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The Light of Life
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(1)
「おい、茉莉」
「どうした菫?」
「なんで私達3人で行動してるんだ?」
「それを言うなら茉莉が朔と遊んでたらいいじゃん?」
そしたら残るのは菫と結莉だけだ。
簡単な事じゃないか。
「そうじゃなくてだな……」
「朔は秋久と一緒だろうが」
「誘えば断らないだろ?」
そんな真似したらあいつ死ぬぞ?
まあ、晶さんならそうなるだろうな。
「菫は少し思い違いをしてないか?」
「どういう意味だよ」
「ここは遊園地じゃない。かといってゲーセンでもない」
今日は紅葉狩りに皆でつり橋に来ているだけだ。
「でも茉奈達は……」
「そうじゃないんだよ」
私達が普通で茉奈と結が異常なんだ。
こんなとこでデートなんて歳でもないだろ。
別に茉奈が羨ましくない。
その証拠にあいつはまだキスすらしてないらしい。
それ以上はダメだって美希も言っていた。
理由はまだ子供だから。
それが私と菫が一緒に行動している理由だ。
紅葉狩りなんて紅葉が食えるわけでもないのにくだらない。
そんなガキがこんなしょぼい場所でデートなんでおかしいだろ。
100歩譲っても菫達と遊んでいる方が普通なんだ。
「確かにつまんないね。こんな枯葉見て何が楽しいんだろう?」
優奈も同感だったみたいだ。
この話の流れをまずいと思ったのだろうか?
水奈が話題を変えようとしていた。
「優奈達は幼稚園で気になる子とかいないのか?」
幼稚園児に聞く質問でもないと思うけど私達もそうだったしいいんだろう。
すぐに反応したのは優奈だった。
まだ子供だ。
すぐに態度に出てしまう。
優奈が明らかに動揺していた。
「ま、まだ見つけてない」
「本当にそうか?」
水奈がそう言ってにやりと笑う。
「その話後でじっくり聞きたいわね」
亜依さんや愛莉も混ざって来た。
そう言う話が大好きなのが渡辺班なんだそうだ。
「優奈に彼氏なんてまだ早い!俺がいるのに何を言っているんだ!」
「お前の方が何を言ってるんだ馬鹿!孫娘の初恋くらい応援してやれ!」
誠さんと神奈さんがそう言っていると本人はそれを肯定するようにうつむいてしまった。
それが普通の反応なんだろうな。
「ねえねえ、優奈。誰なの?教えてよ」
「そうそう。私達にくらいいいじゃない」
愛菜と琴音が言っている。
すると優奈が意外な事を言い出した。
「私の事より琴音の方こそ相談したらいいじゃない!」
「え!?」
驚いたのは琴音の両親のなずなと遊だった。
「優奈。どういう意味だ?」
水奈が聞いたら優奈があっさりばらした。
「琴音と快いつも一緒にお話ししてるよ」
「快か!?」
そう言って遊は悩んでいた。
その様子をなずなが見てにやにや笑ってる。
「へえ、あの二人そう言えば前からいつも一緒だったね」
「私達がいつも一緒だったからかな?」
なずなと花がそんな話をしている。
悩んでいる遊に瑛大さんがアドバイスしていた。
「お前よく考えろ。恋と一緒だよ。彼氏がいようといまいと家の中での行動はそんなに変わらない。今は手を出すな。そうすればきっと……いてぇ!」
「それが親のアドバイスか!?この馬鹿」
亜依さんが瑛大さんをどついていた。
「で、優奈は誰なの?」
亜依さんが聞いていた。
「ここじゃあれだし、昼食の時に話をしたらいいんじゃないか?」
渡辺さんが言っていた。
しかしその方がまずいと思った優奈はすぐに答えた。
理由はこの場にはいない人物だから。
結を尊敬する私の弟は空達と一緒にご当地バーガーを食べる為に売店にいた。
そう、優奈の好きな男は海翔だった。
「なるほどな……」
神奈さんはそう言って考え込んでいた。
その理由も姉の私だからよくわかる。
「それはまた難しいわね……」
恵美がそう言っている。
「やっぱり身分の違いですか?」
水奈が恵美さんに聞いていた。
「水奈。そうじゃないんだ」
神奈さんが水奈に説明している。
確かに私達は石原家のご令嬢。
そして海翔は跡取り息子。
だけど、今時身分不相応なんて化石みたいな考えを恵美さんは持ってはいない。
じゃあ、何が問題なのか。
すごく簡単な事だった。
海翔は石原家の跡取り息子であると同時に片桐家の血を継いだ男子。
あまり関係ないとは昔の愛莉にそっくりらしい結莉を見ていると言い切れない。
「片桐家の男子は恋愛感情については恐ろしいまでに鈍い」
だから茉奈は誰でも分かるように冬夜にチョコレートを贈った。
少々強引に行かないと片桐家の男子を落とすことは難しい。
神奈さんや水奈も失敗している。
そう。多田家の女性では手に負えないんじゃないか?
そんな心配を神奈さんはしていた。
「優奈は海翔に伝えたりはしてるのか?」
水奈が聞くと優奈は首を振った。
海翔を見ていると恥ずかしくて何も言えなくなる。
でもいないと不安でたまらない。
伝えないと横取りされてしまう。
だけど海翔に好きな人がいたらどうしよう?
