姉妹チート

和希

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PROMISE

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(1)

 薄暗い部屋で俺と瑠衣はベッドの中にいた。

「健斗、どうだった?」

 瑠衣が聞いてきた。

「それ聞くなって瑠衣が言ってなかったか?」
「私に聞かれても困るもん」

 初めて本当の恋人としたのだから比べる物がない。
 ただ幸せな気分だった。

「で、健斗はどう思ったの?」
「い、いや。我ながら情けないなと思ってさ」
「え?」

 俺は初めて生で女性の裸を見た。
 だからどうすればいいか分からなかった。
 動画のようにすればいい?
 肝心なところはモザイクが入っていてわからない。
 でも、瑠衣は色々サービスしてくれた。
 最後まで瑠衣に説明してもらったのだから。

「そう言う意地悪いうんだね」

 え?

「私は言ったはずだよ。初めて恋人に抱かれたって」

 今までの相手はきっとただのロリコンだったと瑠衣は言う。
 確かに色々物足りなかったりもたついていてじらされたりしたけどそれでも嬉しい。
 それは瑠衣が俺の初めての相手だったんだって瑠衣が言う。
 初めてなんだから仕方ない。
 これから覚えていけばいい。
 きっと瑠衣の希望を叶えてくれると瑠衣は期待しているようだ。
 
「そんなにする機会あるのかな?」
「あれ?健斗は考えてくれなかったの?」
「何を?」
「……健斗大学生は実家を出るんでしょ?」

 私を誘ってくれないの?

「それって俺が瑠衣の体目当てみたいでどうしても気が引けて」
「だからそういう雰囲気くらいわかるようになるよ」
「どうして?」
「健斗は私の事考えてなかったの?」

 瑠衣も実家を出るつもりでいた。
 それなら当然僕が同棲を誘ってくれると思ったらしい。

「それ親が許してくれるのか?」
「今度うちに連れてきなさいって言ってた」

 同居するなら一度くらい顔を見ておきたい。
 俺もその方がちゃんと筋を通せるんじゃないか?

「分かった。明日にでも行こうか?」
「いいの?」
「また今度って先送りにしてたら大学始まってしまう」

 部屋探しだってしないと。
 だけど瑠衣は笑っていた。

「母さんが言ってたんだけど」

 そういうのは江口家では家を建てて準備してるらしい。
 ……ってまじか!?

「そこまではしてないけど大学近くのアパート借りてくれた」

 ちゃんと駐車場も確保してるらしい。
 多額の仕送りがあるからそれで何とかしなさい。
 言われなくても俺がバイトくらいするだろうけどそれはダメだと瑠衣の母さんが言ったそうだ。
 働くのは大学卒業してからでいい。
 俺だって親から仕送りもらう。
 働き始めたら瑠衣は一人になる。
 学生時代くらい2人で楽しみなさい。
 それが江口家のやり方らしい。

「それなら私が誘えばいいでしょ?」
「それだと俺が情けないだけじゃないか」
「そしたら健斗だって気づくはずだよ」

 瑠衣がその気になってるかなんてわかりやすくちゃんと示すから。

「わかった」

 ずいぶん予定が変わってしまったけど、まあいいか。

「じゃ、もう一回しよ?」
「平気なのか?」
「……女性は二度目からが本番なんだよ」

 そりゃ大変だ。
 男は一回するだけでしんどいのに。

「今まで我慢してたんだから、しっかり楽しませてよ」

 そう言って瑠衣と何度も繰り返した。
 翌日瑠衣の家に挨拶に行った。

「初めての彼女はどうだった?」
「公生の馬鹿!そんな事娘の前で聞くことじゃないでしょ」

 瑠衣の父さんは割とおおらかな人だったらしい。

(2)

 僕は空港にいる。
 今日スペインに発つ。
 卒業式の日、皆で打ち上げした。
 そしてみんなで誓った。

「4年後に必ず会おう」

 そう言ってみんなそれぞれの道を行く。

「んじゃ、頑張れよ。俺も後を追うから」

 誠司が言う。
 誠司と出発する日がずれた。

「周りがすごい選手だからって楽しようなって考えるなよ。代表戦の時になまってたら承知しねーからな」
「それは誠司も一緒だろ?」

 酒と女におぼれていたとか絶対許さないからな。

「このバカは毎日連絡するように徹底するから心配するな」

 誠司の母さんがそう言って笑う。

「冬吾に限ってそれはないと思うけど、食べすぎには気をつけなさい」

 生水を飲んではいけない。
 賞味期限を確かめてから食べなさい。

「愛莉さん、冬吾だって子供じゃないんだから」
「冬吾は食に関しては子供並みだから心配なの」
「大丈夫だよ、しっかり成長してる。愛莉も今日が来るのを分かってたんだろ?」

