327 / 535
plot
しおりを挟む
(1)
「ひゃっほう!気持ちいいな!」
「多田君勝手に行動しないで!」
インストラクターの女性から注意されながらも勝手に上級者コースを滑走する誠司。
修学旅行2日目。
僕達はスキーを体験していた。
皆初心者だと思っていたら誠司は違ったらしい。
誠司の父さんと地元のスキー場に行ったりするんだそうだ。
それで誠司は得意気に滑っている。
僕達は初級コースを皆でゆっくり滑っていた。
止まる事に苦戦する瞳子達とは別に僕は普通に滑って待っていた。
そんな僕達を置き去りにして勝手に滑ってリフトで上がってきて僕達と合流する。
「危ないから勝手な行動しないで」
「俺、得意なんだ。スキーで食っていけるかな?」
そんな事をインストラクターに質問している誠司。
お前サッカーどうするんだよ。
「誠司気をつけなよ。あんたが怪我したら大事になるでしょ!」
自分の立場を考えて行動しろと冬莉が誠司に注意している。
「冬吾も滑れるんだろ?勝負しようぜ」
「だからさあ……」
「冬吾君を巻き込まないで!」
呆れる冬莉と注意する瞳子。
そういや、父さんが言ってたな。
誠司の父さんもスケートに行った時に嫁さん放って他の女性口説いてたって。
そういう血筋なんだろうか。
彼女は高校生活の間は作らないと宣言した誠司がインストラクターを口説いてる。
どういう理屈なんだろう。
誠司なら地元と北海道の遠距離なんてどうにでもなるだろうけど。
「ばーか、本気なわけないだろ。大人の女性がガキを相手にするわけないだろ」
「じゃあ、なんでメッセージのIDなんて聞いてたんだ?」
「冬吾がまじめすぎんだよ。彼女以外に女友達作ったらダメなんて決まりないだろ」
ぽかっ
「冬吾君に変な事吹き込むの止めて!」
ゴーグルとかで顔が全然見えないけど瞳子が怒ってるのは間違いない。
「まずそのへっぴり腰何とかしなよ」
「そ、そうは言うけどさあ……」
冬莉は志希に合わせてゆっくり滑っている。
志希はどうも苦手らしい。
「誠司もいい加減にしとかないと。あんた自分の立場考えなよ」
代表選手がインストラクター口説いてたなんて3流雑誌の良い餌じゃない。
冬莉がそう言うけど誠司は平気そうだった。
「こんなところに俺がいるなんて誰も思わねーよ」
第一これだけの顔を隠してたら誰も気づかねーよ。
怪我をしたなんて事になったら絶対バレると思うんだけど。
「父さんが言ってたよ」
事故は自分が起こすとは限らない。
何があるか分からないから用心するに越したことはない。
「俺の父さんは言ってたぜ。”事故るやつは不運と踊った”だけだって……」
ぽかっ
「少しは真面目に考えなさい!」
瞳子も大変だな。
「あ、そろそろ降りましょうか。お昼休憩だし」
インストラクターが言うと僕達はついて行った。
誠司は当たり前の様に追い抜いていったけど。
お昼ご飯は父さんから聞いたように海鮮丼だった。
幸せそうに食べていたら瞳子が「これ以上食べれないから」って少し分けてくれた。
ありがたく食べる。
当然冬莉も残すなんて真似はしない。
逆に志希が「残り食べてよ」と言ってる。
しかしそんなの冬莉が許すわけがない。
「しっかり食べないと成長しないよ!」
出されたものはしっかり食べなさい。
女の子じゃないんだから、ダイエットなんて考えなくていい。
そう言って無理矢理食べさせようとしていた。
言い方を変えると「はい、お口開けて」と言って志希に食べさせていた。
「冬吾君もして欲しかった?」
瞳子が聞いてくる。
「うーん、子供じゃないし」
「そうだよね」
「……でもさ、父さんが言ってた」
そう言うのは2人っきりの時にしてもらえ。
「じゃあ、いつかしてあげるね」
瞳子はそう言って笑っていた。
お昼休みが終ると再び練習の再開。
瞳子は苦手みたいだ。
「そんなに怖がらなくていいから」
「うーん、どうもブレーキが苦手で……」
僕と冬莉以外は手こずっている様だ。
誠司は言うまでもない。
インストラクターも「怪我しないように注意してね」と言って自由にさせている。
「冬吾君達も私達の事はいいから」
瞳子がそう言うと僕は首を振った。
「母さんが言ってたんだ」
こういう時は彼女が”きゃー、止まらないよー”って言うのを受け止めてあげればいいんだって」
「つまり抱きつきたいだけじゃない」
そう言って瞳子が笑っていた。
「まあ、折角なんだし気にしないで頑張りなよ」
スキーが上達しなくてもいい。
今この一瞬が思い出になるのだから。
