姉妹チート

和希

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キズナ

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(1)

「はぁ?」

 私の聞き間違いだろうか?

「赤西冴を攫った。助けて欲しければ片桐空一人で西港に来い」
「お前誰に言ってるんだ?人違いだ。他を当たれ」
 
 そう言って電話を切った。

「あの、親御さんがそんなんだから茉莉達が……」

 いつもの様に美希と翼の3人で幼稚園に呼び出されていた。
 いい加減面倒になってきた。
 かといって育児放棄とみなされたら愛莉がやかましい。
 だから毎日のように茉莉達が通っている日は大体呼び出されていた。
 最近FGが調子に乗ってる。
 原川組が代替わりしたのは聞いているけど、どんな奴なのかは知らない。
 勝手にやらせておけばいい。
 目の前で馬鹿な事始めたら埋めてやれ。
 茉莉達にはそう言っておいた。

「茉莉達を怒らせた奴が悪いんだろ。結まで怒り出すなんて相当な事だぞ」
「天音、電話してて聞いてなかったろ?そうじゃないんだ」

 そういや今年から水奈も仲間入りしていたんだった。
 理由は優奈たちが問題を起こす。
 もう一つ、神奈さんが引き取った佳織も同じように暴れる。
 今回の件は佳織に手を出したゴキブリが茉莉達の目に止まり袋叩きが始まった。
 暇だからと優奈たちも加わる。
 説教が長引いて昼飯の時間が遅れると当然のように結莉が怒り出す。

「二度とこんなことがないようにこの場でバラバラにしてやる!」

 それを止めるために結も巻き込まれる。
 結果私達が呼び出された。
 多分明日「昼飯が遅れた」と茉莉達が復讐を誓うだろう。
 
「んじゃ、そのガキ共連れて来い。茉莉達に馬鹿な真似をしないように私が直々に説教してやる」
「ですから、お母さんそうじゃなくてですね……」
「じゃあ、どうしろってんだ!?言っとくけど茉莉達に非があったとは思えない。手を出した馬鹿が原因だろうが!」

 あんまりふざけたこと言ってるとお前の首飛ばすくらいどうでもいいことだぞ!
 もちろん今ここに結莉達はいない。
 愛莉に連絡して愛莉の家でご飯を食べさせている。
 結莉達の最優先事項は食だ。
 昼飯食えなかったと言って暴れ出したら結でも止められない。
 結も同じように暴れ出すから。
 だから愛莉に任せて説教を受けていた。
 しかし説教を受けているうちに私と水奈もイライラしてきた。

「そのガキ今すぐ連れて来い!」

 そう言って私と水奈が暴れ出す。

「ところで天音。さっきの電話なんだったの?」

 翼は気になっているらしい。

「ああ、赤西冴を誘拐したから空を連れて来いってどうでもいい電話」
「なるほどね」
「あの、私の話を聞いてください」
「さっきからずっと聞いてるだろ?これ以上話しても無駄だといい加減気づけよ」

 何ならそのガキの親をここに連れて来い。
 言っとくが茉莉達には言ってるぞ。

「弱い奴いたぶっても面白くないぞ。だけど向こうが仕掛けてくるなら構うことはない。二度と同じ真似が出来ないようにその身にしっかり叩き込んでやれ」
「結も家ではそんな事絶対にしない。だったら問題は幼稚園の中にあるんじゃないですか?」

 美希が言う。
 私達4人は口をそろえて言う。

「保母さん相手にしててもキリがないから相手の親連れて来い」

 そんな話を30分以上続けていたら恵美さんと神奈さんもやってくる。

「ったく……水奈は私に孫の面倒まで押し付けるつもりか?」
「でも、天音ちゃんの言うとおりね。相手の親がいないのはどういう理由なの?」

 神奈さんと恵美さんが言う。
 必死に二人に説明する保母さん。
 保母さんごときで何とかなる二人じゃない。
 結局1時間近く無駄な時間を費やした。
 解放された私と翼は実家に帰ると結莉と茉莉と海翔を引き取って家に連れて帰る。
 しかしそれだけでは話は済まなかった。
 大地が血相を変えて家に帰ってくる。

「どうしたんだ?そんなに慌てて」
「天音は比嘉研斗って知ってる?」
「知らない。私の浮気を疑ってるのか?」
「と、とりあえずテレビ見て。今やってると思うから」

 大地がそう言うのでテレビをつけてみた。
 ちょうどニュースをやってる時間だ。

「別府で暴行事件。大学生重傷」

 そんなニュースをやっていた。
 ゴキブリが調子に乗ってるからそれだろ?
 