自爆するだけじゃないのか?
そんな事をずっと悩んでいるらしい。
優奈の話を聞いて私は優奈にアドバイスしてやることにした。
「優奈。海翔は神奈さん達が言うとおりの人間だ。あいつに好きな女子がいる素振りを見せた事はない」
あいつも結と同じなんだ。
将来焼肉と女のどちらかを選べと言われたら躊躇うことなく焼肉を選ぶ。
あいつが女の子と遊んでいたなんて話は私は聞いたことがない。
多分茉奈も同じはずだ。
あとで水奈に聞いてみろ。
多分、優奈の話を聞いて驚くはずだから。
「……優奈。トーヤの孫を攻略するなら下手な駆け引きは不要なんだ」
神奈さんが言っていた。
私もそう思う。
海翔達はとにかくそう言う話に全く興味がない。
その代わり、女の子から好きと言われて「興味ない」とか中二病をこじらせた性格でもない。
普通に喜んでその女の子の事を「好き」だと錯覚する。
錯覚でもなんでもいいから付き合っているという既成事実を作ってしまえばあとは大丈夫だ。
片桐家の男子は絶対に浮気や女遊びなんてしない。
一途に彼女の事だけを大事にする。
……どちらかというと食べ物の次のようなところがあるけど。
躊躇ったら負けだ。
何も言わずにいたら他の子に取られるぞ。
刷り込みと言う奴だ。
好きと言われた子を好きになり、その子の事だけを大事にする。
片桐家の男子に限って「ごめん、他の彼女が出来た」なんてふざけたことは言わない。
「……わかった」
優奈は覚悟を決めたようだ。
大丈夫だ。頑張れ。
「じゃあ、その場所くらいは作ってやらないといけないな」
渡辺さんがそう言うと大人たちが会議を始める。
すると天音達から連絡が入った。
「まだ戻ってこないのか?腹減ったぞ」
今頃ハンバーガーを食べているはずの天音のメッセージを見て私達は戻ることにした。
(2)
「冬夜!どういうつもりだ!!人の孫娘に手を出しやがって」
「お前もいい加減にしろ誠!優奈達に聞こえるだろ!」
席を立って僕に怒鳴りつける誠ととりあえず騒ぐなと座らせるカンナ。
僕達がハンバーガーを食べてる間に何かあったらしい。
今はいつものレストランでハンバーグを食べている。
愛莉が何がつり橋で何があったのか説明してくれた。
……なるほどね。
「で、だ。トーヤ。私も気になる事があるんだが」
カンナが聞いてきた。
「私も転校する前にちゃんと伝えたら上手くいってたのか?」
そういう質問を今愛莉の前でするのか?
愛莉の視線が痛い。
何か上手い言い訳はないだろうか?
「……その質問に答える事に何か意味があるの?」
「やっぱりダメか?」
「そうじゃなくてさ、僕と上手くいかなかったから誠の嫁になったんだろ?」
それに何か問題があるのか?
あったみたいだ。
「トーヤは当事者だから分からない。愛莉もトーヤを手に入れる事が出来たから分からない」
手に入れておくべきものを手に入れなかった事への後悔。
「確かにそうだな。私も空を手に入れることが出来ればそうしたかったな」
「水奈。それを夫の前で言うのはどうなんだ?」
学が水奈の頭を撫でている。
「だったら、少しは優しくしてくれ!私だっていつも大変なんだ」
「朝の忙しい時間に寝てて悠翔や茉奈に朝食作らせてるお前が言うな!」
カンナが水奈を叱っていた。
「……私は神奈の気持ちわかるかな」
愛莉がそう言った。
「なんでだ?愛莉はトーヤ手に入れられたじゃないか」
「でも何度かくじけた事があった」
一度は泣いて荷物をまとめて遠坂家に帰った。
その結果愛莉ママに叱られた。
それだけじゃない、中学生の時に喧嘩して別れる寸前になったことがある。
あの時僕を手放していたらきっと後悔してたかもしれない。
そんな話を愛莉がしていた。
そんなに特別な存在だとは思ってないんだけどな。
「でも神奈さんの言う通りかもしれない。片桐家の男子は恋人を大事にする。浮気なんて絶対に考えない」
その一番の例が冬吾じゃないのだろうか?