冬莉がそう言っていた。
誠司はその時何をしているのか僕達は知らなかった。
(2)
なんか女性がいかにもな絡まれている。
俺は側に近づくと女性に何があったのか聞いていた。
「おい、何勝手に来てから人の獲物に手を出してるんだよ?」
「お前の言い分なんか聞いてない。手を出すかどうかは彼女から聞いてから判断するから少し黙ってろ」
そう言って女性に「単なる修学旅行に来た高校生で彼女いなくて暇だったから滑ってたらたまたま見つけただけ」と話す。
怪しい男じゃないから気にしないでと言うと彼女は話し出した。
「彼等はSHだと言ってきて……」
もはやSHは全国レベルで広まってるらしい。
まあ、無理もないか。
この男どもがSHの東京支部のメンバーだそうだ。
殺す理由が出来た。
で、慣れてない彼女達に声をかけて来たらしい。
「つまりお前らはSHだからってナンパしてたわけか?」
姉さんとチャットしながら男どもの言い分を聞いていた。
「そうだ、わかったらとっとと消え失せろ。それともSHの事も知らない田舎者か?」
こいつ絶対馬鹿だろ。
すると姉さんからすぐに返事が来た。
「殺せ」
折角の修学旅行に面倒なことを増やしやがって。
俺はスキー板の留め具を外すと男たちに忠告した。
「40秒だけ時間をやる。その間に消え失せろ。そしたら命は助けてやる」
天音や姉さんが聞いたら「甘すぎる」って注意されそうだけど旅行に来て事件にはしたくない。
雪の中に埋めてしまえば気づかれないだろくらいは言われるだろうけど。
「誰に物言ってんだてめぇ!」
「お前らこそ俺の顔見て自分が何者かはっきり言てみろ!」
「SHに喧嘩売るって言うなら容赦しねー……」
先にぶん殴った。
間抜けだな。
ボードをつけたままで戦闘なんてできないだろ。
それに冬吾が強すぎるだけで俺が弱いなんて話はない。
蹴らなかったのは足を故障したなんて事になったら絶対父さん達に怒られる。
ボードを外す前に全員殴り飛ばした。
「相手が俺で良かったな。空や天音が聞いたらお前ら絶対死んでるぞ」
空もセメントに変えたり、やる事が過激になってるからな。
相手は何も言わずに立ち去った。
「ありがとう、君強いんだね」
そういって女性はゴーグルを外して礼を言う。
「えーと君名前なんていうの?私は……」
女性が名乗ろうとすると俺は人差し指を立てた。
「ただの通りすがりの修学旅行生でいいよ」
代表選手がこんなところで暴行沙汰なんて知られたら母さんに叱られる。
それでも彼女達は俺に好意を持ったようだ。
「私達もあまり滑ったこと無くて慣れてないんだよね」
だからああいう馬鹿に目をつけられたんだろう。
俺が上手そうだから教えて欲しいという。
「いいよ」
そう言った時だった。
「誠司!あんたまた何馬鹿なことやってるの!?」
そういや冴は別の班だったな。
冴に説明する。
「なるほどね……、あんたスキー得意なの?」
「俺はスノボの方が好きなんだけどな」
「じゃあ、私達も教えてよ」
「なんで?」
冴も俺と同じだったらしい。
上手いから自由に滑って良いと言われたらしい。
他の皆が気を使うから離れて行動してた。
しかしただ滑ってリフトで上に行くだけをしていたら退屈にもなる。
そうしてたら俺が彼女達をナンパしてるのを見つけた。
こんなところまで来て馬鹿か?と思ったらしい。
「私達が一緒だと何か都合悪いの?」
「いや、べつにいいけど、さとりは良いのか?」
「僕も暇を持て余してたから……」
そう言ってさとりも冴と一緒みたいだ。
で、午後の時間は冴達も一緒に遊んでいた。
彼女たちは一緒に写真が撮りたいと言う。
しかしさすがに写真はまずい。
ゴーグルとかを取ったらさすがに俺が何者かバレる。
なんとかしないとと思ったら、冴が助けてくれた。
「修学旅行中にこんな真似してたら担任が五月蠅いから」
永遠ならきっと「お前モテるんだな」で済むだろうけど。
冴が言ったら諦めてくれた。
それでもと食い下がるので連絡先だけ聞いておいた。
そう言って彼女達が帰って行くと冴が言った。
「あんた、やっぱり変わってないの?」
「だから助けただけだって」
「じゃあ、連絡先交換した理由はどう説明するの?」
「彼女達が聞いてきたから。……あのさ、何か勘違いしてないか?」
「どういう意味?」
冴が聞いてきた。
女性が絡まれていたら助けるくらいするだろ。
ただそれだけの話だよ。
で、教えて欲しいと言ったから教えただけ。
その証拠に冴達も一緒にいただろ?