「天音は昼間電話があったんだろ?」
「なんで知ってるんだ?」
「その後に空に電話がかかってきたんだ」
「なんて?」
「内容は天音が聞いたのと多分同じ」

 ああ、冴っていうやつを預かったとかそう言う話か。

「それなら私達に関係ないじゃないか」
「だけど相手はそうは思っていないらしいんだ」

 今でもSHの人間だと誤解したらしい。
 そんなのほっとけばいいだろ?
 だけど空は違うらしい。
 とりあえず来れる人は来てほしい。
 私が言うように冴はSHの人間じゃない。
 だから無理強いはしない。
 空がそう言ったそうだ。

「で、お前は行くつもりなのか?」
「天音がダメって言うなら行かないよ」

 こんなことで夫婦喧嘩したくない。
 しかし空は違う。
 中山瞳子に頼まれたらしい。
 冴のやったことはSHでは許される行為じゃない。
 それを分かっているうえで頭を下げたらしい。
 空は愛莉やパパからも何か言われたそうだ。
 冬吾の彼女だからさすがに追い払うことも出来ない。
 と、なると私も無関係ってわけじゃないか。
 
「……わかったよ。空の話を聞くだけ聞いて判断する」
「ありがとう」
「手を貸すって決めたわけじゃないからな」

 そう言って子供たちに出かける準備をさせて私達は集合場所のファミレスに向かった。

(2)

「無関係とはいえ、SHに歯向かう馬鹿には違いない。仕置きは必要なんじゃないか!?」
「んなもん相手にしてたらキリがないだろ!」

 光太と天音を筆頭に双方がお互いの主張をしている。
 無関係だから放っておけ。
 SHに逆らう馬鹿だから殺せ。
 そんな話を聞きながら翼とハンバーグを食べていた。
 結達は母さんたちに預けておいた。
 いても多分大丈夫だろうけど。

