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Bad Day
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(1)
子供たち寝かしつけた空達が集まっていた。
「おつかれさん」
「本当に疲れたよ……」
翼は苦労しているようだ。
天音はまだ機嫌が悪いらしい。
「普通嫁を庇うのが夫じゃないのか!」
「それはそうだけど、いい加減二人とも何とかしないと大事だよ?」
「それはわかってるけど……」
彼氏が出来たら変わるかもしれない。
その意見を真っ向から否定しているのが茉莉だ。
恵美さんと愛莉とカンナが水奈と天音を叱っていた。
しかし妙だな。
僕は善明の顔を見る。
「菫はどうしてああなったの?」
「……確かに妙ね。翼がああいうのを教えたとは聞いてないし」
「まさか善明……あなた」
晶さんが善明を睨みつける。
必死に首を振って否定する善明。
「娘に殺人術なんて教えないよ。そんなことしたら間違いなく僕が実験台だ」
まあ、善明自身も生で体験したらしいし、息子ならともかく娘にそんな事教えるわけがない。
「美希、菫が家にいる時は何をしているの?」
「つかれたってすぐ寝るんです」
まあ、翼たちの話を聞いてたら4歳の子供ならそうなるのも無理はない。
「うーん、やっぱ相手がいないからかな?」
「でも陽葵がいるじゃないか」
「陽葵も寝ちゃうのよ」
天音と翼が相談してる。
どういうことだ?
愛莉がその理由を知っていた。
「結莉と茉莉は家に帰ると2人で喧嘩を始めるの」
理由はどっちが強いかはっきりしようぜ。
大地も笑うしかないよな。
笑えばいいよ。
石原君も笑っているから。
「水奈もそうなの?」
「うん、退屈だからって喧嘩始める」
「止めようとしたのか?」
カンナが聞いていた。
「いや、まだ家を破壊するほどの力はないからいいかなって」
「このバカ娘!」
カンナが怒鳴りつけるのを愛莉が宥めていた。
「冬夜だったらどうする?」
「わからない」
「……お前でも無理か?」
誠が聞いてきた。
「翼と天音はそこまでなかったから」
「やっぱり私達が手を貸した方がいいのでしょうか?」
愛莉が聞くと首を振った。
「じゃあ、あのまま放っておけと言うの?」
恵美さんが心配している。
結構やばそうだな。
「あの二人は厄介なんだ」
「何が?」
恵美さんが聞くと説明した。
普通はあのくらいの年頃で人を殺す力はないけどなぜか持っている。
そして殺人まではまずいと思ってるから手加減をしている。
暴言が酷いのはゲームやアニメの影響だろう。
FPSだけじゃなくて戦闘機のゲームもやってるらしいから。
僕が言うと天音が頭を抱える。
「そう言うのって思春期になったら変わったりしないのか?」
誠が言う。
「それも考えたけど多分変わらないと思う」
「どうして?」
「水奈と天音はどうだった?」
「そうか……」
誠も察したようだ。
「でもさすがにあれがエスカレートしたらもっと厄介だぞ」
渡辺君もそう言った。
どこまでエスカレートするのかは分からない。
すでに小学生の天音達以上に暴れてるから。
「やっぱりゲーム止めさせましょうか?」
大地が言う。
「多分もう遅いよ。それに……多分ゲームとかが原因じゃない」
「どういうことですか?」
愛莉が聞いてきたから翼を指した。
翼が不思議そうにしている。
「翼の家はゲームはしてないだろ?なのに菫がああなった」
「そう言われたらそうですね」
「それに結莉だって冬夜が一緒だとよほど挑発されないと暴れない」
菫が一番不思議なんだ。
どうしてああなった?