別にあの女性に気があったわけじゃないよ。
下心すら湧かない。
当たり前だろ?
顔も分からない子にどうして好意を持つ。
いっとくけど綺麗な女性なのにもったいないとかないから。
スノーマジックって言うだろ?
こんなところで観て「可愛いな」なんて思わないよ。
それに見た目だけで選んでるなら地元で可愛い子探すよ。
そう冴に説明すると冴も納得したみたいだ。
「でも、誠司にその気がなくても、誠司の正体知ったら向こうが期待するかもだから気をつけなよ」
断るのも面倒だし、相手が他人に自慢したりして噂が独り歩きしたら大変だよ。
冴の言う事ももっともだな。
「もっと自分の立場考えなさい」
そう言って冴は笑っていた。
(3)
「ああ、忙しいだろうに済まない」
「いいよ、話はチャット見て聞いた。またSH名乗ってる馬鹿がいたんだって?」
僕と翼と天音と大地と水奈と学はファミレスに集まった。
修学旅行に行っている誠司が柄の悪い男に女性が絡まれていたから助けたら、その馬鹿はSHを名乗ったそうだ。
誠司に向かって「SHも知らない田舎者か?」と聞いたらしい。
もちろん水奈は「殺しとけ」と指示したそうだ。
その話は良いんだけど気になる事もある。
彼等は「SH東京支部」と名乗ったそうだ。
支部って事は本部があるのだろう。
だけどその本部が僕達じゃない事は確かだった。
じゃあ、その似非SHのリーダーはどこにいる?
馬鹿が勝手な事やっていると放っておけばいい。
しかしどのくらいの規模でやっているのか知っておく必要がある。
その馬鹿が誠司もSHの人間だという事を知らなかったようだからよかったけど、誠司を知っていたら問題になる。
今後も似非SHが暴れ出したら僕達まで被害が加わるのは目に見えていた。
それでどうしようかと集まって相談していた。
「こっちは仕事と育児でそれどころじゃないんだけどな」
学はそう言う。
天音もその馬鹿をセメントにしてやればいいんだろ?というものの標的が分からない。
茜達に調べてもらうしかないか。
そう判断すると早速翼が茜にチャットを送信していた。
返事が早かった。
前からサイトで派手にやっていたらしい。
しかし肝心のリーダーが出てこない。
それを調べて僕に報せようと思ってたらしい。
「どのくらいの規模なの?」
「本部は多分関東で間違いないみたい」
だって支部が全部関東に集中しているから。
全部支部を語っているのはカモフラージュかか何かだろう。
奴らだって馬鹿じゃない。
僕達がそんなのを見つけたら潰しにかかる事くらい予想しているから本体を隠しているのだろう。
喜一に電話で聞いてみた。
「ああ、聞いてるけどFGは地元だけで手一杯だからな」
誠心会が助力してるけど余り調子に乗ったら僕達の餌になるだけど慎重らしい。
全国規模になったら原川組を使えば良い。
FGは地元を掌握すればいい。
まあ、僕達がいるから手こずっているらしいけど。
「空、これは仮説なんだけど……」
翼が話した。
もしFGの規模を拡大してくると困る存在。
FGを抑える存在はSHだけ。
だからSHの名を騙った。
自分たちのいる、恐らく関東エリアの誰かの仕業じゃないのか。
「翼の言う事は当たっていると思う」
だから関東エリアだけに拘ってるんだろうし。
だから僕は悩んでいた。
仮にここで関東エリアのSHを潰したところでFGが拡大する口実になるんじゃないか?