「空はどう思ってるんだ?」

 水奈が聞いていた。

「大体なんでわざわざ集合かけたんだ!?身から出た錆だほっとけ!」

 天音は絶対に反対派らしい。
 他にも慎重派は多い。
 ここで僕達が勝手に動けばまたSHの名前を悪用する奴が出てくるかもしれない。
 学がそう言っていた。

「とりあえず皆の意見聞かせてよ。それから僕が判断するから」
「しかしこれ以上話しても平行線のままだと思うんだけどね」

 善明がそう言う。
 そろそろ空の指示をくれ。
 そう言って僕の顔を見る。
 確かにそろそろ頃合いか。

「じゃあ、まずはSHとしてどうするか?から決めようか」
「お前まさか助けるなんて言うんじゃないだろうな?」

 天音が僕を睨む。
 だけど僕は首を振る。

「答えはどっちでもない」
「は?」

 天音が反応した。
 翼が「最後まで話を聞け」という。
 天音は大人しく話を聞いていた。

「冴はもうSHの人間じゃない。だから助ける義理はない」

 冴がどうなろうと知ったことじゃない。

「お、おい。下手すれば冴って娘死ぬぞ?」

 相手は本物なんだろ?と光太が言う。
 瞳子も当然来ている。
 瞳子は泣きそうな顔をしている。

「んじゃ話は終わりだな。大地、帰ろうぜ」
「まだ話は終わってないよ?」

 翼がそう言って帰ろうとする天音達を呼び止めた。

「今助ける義理は無いって空が言ったじゃないか?まだ何かあるのか?」
「冴を助ける義理はないけどSHに喧嘩を売ってきたのも事実だろ?」
「って事はどっちなんだ?」

 学が言う。
 翼と2人であらかじめ出しておいた結論を話した。

「結局動くのかよ」
「嫌なら来なくていい。私は行くから。ゴキブリは駆除しておかないとね」

 ここでSHは逃げたと思われるのは癪だと翼が言うと天音は悩みだす。

「しかし、ここで動けば俺たちの名前を悪用する馬鹿がまた出てくるかもしれないだろ?」
「だけどFGの奴らをいい気にさせておくのは癪だろ?」

 学が言うと僕が答えた。

「それで……というわけか」

 光太は納得したらしい。

「分かったよ……私もこのままだとイライラが収まりそうにない」
「それをゴキブリにぶつけてきたらいい」

 武器が必要なら母さんに借りるよと大地が天音に言う。

「いいよ、ゴキブリ如きに使うのは殺虫スプレーくらいだろ」

 天音はそう言って笑っていた。

「じゃ、空行ってくるね」
「気をつけて」
「心配しないでもちゃんとわからせてあげるから」

 こんなしょうもないことに付き合わせた代償をしっかり払ってもらうと言って翼達は西港に向かった。

(3)

 さすがに少し冷える11月の夜に私は西港に連れられていた。
 彼らは私がSHの人間だと思っているらしい。
 何度関係ないと言っても聞いてもらえなかった。
 そして最初に天音に電話すると「人違いだ。他を当たれ」と返事があったらしい。
 私の現状もかなり危険だけど、研斗の事が心配だった。
 時間になっても当然SHの人間が来るわけがない。

「どうやらお前の言ってたことが本当らしいな」

 FGを名乗った人間がそう言った。
 もちろん人違いでしたで済ませてもらえるわけがない。

「まあ、いいや。お前を痛めつけてアピールすることにしよう。SHはビビって仲間を見捨てる腰抜けだってな」

 そう言って私の服を奪い取ろうとする。
 全部私がやってきたツケが回ってきただけだ。
 怖いけど悲鳴をあげたくなかった。
 こんな奴らを喜ばせるような事したくない。
 目を閉じる。
 震えを懸命に抑える。
 
「強がったって無駄だ。心配するな、お前いい体してるし優しくしてやるよ」

 男がそう言うと群れをなす連中が笑っている。
 誠司だったら興奮する状況なんだろうな。

「こんな寒い夜に野外プレイなんてどこに優しさがあるんだ馬鹿」

 そんな声が聞こえてきた。
 声が石原大地のものだと言うのはすぐにわかった。
 彼らは動じずに大地の方を見る。
 SHが私の為に動いた?

「やっぱり仲間が大事か?」
「あんた馬鹿じゃないの?そいつはSHを抜けた全く関係のない人間。私達の知ったことじゃない」

 片桐翼がはっきり言った。
 って空は?
 FGの連中も空を探している。
 それに気づいた酒井善明が言った。

「空なら来てないよ。全く人使いの荒い王様だ」
「だけど放っておくと一人で暴れる王様だから仕方ないよ」

 善明と大地がそう話す。

「約束が違うぞ?空を連れて来いといったはずだ!」
「なんで?」

 翼の返事に狼狽えるFG。
 だけど翼は告げる。

「今さっき言ったこと忘れた?その子はSHじゃない。あんた達こそ話が違うじゃない」

 そんな話にどうしてわざわざ空が出てくるほどちっぽけなグループじゃない。

「じゃあ、なんでお前らがここにいるんだ?」

 FGの男が聞くと翼がにやりと笑った。

「SHに喧嘩を売ったことすら理解してないの?歯向かう奴は容赦なく潰せ。それが空の命令」
「言ったでしょ?人使いが荒い王様なんです」

 いっそ嵐の暴君とでも改名したらどうかと思うくらいだと善明が言う。
 その様子をじっと観察していた大地が一言言った。

「なるほど、空の言ったことは本当みたいですね」
「どういう意味だ?」
「……君達FGの偽物だね」

 大地が説明する。
 空から話を聞いていたらしい。
 標的を間違えて、やり方もずさんで、この期に及んで銃すら出さない。
 第一今FGは四宮達樹が死んでそれどころじゃないはずだ。
 何を勘違いしたのか知らないけどFGを名乗れば何をしても許されると思っている。
 大方そんな雑魚だろ。
 だから空は動かない。
 そんな雑魚一々相手にしなきゃいけないレベルの王様じゃない。
 FGの偽物はそんな話を聞いて狼狽えている。
 すぐに私を開放する。
 
「冴、こっち」

 瞳子が呼ぶので瞳子の側に歩く。
 そんな私を見てFGの連中は言う。

「人質は返した。これで用はないはずだ」
「あまり私達を甘く見ないで」

 翼が言う。
 お前たちが何者だろうと知ったことじゃない。
 FGが私達をしょうもないことで呼び出した。
 現状はそれだけだ。

「だ、だが俺たちはFGじゃないって……」
「なんか聞こえたか大地?」
「いや、何も聞こえないよ。天音のマフラーで耳ふさがってるからかな。とても温かいよ」
「だろ?手編みしたんだぜ」
「……まあ、君たちがFGを名乗ったのがそもそも間違いだったんですよ」

 善明が言う。
 黒いゴキブリはしっかり潰せ。
 それがSHのルール。
 偽物か本物かなんでどうだっていい。
 名乗ったからにはお前たちは私達の標的だ。

「最近母さんと学にがみがみ言われてイライラしてるんだ。しっかり叩き込んでやるから安心しろ」
「嫁をがみがみ叱らないと子育てを真面目にしないからだろ?」
「ママ、結莉も思いっきり暴れていいの?」
「まあ、殺すくらいにしとけ」
「わかった」
「そんなに暴れたいなら普段から暴れてりゃいいだろ。ぶりっこしてるからそうなるんだろ」
「ガッデム。茉莉と違って私は可愛い彼女でいてあげたいの」
「天音、気を付けなよ。結莉と茉莉まで暴れたなんて知れたら愛莉怒るよ」
「翼が言わなかったらばれねーよ」

 するとFGの偽物は逃げ出そうとした。
 しかしそんな真似を許すほどSHは甘くない。

「いやあ、久々に学生時代に戻った気がするわ。粋、なまってないだろうな?」
「ばーか。こちとらずっと良い父親でいるストレスってのがあるんだよ。容赦しないからな」

 完全に怯えているFGの偽物。
 そんな事気にも止めずに翼は言う。

「大丈夫。あんた達みたいなずさんなプランは練ってないから。そこはさすが空だね」

 西港とはいいところを選んでくれた。
 多少大量の溺死体が浮かんでいてもそんなに問題にならないだろ。

「一応恋愛小説だからひょっとしたら生きてるかもしれないから頑張りな。生きていたら今後こんな馬鹿な真似はやめた方がいいよ」

 翼はにこりと笑って言った。
 その後はSHの虐殺が始まった。
 SHはしっかり組織立って行動する。
 暴れ出してから相手を叩きのめして片っ端から海に投げ込んで私を連れて撤収する。
 翌日の新聞には「寒中水泳をしていた若者たちを保護」と書かれていた。

(4)

「君も災難だったね」

 僕は比嘉研斗が入院している病院に来ていた。

「でも、片桐さん達にも迷惑を……」
「相手が君だろうとそれ以外の誰でも関係ないよ」

 相手がふざけたことをするなら代償を払ってもらう。
 中途半端な情けは思いもよらない被害を生み出す。
 いかなる時にも冷静に、冷徹に判断を下さないと仲間を危険に晒すことになる。
 その事をつい先日思い知った。

「で、2人は上手く言ってるの?」
「ええ、すれ違いの時間もあるけど学内では大体一緒だから」
「それはよかった」

 そんな話をしていると冴が戻ってきた。
 SHが救出したみたいだ。

「研斗!ごめんなさい!」
「冴が無事でよかった。何もされてない?」
「大丈夫、冴は」
「されかけるところで……」

 そう言って冴が僕を見る。
 僕も翼達から報告を受けていた。

「迷惑をかけられないと思ってSHを抜けたのに……ごめんなさい」
「礼なら瞳子に言いなよ」

 瞳子が必死に頭を下げていたからその気になっただけ。
 皆を説得するのも面倒だったんだから。
 すると天音が言う。

「瞳子に謝っとけ!お前がどんな馬鹿な行動をとろうとずっと瞳子はお前の友達で居続けたんだ」

 SHが今回動いたのは瞳子が理由だ。
 SHを抜けようと県外や国外に行こうと絶対に切れない物。
 それがキズナだ。
 今度それを自分で裏切るような真似をしたら、天音が冴を処刑してやる。
 そう言って天音は水奈と病室を出ようとする。
 水奈は冴に一言伝えたいことがあるようだ。

「誠司の馬鹿は本当に馬鹿だったよ」

 金髪の白人女性を彼女に選んだらしい。
 あいつらしい人生だな。
 そう言って水奈も出ていった。

「よかった……」

 冴はほっとしているようだった。

「じゃ、またね。空、そろそろ帰ろう」
「そうだね」

 そう言って翼と病室を出ようとすると冴が言った。

「またねって?」
「さっきの天音の話を聞いてなかったの?」

 縁というのはそんなに簡単に切れない。
 何か困ったことがあったら相談してくれ。
 そう言って僕達も帰りに着いた。

(5)

「いや、大変だったね」

 千帆達と飛行機の中で話をしていた。 
 東京での自由行動。
 東京のテーマパークでの自由行動。
 たくさん思い出を作った。
 その代償に男子達は一人も残らず全員寝てる。
 ずっと一緒に付き合ってくれたんだからそのくらい許してやろう。

「それにしても歩美大変だね」
「……それが問題だよ」

 歩美は悩んでいた。
 歩美に新しく妹が出来たらしい。
 四宮健太と紀子は父親が生きていた証を作りたくて姓を変えなかった。
 だけど、神谷佳織は神谷を出る事を決めた。
 新しく多田佳織として生きていくらしい。
 妹が出来ることは嬉しい。
 きっと水奈も同じだったんだろう。
 同時に不安がある。
 それは父親。
 歩美も散々困らせられたらしい。
 その度に神奈さんと喧嘩をしている。
 家に彼氏を連れてきたら部屋の外でじっと聞き耳を立ててるくらいの変態だ。
 佳織を一人にしておくのは危険だけど水奈にこれ以上の子供を任せっきりにするのも危険だ。
 だから神奈さんが面倒を見てやってくれと頼まれたらしい。
 私のパパはそんな事に全く興味を持たない。
 冬莉や茜が裸に近い状態でリビングをうろついていてもテレビをじっと見ていた。
 だけど後でパパがこっそり教えてくれた。

「ああでもしないとね、愛莉が機嫌を損ねるから大変なんだ」

 娘の体に興味が多少はあるけど、愛莉の機嫌と秤にかけるまでもない。
 きっと空も一緒なんだろうな。
 それが分かっているから冬莉や茜が揶揄って遊んでいた。
 カミラがいるから空はこの先大変だろうな。
 機内アナウンスが流れる。
 着陸の時の様だ。
 冬眞を起こす。
 空港を出るとバスで高校に帰る。
 パパ達が迎えに来ていた。
 パパが最初に聞いたこと。

「なんか北海道だと塩ラーメンも美味しいらしいんだけど……」

 ぽかっ

 愛莉が小突いていた。

「旅行から帰ってきた子供に最初に聞くことがそれなんですか!?」
「だって愛莉と行った時は味噌ラーメンしか食べてなかったから」
「そういう話をしてるのではありません!」
「愛莉……いい加減諦めろ。孫の結と比呂も順調にそうなってるじゃねーか」

 神奈さんが呆れていた。

「だから今のうちに直さないとダメでしょ」
「直らないだろ。うちの馬鹿息子と同じだ」
「あ、そっか」

 パパが何か気づいたらしい。
 愛莉は腕を振り上げている。

「莉子、蟹をお土産にするのはいいんだけど、どうせ冷凍して送ってくるから物産展で買うのと変わらないんだ」

 旅行前に言っておくの忘れたね。

 ぽかっ

「せっかく買ってきてくれたのにそういう言い方はないでしょ!」
「あ、あの醤油さしはいいね。玉子かけご飯にちょうどよさそう」
「いい加減にしてください!」
「早く帰ろう。腹減った」

 冬眞が言うと愛莉はため息をついた。
 これも片桐家の絆なのだろう。
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