しかねない問題なんだから。
「それが静まった後はどうなるんだ?」
カンナが聞いてきた。
「まあ、復讐くらいは考えるだろうね」
「その時に返り討ちするのか?」
渡辺君が聞いた。
「手札なら多分あるからそれを出すだけだ」
「まだ奥の手があるのか?」
「そんなに難しい事じゃないよ」
アルテミスが騒動を鎮圧しようとするなら何らかの手札を切るだろう。
それを見逃すような仲間じゃないと僕は信じてるけど。
もっというなら、さっき誠が言ってた敵対勢力とやらに仕掛けていた手段を抑えてやればいい。
そこまでいったら、次に反撃する力なんて残ってるはずがない。
本体が逃げ切る為に色々切り捨てに来るだろうから。
仕返しに誠心会とやらが仕掛けてくるだろうけど、そんなものSHでどうにかするだろう。
「さすがだな……」
丹下さんが驚いている。
「じゃ、今夜は徹底的に騒ぐぞ!」
「大丈夫だよ!私も明日は休み取った!」
「今夜は押せ押せだな!」
カンナと亜依さんと美嘉さんが言う。
やけに晴斗が大人しいな。
「晴斗、何かやらかしたのか?」
僕が晴斗に聞いてみた。
「い、いや……なんでもありません」
そんな様子を見て春奈さんが笑っていた。
「春奈、晴斗に何かしたのか?」
カンナが春奈さんが聞いていた。
晴斗ももうじき50。
いつまでも「~っす」はみっともないんじゃないのか?
そう言ったら言葉遣いを変え出した。
ただ癖で言ってしまうから無口になっただけ。
皆で大笑いしていた。
しかしみんなそんな歳だ。
流石に朝まで騒ぐなんて無理だった。
適当な時間で帰る。
「これで一安心なんですよね?」
愛莉がベッドの中で聞いてきた。
「多分あらかた掃除できたと思う」
気になるのはリベリオンだけど、それはSHに任せて問題だろう。
「やっとのんびり生活出来るんですね」
「そうだね」
「でも、まだ冬夜さんには頑張ってもらわないと」
「わかってる」
まだ冬吾や冬莉、冬眞や莉子が残っている。
でもゴールは見えてきた。
「莉子達が家を出たら愛莉パパみたいに旅行でも行こうか?」
「そうですね」
そんな平穏な日々が来ると信じていた。
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