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Timing
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(1)
「誠司、少し速度落とした方がいいんじゃない?」
パオラが聞いていた。
日本の道路は狭いうえにカーブが多い。
挙句に燃費をうたい文句にしている車が燃費なんて全く考えないくらいに飛ばしている。
法定速度を守って走行すると煽られる。
もちろんそんな真似したら返り討ちにしてやるけど。
「お前は自分の立場を考えろ!そんな真似したらマスコミに叩かれるだけだろうが!」
母さんにそう怒られたことがある。
「そんなの恵美さんがもみ消してくれるよ」
俺と冬吾は既にテレビに出たりすることがあるのでUSEと契約をしておいた。
面倒な事は全部大地達が請け負ってくれる。
「誠もそうだった。お前誰を乗せて運転してるのか少しは考えろ」
「俺は事故らないよ」
事故った奴は”ハードラックとダンス”っちまっただけ。
さらに怒られたのは言うまでもない。
「冬吾達ついてこれてないよ?」
冬吾達はやけにゆっくり走る。
いつもそうだ。
だけど不思議と信号で止まっていると冬吾の車がいつの間にか後ろにいる。
目的地について車を降りると冬吾に聞いている。
すると冬吾が言ってた。
「そういう風になってるんだって父さんが言ってたんだ」
どんなに飛ばそうと法定速度を守っていようと信号のタイミングがあるから実はそんなに差がつかない。
冬吾は信号のタイミングに合わせて走ってるだけだという。
片桐家の子供はみんなそうらしい。
空達も同じだったそうだ。
もっとも飛ばすという事を前提に走り出すと誰もついてこれないらしい。
それは冬吾の父さんがそうだから。
その恐ろしさは天音が一言で表現していたと姉さんから聞いていた。
「死ぬほど怖いぞ」
あの天音ですら二度と峠で走ろうなんて気が起きないくらいの速度でダウンヒルするらしい。
もちろん天音にだってある程度の能力はある。
だから余計に怖いんだそうだ。
天音の限界を完全に無視した狂気の速度で山道を降りていく。
あの天音が恐怖のあまりに泣いて叫んだそうだ。
だから父親は叱ったりしない。
「茜のチューニングも見事だね。これなら安心だ」
そんな事を言った。
ずっとAT車で走ってた父親がMTのスポーツ車に乗っても慣れている自分が有利だろう。
そう思って父親が持ちかけた勝負を受けてそしてその自信をズタボロにされた。
天音では自分の父親の領域には絶対に踏み込めない。
そう思って峠で遊ぶのをやめたらしい。
茜や冬莉も同じなんだそうだ。
自分たちは女性で彼氏がいる。
だったら運転なんて彼氏任せでいいだろう。
そんな考えを片桐家の娘は持つそうだ。
翼にいたっては母親の愛莉さんに似たらしい。
「私以外の女性を助手席に乗せたらダメ!」
善明にそう注意してるらしい。
空の能力も父親に負けず劣らずらしい。
遊や天が馬鹿みたいにスピードを出すからその対策で「空に運転してもらえ」と天音が言った。
すると最初はのんびりしていた空だったけど山に登りだした途端に速度を上げる。
2人の方が絶対速いと思ってた自信は根底から覆された。
止めに帰る際「この車の限界近くまでやってみるね」と空が言って恐怖したらしい。
何をさせても空には敵わない。
唯一冬吾が勝てるのはサッカーだけだと言っていた。
球技が苦手とかどうでもいいくらいに思える空。
「まあ、ここで話していてもしょうがないしとりあえず回ろうよ」
瞳子が言うので子供達を連れて昭和の町を散策することにした。
とはいえ、生まれる前の景観を楽しめと言われても何が楽しいのか分からない。
しかし瞳子とパオラは様々なものを眺めてはスマホで写真を撮っていた。
雪も同じだ。
カブトムシなどを見ては瞳子に訴える。
それを察した瞳子がカブトムシを撮る。
誠司郎はしっかりと俺が手を繋いでいる。
誠司郎を放っておくと一人であちこち歩き回る頃になったから。
雪にいたって瞳子に甘えていたいのか瞳子と手をつなぐ。
すると何かに気づいた瞳子が結を見る。
「雪、ちゃんと前を向いて歩きなさい」
どういう意味だろう?