だいたい誰の仕業だ。
それが分かるまでは手が出せない。
「じゃあ、何もしないっていうのか!?」
天音が言う。
「天音、関東だって広いんだ。いちいち出張って殴り飛ばすのも面倒だろ?」
「だったら恵美さんに爆撃機を借りて火の海に変えてやればいい」
「それは無理だ」
「なんでだよ?」
天音が言うと僕は天音の隣にいる結莉と茉莉を指差した。
地元や九州圏内ならそれでもいいけど場所が悪すぎる。
「それなら大丈夫です。もみ消すくらいは出来るはず」
「そういう問題じゃないんだ」
大地が言うけど僕は首を振った。
関東を攻めるという事は絶対に東京を潰すことになる。
東京を爆撃なんてしたら大惨事が待っている。
日本の首都だ。
ニュースなんかでも問題視されているほど東京には様々な物が集中している。
そんなところを攻撃したら日本がマヒする。
物流やらインフラ面で大打撃を受ける。
そしてそれすら些細な問題だった。
当然テレビなんかが放映できなくなる。
ネットだって怪しい。
そんな事になって怒り出すのは結だ。
関東エリアだけの被害じゃ収まらなくなる。
だから潰すならしっかり標的を見定めないとダメだ。
「で、空はどうするつもりだ?」
学が聞いた。
「どうもしないよ」
「それだと誠司達に迷惑かかるんじゃないか?」
水奈が言う。
何を今さら言ってるんだろう。
「その誠司が暴れても無理矢理有耶無耶にしてもらってるじゃないか?」
冬吾達が将来を棒にする様な情報は全部恵美さんが潰すだろう。
茜達だっているからネット上も問題ない。
あまりにも鬱陶しい真似をしたら相応の対処をする。
たかが不良少年が暴れてるくらいどうでもいい。
関係ない集団なんだから。
皆が納得すると家に帰る。
結と比呂はもう寝ていた。
僕と美希も寝室に入った。
「あの、旦那様」
「どうしたの?」
「……私にだって旦那様の考えそうなことくらい分かります」
気づかれたか。
「何か気になる事があるんでしょ?」
「まあね」
SHの名前を悪用しているという事は当然SHの名前を知っている人間。
それで東京支部となったら大体わかる。
SH東大組を名乗った馬鹿なやつら。
それならきっと法律をうまく利用して狡猾に拡大していくだろうけどどうもそうではなさそうだ。
だとするとそれ以外の人間。
「……リベリオン?」
美希も気づいたらしい。
僕も同じ事を考えていた。
だけどその目的が分からない。
なぜ関東なのかすら分からないのだから。
「私の考え聞いてもらえますか?」
美希は何か思いついたようだ。
聞いてみる事にした。
「彼等は渡辺班やSHを敵視しているんでしょ?」
だけど力づくで潰すことが難しい。
ならどうする?
美希の考えはシンプルだった。
悪評を垂れ流せばいい。
今はちょっとした悪事でも楠木知事の弱点になる。
どうせなら派手に垂れ流したい。
なら東京じゃないか?