「あ、あの一つだけ心あたりがあるんですけど」
善明が言った。
「どうしたの?」
「実は翼が妊娠中や翼が生まれて間もないころの話なんですけど」
色々と酷い物を見てきたらしい。
つまらないとさっさと寝る秋久と対称的に喜んでいる菫と陽葵。
「善明や、それは小さな子に見せていい物じゃないだろ?」
「それが、翼がそういうの好きみたいで。やんわりと止めてはいたんですけど……」
「あれそんなにまずかったのかな?」
普通のお母さんなら見せないと思うよ。
「つまり翼が原因だと善明は言いたいの?」
「そ、そうじゃなくて見てる番組がまずかったのかなって」
「同じ事でしょ!あなた嫁に責任押し付けるってそんな情けない根性まだ持ってたわけ?」
「あ、晶ちゃん落ち着いて。今は責任の話じゃないよ。原因を突き止めないとあの子たちの将来が大変だ」
必死に宥める酒井君。
僕も手を貸そう。
「晶さん落ち着いて。多分テレビのせいじゃない。もしそうだったらもっと大惨事を起こしてる」
それだけの力を持っている孫なんだから。
それにそれなら天音だって水奈だって同じことやってる。
祈だってそうだったんだろ?
なのにあの2人の暴れっぷりが目立つ。
……そうか、そういうことか。
「……なるほどね」
「冬夜さん何かあったのですか?」
愛莉が聞いてきた。
「ちょっと片桐君また自分だけ納得したってのはずるいんじゃないの?ちゃんと説明して」
恵美さんも言う。
「難しく考えすぎたみたいだ」
「え?」
皆が僕を見ている。
そうだな……
まず一番わかりやすいのは結莉だろうな。
「結莉は芳樹の前ではめったに暴れない。他がちょっかい出さない限り暴れない。そうだね?」
「うん、芳樹がいないと結莉が茉莉と暴れ出すんだ」
「それだけだろ?」
「……あっ!」
「……そう言うことか」
翼と空は気づいたらしい。
「どういうことだよ翼」
天音が翼に聞いた。
すると翼は笑って答えた。
「茉莉は相手が手を出してこない限りは結莉か菫と暴れてる……そういうことだよね?パパ」
翼がそう言うと僕はうなずいた。
大地も気づいたみたいだ。
あの3人が派手に暴れるから気づかなかっただけだ。
「待ってよ。じゃあ菫は?」
恵美さんが聞く。
翼と善明も首をかしげている。
「菫がヒントだよ。家で秋久と暴れてないだろ?」
陽葵もすぐ寝るし、疲れたし暇だから寝る。
翼はそう言っていた。
「ええ……茉莉と仲が悪いだけなんですか?」
「……そう言うことか」
善明も気づいたようだ。
「ちょっと待て、それじゃ優奈と愛菜はどう説明するんだ?」
カンナが聞いてきた。
もっとわかりやすいじゃないか?
「二人で喧嘩してるだけだろ?」
「それが問題なんだろ?」
「そう思ったのがそもそも間違いなんだよ」
「え?」
カンナには難しかったのだろうか?
その証拠に公生達は気づいたみたいだ。
「なるほどね。あの子達にもちゃんとルールがあったわけだ」
公生が言った。
天音はやっと分かったらしい。
「ちょっと、全然分からない。結論を言って!」
「そうですよ。そうやってじらすのは冬夜さんの悪い癖です」
恵美さんと愛莉が言う。
一番見てきたはずだから分かると思ったんだけど。
「じゃあ、結論から言うよ。放っておいていい」
「なんでそうなるの!?」
そう言うと思ったよ。
「菫は茉莉がいないと寝てるんだろ?」
「そうよ。相手がいないから」
「幼稚園では茉莉と喧嘩してるのを邪魔する奴がいない限り茉莉以外には手を出さない、そうだね?翼」
「ええ……それは問題じゃないんですか?」
「翼や、よく考えてごらん。やってることが過激すぎて気づかなかったけど、すごく重要な事をあの子たちは守ってるんだ」
善明が翼に説明している。
すると翼も分かったみたいだ。
そう、あの子たちはあの子たちの中だけで遊んでる。
茉莉と菫が暴れて結と茉奈は仲良く過ごして秋久や朔たちは結に手を出す馬鹿が現れないように見張っている。
単純に言うとそんな日常を幼稚園で過ごしているだけ。
茉莉と菫は喧嘩をするけど派手に怪我を負ったことはない。
派手に怪我をするのはあの子たちにちょっかいを出してきたやつらだけだ。
菫と陽葵は秋久の強さを理解している。
秋久が隠していても2人は薄々感じ取っている。
もちろん秋久が2人に手を出すことはない。
だけど菫達に手を出した奴には制裁を加える。
もっとわかりやすく言うと結を中心としたグループに手を出した連中は片っ端から痛めつける。
二度と馬鹿な真似をしないように。
周りに「俺たちに手を出すな」と言わんばかりに派手に痛めつける。
それも結の手を煩わせる前に。
そんなグループ心あたりないかい?