俺はパオラを見る。
パオラは知っているようだった。
頻繁に瞳子と連絡をしてるそうだから。
雪は文字通りうつむいたまま歩いていた。
文字通り前を向いてないと危ないから。
しかし雪はそんなレベルじゃなかった。
雪の前に立ちふさがる物は誰だろうと道を譲る。
どういう理屈なのかは分からないけど。
冬吾もサッカーをし始めた頃は同じことをしていた。
周りの状況はなんとなくわかるからと足元のボールを見ていた。
「あの子の前に立ちふさがることが出来る存在は瞳子くらいなんだ」
冬吾もそう言って笑っていた。
迷路があったので子供と一緒に道を探している。
「雪、どっちかな?」
瞳子が聞くと迷わず雪は進んでいく。
雪の中では迷路の構造が把握できてるらしい。
「この先クイズもあるみたいだから先に行こう?」
瞳子がそう言うので俺達は黙ってついて行った。
すると問題の所で雪が待っていた。
背が低すぎて問題を見ることが出来ないから。
まだ文字は読めないと思っていた。
瞳子の顔を見ている。
昭和時代のレトロなクイズ。
こんなの分かるわけないと思ったら結が突然選択肢の一つを選びだした。
まさか文字が分かるのか?
「ずっとテレビを見ていたから」
絵本を読んだりもしていたと思ったら大人向けの雑誌を読むようになった。
すぐに小説や辞典を読むようになった。
実際に雪の示した通りの回答をすると全問正解してお菓子を景品にもらっていた。
それを黙々と食べる雪。
食事中に絶対に邪魔したらいけないと瞳子から聞いていた。
雪はまだ自分の感情をコントロールできていないんだろう。
実際食事中に話しかける誠司郎を露骨に嫌がっていた。
「なあ、冬吾」
「どうした?」
「どうして雪って、あそこまで誠司郎に対してあたりが強いんだ?」
どう考えても嫌っているだろ?
でも誠司郎が何か悪いことをしたというわけでもなさそうだし、どういう理由があるんだ?
しかし冬吾と瞳子に聞いても分からなかった。
ただ、冬吾もおかしいと思って父親に聞いたらしい。
すると父親は笑って答えたそうだ。
「あの子が特別だと思ったら大間違い。あれが正しい反応なんだ」
「え?」
「あの子は普通の女の子だよ」
普通ならそこで愛莉さんが何かしら父親に言うけど愛莉さんも笑っていた。
「母さんもそうだったの」
小さな子供なら当たり前の事だから気にしないでいい。
そのうち変化があるだろうから。
そう言って終わったらしい。
もちろん瞳子にも分からなかった。
しかしパオラは違うみたいだった。
冬吾の父親の言葉で確信を得たらしい。
「結達を見ていたら日本人はそういう物なのだろうかと思ったけどやっぱり子供はそうだったんだね」
「パオラ、どういう意味?」
俺がパオラに聞くとパオラは笑った。
「誠司も小さい時からモテたでしょ?」
「誠司君は小さい時から運動神経はいいし、この見た目だからそれはモテたみたいだよ」
瞳子がそう言って笑っていた。
「それが何か関係あるのか?」
「冬吾や誠司では多分雪の気持ちは分からないと思う」
「パオラには分かるのか?」
「ええ、私にもそういう時期があったから」
だけどそれは雪の前で言う事じゃない。
だから言えない。
パオラはそう言った。
俺と冬吾は悩んでいた。
雪は何を考えているんだろう?