 周りよりも一足早い子供の巣立ち。
 それを寂しく思っているらしい。
 父さんがそれを慰めていたそうだ。

「誠司のような心配はしてないけど、気を抜くんじゃないよ。まじめにしっかり修行してきなさい」

 父さんが言う。
 そして何か思いついたようだ。

「止まるんじゃねぇぞ」

 ぽかっ

「冬夜さんは子供が旅立つ時くらいその癖やめてください」

 母さんが言うとみんな笑っていた。
 一人を除いて。

「瞳子、どうしたの?」

 僕が瞳子に聞くと瞳子は俯いたまあ首を振った。

「ごめん、覚悟はしてたんだけどやっぱりダメみたい」
「何が?」

 僕が聞くと瞳子は僕に抱き着いた。

「どこにも行ってほしくない。寂しい。一緒に居たい」

 なんとなく気づいていた。
 卒業式の日から様子が変だと思ってたし、冬莉も感づいていたから。
 そんな事だろうと予想していた。
 だからこの日の為に用意していた。
 クリスマスプレゼントはネックレスにしておいた意味。
 それを今瞳子の左手の薬指にはめる。
 瞳子は驚いていた。
 瞳子だけじゃなくて誠司達も驚いていた。
 状況がよく把握できない瞳子に優しく語りかける。

「4年間だけ僕に時間をくれませんか?瞳子が大学卒業したら必ずちゃんと伝えるから」
「……それってずるいよ」

 それに4年待つ意味あるの。
 冬吾君がそのつもりなら私が冬吾君についていってもいいのにと瞳子が言う。

「それじゃダメなんだよ」

 父さんが説明してくれた。
 僕はサッカー選手と言う道を自分で選んでその道に進む。
 瞳子だって同じだ。
 結婚するから専業主婦になるなんてしなくてもいい。
 瞳子の最後の学生生活だ。
 泣いても笑っても最後の学生生活だ。
 その先に何があるのかをしっかり見極めて進みなさい。
 楽しむだけ楽しんで終えてもいい。
 でもひょっとしたらやってみたいことが出来るかもしれない。
 夢を諦めないと冬吾が手に入れられない。
 そんなことは絶対にない。
 瞳子の夢が本当に冬吾のお嫁さんになることなら止めない。
 でもその結論を出すのはまだ早い。
 だからその為の4年間。
 父さんもそうだったらしい。
 母さんと家で一緒に過ごして母さんとずっと一緒に生きていける。
 母さんに人生を預けられる。
 そういうことを確かめる時間。
 僕達の気持ちが本当なら今すぐ結婚なんてしなくても自然と月が導いてくれる。
 父さんの言葉に瞳子は納得したらしい。

「分かった。じゃあ、約束はしないよ」

 約束をしないからしっかり私を捕まえていてと瞳子は言う。

「もちろんそうだよ。ただ、心配だったから指輪を準備しておいた」
「……ありがとう。絶対に離さないから」
「分かってる」

 そんな話をしているとアナウンスが流れる。

「じゃあ、行ってきます」
「頑張ってね」

 母さんの言葉を受けて僕は荷物検査のゲートをくぐる。
 何も心配する必要はない。
 後は僕の心ひとつ。
 飛行機に乗ると飛行機は飛び立っていった。

(3)

「いいか!?必ず電話しろ!」
「か、神奈。誠司だって子供じゃないんだから」
「子供じゃないから心配なんだ!」

 冬吾と俺は違う。
 現に今まで遠征したときに大体夜間外出していた。
 だから心配なんだという。
 イタリアだって日本に比べたら治安が悪い。
 それ以上に地元の治安の方が悪いと思うけど。

「馬鹿な真似はするなよ!もう18歳。世間では大人とみなされるんだ」

 母さんはそう言って怒っていたけど、なんとなく気づいていた。
 母さんだって冬吾の母さんと変わらない。
 一人の母親なんだ。
 子供が海外に旅立つのが寂しいんだろう。