あらゆる情報の発信源が東京なのだから。
美希の話を聞いているうちにリベリオンの仕業で間違いない気がしてきた。
目的は若干違うけど。
「リベリオンはSHや渡辺班に恨みを持つ人間。……その仲間を増やす為の布石」
FGとリベリオンの違い。
それは目的の有無。
SHの名を騙り悪事を繰り返してSHに恨みを持つ人間を増やす。
関東である程度増えたら後は勝手に拡散していく。
それは多分4大企業にも影響が出るはず。
そういうことか。
美希は天音に連絡している。
恵美さん達に報せる必要があるから。
しかし肝心の対抗策を見いだせずにいた。
だってこっちが先に手を出したらそれを利用されるだけ。
今までは同じようにはいかないようだった。
「ひゃっほう!気持ちいいな!」
「多田君勝手に行動しないで!」
インストラクターの女性から注意されながらも勝手に上級者コースを滑走する誠司。
修学旅行2日目。
僕達はスキーを体験していた。
皆初心者だと思っていたら誠司は違ったらしい。
誠司の父さんと地元のスキー場に行ったりするんだそうだ。
それで誠司は得意気に滑っている。
僕達は初級コースを皆でゆっくり滑っていた。
止まる事に苦戦する瞳子達とは別に僕は普通に滑って待っていた。
そんな僕達を置き去りにして勝手に滑ってリフトで上がってきて僕達と合流する。
「危ないから勝手な行動しないで」
「俺、得意なんだ。スキーで食っていけるかな?」
そんな事をインストラクターに質問している誠司。
お前サッカーどうするんだよ。
「誠司気をつけなよ。あんたが怪我したら大事になるでしょ!」
自分の立場を考えて行動しろと冬莉が誠司に注意している。
「冬吾も滑れるんだろ?勝負しようぜ」
「だからさあ……」
「冬吾君を巻き込まないで!」
呆れる冬莉と注意する瞳子。
そういや、父さんが言ってたな。
誠司の父さんもスケートに行った時に嫁さん放って他の女性口説いてたって。
そういう血筋なんだろうか。
彼女は高校生活の間は作らないと宣言した誠司がインストラクターを口説いてる。
どういう理屈なんだろう。
誠司なら地元と北海道の遠距離なんてどうにでもなるだろうけど。
「ばーか、本気なわけないだろ。大人の女性がガキを相手にするわけないだろ」
「じゃあ、なんでメッセージのIDなんて聞いてたんだ?」
「冬吾がまじめすぎんだよ。彼女以外に女友達作ったらダメなんて決まりないだろ」
ぽかっ
「冬吾君に変な事吹き込むの止めて!」
ゴーグルとかで顔が全然見えないけど瞳子が怒ってるのは間違いない。
「まずそのへっぴり腰何とかしなよ」
「そ、そうは言うけどさあ……」
冬莉は志希に合わせてゆっくり滑っている。
志希はどうも苦手らしい。
「誠司もいい加減にしとかないと。あんた自分の立場考えなよ」
代表選手がインストラクター口説いてたなんて3流雑誌の良い餌じゃない。
冬莉がそう言うけど誠司は平気そうだった。
「こんなところに俺がいるなんて誰も思わねーよ」
第一これだけの顔を隠してたら誰も気づかねーよ。
怪我をしたなんて事になったら絶対バレると思うんだけど。
「父さんが言ってたよ」
事故は自分が起こすとは限らない。
何があるか分からないから用心するに越したことはない。
「俺の父さんは言ってたぜ。”事故るやつは不運と踊った”だけだって……」
ぽかっ
「少しは真面目に考えなさい!」
瞳子も大変だな。
「あ、そろそろ降りましょうか。お昼休憩だし」
インストラクターが言うと僕達はついて行った。
誠司は当たり前の様に追い抜いていったけど。
お昼ご飯は父さんから聞いたように海鮮丼だった。
幸せそうに食べていたら瞳子が「これ以上食べれないから」って少し分けてくれた。
ありがたく食べる。
当然冬莉も残すなんて真似はしない。
逆に志希が「残り食べてよ」と言ってる。
しかしそんなの冬莉が許すわけがない。
「しっかり食べないと成長しないよ!」
出されたものはしっかり食べなさい。
女の子じゃないんだから、ダイエットなんて考えなくていい。
そう言って無理矢理食べさせようとしていた。
言い方を変えると「はい、お口開けて」と言って志希に食べさせていた。
「冬吾君もして欲しかった?」
瞳子が聞いてくる。
「うーん、子供じゃないし」
「そうだよね」
「……でもさ、父さんが言ってた」
そう言うのは2人っきりの時にしてもらえ。
「じゃあ、いつかしてあげるね」
瞳子はそう言って笑っていた。
お昼休みが終ると再び練習の再開。
瞳子は苦手みたいだ。
「そんなに怖がらなくていいから」
「うーん、どうもブレーキが苦手で……」
僕と冬莉以外は手こずっている様だ。
誠司は言うまでもない。
インストラクターも「怪我しないように注意してね」と言って自由にさせている。
「冬吾君達も私達の事はいいから」
瞳子がそう言うと僕は首を振った。