(2)
昼くらいになると昼食にしようと誠司が言い出した。
確かにお腹が空いたけどいくつか問題がある。
まずどこで食べるか。
昭和の町というくらいの観光地。
何を食べても高い。
それに父さんが言っていた。
「クジラの肉が入ったチャーハンだけは止めておきなさい。すごくまずいんだ」
「冬夜さんはどうしてそういう風に好き嫌いを子供に勧めるんですか!」
「愛莉だって一緒に食べに行った時値段の割には微妙だって言ってたじゃないか」
「……うぅ」
「で、どこで食べるのが良いと思うの?」
僕が聞いてみた。
「一度街を離れて国道沿いにファミレスがあるからそこがいいかもしれない」
子供もいるしちょうどいいだろう。
「じゃ、それでいいじゃん?俺達はどこでもいいぞ」
「誠司ならそう言うと思ったんだけど問題はもう一つあるんだ」
それはお土産。
多分父さん達の事だから食べ物でいいだろうけどまた一つ父さんから注文があった。
「あそこの名物の納豆以外の物にしてくれると嬉しいんだけど」
「冬夜さんいい加減にしてください!大体冬夜さん納豆は好きじゃないですか!」
「それが違うんだよ愛莉」
「何が違うんですか?」
ここにある納豆は長持ちしない。
2週間くらいが限度だ。
納豆なのに痛む。
それに普通の納豆より少し大きい。
止めに味付けのたれが無い。
なるほど……。
「だったらいつも通り卵と醤油をかけたらいいじゃないですか!」
「愛莉、それなら納豆いらないだろ?普通にTKGでいいじゃないか」
納豆の粘りとあのたれの味が絶妙なのがいいんだ。
空はそれすら分からないくらい醤油をかけて食べてるらしいけど。
「冬夜さんは大人なのですよ!子供みたいな事言わないでください!」
「だから納豆以外にしてくれって言ってるだけじゃないか」
と、言うわけで何を買えばいいか悩んでる。
しかし瞳子はあっさりと解決策を考えていた。
「漬物か煎餅とかでいいんじゃないかな?」
「でも父さんおかずでご飯食べちゃうからあまり漬物食べないんだ」
僕が瞳子にそう言うと瞳子はくすっと笑っていた。
「自分の父親なのに気づいてないんだね。冬吾さんと一緒だよ」
「え?」
僕は漬物があるとおかずを先に食べて漬物と一緒にご飯を食べる。
父さんもおかずを食べてご飯が残ったらそうしてるらしい。
「で、煎餅は?」
「多分片桐家の子供ならではなんでしょうね」
雪もすでに生えている歯とあごの力で煎餅くらいなら噛み砕くらしい。
母さんはハラハラしながら見てるみたいだけど。
瞳子がそう言うので言う通りに買って昭和の町を出てファミレスに入る。
そこでも問題が起きた。
誠司郎を隣に座らせると雪が警戒する。
近づくな。
そう言わんばかりに嫌悪感を垂れ流していた。
昼ご飯を食べ終わるとそのまま家に帰って行った。
雪は部屋に戻ってスケッチブックに絵を描き始めた。
あの子はそのうち絵日記とか書きそうだな。
夕飯の時間になると部屋から出てきて自分の席に座る。
「今日はどうだった?」
父さんが聞くけど雪は何も答えなかった。
さすがにまずいと思って叱ろうとしたけど、父さんが「まあいいよ」と言って笑っていた。
夕食が済むと僕は雪をお風呂に入れる。
その時に雪になんとなく聞いてみた。
「なんで雪は誠司郎に冷たいの?」
あんなに優しい男の子は滅多にいないよ。
しかし雪からは全く想定外の返事が返って来た。
「だからだよ」
雪の言葉の意味を全く理解できなかった。
「どうして?雪に何かしたわけじゃないだろ?」
「理由なんかない」
父さんは僕の考えてる事を手に取るように把握していたけど、僕は雪の気持ちが分からなかった。
僕は父親失格なのだろうか?
風呂から出ると、2人は部屋に戻る。
父さんとリビングで今日の話とお風呂での出来事を話していた。
すると父さんは笑った。
「多分そうだと思ったよ」
父さんは知っていた?
でもそれなのに雪を自由にしている。
人を憎むのはいけないことじゃないのか?