「それって……」
カンナは空を見ている。
そう、SHがそうだ。
水奈達は桜子を困らせたりしていたけどグループ内でもめたりはしてないはずだ。
それに比べたら決して自分たちからほかの連中に手を出すことはない。
SHの方が狂暴に見えてこないか?
問題視するとしたら言葉遣いだろうけどそれも多分大丈夫だろ?
その根拠は結莉。
結莉は芳樹の前では乱暴な言葉は使わないだろ?
もう結論は出たはず。
あの子たちはすでに自分たちのグループを作り出している。
そのグループに手を出さない限りは仕掛けたりはしない。
自分たちより強い奴なんていない。
そう理解しているから。
弱い者いじめはするな。
それを正しく理解しているだけ。
見た目酷い喧嘩だけどただのお遊びのつもりでやってるんだろう。
結にいたっては茉莉達が暴れてるだけなら干渉しない。
自分より強い奴なんてこの世界に存在しないと自覚している。
精々空くらいだろう。
だから手を出さない。
「弱い者いじめはださいし、かっこ悪いからしたらダメ」
空がしっかり教えたんだろう。
菫達も同じだ。
怒らせない限り絶対に手を出さない。
何が正しくて、何が間違っているかちゃんと区別しているよ。
だから心配することはない。
愛莉もいつも言ってるじゃないか。
「子供を最後まで信じてあげなさい。親が子供を信じてあげなくて誰があの子たちの味方になるの?」
だから今は様子を見ていればいい。
あの子たちが間違った道を選べばただせばいい。
それだけは絶対に見逃したらいけない。
逆を言うとそれさえ見逃さなかったら少々のやんちゃは許してやればいい。
あの子たちの結婚式の時に暴露して笑ってやればいいよ。
「冬夜さんは孫まで意地悪するおつもりですか?」
愛莉はそう言って笑った。
「でも菫はどうしてああなったんですか?」
「分からない。でも大事なのはそこじゃない。これからどうなっていくか」
秋久が制御するかもしれない。
でも聞いた感じだと菫も陽葵も分かってる。
善明に似て大人しいように見えて厄介な力を持っている弟だと2人は気づいてる。
少なくとも悪戯に怒らせていい弟じゃないと理解している。
そんなに心配する必要ないよ。
「確かにパパは天音がいたずらしてもめったに怒らなかったね」
翼が言う。
「その分私は疲れました。天音も同じ思いをするんでしょうね」
「だから、悪かったって言ってるだろ」
天音が言うとみんな笑っている。
かなり遅い時間になったしもう寝ようか?