「母さんが言ってたんだ」
こういう時は彼女が”きゃー、止まらないよー”って言うのを受け止めてあげればいいんだって」
「つまり抱きつきたいだけじゃない」
そう言って瞳子が笑っていた。
「まあ、折角なんだし気にしないで頑張りなよ」
スキーが上達しなくてもいい。
今この一瞬が思い出になるのだから。
冬莉がそう言っていた。
誠司はその時何をしているのか僕達は知らなかった。
(2)
なんか女性がいかにもな絡まれている。
俺は側に近づくと女性に何があったのか聞いていた。
「おい、何勝手に来てから人の獲物に手を出してるんだよ?」
「お前の言い分なんか聞いてない。手を出すかどうかは彼女から聞いてから判断するから少し黙ってろ」
そう言って女性に「単なる修学旅行に来た高校生で彼女いなくて暇だったから滑ってたらたまたま見つけただけ」と話す。
怪しい男じゃないから気にしないでと言うと彼女は話し出した。
「彼等はSHだと言ってきて……」
もはやSHは全国レベルで広まってるらしい。
まあ、無理もないか。
この男どもがSHの東京支部のメンバーだそうだ。
殺す理由が出来た。
で、慣れてない彼女達に声をかけて来たらしい。
「つまりお前らはSHだからってナンパしてたわけか?」
姉さんとチャットしながら男どもの言い分を聞いていた。
「そうだ、わかったらとっとと消え失せろ。それともSHの事も知らない田舎者か?」
こいつ絶対馬鹿だろ。
すると姉さんからすぐに返事が来た。
「殺せ」
折角の修学旅行に面倒なことを増やしやがって。
俺はスキー板の留め具を外すと男たちに忠告した。
「40秒だけ時間をやる。その間に消え失せろ。そしたら命は助けてやる」
天音や姉さんが聞いたら「甘すぎる」って注意されそうだけど旅行に来て事件にはしたくない。
雪の中に埋めてしまえば気づかれないだろくらいは言われるだろうけど。
「誰に物言ってんだてめぇ!」
「お前らこそ俺の顔見て自分が何者かはっきり言てみろ!」
「SHに喧嘩売るって言うなら容赦しねー……」
先にぶん殴った。
間抜けだな。
ボードをつけたままで戦闘なんてできないだろ。
それに冬吾が強すぎるだけで俺が弱いなんて話はない。
蹴らなかったのは足を故障したなんて事になったら絶対父さん達に怒られる。
ボードを外す前に全員殴り飛ばした。
「相手が俺で良かったな。空や天音が聞いたらお前ら絶対死んでるぞ」
空もセメントに変えたり、やる事が過激になってるからな。
相手は何も言わずに立ち去った。
「ありがとう、君強いんだね」
そういって女性はゴーグルを外して礼を言う。
「えーと君名前なんていうの?私は……」
女性が名乗ろうとすると俺は人差し指を立てた。
「ただの通りすがりの修学旅行生でいいよ」
代表選手がこんなところで暴行沙汰なんて知られたら母さんに叱られる。
それでも彼女達は俺に好意を持ったようだ。
「私達もあまり滑ったこと無くて慣れてないんだよね」
だからああいう馬鹿に目をつけられたんだろう。
俺が上手そうだから教えて欲しいという。
「いいよ」
そう言った時だった。
「誠司!あんたまた何馬鹿なことやってるの!?」
そういや冴は別の班だったな。
冴に説明する。
「なるほどね……、あんたスキー得意なの?」
「俺はスノボの方が好きなんだけどな」
「じゃあ、私達も教えてよ」
「なんで?」
冴も俺と同じだったらしい。
上手いから自由に滑って良いと言われたらしい。
他の皆が気を使うから離れて行動してた。
しかしただ滑ってリフトで上に行くだけをしていたら退屈にもなる。
そうしてたら俺が彼女達をナンパしてるのを見つけた。
こんなところまで来て馬鹿か?と思ったらしい。
「私達が一緒だと何か都合悪いの?」
「いや、べつにいいけど、さとりは良いのか?」
「僕も暇を持て余してたから……」
そう言ってさとりも冴と一緒みたいだ。
で、午後の時間は冴達も一緒に遊んでいた。
彼女たちは一緒に写真が撮りたいと言う。
しかしさすがに写真はまずい。
ゴーグルとかを取ったらさすがに俺が何者かバレる。
なんとかしないとと思ったら、冴が助けてくれた。
「修学旅行中にこんな真似してたら担任が五月蠅いから」
永遠ならきっと「お前モテるんだな」で済むだろうけど。
冴が言ったら諦めてくれた。
それでもと食い下がるので連絡先だけ聞いておいた。
そう言って彼女達が帰って行くと冴が言った。
「あんた、やっぱり変わってないの?」
「だから助けただけだって」
「じゃあ、連絡先交換した理由はどう説明するの?」
「彼女達が聞いてきたから。……あのさ、何か勘違いしてないか?」
「どういう意味?」
冴が聞いてきた。
女性が絡まれていたら助けるくらいするだろ。
ただそれだけの話だよ。
で、教えて欲しいと言ったから教えただけ。
その証拠に冴達も一緒にいただろ?
