姉妹チート

和希

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LOVEPHANTOM

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(1)

「茉莉、お前歯に青のりついてるぞ!それでも女か!」
「うちはパン食だボケナス!希美は頭だけじゃなくて目まで腐ったのか!?」

 そんな叫び声をあげながら石原茉莉と酒井菫が殴り合いをしている。
 そのそばで「きゃっきゃ」とぽかぽか喧嘩をしている桐谷優奈と愛菜
 少し離れたところで片桐結と桐谷茉奈が楽しそうに話をしている。

「茉奈は秋刀魚食べた?」
「うん」
「茉奈の家は秋刀魚の時何をかける?」
「うーん大根おろしと醤油かな?結の家と変わらないんじゃないの?」
「そうなんだけどさ。僕は醤油だけの方が好きなんだ」

 大根おろしは辛い、だけど醤油をかけると甘くなる。
 もともと塩味がするから醤油すらかける意味が分からない。
 と、なると別に何かをかける必要がないんじゃないか。

「でも美味しいね」
「そうだね」

 そんな様子を眺めながら俺は佳織と一緒にいた。

「昨日何かあった?」

 佳織が俺の様子が変なのを察して聞いてきた。
 
「父さんに気づかれた」
 
 佳織の家の神谷家はリベリオンの中心的存在。
 リベリオンと敵対関係にある四宮家が神谷家の娘と仲良くしてるのが不愉快らしい。
 エリツィンの恋人に続いて黄帝竜も頭を失った。
 エリツィンの恋人ほどではないけど跡目争いでこっちに構ってられないらしい。
 それどころか地元が手を引こうという意見も出ているそうだ。
 俺たちに手を出してもろくなことがないぞ。
 そう言わんばかりに渡辺班が報復に出た。
 色々規制にかかりそうだから詳細はかけないほどの無残な状態で、早朝に府内町の公園のステージで発見された。
 それと同時に彼らのすべての拠点を同時に襲撃を受けた。
 文字通り跡形もなくなったらしい。
 立て続けにやられっぱなしのリベリオン。
 それだけでなくFGも相手にしなければならない。
 母体のジハードだって無敵を誇っていた。
 だから誰も手を出さない。
 しかし島国の一部分を支配するSH達になすすべがない。
 そんな事で無駄に力を使っていたら他の奴らに狙われる。
 世界の覇権。
 誰もが憧れる称号だろう。
 だから神谷家が孤立しようとしていた。
 お前らの問題だからお前らがなんとかしろ。
 それで今神谷家もごたついているらしい。
 しかしそんなリベリオンに押され気味で父さんの機嫌も悪い時に俺と佳織の関係に気づいた。

「お前まで紀子みたいに親をコケにするわけじゃないだろうな?」
 
 四宮家の跡取りがふざけた真似をするならその性根を叩き直してやる。
 そんな警告を受けていた。
 だからしばらくは一緒にいるのはやめた方がいいかもしれない。

「健太がそういうなら、しかたないね」

 少し寂しそうに見えたのは気のせいだろうか?
 俺達と石原達。
 同じ幼稚園児なのにどうしてこうも違うんだ。
 俺が不幸なのはあいつらのせい。
 本当にそうだろうか?
 双子の姉の紀子が片桐家に引き取られて以来そんな疑問を持っていた。
 紀子はSHというありえない選択肢をとって家を勘当された。
 そんな紀子を放っておかないのがSHらしい。
 紀子は酒井家の娘として引き取られた。
 一緒に俺も連れていってくれたらどんなに良かっただろう。
 あとになってそう思った。
 行動したか、しないか。
 たったそれだけでこうも変わるのか。

「じゃあ、今も見張られてるかもしれないから行くね」

 佳織はそう言って離れて行った。
 そうして俺は孤立した。
 不安なんてない。
 俺には馬鹿な手下がいるんだ。
 一人なんかじゃない。
 なのになんでこんなに寂しいんだろう。
 そんな時に馬鹿が現れた。

「おまえ神谷に振られたのか?」

 そう言って笑っているクソガキ共。

「焼死体にされたくなかったらとっと失せろ」

 そう警告する。
 今の俺に近づくな。
 そう警告する。

「やれるものならやってみろよ」

 馬鹿は死なないと治らないか。
 力を使おうとしても使えないことに気づいた。
 ……まさか。
 遅かった。
 俺に近づいてくる秋久がいた。

「あと1年我慢してくれませんか。青空教育なんてまっぴらごめんだ」

 こいつも俺の敵か?
 孤立無援ってやつか。
 いいだろう、俺の生きざまを叩きつけてやる。
 だけど秋久が奴らに言う。

「お願いだから何もなかったことにしてくれないかい?そうしないと僕達皆無事では済まないよ?」

 秋久が見る方向には片桐結がこっちを睨みつけていた。
 他の奴らもそれに気づいたようだ。
 あの二人が動いたら取り返しのつかないことになる。
 だからここは僕ですんでいるうちにやめとけと秋久が言う。
 連中は何も言わずに立ち去った。

「なんで、お前らが俺を助けるんだ?」

 俺は秋久に首を傾げていた。

「何か思い違いをしていないかい?」

 秋久は俺と佳織の間に何があったか知らないけど、深刻に悩んでる俺を冷かすほど暇なら僕達が相手してやる。
 ただそれだけの事。
 たまたま俺が目に映ったからそうなっただけ。

「健太と佳織さんの間がどんな関係なんてSHには関係ない」

 人それぞれ何かしらの問題を抱えて生きているんだろう。
 それを馬鹿にするなら秋久達が相手になってやる。
 ただそれだけの事。

「まあ、難しい問題を抱えてるならいつでも相談に乗るよ」
「……俺はFGの人間だぞ」
「そんなの関係ないそうです」

 FGだから、リベリオンだから、SHだから。
 そんな事をいちいち気にするほど器の小さな王じゃない。
 困っている奴がいたら助けてやれ。
 それが暇つぶしでも一向にかまわない。
 ただし仲間を傷つける奴がいたら一切容赦しない。
 それが結の父さんの空の言葉だそうだ。

「じゃあ、まあ色々大変だと思うけど頑張って」

 そう言って立ち去ろうとする秋久を呼び止めていた。

「どうしたんだい?」
「結に伝えて欲しいことがある」
「自分で直接伝えられないのかい?」
「俺には見張りがいるかもしれないから」

 SHと接触したなんて絶対に父さんが許さない。

「……なるほどね。で、用件は何?」

 俺は秋久を通じて結に頼みごとをしていた。

(2)

「あの子です」
「分かった。天音……」
「ああ、こっちでも確認した。もう始めるぞ?」
「おーけー、場所は大在のファミレスで」
「ああ、30分もあれば行ける」

 私は天音に知らせると車で大在に向かう。
 あそこなら校区外だし大丈夫だろう。

「あの、大丈夫なのかな?」

 紀子が聞いていた。

「天音の兵隊は普通じゃないから大丈夫」

 私はそう答えた。
 ファミレスで待っていると、天音が結莉と茉莉と海翔と健太を連れてきた。

「翼、こいつで間違いないか?」

 天音が聞くと私は紀子に確認した。

「しかしガキの癖にめんどくせぇ事させるな」

 天音が座ると注文を取る。

「好きなだけ食え。この店丸ごと買い取るくらいの金は用意してあるから」

 天音がそう言って笑いながら自分も注文を取っていた。
 しかし健太は食欲がないらしい。
 なんか悩み事でもあるのだろうか?
 そんな事情天音の知ったことじゃない。
 天音は健太に言う。

「いいか!?お前が悩んでるのは単に腹が減ってるからだ!ガキが悩む理由なんてそんくらいだ」

 それ以上に複雑な問題なら大人に任せておけばいいんだ。
 どんなに大人ぶってもお前は紀子以上にガキなんだ。
 悩んだりするのは大人になってからでいい。
 大人に甘えていいのがガキの特権だ。

「その大人が問題なんです」
「やっぱり父さんと何かあったの?」

 紀子が聞くと健太は頷いた。
 FGとリベリオンは完全に敵対関係になっている。
 その中心人物である神谷家と四宮家。
 そんな二人がつるんで遊んでいたから健太の父親が脅した。
 このままだと神谷佳織にも迷惑をかけるかもしれない。
 そう考えて佳織と別々に行動するように言ったらしい。
 それで解決するかと思っていた。
 しかし、そうではなかった。
 友達でも仲間でも何でもない。
 ただ一緒にいただけ。
 SHに敵対する父親と渡辺班を憎んでいる父親。
 そんな両親じゃなかったらきっと佳織と……。
 そう考えると胸が苦しいらしい。
 寂しくてしょうがないらしい。
 また佳織と一緒に遊びたい。
 そんな事ばかりずっと考えているらしい。
 なんだ、そんなに難しいことじゃないじゃないか。

「やっぱり悩むことねえだろ?」

 天音が言った。
 私と同じ考えなんだろう。

「でも、俺は四宮家の長男だし」
「だから言ってるだろ!ガキが小難しい事考えてもしょうがない。やりたい事をやればいいんだよ」

 お前だって茉莉や結莉を見てきてるんだろう。
 ガキはガキらしくわがまま言って大人を困らせていたらいい。
 その後始末をするのは親の仕事だ。
 
「でもその親が問題なんだろ?」

 菫が聞いていた。
 だけど天音は違う。

「自分の子供の意思すら尊重してやらないふざけた親なら、私が教育の仕方ってのを1から教えてやる」

 天音の教育は愛莉が頭を抱えているけどね。
 
「だからお前のやる事なんてそんなに悩むことじゃない。ダメもとで当たって砕けろ!」
「どういう意味ですか?」

 健太が言っていた。

「そこまで思っているのに自分の気持ちに気づかないほど鈍いのかお前は!」

 ハンバーグを食べながら茉莉が言った。

「どういう意味?」

 全く分かってないみたいだ。

「まあ、いいんじゃないか?さっき言ったことを直接佳織に伝えたら?」

 結が言った。
 いいタイミングで美希が佳織を連れてきた。

「遅れてごめん、結構佳織のガード硬くてさ」

 多分十郎も感づいたんだろう。
 いらぬ輩が佳織に近づかないように佳織を護衛していたらしい。
 それを始末するのに時間がかかった。
 尾行でもされたら面倒だから撒くのに時間がかかったらしい。

「で、健太どうしたの?」

 佳織が聞いていた。

「健太から伝えたいことがあるんだって。結莉、コーンスープ取りに行こう?」
「行く~」

 そう言って結達は席を離れる。

「健太、悩むくらいなら言ってすっきりしてしまいなさい。親の事なんて関係ない。あなた達は自分の親から聞いてないの?」

 私達は、適当に男女を見つけてきては無理やり縁を結ぶやっかいな神様。

「つまり俺が思っていることって……」
「それを判断するのは佳織だよ。今は健太が勇気を見せられるか」

 弱い子をいたぶって強がるなんてものは勇気でも何でもない。
 本当に大事なことは自分に正直に生きてズルをせずに悔いを残さない日々を過ごせるか?
 結果なんて誰にも分らない。大事なのは最後に自分を褒めてやれるか?
 たったそれだけの事だ。
 決意した健太は自分の気持ちを佳織に伝えた。
 佳織は静かにそれを最後まで聞いていた。

「私は神谷の娘。父さんは渡辺班を恨んでいる。だから健太と一緒だと思ってた」

 だけど健太と一緒にいるうちに気づく。
 よく考えてみたら当たり前の事だ。
 父親はそうかもしれないけど佳織自身は渡辺班はもちろんFGにさえ何の恨みもない。
 ただ孤立していた時に健太が近づいてきた。
 それ同じ目的の為に組んだ。
 そう思っていた。

「だけど違っていたんだね」

 そんな薄汚れた感情じゃなかった。
 ちゃんと健太にも感情があった。
 それを嬉しいと佳織は言った。
 そんな二人を見て私と天音は納得していた。
 時期を見計らって結達が帰ってくる。
 
「話終わった?」

 結が聞くと健太は浮かない表情をしていた。

「俺と佳織は負けを認めるよ。俺たちは……」
「意味わかんないんだけど?」

 結が言った。
 結の役割は相手が敵か味方か判断すること。
 手を出してくる連中を皆殺しにしてやれ。
 私に言われたことはそれだけだと言う。
 だからその気が無いなら好きにしたらしい。
 その事に一々干渉するほど暇でもないんだ。

「でも俺たちの親は……」
「だからガキは面倒な事考えなくていいって言っただろ!?」

 天音が言った。

「お前らの邪魔をする奴がいるなら茉莉達の餌になるだけだ。別にお前らがSHでなくても関係ない。茉莉達がむかついたら殴り飛ばす。ふざけてるならぶっ殺す。ただそれだけだ」

 その指導が愛莉を悩ませていると、いつになったら天音は気づくのだろう?
 とはいえ、手は打つ必要があるかも。

「翼、どうする?あれなら母さんに頼んで……」

 無理やり私達の誰かの子供にしてしまえばいい。と、美希は言う。
 だけど佳織は遠慮した。
 
「私怨だけで渡辺班に挑んでいる父さん達をジハードは問題視している。父さんたちが孤立した時に私は父さんの側にいてあげたい」

 あんな男でも親には変わりないから。
 佳織はそう言った。

「健太はどうするの?」

 私が聞くと健太も覚悟を決めたようだ。

「もし父さんのやってる事が愚かな間違いなら、俺の手でどうにか止めたい」
 
 最悪でも自分の代で終わりにしたい。
 決意したようだ。

「健太一人じゃない、佳織がきっと支えてくれる。だから自分一人だからと自棄にならないで」
「でもSHが干渉していいんですか?」
「そうね、FGとリベリオンが勝手にやってる分には私達は関与しない」

 空もそう言っていたから。
 ただし……。

「他人の縁を切ろうとする者がいるなら容赦しない」

 健太風にいうなら、それが親から受け継いできたこと。

「ありがとうございます」
「話が終わったら早く食べた方がいい。冷めたらまずくなるんだ」

 結がそう言うと健太たちは食べ始めた。

「美味しい?」

 結が聞いている。

「とても温かいです」
「よかったね」

 結莉も二人を見て笑っていた。
 2人を天音の兵隊の用意した車に別々に乗せると、2人を家に送る。

「結」
「……わかった」

 翌日、2人は仲良く話をしていたそうだ。
 そんな2人を冷かす馬鹿を見逃すほど茉莉達も甘くない。
 
「……どうやらさっそくやらかしたみたいだな」
「まあ、いい加減なれたよ」

 天音が言うと私はそう言って笑った。
 プライドとか名誉とか意地だとかくだらないものは全部捨ててしまえばいい。
 もう二人が愛しているものは幻なんかじゃない。
 確かなものなのだから。
 しかし2人の努力もむなしく事態は悪化していく。
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