「母さん。俺も冬吾達と約束したんだ。4年後に必ず会おうって」
「……体調管理くらいしろよ」

 母さんはそう言ってうつむくと父さんがそっと抱いている。
 母さんの背中は震えていた。

「母さん、今までありがとう。父さんと母さんのお陰で今の俺がいるんだ」

 一度絶望した世界から助けてくれたのは父さんと母さんだ。
 だから胸を張って送りだしてほしい。
 俺も4年後もっと成長して帰ってくるから。

「誠司、女遊びだけは止めとけ」

 水奈がそう言って笑う。

「精々酒飲んで遊ぶくらいだよ」
「それをやめろと言ってるんだこのバカ!」
「気をつけてな。俺が言うのもなんだが……」

 学が告げる。

「男なんだからやると決めたら絶対にやり遂げてみせろ」
「分かってる。学も姉さんを頼む」
「分かってるよ」
「誠司、私から一言いいかな」

 なぜか冬莉と志希も来てくれた。

「なんだ?」
「これはただの勘なんだけど」

 きっといいことがある。神様が誠司に力を与えてくれる。だからどんなことがあってもあきらめてはいけない。

「頑張れ。冬吾の奴はもうレギュラー入り決めたらしいから」

 冬莉がそう言った。

「ああ、冬莉達も頑張れよ。ファンとして見守ってるよ」
「ありがとう」
「じゃあ、そろそろ行くわ」

 そう言って振り返って行こうとした時だった。

「誠司待って!」

 呼び止めたのは冴だった。

「私からもあんたに伝えたいことがある」
「あまり時間ないと思うから手短に頼む」
「分かってる。まず……」

 今までありがとう。
 気づいてないようにしていたけど、気づいてる。
 冴とさとりをそっと見守っていた俺。
 きっと罪滅ぼしのつもりだったんだろう。
 だからさとりと話をした。
 俺がいたから今の私達がある。
 俺と付き合っていた時は最悪だと思ったけど今では思い出として輝いてる。
 あの時間は決して無駄なんかじゃない。

「そう言ってもらえると安心したよ。それじゃあな……」
「まだ終わってない。私達の事はもういい」

 俺がいなくてもきっとうまくやっていける。
 だから今度は俺が幸せになる番だ。
 今の俺ならきっといい恋人が現れる。
 その人を私の時のようにしっかりと守ってやってほしい。
 寂しさに震えないようにいつもそばにいると伝えてあげて。
 俺が幸せになる事が俺への清算だ。

「サッカーでそれどころじゃないと思うけどな」
「冬吾に出来て誠司に出来ないなんて話はない」
「そうなると、楽しみだな」
「なんで?」

 父さんはそれ以上言うなとジェスチャーしていた。
 冬莉も気づいたみたいで険しい表情を言ている。
 母さんと冴は気づいてなかった。

「白人の女性の裸なんて動画でしかみたことなかったからさ」

 どうせならロシアに行くべきだったか?

「誠司はどうしてこういうときにそんな軽口叩くわけ!」

 冴が怒っている。

「それでいいんだよ」
「え?」

 怒っている冴が好きだった。
 だからありがとうなんて俺に似合わないからよせ。
 そうやって「日本から出ていけ!」くらいの勢いで送り出してくれ。

「ロシアがいいなら母さんに頼んでシベリアにでも放り込んであげようか?」

 頼子が言っていた。
 まあ、首都の修復はまだ済んでないらしいしな。

「本当に最後までどうしようもない奴だな」

 母さんが笑っていた。

「誠司、もし本当にイタリアで恋人が出来たら……」

 裸の写真送ってくれと父さんがいう。
 当然母さんに叱られる。
 それでいいんだよ。
 いつものようにしていてくれ。
 それが俺にとって一番安心できるんだから。
 そうこうしているとアナウンスが流れる。
 そろそろ行かないとまずいな。

「じゃあ、行ってくる」
「期待してるからな」

 父さんの言葉を背に俺は旅立つ。
 飛行機に乗り込むと外を眺める。
 いつも当たり前のようにあった地元の風景を名残惜しんでいた。
 飛行機が飛び立つ。
 俺と冬吾の高校生活が終わった。
 俺と冬吾の4年間の挑戦が始まる。
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