別にあの女性に気があったわけじゃないよ。
下心すら湧かない。
当たり前だろ?
顔も分からない子にどうして好意を持つ。
いっとくけど綺麗な女性なのにもったいないとかないから。
スノーマジックって言うだろ?
こんなところで観て「可愛いな」なんて思わないよ。
それに見た目だけで選んでるなら地元で可愛い子探すよ。
そう冴に説明すると冴も納得したみたいだ。
「でも、誠司にその気がなくても、誠司の正体知ったら向こうが期待するかもだから気をつけなよ」
断るのも面倒だし、相手が他人に自慢したりして噂が独り歩きしたら大変だよ。
冴の言う事ももっともだな。
「もっと自分の立場考えなさい」
そう言って冴は笑っていた。
(3)
「ああ、忙しいだろうに済まない」
「いいよ、話はチャット見て聞いた。またSH名乗ってる馬鹿がいたんだって?」
僕と翼と天音と大地と水奈と学はファミレスに集まった。
修学旅行に行っている誠司が柄の悪い男に女性が絡まれていたから助けたら、その馬鹿はSHを名乗ったそうだ。
誠司に向かって「SHも知らない田舎者か?」と聞いたらしい。
もちろん水奈は「殺しとけ」と指示したそうだ。
その話は良いんだけど気になる事もある。
彼等は「SH東京支部」と名乗ったそうだ。
支部って事は本部があるのだろう。
だけどその本部が僕達じゃない事は確かだった。
じゃあ、その似非SHのリーダーはどこにいる?
馬鹿が勝手な事やっていると放っておけばいい。
しかしどのくらいの規模でやっているのか知っておく必要がある。
その馬鹿が誠司もSHの人間だという事を知らなかったようだからよかったけど、誠司を知っていたら問題になる。
今後も似非SHが暴れ出したら僕達まで被害が加わるのは目に見えていた。
それでどうしようかと集まって相談していた。
「こっちは仕事と育児でそれどころじゃないんだけどな」
学はそう言う。
天音もその馬鹿をセメントにしてやればいいんだろ?というものの標的が分からない。
茜達に調べてもらうしかないか。
そう判断すると早速翼が茜にチャットを送信していた。
返事が早かった。
前からサイトで派手にやっていたらしい。
しかし肝心のリーダーが出てこない。
それを調べて僕に報せようと思ってたらしい。
「どのくらいの規模なの?」
「本部は多分関東で間違いないみたい」
だって支部が全部関東に集中しているから。
全部支部を語っているのはカモフラージュかか何かだろう。
奴らだって馬鹿じゃない。
僕達がそんなのを見つけたら潰しにかかる事くらい予想しているから本体を隠しているのだろう。
喜一に電話で聞いてみた。
「ああ、聞いてるけどFGは地元だけで手一杯だからな」
誠心会が助力してるけど余り調子に乗ったら僕達の餌になるだけど慎重らしい。
全国規模になったら原川組を使えば良い。
FGは地元を掌握すればいい。
まあ、僕達がいるから手こずっているらしいけど。
「空、これは仮説なんだけど……」
翼が話した。
もしFGの規模を拡大してくると困る存在。
FGを抑える存在はSHだけ。
だからSHの名を騙った。
自分たちのいる、恐らく関東エリアの誰かの仕業じゃないのか。
「翼の言う事は当たっていると思う」
だから関東エリアだけに拘ってるんだろうし。
だから僕は悩んでいた。
仮にここで関東エリアのSHを潰したところでFGが拡大する口実になるんじゃないか?