そう言って火の始末をすると皆テントに入った。
(2)
「おや、水奈じゃないか?」
朝僕たちはいつものように話していると水奈と学がやってきた。
子供はまだ寝ているそうだ。
「どうしたの?」
愛莉さんが聞いている。
「昨夜はそんなに飲んでないからなんか早く起きてしまって」
なるほどね。
昨夜飲んで騒いでる人間と言ったら遊とか天くらいだ。
茉莉達の話でそれどころじゃなかったからね。
適当に腰掛けるように言うと2人にコーヒーをあげた。
「子供を育てるって大変なんですね」
水奈が神妙な顔つきをして言っている。
まあ、大変だね。
育て方を間違えたら大惨事になる子供ばかりを作り出した。
しかし片桐君は言った。
「基本的には親の行動をちゃんと見てる、いじめとかそういう類の事は一切してない」
だから心配することはない。
言葉遣いは場所を弁えるようになるよ。
だって天音や結莉がそうなんだから。
たしかに晶ちゃんに向かって「ガッデム」と言ってた頃が懐かしく思えるよ。
「そうなんですね……」
いつもの元気がない水奈。
何かあったのだろうか?
学が水奈を見ながら言った。
「今頃になって育児の難しさを知ったみたいです。水奈に子育てが出来るのか不安になってるみたいで……」
水奈でもそんな事を考えることがあるんだな。
「片桐君や、何かアドバイスしてあげたらどうだい?」
「そうだね」
僕が言うと片桐君は水奈を見ていった。
「そんな風に悩むのはまだ10年早い!」
難易度で言うならなまだノーマルだ。
これから先優奈たちが成長して色々制限が解放されたら、もっと難しくなる。
ただ食事とかの世話をしてるだけじゃいけなくなる。
間違った行動をしないように常に気を付けていなくちゃいけなくなる。
それは子供の行動を束縛しろって意味じゃない。
子供が正しい行動を判断できるようにしつけていかなければならない。
なんでも親に頼るような子供にはしたくないだろ?
10年後には反抗期なんかが来る。
その時に本当の厳しさを味わうことになる。
昨夜も言ったけど今の子供たちの行動に問題はない。
問題は大きくなって自分でいろいろ情報を仕入れるようになってからだ。
妙なことに興味を示さないようにしなければならない。
それさえ気を付ければ後は心配することはないよ。
片桐君はそう水奈に説明していた。
「難しいですね。……自信ありません」
「水奈一人で抱え込む問題じゃないよ」
片桐君はそう言って学を見る。
「水奈には学がいるじゃないか。悩んだら学に相談すればいい」
その為に学がいるのだから。
今はまだ大丈夫。
子供を信じてやればいい。
子育てに必要不可欠な要素だよ、それは。
片桐君がそう言うと水奈は悩んでいた。
「カンナだって水奈にそうしてきたじゃないか」
片桐君はそう言って笑う。
子供たちへの愛情。
それさえあれば滅多な事件でも起きない限りまっすぐ育つよ。
「でも私はこんな風になってしまったし……」
「お前は私が水奈を育てるのを失敗したといいたいのか?」
いつの間にか来ていた神奈さんが水奈の頭を小突く。
「美嘉もいつも言ってるだろ?私が出来たんだから娘にできないはずがない。私もそう思う」
「……わかった。ありがとうございます」
「頑張ってね」
「なんか朝からしけた話してつまんねーぞ、水奈」
天音には退屈だったようだ。
最初は3人で集まっていた朝も最近は皆起きてくるようになった。
それだけ子供たちが大きく成長してやることがなくなったということだ。
いい加減隠居生活をと思ったけど孫がそれを許さない。
皆が起きてくると女性陣は朝食の準備をしている。
その間に聞いておくことにしよう……。
「片桐君や、少し気になる問題があるんだけど……」
「分かってる、それよりまずはこの後の事を考えよう」
片桐君はそう言って笑う。
子供たちの試練がある。
あのテーマパークだ。
娘を持った父親にとって最大の試練だろう。
彼女のような扱いでは絶対にダメだ。
どんな風に困ってるか拝見するとしよう。
「大丈夫かな、結莉や陽葵はともかく茉莉や菫は絶対暴れ出すぞ」
天音が悩んでいると愛莉さんが言った。
「言ったはずですよ。大変なのはこれからだと」
こんなところで躓いてる時間はない。
子供は想像以上のスピードで成長していく。
もたもたしてる暇はない。
そんな一日が始まる。
子供たち寝かしつけた空達が集まっていた。
「おつかれさん」
「本当に疲れたよ……」
翼は苦労しているようだ。
天音はまだ機嫌が悪いらしい。
「普通嫁を庇うのが夫じゃないのか!」
「それはそうだけど、いい加減二人とも何とかしないと大事だよ?」
「それはわかってるけど……」
彼氏が出来たら変わるかもしれない。
その意見を真っ向から否定しているのが茉莉だ。
恵美さんと愛莉とカンナが水奈と天音を叱っていた。
しかし妙だな。
僕は善明の顔を見る。
「菫はどうしてああなったの?」
「……確かに妙ね。翼がああいうのを教えたとは聞いてないし」
「まさか善明……あなた」
晶さんが善明を睨みつける。
必死に首を振って否定する善明。
「娘に殺人術なんて教えないよ。そんなことしたら間違いなく僕が実験台だ」
まあ、善明自身も生で体験したらしいし、息子ならともかく娘にそんな事教えるわけがない。
「美希、菫が家にいる時は何をしているの?」
「つかれたってすぐ寝るんです」
まあ、翼たちの話を聞いてたら4歳の子供ならそうなるのも無理はない。
「うーん、やっぱ相手がいないからかな?」
「でも陽葵がいるじゃないか」
「陽葵も寝ちゃうのよ」
天音と翼が相談してる。
どういうことだ?
愛莉がその理由を知っていた。
「結莉と茉莉は家に帰ると2人で喧嘩を始めるの」
理由はどっちが強いかはっきりしようぜ。
大地も笑うしかないよな。
笑えばいいよ。
石原君も笑っているから。
「水奈もそうなの?」
「うん、退屈だからって喧嘩始める」
「止めようとしたのか?」
カンナが聞いていた。
「いや、まだ家を破壊するほどの力はないからいいかなって」
「このバカ娘!」
カンナが怒鳴りつけるのを愛莉が宥めていた。
「冬夜だったらどうする?」
「わからない」
「……お前でも無理か?」
誠が聞いてきた。
「翼と天音はそこまでなかったから」
「やっぱり私達が手を貸した方がいいのでしょうか?」
愛莉が聞くと首を振った。
「じゃあ、あのまま放っておけと言うの?」
恵美さんが心配している。
結構やばそうだな。
「あの二人は厄介なんだ」
「何が?」
恵美さんが聞くと説明した。
普通はあのくらいの年頃で人を殺す力はないけどなぜか持っている。
そして殺人まではまずいと思ってるから手加減をしている。
暴言が酷いのはゲームやアニメの影響だろう。
FPSだけじゃなくて戦闘機のゲームもやってるらしいから。
僕が言うと天音が頭を抱える。
「そう言うのって思春期になったら変わったりしないのか?」
誠が言う。
「それも考えたけど多分変わらないと思う」
「どうして?」
「水奈と天音はどうだった?」
「そうか……」
誠も察したようだ。
「でもさすがにあれがエスカレートしたらもっと厄介だぞ」
渡辺君もそう言った。
どこまでエスカレートするのかは分からない。
すでに小学生の天音達以上に暴れてるから。
「やっぱりゲーム止めさせましょうか?」
大地が言う。
「多分もう遅いよ。それに……多分ゲームとかが原因じゃない」
「どういうことですか?」
愛莉が聞いてきたから翼を指した。
翼が不思議そうにしている。
「翼の家はゲームはしてないだろ?なのに菫がああなった」
「そう言われたらそうですね」
「それに結莉だって冬夜が一緒だとよほど挑発されないと暴れない」
菫が一番不思議なんだ。
どうしてああなった?
「あ、あの一つだけ心あたりがあるんですけど」
善明が言った。
「どうしたの?」
「実は翼が妊娠中や翼が生まれて間もないころの話なんですけど」
色々と酷い物を見てきたらしい。
つまらないとさっさと寝る秋久と対称的に喜んでいる菫と陽葵。
「善明や、それは小さな子に見せていい物じゃないだろ?」
「それが、翼がそういうの好きみたいで。やんわりと止めてはいたんですけど……」
「あれそんなにまずかったのかな?」
普通のお母さんなら見せないと思うよ。
「つまり翼が原因だと善明は言いたいの?」
「そ、そうじゃなくて見てる番組がまずかったのかなって」
「同じ事でしょ!あなた嫁に責任押し付けるってそんな情けない根性まだ持ってたわけ?」
「あ、晶ちゃん落ち着いて。今は責任の話じゃないよ。原因を突き止めないとあの子たちの将来が大変だ」
必死に宥める酒井君。
僕も手を貸そう。
「晶さん落ち着いて。多分テレビのせいじゃない。もしそうだったらもっと大惨事を起こしてる」
それだけの力を持っている孫なんだから。
それにそれなら天音だって水奈だって同じことやってる。
祈だってそうだったんだろ?
なのにあの2人の暴れっぷりが目立つ。
……そうか、そういうことか。
「……なるほどね」
「冬夜さん何かあったのですか?」
愛莉が聞いてきた。
「ちょっと片桐君また自分だけ納得したってのはずるいんじゃないの?ちゃんと説明して」
恵美さんも言う。
「難しく考えすぎたみたいだ」
「え?」
皆が僕を見ている。
そうだな……
まず一番わかりやすいのは結莉だろうな。
「結莉は芳樹の前ではめったに暴れない。他がちょっかい出さない限り暴れない。そうだね?」
「うん、芳樹がいないと結莉が茉莉と暴れ出すんだ」
「それだけだろ?」
「……あっ!」
「……そう言うことか」
翼と空は気づいたらしい。
「どういうことだよ翼」
天音が翼に聞いた。
すると翼は笑って答えた。
「茉莉は相手が手を出してこない限りは結莉か菫と暴れてる……そういうことだよね?パパ」
翼がそう言うと僕はうなずいた。
大地も気づいたみたいだ。
あの3人が派手に暴れるから気づかなかっただけだ。
「待ってよ。じゃあ菫は?」
恵美さんが聞く。
翼と善明も首をかしげている。
「菫がヒントだよ。家で秋久と暴れてないだろ?」
陽葵もすぐ寝るし、疲れたし暇だから寝る。
翼はそう言っていた。
「ええ……茉莉と仲が悪いだけなんですか?」
「……そう言うことか」
善明も気づいたようだ。
「ちょっと待て、それじゃ優奈と愛菜はどう説明するんだ?」
カンナが聞いてきた。
もっとわかりやすいじゃないか?
「二人で喧嘩してるだけだろ?」
「それが問題なんだろ?」
「そう思ったのがそもそも間違いなんだよ」
「え?」
カンナには難しかったのだろうか?
その証拠に公生達は気づいたみたいだ。
「なるほどね。あの子達にもちゃんとルールがあったわけだ」
公生が言った。
天音はやっと分かったらしい。
「ちょっと、全然分からない。結論を言って!」
「そうですよ。そうやってじらすのは冬夜さんの悪い癖です」
恵美さんと愛莉が言う。
一番見てきたはずだから分かると思ったんだけど。
「じゃあ、結論から言うよ。放っておいていい」
「なんでそうなるの!?」
そう言うと思ったよ。
「菫は茉莉がいないと寝てるんだろ?」
「そうよ。相手がいないから」
「幼稚園では茉莉と喧嘩してるのを邪魔する奴がいない限り茉莉以外には手を出さない、そうだね?翼」
「ええ……それは問題じゃないんですか?」
「翼や、よく考えてごらん。やってることが過激すぎて気づかなかったけど、すごく重要な事をあの子たちは守ってるんだ」
善明が翼に説明している。
すると翼も分かったみたいだ。
そう、あの子たちはあの子たちの中だけで遊んでる。
茉莉と菫が暴れて結と茉奈は仲良く過ごして秋久や朔たちは結に手を出す馬鹿が現れないように見張っている。
単純に言うとそんな日常を幼稚園で過ごしているだけ。
茉莉と菫は喧嘩をするけど派手に怪我を負ったことはない。
派手に怪我をするのはあの子たちにちょっかいを出してきたやつらだけだ。
菫と陽葵は秋久の強さを理解している。
秋久が隠していても2人は薄々感じ取っている。
もちろん秋久が2人に手を出すことはない。
だけど菫達に手を出した奴には制裁を加える。
もっとわかりやすく言うと結を中心としたグループに手を出した連中は片っ端から痛めつける。
二度と馬鹿な真似をしないように。
周りに「俺たちに手を出すな」と言わんばかりに派手に痛めつける。
それも結の手を煩わせる前に。
そんなグループ心あたりないかい?
「それって……」
カンナは空を見ている。
そう、SHがそうだ。
水奈達は桜子を困らせたりしていたけどグループ内でもめたりはしてないはずだ。
それに比べたら決して自分たちからほかの連中に手を出すことはない。
SHの方が狂暴に見えてこないか?
問題視するとしたら言葉遣いだろうけどそれも多分大丈夫だろ?
その根拠は結莉。
結莉は芳樹の前では乱暴な言葉は使わないだろ?
もう結論は出たはず。
あの子たちはすでに自分たちのグループを作り出している。
そのグループに手を出さない限りは仕掛けたりはしない。
自分たちより強い奴なんていない。
そう理解しているから。
弱い者いじめはするな。
それを正しく理解しているだけ。
見た目酷い喧嘩だけどただのお遊びのつもりでやってるんだろう。
結にいたっては茉莉達が暴れてるだけなら干渉しない。
自分より強い奴なんてこの世界に存在しないと自覚している。
精々空くらいだろう。
だから手を出さない。
「弱い者いじめはださいし、かっこ悪いからしたらダメ」
空がしっかり教えたんだろう。
菫達も同じだ。
怒らせない限り絶対に手を出さない。
何が正しくて、何が間違っているかちゃんと区別しているよ。
だから心配することはない。
愛莉もいつも言ってるじゃないか。
「子供を最後まで信じてあげなさい。親が子供を信じてあげなくて誰があの子たちの味方になるの?」
だから今は様子を見ていればいい。
あの子たちが間違った道を選べばただせばいい。
それだけは絶対に見逃したらいけない。
逆を言うとそれさえ見逃さなかったら少々のやんちゃは許してやればいい。
あの子たちの結婚式の時に暴露して笑ってやればいいよ。
「冬夜さんは孫まで意地悪するおつもりですか?」
愛莉はそう言って笑った。
「でも菫はどうしてああなったんですか?」
「分からない。でも大事なのはそこじゃない。これからどうなっていくか」
秋久が制御するかもしれない。
でも聞いた感じだと菫も陽葵も分かってる。
善明に似て大人しいように見えて厄介な力を持っている弟だと2人は気づいてる。
少なくとも悪戯に怒らせていい弟じゃないと理解している。
そんなに心配する必要ないよ。
「確かにパパは天音がいたずらしてもめったに怒らなかったね」
翼が言う。
「その分私は疲れました。天音も同じ思いをするんでしょうね」
「だから、悪かったって言ってるだろ」
天音が言うとみんな笑っている。
かなり遅い時間になったしもう寝ようか?
そう言って火の始末をすると皆テントに入った。
(2)
「おや、水奈じゃないか?」
朝僕たちはいつものように話していると水奈と学がやってきた。
子供はまだ寝ているそうだ。
「どうしたの?」
愛莉さんが聞いている。
「昨夜はそんなに飲んでないからなんか早く起きてしまって」
なるほどね。
昨夜飲んで騒いでる人間と言ったら遊とか天くらいだ。
茉莉達の話でそれどころじゃなかったからね。
適当に腰掛けるように言うと2人にコーヒーをあげた。
「子供を育てるって大変なんですね」
水奈が神妙な顔つきをして言っている。
まあ、大変だね。
育て方を間違えたら大惨事になる子供ばかりを作り出した。
しかし片桐君は言った。
「基本的には親の行動をちゃんと見てる、いじめとかそういう類の事は一切してない」
だから心配することはない。
言葉遣いは場所を弁えるようになるよ。
だって天音や結莉がそうなんだから。
たしかに晶ちゃんに向かって「ガッデム」と言ってた頃が懐かしく思えるよ。
「そうなんですね……」
いつもの元気がない水奈。
何かあったのだろうか?
学が水奈を見ながら言った。
「今頃になって育児の難しさを知ったみたいです。水奈に子育てが出来るのか不安になってるみたいで……」
水奈でもそんな事を考えることがあるんだな。
「片桐君や、何かアドバイスしてあげたらどうだい?」
「そうだね」
僕が言うと片桐君は水奈を見ていった。
「そんな風に悩むのはまだ10年早い!」
難易度で言うならなまだノーマルだ。
これから先優奈たちが成長して色々制限が解放されたら、もっと難しくなる。
ただ食事とかの世話をしてるだけじゃいけなくなる。
間違った行動をしないように常に気を付けていなくちゃいけなくなる。
それは子供の行動を束縛しろって意味じゃない。
子供が正しい行動を判断できるようにしつけていかなければならない。
なんでも親に頼るような子供にはしたくないだろ?
10年後には反抗期なんかが来る。
その時に本当の厳しさを味わうことになる。
昨夜も言ったけど今の子供たちの行動に問題はない。
問題は大きくなって自分でいろいろ情報を仕入れるようになってからだ。
妙なことに興味を示さないようにしなければならない。
それさえ気を付ければ後は心配することはないよ。
片桐君はそう水奈に説明していた。
「難しいですね。……自信ありません」
「水奈一人で抱え込む問題じゃないよ」
片桐君はそう言って学を見る。
「水奈には学がいるじゃないか。悩んだら学に相談すればいい」
その為に学がいるのだから。
今はまだ大丈夫。
子供を信じてやればいい。
子育てに必要不可欠な要素だよ、それは。
片桐君がそう言うと水奈は悩んでいた。
「カンナだって水奈にそうしてきたじゃないか」
片桐君はそう言って笑う。
子供たちへの愛情。
それさえあれば滅多な事件でも起きない限りまっすぐ育つよ。
「でも私はこんな風になってしまったし……」
「お前は私が水奈を育てるのを失敗したといいたいのか?」
いつの間にか来ていた神奈さんが水奈の頭を小突く。
「美嘉もいつも言ってるだろ?私が出来たんだから娘にできないはずがない。私もそう思う」
「……わかった。ありがとうございます」
「頑張ってね」
「なんか朝からしけた話してつまんねーぞ、水奈」
天音には退屈だったようだ。
最初は3人で集まっていた朝も最近は皆起きてくるようになった。
それだけ子供たちが大きく成長してやることがなくなったということだ。
いい加減隠居生活をと思ったけど孫がそれを許さない。
皆が起きてくると女性陣は朝食の準備をしている。
その間に聞いておくことにしよう……。
「片桐君や、少し気になる問題があるんだけど……」
「分かってる、それよりまずはこの後の事を考えよう」
片桐君はそう言って笑う。
子供たちの試練がある。
あのテーマパークだ。
娘を持った父親にとって最大の試練だろう。
彼女のような扱いでは絶対にダメだ。
どんな風に困ってるか拝見するとしよう。
「大丈夫かな、結莉や陽葵はともかく茉莉や菫は絶対暴れ出すぞ」
天音が悩んでいると愛莉さんが言った。
「言ったはずですよ。大変なのはこれからだと」
こんなところで躓いてる時間はない。
子供は想像以上のスピードで成長していく。
もたもたしてる暇はない。
そんな一日が始まる。
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