翼がそう言った。
彼女の立場で言えば後はどれだけ片桐家の男子を信じることが出来るか。
浮気なんかは絶対にしないと分かっていても恋をするという事はそういう悩みが当たり前の様についてくる。
そんな中で彼氏を信じていられるか。
それはきっと結婚と言う儀式を済ませても終わらない。
多少の浮気を許す勇気。
心配しなくても絶対にそれはない。
よほどの事情が無い限りありえない。
それをずっと信じ続ける事。
そうすれば夫は絶対に裏切らない。
「神奈の言う通り一番大変なのは相手をその気にさせること。交際と言う事実がはっきりしたら絶対に裏切られることはない」
愛莉もそう言っていた。
「ってことはやっぱりあの時ちゃんと告白しておくんだったな」
神奈はそう言って笑っていた。
「神奈はいいじゃん。チャンスがあっただけ。私が片桐君と出会った時は既に愛莉がいたんだから」
そして若気の至りで選んだ相手が今の糞旦那だと亜依さんが頭を抱えている。
「お、俺だって亜依一筋だぜ?」
桐谷君が言うとそばで聞いていた学が言う。
「父さん、母さんが言うなって言ってたけどもういまさらだと思うから言うけど……」
学の家に寄っていくと母さんに言ってるから口裏合わせておいてくれ。
そんなメッセージを亜依さんの目の前で受け取っていた。
亜依さんとカンナは水奈の家事が不安だから定期的に様子を見に行ってるらしい。
放っておくと全部悠翔や茉奈にやらせかねないそうだ。
で、その桐谷君のメッセージを受け取った学は動揺する。
それを見ていた亜依さん達が「誰からだ?」と聞いた。
「父さんから……今夜遊んでくるみたいだ」
「学、スマホ貸せ」
そう言って亜依さんが学のスマホを受け取るとメッセージを送る。
「どこに行くの?」
「育児もほとんど終わったからな。第2の人生ってやつだ!」
「で、どこに行くの?」
「決まってるだろ……」
どうやら桐谷君は片桐家の真逆を行くらしい。
「学も経験したのが水奈だけとか寂しいだろ。いつか暇見て遊びに連れて行ってやるよ」
その日桐谷君は家に帰ることが出来なかったらしい。
それを聞いたカンナが愛莉に言う。
「いいか?これが片桐家の男子と結ばれなかった女性の悲惨な末路だ。お前がどれだけ恵まれているか分かるか?」
「神奈ちゃんの言う通りかもしれない。愛莉ちゃんが結局一番羨ましい立場にいるのよ」
カンナと恵美さんに言われて困惑してる愛莉。
すると石原君が気づいたらしく、優奈達の席を見るように指差す。
どうやらさっそく行動に出たらしい。
(3)
「海翔はこっちの席だ。ほらこい」
ママがそう言うから言われた席についた。
隣には優奈がいる。
なんか様子が変だ。
つり橋を渡った後から急によそよそしくなっていた。
どうしたんだろう?
食事の時は食べる事を考える。
ママもそう言ってたからハンバーグを食べようとした。
するとママが止めていた。
「優奈。そんな状態じゃせっかくのご馳走が台無しだ。大丈夫だ。自信をもって伝えろ」
それが通じた時とても楽しい食事になる。
ママがそう言っていた。
「頑張れ」
愛菜と茉莉がそう言って優奈を励ましている。
優奈は僕を見ていた。
両手共拳を握りしめて緊張していた。
僕に用があるのだろうか?
「優奈、何かあったの?」
女の子が困っている時は助けてやれとにいにも言っていた。
僕が力になれるのなら助けてあげたい。
「海翔、ちゃんと聞いてほしい」
優奈の顔は今にも泣き出しそうな状態だった。
何か言おうとするとにいにが止めていた。
「今は話を聞いてあげたらいいよ」
にいにが言うから優奈が何か言うまでずっと待っていた。
するとようやく覚悟を決めたらしくて優奈が口を開いた。
「海翔……、私は海翔が好き」
好き。
僕は悩んだ。
よくわからない。
僕は変身物のヒーローが好きだ。
焼肉もカレーライスもラーメンも大好きだ。
でも女の子から言われる好きと言う言葉は何か違う気がした。
その証拠に僕の脈拍が上がっている。
なんか恥ずかしくて顔が紅潮しているのが分かった。
どう対応したらいいのか悩んでいた。
パパも何も言わずに僕を見ている。
「おい、海翔。優奈がお前に告白したんだ。ちゃんと返事してやらないとダメだろ!?」
茉莉がそう言った。
それは分かっているんだけど、どう返したらいいのか分からない。
するとにいにが教えてくれた。
「今思ってる事をそのまま伝えたらいいよ。それが海翔の本音だから」
にいには僕の気持ちまで分かってしまうのか。
やっぱりにいにはすごいな。
にいににそう言われたので答える事にした。
「僕が好きなのはアクションヒーローとカレーライスと焼肉と……」
「ちょっと海翔!」
結莉が止めようとするけどにいにが抑えていた。
ママ達も何も言わない。
僕が言いたい事をきっと知っているんだろう。
僕は話を続けた。
「今言ったのが僕の好きな物だよ」
「私は好きじゃないって事?」
優奈は今にも泣き出しそうだ。
僕は首を振った。
「僕にはまだ分からない事がある。例えば今の優奈の気持ち。女の子を好きになるという事が分からない」
だけど優奈の事は嫌いじゃない。
だから守ってあげたい。
優奈が僕と一緒にいる事で泣かずに入れるのならそばにいてあげる。
その代わりにお願いがある。
「僕はどうしたら優奈が望んでいる気持ちになれるのか教えて欲しい」
僕にはまだ分からない事がたくさんある。
恋愛というものについてもそうだ。
だからそれを教えて欲しい。
そう言うと優奈はしばらく考えていた。
考えた後優奈は僕に「目を閉じて」と言った。
何があるんだろう?
言われたとおりに目を閉じると唇に何か温かくて柔らかなものが接触した。
優奈も初めてだからどうやったらいいか分からなくてドラマで見た通りにやったそうだ。
優奈の唇が僕から離れると僕は目を開ける。
恥ずかしそうに優奈が言った。
「喜んで。私の初めてだよ」
優奈はそう言って照れ臭そうに笑っていた。
帰りの車の中で茉莉が結莉に言っている。
「これでキス未経験は結莉だけになったな」
「そうなんだよね~。芳樹は全然気づいてくれないし」
にいにのまだらしい。
「空もそうだったからきっと結もそうなんだろう」
ママが結莉に言っていた。
優奈のやり方が正解なんだ。待ってるだけの女なんて片桐家には通用しないぞ。
(4)
優奈の告白は上手く言ったらしい。
家に帰ると嬉しそうに私達に話をしていた。
しかし不思議なのは学だ。
何かあったのだろうか?
珍しく難しい表情をしていた。
今日は色々あって疲れたのだろう。
子供たちは皆眠ってしまった。
「しかし6歳で恋人が出来るとはな……」
珍しく学が「一緒に飲まないか?」ってビールを持ってきた。
ははーん。そういう事か。
「一ついいことを教えてやろうか?」
「なんだ?」
子供達はスマホじゃなくゲームのボイチャでするから私達も把握できる。
優奈達に妙な事を吹き込もうとする変態がいたら茜に知らせて撃退する。
そのくらいしないと優奈達はきっと私や天音みたいなことをするだろう。
「おじさんの宝物見せてあげようか?」
なんとなく察しがついたけど父親のしか見た事が無いから興味があったので見せてもらった。
気持ち悪いの一言だった。
「おまえ、本気出してこのサイズか?」
空より酷くないか?
そう言って天音が爆笑してその変態は無言で落ちていったけど。
ちなみに私達が小1の時の話だ。
「まさか優奈達も?」
「言ったろ?私も父さんの見た時はそうは思わなかったけど他人のだと気持ち悪いんだ」
二度とそんな真似はしなかった。
だけど翼が母さんにばらしてめちゃくちゃ怒られた。
で、本題なんだけどそんな風に子供達の話題は大体把握している。
私だって母親なんだ。
子供の行動くらい把握するよ。
で、そんな中で言ってたんだ。
悠翔はまだそういう相手はいないみたいだ。
まあ、家事をしているからそこまで気が回らないんだろうな。
唯一の趣味は音楽鑑賞くらいか。
将来大きくなったらギターでも買ってやったらいいかもしれない。
小学生でプロ顔負けのテクニックを持っている奴がいるそうだから。
「……悠翔はいないって事はまさか?」
学が言うと私はにやりと笑った。
「ああ、愛菜にも好きな男の子がいるみたいだ」
「……そうか」
学が明らかに落ち込んでいる。
「そんなに娘に彼氏が出来るのって辛いのか?」
父さんも違う意味で落ち込んでいたらしいけど。
「恋に彼氏が出来た時に少し寂しい思いがあったんだけど、比較にならないな」
もう親の手から離れて行くのか。
そんな風に感じるみたいだ。
私は笑っていた。
「まだ6歳だぞ。どうなるかなんてわからねーよ」
「それもそうだな……」
「それに子供がいなくなっても私が学の側にいるから……」
あ、そういう事か。
あんな父さんでも母さんにとっては大事な人なんだ。
だからいつも慰めていたんだな。
「私も疲れたからそれ飲んだら寝ようぜ」
「そうだな……」
明らかに学は落ち込んでいた。
そんな学に容赦なく言う。
「いいじゃないか、子供たちがちゃんと成長しているんだ。私の事を少しは労ってくれ」
「それは水奈がもう少し母親の役目を果たしてから言え」
「ダメか?」
「……そういう事は飲む前に言ってくれると助かる」
男はアルコールが入ると反応が鈍るらしい。
「じゃあ、今夜はダメなのか?」
「水奈は俺の妻なんだろ?その気にさせる方法くらい知ってるだろ?」
学はそう言って笑みをこぼす。
寝室に行ってベッドに入ると私は服を脱ぐ。
学も同じだったけど動きが止まった。
「どうした?」
「いや、大したことじゃないんだが……」
さっきの話の件が気になったらしい。
変態のそれは気持ちが悪いと思った。
じゃあ、学のはどうなんだ?
そんな風に思ったみたいだ。
「得意気に自慢されても困るぞ」
「俺も修学旅行とかで空達のを見たくらいしかないんだ」
女性の目から見てどうなんだろうと思ったらしい。
私は笑って言った。
「それじゃ私がいっぱい見てるみたいじゃないか?」
「でも父親のは見たんだろ?」
「父さんは確かに馬鹿で変態だ。だけど小学生の時の話だぞ」
女に得意気に見せるような状態なわけないだろ。
「それもそうだな」
「それよりそうやって焦らすのやめてくれ」
私はもうその気になってるんだ。
「優奈達もいつかそうなるんだろうな」
「そうしないと人類滅亡だぞ」
たかが一組のカップルが子作りしなかったくらいでそれはないと思うけど。
貧しい国ほど跡取りが欲しくて子作りをするらしい。
「学が寂しいなら私が相手してやるから」
だから父さんみたいな変な真似はあの子達にしないでくれ。
「すまん、さすがに俺にも出来ないよ」
「まあ、そうだな」
そうして学と久しぶりの夜を過ごした。
優奈達もいつかそうなるだろう。
心配しなくても海翔が求めてくる……と思う。
片桐家の血が入ってるだけに少々不安があった。
「おい、茉莉」
「どうした菫?」
「なんで私達3人で行動してるんだ?」
「それを言うなら茉莉が朔と遊んでたらいいじゃん?」
そしたら残るのは菫と結莉だけだ。
簡単な事じゃないか。
「そうじゃなくてだな……」
「朔は秋久と一緒だろうが」
「誘えば断らないだろ?」
そんな真似したらあいつ死ぬぞ?
まあ、晶さんならそうなるだろうな。
「菫は少し思い違いをしてないか?」
「どういう意味だよ」
「ここは遊園地じゃない。かといってゲーセンでもない」
今日は紅葉狩りに皆でつり橋に来ているだけだ。
「でも茉奈達は……」
「そうじゃないんだよ」
私達が普通で茉奈と結が異常なんだ。
こんなとこでデートなんて歳でもないだろ。
別に茉奈が羨ましくない。
その証拠にあいつはまだキスすらしてないらしい。
それ以上はダメだって美希も言っていた。
理由はまだ子供だから。
それが私と菫が一緒に行動している理由だ。
紅葉狩りなんて紅葉が食えるわけでもないのにくだらない。
そんなガキがこんなしょぼい場所でデートなんでおかしいだろ。
100歩譲っても菫達と遊んでいる方が普通なんだ。
「確かにつまんないね。こんな枯葉見て何が楽しいんだろう?」
優奈も同感だったみたいだ。
この話の流れをまずいと思ったのだろうか?
水奈が話題を変えようとしていた。
「優奈達は幼稚園で気になる子とかいないのか?」
幼稚園児に聞く質問でもないと思うけど私達もそうだったしいいんだろう。
すぐに反応したのは優奈だった。
まだ子供だ。
すぐに態度に出てしまう。
優奈が明らかに動揺していた。
「ま、まだ見つけてない」
「本当にそうか?」
水奈がそう言ってにやりと笑う。
「その話後でじっくり聞きたいわね」
亜依さんや愛莉も混ざって来た。
そう言う話が大好きなのが渡辺班なんだそうだ。
「優奈に彼氏なんてまだ早い!俺がいるのに何を言っているんだ!」
「お前の方が何を言ってるんだ馬鹿!孫娘の初恋くらい応援してやれ!」
誠さんと神奈さんがそう言っていると本人はそれを肯定するようにうつむいてしまった。
それが普通の反応なんだろうな。
「ねえねえ、優奈。誰なの?教えてよ」
「そうそう。私達にくらいいいじゃない」
愛菜と琴音が言っている。
すると優奈が意外な事を言い出した。
「私の事より琴音の方こそ相談したらいいじゃない!」
「え!?」
驚いたのは琴音の両親のなずなと遊だった。
「優奈。どういう意味だ?」
水奈が聞いたら優奈があっさりばらした。
「琴音と快いつも一緒にお話ししてるよ」
「快か!?」
そう言って遊は悩んでいた。
その様子をなずなが見てにやにや笑ってる。
「へえ、あの二人そう言えば前からいつも一緒だったね」
「私達がいつも一緒だったからかな?」
なずなと花がそんな話をしている。
悩んでいる遊に瑛大さんがアドバイスしていた。
「お前よく考えろ。恋と一緒だよ。彼氏がいようといまいと家の中での行動はそんなに変わらない。今は手を出すな。そうすればきっと……いてぇ!」
「それが親のアドバイスか!?この馬鹿」
亜依さんが瑛大さんをどついていた。
「で、優奈は誰なの?」
亜依さんが聞いていた。
「ここじゃあれだし、昼食の時に話をしたらいいんじゃないか?」
渡辺さんが言っていた。
しかしその方がまずいと思った優奈はすぐに答えた。
理由はこの場にはいない人物だから。
結を尊敬する私の弟は空達と一緒にご当地バーガーを食べる為に売店にいた。
そう、優奈の好きな男は海翔だった。
「なるほどな……」
神奈さんはそう言って考え込んでいた。
その理由も姉の私だからよくわかる。
「それはまた難しいわね……」
恵美がそう言っている。
「やっぱり身分の違いですか?」
水奈が恵美さんに聞いていた。
「水奈。そうじゃないんだ」
神奈さんが水奈に説明している。
確かに私達は石原家のご令嬢。
そして海翔は跡取り息子。
だけど、今時身分不相応なんて化石みたいな考えを恵美さんは持ってはいない。
じゃあ、何が問題なのか。
すごく簡単な事だった。
海翔は石原家の跡取り息子であると同時に片桐家の血を継いだ男子。
あまり関係ないとは昔の愛莉にそっくりらしい結莉を見ていると言い切れない。
「片桐家の男子は恋愛感情については恐ろしいまでに鈍い」
だから茉奈は誰でも分かるように冬夜にチョコレートを贈った。
少々強引に行かないと片桐家の男子を落とすことは難しい。
神奈さんや水奈も失敗している。
そう。多田家の女性では手に負えないんじゃないか?
そんな心配を神奈さんはしていた。
「優奈は海翔に伝えたりはしてるのか?」
水奈が聞くと優奈は首を振った。
海翔を見ていると恥ずかしくて何も言えなくなる。
でもいないと不安でたまらない。
伝えないと横取りされてしまう。
だけど海翔に好きな人がいたらどうしよう?
自爆するだけじゃないのか?
そんな事をずっと悩んでいるらしい。
優奈の話を聞いて私は優奈にアドバイスしてやることにした。
「優奈。海翔は神奈さん達が言うとおりの人間だ。あいつに好きな女子がいる素振りを見せた事はない」
あいつも結と同じなんだ。
将来焼肉と女のどちらかを選べと言われたら躊躇うことなく焼肉を選ぶ。
あいつが女の子と遊んでいたなんて話は私は聞いたことがない。
多分茉奈も同じはずだ。
あとで水奈に聞いてみろ。
多分、優奈の話を聞いて驚くはずだから。
「……優奈。トーヤの孫を攻略するなら下手な駆け引きは不要なんだ」
神奈さんが言っていた。
私もそう思う。
海翔達はとにかくそう言う話に全く興味がない。
その代わり、女の子から好きと言われて「興味ない」とか中二病をこじらせた性格でもない。
普通に喜んでその女の子の事を「好き」だと錯覚する。
錯覚でもなんでもいいから付き合っているという既成事実を作ってしまえばあとは大丈夫だ。
片桐家の男子は絶対に浮気や女遊びなんてしない。
一途に彼女の事だけを大事にする。
……どちらかというと食べ物の次のようなところがあるけど。
躊躇ったら負けだ。
何も言わずにいたら他の子に取られるぞ。
刷り込みと言う奴だ。
好きと言われた子を好きになり、その子の事だけを大事にする。
片桐家の男子に限って「ごめん、他の彼女が出来た」なんてふざけたことは言わない。
「……わかった」
優奈は覚悟を決めたようだ。
大丈夫だ。頑張れ。
「じゃあ、その場所くらいは作ってやらないといけないな」
渡辺さんがそう言うと大人たちが会議を始める。
すると天音達から連絡が入った。
「まだ戻ってこないのか?腹減ったぞ」
今頃ハンバーガーを食べているはずの天音のメッセージを見て私達は戻ることにした。
(2)
「冬夜!どういうつもりだ!!人の孫娘に手を出しやがって」
「お前もいい加減にしろ誠!優奈達に聞こえるだろ!」
席を立って僕に怒鳴りつける誠ととりあえず騒ぐなと座らせるカンナ。
僕達がハンバーガーを食べてる間に何かあったらしい。
今はいつものレストランでハンバーグを食べている。
愛莉が何がつり橋で何があったのか説明してくれた。
……なるほどね。
「で、だ。トーヤ。私も気になる事があるんだが」
カンナが聞いてきた。
「私も転校する前にちゃんと伝えたら上手くいってたのか?」
そういう質問を今愛莉の前でするのか?
愛莉の視線が痛い。
何か上手い言い訳はないだろうか?
「……その質問に答える事に何か意味があるの?」
「やっぱりダメか?」
「そうじゃなくてさ、僕と上手くいかなかったから誠の嫁になったんだろ?」
それに何か問題があるのか?
あったみたいだ。
「トーヤは当事者だから分からない。愛莉もトーヤを手に入れる事が出来たから分からない」
手に入れておくべきものを手に入れなかった事への後悔。
「確かにそうだな。私も空を手に入れることが出来ればそうしたかったな」
「水奈。それを夫の前で言うのはどうなんだ?」
学が水奈の頭を撫でている。
「だったら、少しは優しくしてくれ!私だっていつも大変なんだ」
「朝の忙しい時間に寝てて悠翔や茉奈に朝食作らせてるお前が言うな!」
カンナが水奈を叱っていた。
「……私は神奈の気持ちわかるかな」
愛莉がそう言った。
「なんでだ?愛莉はトーヤ手に入れられたじゃないか」
「でも何度かくじけた事があった」
一度は泣いて荷物をまとめて遠坂家に帰った。
その結果愛莉ママに叱られた。
それだけじゃない、中学生の時に喧嘩して別れる寸前になったことがある。
あの時僕を手放していたらきっと後悔してたかもしれない。
そんな話を愛莉がしていた。
そんなに特別な存在だとは思ってないんだけどな。
「でも神奈さんの言う通りかもしれない。片桐家の男子は恋人を大事にする。浮気なんて絶対に考えない」
その一番の例が冬吾じゃないのだろうか?
翼がそう言った。
彼女の立場で言えば後はどれだけ片桐家の男子を信じることが出来るか。
浮気なんかは絶対にしないと分かっていても恋をするという事はそういう悩みが当たり前の様についてくる。
そんな中で彼氏を信じていられるか。
それはきっと結婚と言う儀式を済ませても終わらない。
多少の浮気を許す勇気。
心配しなくても絶対にそれはない。
よほどの事情が無い限りありえない。
それをずっと信じ続ける事。
そうすれば夫は絶対に裏切らない。
「神奈の言う通り一番大変なのは相手をその気にさせること。交際と言う事実がはっきりしたら絶対に裏切られることはない」
愛莉もそう言っていた。
「ってことはやっぱりあの時ちゃんと告白しておくんだったな」
神奈はそう言って笑っていた。
「神奈はいいじゃん。チャンスがあっただけ。私が片桐君と出会った時は既に愛莉がいたんだから」
そして若気の至りで選んだ相手が今の糞旦那だと亜依さんが頭を抱えている。
「お、俺だって亜依一筋だぜ?」
桐谷君が言うとそばで聞いていた学が言う。
「父さん、母さんが言うなって言ってたけどもういまさらだと思うから言うけど……」
学の家に寄っていくと母さんに言ってるから口裏合わせておいてくれ。
そんなメッセージを亜依さんの目の前で受け取っていた。
亜依さんとカンナは水奈の家事が不安だから定期的に様子を見に行ってるらしい。
放っておくと全部悠翔や茉奈にやらせかねないそうだ。
で、その桐谷君のメッセージを受け取った学は動揺する。
それを見ていた亜依さん達が「誰からだ?」と聞いた。
「父さんから……今夜遊んでくるみたいだ」
「学、スマホ貸せ」
そう言って亜依さんが学のスマホを受け取るとメッセージを送る。
「どこに行くの?」
「育児もほとんど終わったからな。第2の人生ってやつだ!」
「で、どこに行くの?」
「決まってるだろ……」
どうやら桐谷君は片桐家の真逆を行くらしい。
「学も経験したのが水奈だけとか寂しいだろ。いつか暇見て遊びに連れて行ってやるよ」
その日桐谷君は家に帰ることが出来なかったらしい。
それを聞いたカンナが愛莉に言う。
「いいか?これが片桐家の男子と結ばれなかった女性の悲惨な末路だ。お前がどれだけ恵まれているか分かるか?」
「神奈ちゃんの言う通りかもしれない。愛莉ちゃんが結局一番羨ましい立場にいるのよ」
カンナと恵美さんに言われて困惑してる愛莉。
すると石原君が気づいたらしく、優奈達の席を見るように指差す。
どうやらさっそく行動に出たらしい。
(3)
「海翔はこっちの席だ。ほらこい」
ママがそう言うから言われた席についた。
隣には優奈がいる。
なんか様子が変だ。
つり橋を渡った後から急によそよそしくなっていた。
どうしたんだろう?
食事の時は食べる事を考える。
ママもそう言ってたからハンバーグを食べようとした。
するとママが止めていた。
「優奈。そんな状態じゃせっかくのご馳走が台無しだ。大丈夫だ。自信をもって伝えろ」
それが通じた時とても楽しい食事になる。
ママがそう言っていた。
「頑張れ」
愛菜と茉莉がそう言って優奈を励ましている。
優奈は僕を見ていた。
両手共拳を握りしめて緊張していた。
僕に用があるのだろうか?
「優奈、何かあったの?」
女の子が困っている時は助けてやれとにいにも言っていた。
僕が力になれるのなら助けてあげたい。
「海翔、ちゃんと聞いてほしい」
優奈の顔は今にも泣き出しそうな状態だった。
何か言おうとするとにいにが止めていた。
「今は話を聞いてあげたらいいよ」
にいにが言うから優奈が何か言うまでずっと待っていた。
するとようやく覚悟を決めたらしくて優奈が口を開いた。
「海翔……、私は海翔が好き」
好き。
僕は悩んだ。
よくわからない。
僕は変身物のヒーローが好きだ。
焼肉もカレーライスもラーメンも大好きだ。
でも女の子から言われる好きと言う言葉は何か違う気がした。
その証拠に僕の脈拍が上がっている。
なんか恥ずかしくて顔が紅潮しているのが分かった。
どう対応したらいいのか悩んでいた。
パパも何も言わずに僕を見ている。
「おい、海翔。優奈がお前に告白したんだ。ちゃんと返事してやらないとダメだろ!?」
茉莉がそう言った。
それは分かっているんだけど、どう返したらいいのか分からない。
するとにいにが教えてくれた。
「今思ってる事をそのまま伝えたらいいよ。それが海翔の本音だから」
にいには僕の気持ちまで分かってしまうのか。
やっぱりにいにはすごいな。
にいににそう言われたので答える事にした。
「僕が好きなのはアクションヒーローとカレーライスと焼肉と……」
「ちょっと海翔!」
結莉が止めようとするけどにいにが抑えていた。
ママ達も何も言わない。
僕が言いたい事をきっと知っているんだろう。
僕は話を続けた。
「今言ったのが僕の好きな物だよ」
「私は好きじゃないって事?」
優奈は今にも泣き出しそうだ。
僕は首を振った。
「僕にはまだ分からない事がある。例えば今の優奈の気持ち。女の子を好きになるという事が分からない」
だけど優奈の事は嫌いじゃない。
だから守ってあげたい。
優奈が僕と一緒にいる事で泣かずに入れるのならそばにいてあげる。
その代わりにお願いがある。
「僕はどうしたら優奈が望んでいる気持ちになれるのか教えて欲しい」
僕にはまだ分からない事がたくさんある。
恋愛というものについてもそうだ。
だからそれを教えて欲しい。
そう言うと優奈はしばらく考えていた。
考えた後優奈は僕に「目を閉じて」と言った。
何があるんだろう?
言われたとおりに目を閉じると唇に何か温かくて柔らかなものが接触した。
優奈も初めてだからどうやったらいいか分からなくてドラマで見た通りにやったそうだ。
優奈の唇が僕から離れると僕は目を開ける。
恥ずかしそうに優奈が言った。
「喜んで。私の初めてだよ」
優奈はそう言って照れ臭そうに笑っていた。
帰りの車の中で茉莉が結莉に言っている。
「これでキス未経験は結莉だけになったな」
「そうなんだよね~。芳樹は全然気づいてくれないし」
にいにのまだらしい。
「空もそうだったからきっと結もそうなんだろう」
ママが結莉に言っていた。
優奈のやり方が正解なんだ。待ってるだけの女なんて片桐家には通用しないぞ。
(4)
優奈の告白は上手く言ったらしい。
家に帰ると嬉しそうに私達に話をしていた。
しかし不思議なのは学だ。
何かあったのだろうか?
珍しく難しい表情をしていた。
今日は色々あって疲れたのだろう。
子供たちは皆眠ってしまった。
「しかし6歳で恋人が出来るとはな……」
珍しく学が「一緒に飲まないか?」ってビールを持ってきた。
ははーん。そういう事か。
「一ついいことを教えてやろうか?」
「なんだ?」
子供達はスマホじゃなくゲームのボイチャでするから私達も把握できる。
優奈達に妙な事を吹き込もうとする変態がいたら茜に知らせて撃退する。
そのくらいしないと優奈達はきっと私や天音みたいなことをするだろう。
「おじさんの宝物見せてあげようか?」
なんとなく察しがついたけど父親のしか見た事が無いから興味があったので見せてもらった。
気持ち悪いの一言だった。
「おまえ、本気出してこのサイズか?」
空より酷くないか?
そう言って天音が爆笑してその変態は無言で落ちていったけど。
ちなみに私達が小1の時の話だ。
「まさか優奈達も?」
「言ったろ?私も父さんの見た時はそうは思わなかったけど他人のだと気持ち悪いんだ」
二度とそんな真似はしなかった。
だけど翼が母さんにばらしてめちゃくちゃ怒られた。
で、本題なんだけどそんな風に子供達の話題は大体把握している。
私だって母親なんだ。
子供の行動くらい把握するよ。
で、そんな中で言ってたんだ。
悠翔はまだそういう相手はいないみたいだ。
まあ、家事をしているからそこまで気が回らないんだろうな。
唯一の趣味は音楽鑑賞くらいか。
将来大きくなったらギターでも買ってやったらいいかもしれない。
小学生でプロ顔負けのテクニックを持っている奴がいるそうだから。
「……悠翔はいないって事はまさか?」
学が言うと私はにやりと笑った。
「ああ、愛菜にも好きな男の子がいるみたいだ」
「……そうか」
学が明らかに落ち込んでいる。
「そんなに娘に彼氏が出来るのって辛いのか?」
父さんも違う意味で落ち込んでいたらしいけど。
「恋に彼氏が出来た時に少し寂しい思いがあったんだけど、比較にならないな」
もう親の手から離れて行くのか。
そんな風に感じるみたいだ。
私は笑っていた。
「まだ6歳だぞ。どうなるかなんてわからねーよ」
「それもそうだな……」
「それに子供がいなくなっても私が学の側にいるから……」
あ、そういう事か。
あんな父さんでも母さんにとっては大事な人なんだ。
だからいつも慰めていたんだな。
「私も疲れたからそれ飲んだら寝ようぜ」
「そうだな……」
明らかに学は落ち込んでいた。
そんな学に容赦なく言う。
「いいじゃないか、子供たちがちゃんと成長しているんだ。私の事を少しは労ってくれ」
「それは水奈がもう少し母親の役目を果たしてから言え」
「ダメか?」
「……そういう事は飲む前に言ってくれると助かる」
男はアルコールが入ると反応が鈍るらしい。
「じゃあ、今夜はダメなのか?」
「水奈は俺の妻なんだろ?その気にさせる方法くらい知ってるだろ?」
学はそう言って笑みをこぼす。
寝室に行ってベッドに入ると私は服を脱ぐ。
学も同じだったけど動きが止まった。
「どうした?」
「いや、大したことじゃないんだが……」
さっきの話の件が気になったらしい。
変態のそれは気持ちが悪いと思った。
じゃあ、学のはどうなんだ?
そんな風に思ったみたいだ。
「得意気に自慢されても困るぞ」
「俺も修学旅行とかで空達のを見たくらいしかないんだ」
女性の目から見てどうなんだろうと思ったらしい。
私は笑って言った。
「それじゃ私がいっぱい見てるみたいじゃないか?」
「でも父親のは見たんだろ?」
「父さんは確かに馬鹿で変態だ。だけど小学生の時の話だぞ」
女に得意気に見せるような状態なわけないだろ。
「それもそうだな」
「それよりそうやって焦らすのやめてくれ」
私はもうその気になってるんだ。
「優奈達もいつかそうなるんだろうな」
「そうしないと人類滅亡だぞ」
たかが一組のカップルが子作りしなかったくらいでそれはないと思うけど。
貧しい国ほど跡取りが欲しくて子作りをするらしい。
「学が寂しいなら私が相手してやるから」
だから父さんみたいな変な真似はあの子達にしないでくれ。
「すまん、さすがに俺にも出来ないよ」
「まあ、そうだな」
そうして学と久しぶりの夜を過ごした。
優奈達もいつかそうなるだろう。
心配しなくても海翔が求めてくる……と思う。
片桐家の血が入ってるだけに少々不安があった。
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