だいたい誰の仕業だ。
それが分かるまでは手が出せない。
「じゃあ、何もしないっていうのか!?」
天音が言う。
「天音、関東だって広いんだ。いちいち出張って殴り飛ばすのも面倒だろ?」
「だったら恵美さんに爆撃機を借りて火の海に変えてやればいい」
「それは無理だ」
「なんでだよ?」
天音が言うと僕は天音の隣にいる結莉と茉莉を指差した。
地元や九州圏内ならそれでもいいけど場所が悪すぎる。
「それなら大丈夫です。もみ消すくらいは出来るはず」
「そういう問題じゃないんだ」
大地が言うけど僕は首を振った。
関東を攻めるという事は絶対に東京を潰すことになる。
東京を爆撃なんてしたら大惨事が待っている。
日本の首都だ。
ニュースなんかでも問題視されているほど東京には様々な物が集中している。
そんなところを攻撃したら日本がマヒする。
物流やらインフラ面で大打撃を受ける。
そしてそれすら些細な問題だった。
当然テレビなんかが放映できなくなる。
ネットだって怪しい。
そんな事になって怒り出すのは結だ。
関東エリアだけの被害じゃ収まらなくなる。
だから潰すならしっかり標的を見定めないとダメだ。
「で、空はどうするつもりだ?」
学が聞いた。
「どうもしないよ」
「それだと誠司達に迷惑かかるんじゃないか?」
水奈が言う。
何を今さら言ってるんだろう。
「その誠司が暴れても無理矢理有耶無耶にしてもらってるじゃないか?」
冬吾達が将来を棒にする様な情報は全部恵美さんが潰すだろう。
茜達だっているからネット上も問題ない。
あまりにも鬱陶しい真似をしたら相応の対処をする。
たかが不良少年が暴れてるくらいどうでもいい。
関係ない集団なんだから。
皆が納得すると家に帰る。
結と比呂はもう寝ていた。
僕と美希も寝室に入った。
「あの、旦那様」
「どうしたの?」
「……私にだって旦那様の考えそうなことくらい分かります」
気づかれたか。
「何か気になる事があるんでしょ?」
「まあね」
SHの名前を悪用しているという事は当然SHの名前を知っている人間。
それで東京支部となったら大体わかる。
SH東大組を名乗った馬鹿なやつら。
それならきっと法律をうまく利用して狡猾に拡大していくだろうけどどうもそうではなさそうだ。
だとするとそれ以外の人間。
「……リベリオン?」
美希も気づいたらしい。
僕も同じ事を考えていた。
だけどその目的が分からない。
なぜ関東なのかすら分からないのだから。
「私の考え聞いてもらえますか?」
美希は何か思いついたようだ。
聞いてみる事にした。
「彼等は渡辺班やSHを敵視しているんでしょ?」
だけど力づくで潰すことが難しい。
ならどうする?
美希の考えはシンプルだった。
悪評を垂れ流せばいい。
今はちょっとした悪事でも楠木知事の弱点になる。
どうせなら派手に垂れ流したい。
なら東京じゃないか?
あらゆる情報の発信源が東京なのだから。
美希の話を聞いているうちにリベリオンの仕業で間違いない気がしてきた。
目的は若干違うけど。
「リベリオンはSHや渡辺班に恨みを持つ人間。……その仲間を増やす為の布石」
FGとリベリオンの違い。
それは目的の有無。
SHの名を騙り悪事を繰り返してSHに恨みを持つ人間を増やす。
関東である程度増えたら後は勝手に拡散していく。
それは多分4大企業にも影響が出るはず。
そういうことか。
美希は天音に連絡している。
恵美さん達に報せる必要があるから。
しかし肝心の対抗策を見いだせずにいた。
だってこっちが先に手を出したらそれを利用されるだけ。
今までは同じようにはいかないようだった。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる