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真夏のマーメイド
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(1)
「お前は他人様の孫娘に何をやらせてるんだこの馬鹿!」
夜子供たちが寝静まった後、カンナが誠を叱っていた。
事件は昼間孫たちが海で遊びだそうという時に起きた。
優奈や愛菜はまだ小さいから普通に水着を着ていた。
茉奈と陽葵も普通に海用に買った水着を着ている。
問題は結莉と茉莉と菫だった。
本人たちも不可解だったらしい。
デザインがそんなに良くない、セパレート型ではない小学校指定のスクール水着なんて海で着るものじゃないだろ?
だけどそれを否定する者がいた。
それが桐谷君と誠。
「今のうちしか着れない水着だぞ?大人になっても着て欲しい彼氏だっているかもしれない」
そんな風に結莉達に教えたらしい。
「きっと芳樹も喜ぶ」
ちゃんと写真に収めてやると誠が言うと、結莉は迷うことなくスクール水着を用意した。
「なあ?私のセンス悪いのは分かるけど、これはないんじゃないのか?」
「誠が言ってるんだからそうなんじゃないの?」
「まあ、どうせ私は彼氏は来てないから何でもいいよ」
3人はそう話し合ってスクール水着を持ってきた。
天音達がその事に気づいたのは結莉達が水着に着替えた後だった。
「ちゃんと水着買ってやっただろ!?なんでそんなもん着てるんだ!?」
天音が慌てて聞いていた。
学校もフェンスを高くするなどして変質者から保護しているほどの水着。
だったらデザインを変えればいいと思うけど、そうではないんだそうだ。
指定の物をつけなければならないというルールを守らせるためでもない。
それを言ったらブルマの廃止はどう説明するんだ!?と前に誠が不可解な事を言っていた。
さっき言った通りセパレートの下半身はスパッツの様なスクール水着も近年ではある。
ラッシュガードの着用を認められていた。
そうまでしてこだわる理由。
それはデザインを変えると当然水着の価格が上がる。
それは家計の負担になると判断したそうだ。
だからラッシュガードは個人の自由になってある。
もっとも陽葵達は毎週ある水泳の授業を「今日お腹痛いから無理」と言ってサボっていた。
まだ2年生の陽葵達を不審に思った桜子は翼に相談する。
翼は普通に授業を受けていたみたいだ。
「どうしてそう言う嘘を吐くの?」
「だって、恥ずかしいじゃん」
「ラッシュガードが欲しいなら買ってあげるからちゃんと授業を受けなさい」
「そこまでして水泳受けなきゃいけないの?」
「水泳だけじゃなくて授業はちゃんと受けないとダメでしょ」
「天音は違う事言ってたよ?」
「え?」
その時片づけをしている愛莉の手が止まってこっちを見ていた。
「天音から何聞いてたの?」
「小学生だからレポート提出なんてないし、体育の授業なんてどうでもいいレベルだから適当に寝とけばいい」
もちろん天音は愛莉からしっかり注意を受けていた。
「陽葵。そういう事は愛莉たちに言ったらダメだろ」
「そうじゃないでしょ天音!親が子供に言う言葉じゃありません」
「そういえば天音もよくサボってたね」
もちろん体育なんて天音がチート過ぎて面白くないのだろう。
他の授業も「寝てても分かる」と言って寝てたそうだ。
それは結莉も茉莉も同じで、茉莉はいびきをかいて爆睡してるみたいだ。
結はちょっと違うらしい。
授業の内容はすぐに理解する。
だから桜子も安心していた。
それは油断だ。
結はどうも冬吾に近いらしい。
なんにでもすぐに興味を持つ。
それは本当に子供の些細な疑問だ。
悪気なんて一切ない。
だから桜子には厄介だった。
「そ、それはお母さんに聞いてみたらいいんじゃないかな?」
そう言って家にその疑問を持って来て美希に質問していた。
結の母親が美希でよかった。
ちゃんと説明しているみたいだ。
子供の作り方はまだ男の子の体になっていない結に好奇心だけで教えていい物じゃないからとしっかり説明していた。
「美希も苦労してるんだな」
天音が言うと美希はにこりと笑って言う。
「空ほど苦労してないよ」
空はそういう事に全く興味を示さないから、振り向いてもらうのに苦労したらしい。
善明も陽葵達に質問されて困ったみたいだ。
「パパはスク水とビキニどっちがいい?」
善明も困ったらしい。
善明は誠の様な性癖はない。
だから素直にビキニと答えたらよかった。
しかし善明は余計な事を考えてしまった。
ビキニを陽葵達が来てもそんなにはっきりとわかるものじゃないんじゃないのか?
だからまだスク水でいいんじゃないかと思ってしまった。
「スク水でいいんじゃないかい?まだ子供だし」
陽葵達は当然激怒する。
「パパは気づいてくれないの!?私達だってちゃんと膨らんでるんだよ!」
そう言って陽葵達はその場で服を脱ぎ出そうとして翼と愛莉が止めたらしい。
その後善明は翼と愛莉からしっかり注意を受けていた。
「善明、その話帰ったら詳しく聞かせてもらうわよ!」
「こ、子供の水着姿に興味を持つ方がおかしいんだよ晶ちゃん」
「お前んちが羨ましいよ。冬夜」
「そうじゃねーだろこの変態!」
で、結莉達にスクール水着を勧めた誠たちが怒られている。
カンナだって他人事じゃない。
その時に同じ真似をするんじゃないかと慌てている。
誠はSHのIDを受け取っている。
だから誠が大体妙な事を子供たちに吹き込む。
当然それを見た水奈がカンナに伝えて誠が怒られる。
「私達ももらっておいた方が良いかも。この二人を野放しに出来ない」
亜依さんが言う。
「私も時間空いてる時はチェックしてるから何かあったら愛莉に知らせるから」
翼がそう言った。
「しかし、どうして誠がSHに入っているんだ?」
そもそもどうしてそんな事になった。
「ああ、別に大したことじゃないよ」
誠は説明する。
茜が管理している。
当然SHの防壁を攻撃してくるリベリオンやFGの連中がいた。
茜も主婦だからずっと見てるわけにはいかない。
菫や歩美だって授業がある。
で、もう大体一日やることが無い誠が見ててやると言って権限をもらったらしい。
誠が妙な事を言うのは茜は知っていた。
それを面白がって見ているのが茜。
「あの子はまったく……」
愛莉の新しい頭痛の種が茜だった。
どういったら分かりやすいだろうか?
天音がもう一人増えた。
「あーり。何してるの?」
茜の娘の椿がやって来た。
「あれ?茜はどうしたの?」
「ママは先に寝た」
茜達を寝かしつけようとして先に寝てしまったらしい。
「椿も寝ないとダメですよ。ばあばと一緒にテントに行きましょうね」
「面白い話してくれる?」
「……面白かったら眠れないでしょ」
「そっかぁ……じゃあ、何を話していたか教えて」
「そ、それは……」
愛莉は戸惑いながら椿をテントに連れて行った。
「愛莉も苦労してるんだな」
苦労をさせてる天音が言う。
「茉莉の問題は片付いたみたいだね」
話を変えてみた。
「ああ。やっぱり彼氏の存在ってすごいんだな」
「朔は上手くやってくれたかい?」
酒井君が聞いていた。
「ああ、あいつ陸に似たみたいだ」
彼女の扱い方はしっかりしてると言っていた。
「天音。もし朔が浮気とかしたらすぐに伝えてね」
晶さんが言う。
すぐに海に沈めてやると言っていた。
「それはそうと、恵美さんは大丈夫なのか?」
誠が聞いていた。
多分冬莉達の事件の事だろう。
その話を聞いた時SHはもちろん渡辺班も怒り出した。
「そんなふざけた奴らは今すぐにでも地獄に突き落としてやる」
妹に悪さしたというのもあるけど翼も空もフレーズのファンだ。
SHのリーダーの逆鱗に触れた。
物理的に相手事務所を潰すくらいわけないだろう。
恵美さんもすぐに家に来て空を説得していた。
それは空の暴動を止めるとかじゃなかった。
「私に任せてもらえない?どうせ雑魚のやる事くらい片桐君じゃなくても分かる。その為の策は考えてあるから」
そんなに芸能生活引退したいなら否応なく辞めさせてやる。
「……空が暴れたら当然空と冬莉の関係が暴露される。そうなったら困るのは冬莉だ。我慢しなさい」
僕がそう言って止めておいた。
「しかし許せないな。顔だけで売れてる連中ならその顔をぐちゃぐちゃにしてやりたいくらいだ」
「私の父さんみたいなものだろ」
「水奈、それを娘に言われるのはさすがに父さんショックだぞ」
「だったら最初からするなボケ!」
冬莉も麻里さんも順調な今妙な事件でつるし上げられるのだけは避けたい。
歌番組の出演が無くなるくらいどうってことない。
二組ともファンサイトの会員はたくさんいるし新曲を発表すればすぐに反応が出る。
ライブの会場をいくつ潰されようと地元のドームは使える。
だって今ドームを買い取っているのは恵美さんの企業なんだから。
環奈さんの仕事も問題ない。
環奈さんを使わないなら他のタレントも使わせない。
そんな舐めた真似をしたテレビ局への出演は全部破棄してやる。
そのくらい簡単にやってのけるのが恵美さんだった。
だけど石原君は違う事を考えているそうだ。
「IMEはともかくUSEは大地に譲った事務所だ。僕としては息子の判断を見てみたいんだけど」
僕が空のお手並みを拝見しているように、いい加減大地の手腕を見極めたい。
そろそろ大地の世代の出番だ。
安心して隠居できるかいい加減試していい頃じゃないのか?
それを聞いた恵美さんはやや不安の様だ。
「大丈夫なの?大地にはまだ荷が重い気がするけど」
「母親が子供の心配をするのはいくつになっても変わらないけど、いい加減子離れするべきなんじゃないのかな?」
子供だってずっと仕事してきたんだ。
そろそろ信用してやってもいいんじゃないか?
そうじゃないと子供に仕事を任せた意味が無い。
いつまでも親の言いなりなんてダメだろ?
「望がそう言うならそうするけど、大丈夫なんでしょうね?大地」
「……実はその報告を受けた時から対策考えていたんだ。大丈夫」
「じゃあ、任せるけど……。天音ちゃん、大地一人じゃまだ不安だからちゃんと見てあげて」
「わかってる、そのふざけた馬鹿の面を整形してやればいいんだろ?」
「……天音。あんた何聞いてたの?」
翼が呆れて言うとみんな笑っていた。
「善君もそろそろ善明に任せて隠居してもいいんじゃない?」
「やっと30になったばかりの子に総帥は無茶だよ!今少しずつ仕事を任せてるからもう少し待っておくれ」
酒井君が慌てていた。
月日が経つのは早い。
もう子供達も立派に成長した。
あとは飛び立っていくのを見守るだけだ。
(2)
「あれ、雪菜?」
「カミルこそ。カミラはどうしたの?」
雪菜に聞かれると僕は笑って答えた。
「比呂と一緒に寝てるよ」
変な意味ではなくて、ただ隣で寝ているだけ。
昔からは想像もつかなかった安らかな寝顔。
こんな温かい食事にありつけるなんて想像もしなかった。
それは雪菜もきっと一緒だろう。
じいじやパパ達は先に起きてコーヒーを飲んでいた。
僕達を見ると僕達にも分けてくれる。
「そういえば、二人には恋人はいないのかい?」
じいじが言うと首を振った。
「まだ考えた事もないです」
「考えることはないよ」
じいじがそう返した。
考えたり思ったりしていても意味がない。
ただその人が現れるのを待つだけ。
ただし、現れた時にちゃんと受け止める覚悟だけはしておきなさい。
QBKは人生では通用しない。
片桐家に入ってから常に言われている事。
過去のしがらみなんて忘れてしまえ。
あの日あの時あの場所でじいじたちに出会って人生が変わった。
ただそれだけの話なのだから。
人並みの幸せを掴む資格なんてないとか考える必要はない。
人は誰もが幸せになる権利がある。
ないのはそれを邪魔する存在。
「まあ、ゆっくり探すといいよ」
「今年はそういう話がのんびりできるんですね」
じいじと望さんがそんな話をしてる時だった。
後ろに気配を感じる。
じいじ達も気づいてる様だったけど。
「そう思うんだったら私達を除け者にするのを止めて下さいと何度も言ってるじゃないですか!」
「望もよ!どうしてあなた達はいつもそうやって3人で話すわけ!」
「朝から忙しいから少しでも休ませてやりたかっただけだよ」
「ええ、ゆっくり休みたいわね。コーヒーでも飲みながら子供たちの奮闘を眺めて笑いながら話したいわ」
「カミル達は少し散歩でもしておいで」
じいじが言うと僕は雪菜を連れて散歩をする。
「私にも出来るのかな?」
不思議なの事を雪菜が言うから聞き返した。
「どうしてそう思うの?」
「え?」
じいじ達の話を聞いてなかったの?
もう過去に縛られるのは止めたほうがいい。
新しい人生を幸せに染めるのは悪い事じゃない。
「私達が思っていても周りが許してくれるのかな?って……」
「雪菜は成実を見てもそう思うの?」
「雲雀はリベリオンの時からいっしょだったから……」
お互いの過去があって今がある。
だけど私の過去を受け入れてくれる男なんているんだろうか?
ふーん。
「いるって言えばいいの?」
「そんなのカミルに分かるわけないじゃない」
「わかるさ」
「どうして?」
雪菜が聞くと僕はにこりと笑って雪菜の手をとった。
雪菜がびくっとする。
「いやだった?」
雪菜の願いを叶えたつもりだけど。
雪菜の過去を知った上で雪菜のすべてを受け止める。
「僕じゃ不満?」
僕は雪菜の何倍も汚れている。
雪菜が僕を拒む理由はある。
そんな僕を受け入れてくれないか?
「本気なの?」
「どうしてそう思うの?」
「私と一緒にいたって……」
「ろくなことがないっていうなら否定させてもらうよ」
だって少なくとも僕は雪菜を手に入れる事が出来たら嬉しいと思う。
「本当にいいの?」
「選ぶ権利は雪菜にあると思うけど」
申し込んだのは僕なんだから。
「最後にもう一つだけ聞いてもいいかな?」
「なんなりと」
「私の事……好き?」
当たり前だろ?とか好きじゃなかったらこんな真似しないとかそんな言葉じゃなくてとてもシンプルな言葉で伝えた。
「好きだよ」
「ありがとう、私なんかでよければ……」
「そんなこと言わないでよ」
僕にとっては大切な人になるんだから。
「……このまま戻ってもいいかな?」
「隠す事でもないだろ?」
その後雪菜のどこが好きになったのとかそんな話をしながらテントに戻る。
僕と雪菜が手を繋いでいる事に気付いたカミラが笑顔で言った。
「手を付けるのが早いのね」
「早い者勝ちだろ?」
比呂だってカミラにすぐ手を付けたし。
「ちょっと待ってよ!あと私だけじゃない!彼氏いないの!」
陽葵が悲鳴を挙げる。
善明や翼が笑いながら陽葵を慰めている。
「2学期始まったら適当に探したら?」
「ちょっと蹴り飛ばしただけで泣きわめくガキなんていや!」
「そもそもどうして彼氏候補を蹴飛ばすの!?」
「殴ったら拳がごつくなるからやめとけって天音が!」
「天音!あんた私の娘に妙なこと言わないで!」
「人体に穴開ける翼が言えた事か!」
相変わらずのにぎやかなSHだった。
「お前は他人様の孫娘に何をやらせてるんだこの馬鹿!」
夜子供たちが寝静まった後、カンナが誠を叱っていた。
事件は昼間孫たちが海で遊びだそうという時に起きた。
優奈や愛菜はまだ小さいから普通に水着を着ていた。
茉奈と陽葵も普通に海用に買った水着を着ている。
問題は結莉と茉莉と菫だった。
本人たちも不可解だったらしい。
デザインがそんなに良くない、セパレート型ではない小学校指定のスクール水着なんて海で着るものじゃないだろ?
だけどそれを否定する者がいた。
それが桐谷君と誠。
「今のうちしか着れない水着だぞ?大人になっても着て欲しい彼氏だっているかもしれない」
そんな風に結莉達に教えたらしい。
「きっと芳樹も喜ぶ」
ちゃんと写真に収めてやると誠が言うと、結莉は迷うことなくスクール水着を用意した。
「なあ?私のセンス悪いのは分かるけど、これはないんじゃないのか?」
「誠が言ってるんだからそうなんじゃないの?」
「まあ、どうせ私は彼氏は来てないから何でもいいよ」
3人はそう話し合ってスクール水着を持ってきた。
天音達がその事に気づいたのは結莉達が水着に着替えた後だった。
「ちゃんと水着買ってやっただろ!?なんでそんなもん着てるんだ!?」
天音が慌てて聞いていた。
学校もフェンスを高くするなどして変質者から保護しているほどの水着。
だったらデザインを変えればいいと思うけど、そうではないんだそうだ。
指定の物をつけなければならないというルールを守らせるためでもない。
それを言ったらブルマの廃止はどう説明するんだ!?と前に誠が不可解な事を言っていた。
さっき言った通りセパレートの下半身はスパッツの様なスクール水着も近年ではある。
ラッシュガードの着用を認められていた。
そうまでしてこだわる理由。
それはデザインを変えると当然水着の価格が上がる。
それは家計の負担になると判断したそうだ。
だからラッシュガードは個人の自由になってある。
もっとも陽葵達は毎週ある水泳の授業を「今日お腹痛いから無理」と言ってサボっていた。
まだ2年生の陽葵達を不審に思った桜子は翼に相談する。
翼は普通に授業を受けていたみたいだ。
「どうしてそう言う嘘を吐くの?」
「だって、恥ずかしいじゃん」
「ラッシュガードが欲しいなら買ってあげるからちゃんと授業を受けなさい」
「そこまでして水泳受けなきゃいけないの?」
「水泳だけじゃなくて授業はちゃんと受けないとダメでしょ」
「天音は違う事言ってたよ?」
「え?」
その時片づけをしている愛莉の手が止まってこっちを見ていた。
「天音から何聞いてたの?」
「小学生だからレポート提出なんてないし、体育の授業なんてどうでもいいレベルだから適当に寝とけばいい」
もちろん天音は愛莉からしっかり注意を受けていた。
「陽葵。そういう事は愛莉たちに言ったらダメだろ」
「そうじゃないでしょ天音!親が子供に言う言葉じゃありません」
「そういえば天音もよくサボってたね」
もちろん体育なんて天音がチート過ぎて面白くないのだろう。
他の授業も「寝てても分かる」と言って寝てたそうだ。
それは結莉も茉莉も同じで、茉莉はいびきをかいて爆睡してるみたいだ。
結はちょっと違うらしい。
授業の内容はすぐに理解する。
だから桜子も安心していた。
それは油断だ。
結はどうも冬吾に近いらしい。
なんにでもすぐに興味を持つ。
それは本当に子供の些細な疑問だ。
悪気なんて一切ない。
だから桜子には厄介だった。
「そ、それはお母さんに聞いてみたらいいんじゃないかな?」
そう言って家にその疑問を持って来て美希に質問していた。
結の母親が美希でよかった。
ちゃんと説明しているみたいだ。
子供の作り方はまだ男の子の体になっていない結に好奇心だけで教えていい物じゃないからとしっかり説明していた。
「美希も苦労してるんだな」
天音が言うと美希はにこりと笑って言う。
「空ほど苦労してないよ」
空はそういう事に全く興味を示さないから、振り向いてもらうのに苦労したらしい。
善明も陽葵達に質問されて困ったみたいだ。
「パパはスク水とビキニどっちがいい?」
善明も困ったらしい。
善明は誠の様な性癖はない。
だから素直にビキニと答えたらよかった。
しかし善明は余計な事を考えてしまった。
ビキニを陽葵達が来てもそんなにはっきりとわかるものじゃないんじゃないのか?
だからまだスク水でいいんじゃないかと思ってしまった。
「スク水でいいんじゃないかい?まだ子供だし」
陽葵達は当然激怒する。
「パパは気づいてくれないの!?私達だってちゃんと膨らんでるんだよ!」
そう言って陽葵達はその場で服を脱ぎ出そうとして翼と愛莉が止めたらしい。
その後善明は翼と愛莉からしっかり注意を受けていた。
「善明、その話帰ったら詳しく聞かせてもらうわよ!」
「こ、子供の水着姿に興味を持つ方がおかしいんだよ晶ちゃん」
「お前んちが羨ましいよ。冬夜」
「そうじゃねーだろこの変態!」
で、結莉達にスクール水着を勧めた誠たちが怒られている。
カンナだって他人事じゃない。
その時に同じ真似をするんじゃないかと慌てている。
誠はSHのIDを受け取っている。
だから誠が大体妙な事を子供たちに吹き込む。
当然それを見た水奈がカンナに伝えて誠が怒られる。
「私達ももらっておいた方が良いかも。この二人を野放しに出来ない」
亜依さんが言う。
「私も時間空いてる時はチェックしてるから何かあったら愛莉に知らせるから」
翼がそう言った。
「しかし、どうして誠がSHに入っているんだ?」
そもそもどうしてそんな事になった。
「ああ、別に大したことじゃないよ」
誠は説明する。
茜が管理している。
当然SHの防壁を攻撃してくるリベリオンやFGの連中がいた。
茜も主婦だからずっと見てるわけにはいかない。
菫や歩美だって授業がある。
で、もう大体一日やることが無い誠が見ててやると言って権限をもらったらしい。
誠が妙な事を言うのは茜は知っていた。
それを面白がって見ているのが茜。
「あの子はまったく……」
愛莉の新しい頭痛の種が茜だった。
どういったら分かりやすいだろうか?
天音がもう一人増えた。
「あーり。何してるの?」
茜の娘の椿がやって来た。
「あれ?茜はどうしたの?」
「ママは先に寝た」
茜達を寝かしつけようとして先に寝てしまったらしい。
「椿も寝ないとダメですよ。ばあばと一緒にテントに行きましょうね」
「面白い話してくれる?」
「……面白かったら眠れないでしょ」
「そっかぁ……じゃあ、何を話していたか教えて」
「そ、それは……」
愛莉は戸惑いながら椿をテントに連れて行った。
「愛莉も苦労してるんだな」
苦労をさせてる天音が言う。
「茉莉の問題は片付いたみたいだね」
話を変えてみた。
「ああ。やっぱり彼氏の存在ってすごいんだな」
「朔は上手くやってくれたかい?」
酒井君が聞いていた。
「ああ、あいつ陸に似たみたいだ」
彼女の扱い方はしっかりしてると言っていた。
「天音。もし朔が浮気とかしたらすぐに伝えてね」
晶さんが言う。
すぐに海に沈めてやると言っていた。
「それはそうと、恵美さんは大丈夫なのか?」
誠が聞いていた。
多分冬莉達の事件の事だろう。
その話を聞いた時SHはもちろん渡辺班も怒り出した。
「そんなふざけた奴らは今すぐにでも地獄に突き落としてやる」
妹に悪さしたというのもあるけど翼も空もフレーズのファンだ。
SHのリーダーの逆鱗に触れた。
物理的に相手事務所を潰すくらいわけないだろう。
恵美さんもすぐに家に来て空を説得していた。
それは空の暴動を止めるとかじゃなかった。
「私に任せてもらえない?どうせ雑魚のやる事くらい片桐君じゃなくても分かる。その為の策は考えてあるから」
そんなに芸能生活引退したいなら否応なく辞めさせてやる。
「……空が暴れたら当然空と冬莉の関係が暴露される。そうなったら困るのは冬莉だ。我慢しなさい」
僕がそう言って止めておいた。
「しかし許せないな。顔だけで売れてる連中ならその顔をぐちゃぐちゃにしてやりたいくらいだ」
「私の父さんみたいなものだろ」
「水奈、それを娘に言われるのはさすがに父さんショックだぞ」
「だったら最初からするなボケ!」
冬莉も麻里さんも順調な今妙な事件でつるし上げられるのだけは避けたい。
歌番組の出演が無くなるくらいどうってことない。
二組ともファンサイトの会員はたくさんいるし新曲を発表すればすぐに反応が出る。
ライブの会場をいくつ潰されようと地元のドームは使える。
だって今ドームを買い取っているのは恵美さんの企業なんだから。
環奈さんの仕事も問題ない。
環奈さんを使わないなら他のタレントも使わせない。
そんな舐めた真似をしたテレビ局への出演は全部破棄してやる。
そのくらい簡単にやってのけるのが恵美さんだった。
だけど石原君は違う事を考えているそうだ。
「IMEはともかくUSEは大地に譲った事務所だ。僕としては息子の判断を見てみたいんだけど」
僕が空のお手並みを拝見しているように、いい加減大地の手腕を見極めたい。
そろそろ大地の世代の出番だ。
安心して隠居できるかいい加減試していい頃じゃないのか?
それを聞いた恵美さんはやや不安の様だ。
「大丈夫なの?大地にはまだ荷が重い気がするけど」
「母親が子供の心配をするのはいくつになっても変わらないけど、いい加減子離れするべきなんじゃないのかな?」
子供だってずっと仕事してきたんだ。
そろそろ信用してやってもいいんじゃないか?
そうじゃないと子供に仕事を任せた意味が無い。
いつまでも親の言いなりなんてダメだろ?
「望がそう言うならそうするけど、大丈夫なんでしょうね?大地」
「……実はその報告を受けた時から対策考えていたんだ。大丈夫」
「じゃあ、任せるけど……。天音ちゃん、大地一人じゃまだ不安だからちゃんと見てあげて」
「わかってる、そのふざけた馬鹿の面を整形してやればいいんだろ?」
「……天音。あんた何聞いてたの?」
翼が呆れて言うとみんな笑っていた。
「善君もそろそろ善明に任せて隠居してもいいんじゃない?」
「やっと30になったばかりの子に総帥は無茶だよ!今少しずつ仕事を任せてるからもう少し待っておくれ」
酒井君が慌てていた。
月日が経つのは早い。
もう子供達も立派に成長した。
あとは飛び立っていくのを見守るだけだ。
(2)
「あれ、雪菜?」
「カミルこそ。カミラはどうしたの?」
雪菜に聞かれると僕は笑って答えた。
「比呂と一緒に寝てるよ」
変な意味ではなくて、ただ隣で寝ているだけ。
昔からは想像もつかなかった安らかな寝顔。
こんな温かい食事にありつけるなんて想像もしなかった。
それは雪菜もきっと一緒だろう。
じいじやパパ達は先に起きてコーヒーを飲んでいた。
僕達を見ると僕達にも分けてくれる。
「そういえば、二人には恋人はいないのかい?」
じいじが言うと首を振った。
「まだ考えた事もないです」
「考えることはないよ」
じいじがそう返した。
考えたり思ったりしていても意味がない。
ただその人が現れるのを待つだけ。
ただし、現れた時にちゃんと受け止める覚悟だけはしておきなさい。
QBKは人生では通用しない。
片桐家に入ってから常に言われている事。
過去のしがらみなんて忘れてしまえ。
あの日あの時あの場所でじいじたちに出会って人生が変わった。
ただそれだけの話なのだから。
人並みの幸せを掴む資格なんてないとか考える必要はない。
人は誰もが幸せになる権利がある。
ないのはそれを邪魔する存在。
「まあ、ゆっくり探すといいよ」
「今年はそういう話がのんびりできるんですね」
じいじと望さんがそんな話をしてる時だった。
後ろに気配を感じる。
じいじ達も気づいてる様だったけど。
「そう思うんだったら私達を除け者にするのを止めて下さいと何度も言ってるじゃないですか!」
「望もよ!どうしてあなた達はいつもそうやって3人で話すわけ!」
「朝から忙しいから少しでも休ませてやりたかっただけだよ」
「ええ、ゆっくり休みたいわね。コーヒーでも飲みながら子供たちの奮闘を眺めて笑いながら話したいわ」
「カミル達は少し散歩でもしておいで」
じいじが言うと僕は雪菜を連れて散歩をする。
「私にも出来るのかな?」
不思議なの事を雪菜が言うから聞き返した。
「どうしてそう思うの?」
「え?」
じいじ達の話を聞いてなかったの?
もう過去に縛られるのは止めたほうがいい。
新しい人生を幸せに染めるのは悪い事じゃない。
「私達が思っていても周りが許してくれるのかな?って……」
「雪菜は成実を見てもそう思うの?」
「雲雀はリベリオンの時からいっしょだったから……」
お互いの過去があって今がある。
だけど私の過去を受け入れてくれる男なんているんだろうか?
ふーん。
「いるって言えばいいの?」
「そんなのカミルに分かるわけないじゃない」
「わかるさ」
「どうして?」
雪菜が聞くと僕はにこりと笑って雪菜の手をとった。
雪菜がびくっとする。
「いやだった?」
雪菜の願いを叶えたつもりだけど。
雪菜の過去を知った上で雪菜のすべてを受け止める。
「僕じゃ不満?」
僕は雪菜の何倍も汚れている。
雪菜が僕を拒む理由はある。
そんな僕を受け入れてくれないか?
「本気なの?」
「どうしてそう思うの?」
「私と一緒にいたって……」
「ろくなことがないっていうなら否定させてもらうよ」
だって少なくとも僕は雪菜を手に入れる事が出来たら嬉しいと思う。
「本当にいいの?」
「選ぶ権利は雪菜にあると思うけど」
申し込んだのは僕なんだから。
「最後にもう一つだけ聞いてもいいかな?」
「なんなりと」
「私の事……好き?」
当たり前だろ?とか好きじゃなかったらこんな真似しないとかそんな言葉じゃなくてとてもシンプルな言葉で伝えた。
「好きだよ」
「ありがとう、私なんかでよければ……」
「そんなこと言わないでよ」
僕にとっては大切な人になるんだから。
「……このまま戻ってもいいかな?」
「隠す事でもないだろ?」
その後雪菜のどこが好きになったのとかそんな話をしながらテントに戻る。
僕と雪菜が手を繋いでいる事に気付いたカミラが笑顔で言った。
「手を付けるのが早いのね」
「早い者勝ちだろ?」
比呂だってカミラにすぐ手を付けたし。
「ちょっと待ってよ!あと私だけじゃない!彼氏いないの!」
陽葵が悲鳴を挙げる。
善明や翼が笑いながら陽葵を慰めている。
「2学期始まったら適当に探したら?」
「ちょっと蹴り飛ばしただけで泣きわめくガキなんていや!」
「そもそもどうして彼氏候補を蹴飛ばすの!?」
「殴ったら拳がごつくなるからやめとけって天音が!」
「天音!あんた私の娘に妙なこと言わないで!」
「人体に穴開ける翼が言えた事か!」
相変わらずのにぎやかなSHだった。
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飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
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彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
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