瞳子にもさすがに理解できなかったらしくて、瞳子が説明をしてもらおうとお願いしていた。
すると母さんも加わった。
「冬夜さん。これは教えない方が良いのでしょうね」
「そうだね。2人の親としての最初の試練にちょうどいいかもしれない」
2人で悩んで雪の真意を解いてみせろ。
父さんはそう言っていた。
でも何もしてない誠司郎を嫌う理由なんてどうやって探せと言うんだ。
「言っておくけど雪に聞いても無駄だからね。雪が結みたいな性格なら素直に言うだろうけど」
「あの……私の育て方が悪かったのでしょうか?」
瞳子が不安そうに聞いていた。
あまりにも歪んでいる性格は瞳子が原因なのかもと思ったのだろう。
だけど母さんが瞳子に注意する。
「それ、絶対に雪の前で言ってはいけません。お手本となる瞳子が悩めば雪は何を頼るの?」
「ですが……」
不安になっている瞳子を放っておくと仕事にも支障が出るかもしれない。
そう判断した父さんが一言言った。
「だめだよ、瞳子。もっと自分の事を思い出してごらん」
「え?」
「……瞳子は幼稚園の時から冬吾と一緒だったね?」
「はい」
「それがヒント。瞳子と冬吾が交際を始めたきっかけは?」
まだわからないならもう少しヒントをあげる。
「何が異常だと決めつけるならむしろ誠司郎が異常なんだ」
雪は凄く普通に育っている。
だから雪の心配をする必要はない。
「他人を嫌う事が普通なの?」
「冬吾、もう少し自分の娘の事を知ってあげないと可哀そうだよ」
雪は僕の娘。
だから女親の瞳子がもっと雪を理解してあげないといけない。
子供は正直だ。
だけど子供だからこその未熟な感情がある。
それが何かを気づいてやるのが父親だろ?
「冬吾と瞳子は雪は何もしなくても自分で何でもするようになった。そう思ってるでしょ」
「やっぱりダメでしたか?」
「ある意味ダメだね。雪を観察することを忘れている」
雪が普段何を考え、どんなことに興味を持って、何を見ているかをよく観察してみるといい。
だけど瞳子も教師の仕事があるから二人を見る時かない。
でも、少しだけ雪の事を見ていたらすぐに気づくはず。
普通ならね。
ただ二人にはまだよく分かってない物がある。
だから雪の行動が不思議に思うんだろう。
「それはなんですか?」
瞳子が聞くと父さんは笑顔で答えた。
「女の子の純情」
それは冬吾や誠司でも絶対にわからないごく普通の感情。
「愛莉さんには分かるのですか?」
「ええ、瞳子もそうだったじゃないですか」
あの子には一つ欠けている物がある。
だけどそれは異常なことじゃない。
むしろそれが当たり前の年頃なんだ。
あの子の心は決して歪んでなんかいない。
むしろとても綺麗な感情なんだ。
それを親である僕達が見守ってあげないとダメだよ。
「ヒントはこのくらいでいいのでしょうか?」
「そうだね。もう少し2人で考える時間が必要かもしれない」
先に寝るよ。
後は戸締りと電気確認して寝なさい。
そう言って両親は部屋に戻って行った。
「冬吾さんは何か手がかり無いですか?」
「うーん、僕は確かに人の心を理解しちゃうから」
娘の心が分からないのがショックだけど。
誠司なら何か思う所があるかもしれない。
グルチャでみんなに聞いてみた。
「それ、母さんも言ってた」
誠司が答えた。
女の子にもいろんなタイプがあるんだ。
雪もそのタイプの一つに過ぎない。
それでも勇気を出した奴にだけ恋人を得る資格がある。
だからほっとけ。
「私も愛莉に賛成だな。雪をもっと信じてやれ。あいつは絶対に性格がねじれているわけじゃない」
天音がそう言っていた。
「そういや、梨々香もそんな感じだったね」
「まあ、そうだね。私も焦ってたから」
純也と梨々香も言っている。
「雪は私や天音と全く違うタイプなんだ。それでもいつか変わる時が来るよ」
水奈が言うとパオラが「私の娘なのにどうしてそうなるんですか?」と笑っていた。
「パパが2人で考えろって言ったんでしょ?じゃあ、私は何も言えない」
翼はそう言っていた。
多分、今までの片桐家の娘では雪のような性格は絶対にいなかった。
ましてやまだ1歳。
そんなに気にする事でもない。
時期が来ればいつか変化が現れる。
やっぱり父さん達と同じ事を言っている。
僕達はさっぱり分からなかった。
ただ、翼の息子の結が言っていた。
「雪はきっと諦めてる」
どういう事?
私達は自分の子供の持つ感情に気づくことが出来ないまま。
その行動を見守る事しかできなかった。
「誠司、少し速度落とした方がいいんじゃない?」
パオラが聞いていた。
日本の道路は狭いうえにカーブが多い。
挙句に燃費をうたい文句にしている車が燃費なんて全く考えないくらいに飛ばしている。
法定速度を守って走行すると煽られる。
もちろんそんな真似したら返り討ちにしてやるけど。
「お前は自分の立場を考えろ!そんな真似したらマスコミに叩かれるだけだろうが!」
母さんにそう怒られたことがある。
「そんなの恵美さんがもみ消してくれるよ」
俺と冬吾は既にテレビに出たりすることがあるのでUSEと契約をしておいた。
面倒な事は全部大地達が請け負ってくれる。
「誠もそうだった。お前誰を乗せて運転してるのか少しは考えろ」
「俺は事故らないよ」
事故った奴は”ハードラックとダンス”っちまっただけ。
さらに怒られたのは言うまでもない。
「冬吾達ついてこれてないよ?」
冬吾達はやけにゆっくり走る。
いつもそうだ。
だけど不思議と信号で止まっていると冬吾の車がいつの間にか後ろにいる。
目的地について車を降りると冬吾に聞いている。
すると冬吾が言ってた。
「そういう風になってるんだって父さんが言ってたんだ」
どんなに飛ばそうと法定速度を守っていようと信号のタイミングがあるから実はそんなに差がつかない。
冬吾は信号のタイミングに合わせて走ってるだけだという。
片桐家の子供はみんなそうらしい。
空達も同じだったそうだ。
もっとも飛ばすという事を前提に走り出すと誰もついてこれないらしい。
それは冬吾の父さんがそうだから。
その恐ろしさは天音が一言で表現していたと姉さんから聞いていた。
「死ぬほど怖いぞ」
あの天音ですら二度と峠で走ろうなんて気が起きないくらいの速度でダウンヒルするらしい。
もちろん天音にだってある程度の能力はある。
だから余計に怖いんだそうだ。
天音の限界を完全に無視した狂気の速度で山道を降りていく。
あの天音が恐怖のあまりに泣いて叫んだそうだ。
だから父親は叱ったりしない。
「茜のチューニングも見事だね。これなら安心だ」
そんな事を言った。
ずっとAT車で走ってた父親がMTのスポーツ車に乗っても慣れている自分が有利だろう。
そう思って父親が持ちかけた勝負を受けてそしてその自信をズタボロにされた。
天音では自分の父親の領域には絶対に踏み込めない。
そう思って峠で遊ぶのをやめたらしい。
茜や冬莉も同じなんだそうだ。
自分たちは女性で彼氏がいる。
だったら運転なんて彼氏任せでいいだろう。
そんな考えを片桐家の娘は持つそうだ。
翼にいたっては母親の愛莉さんに似たらしい。
「私以外の女性を助手席に乗せたらダメ!」
善明にそう注意してるらしい。
空の能力も父親に負けず劣らずらしい。
遊や天が馬鹿みたいにスピードを出すからその対策で「空に運転してもらえ」と天音が言った。
すると最初はのんびりしていた空だったけど山に登りだした途端に速度を上げる。
2人の方が絶対速いと思ってた自信は根底から覆された。
止めに帰る際「この車の限界近くまでやってみるね」と空が言って恐怖したらしい。
何をさせても空には敵わない。
唯一冬吾が勝てるのはサッカーだけだと言っていた。
球技が苦手とかどうでもいいくらいに思える空。
「まあ、ここで話していてもしょうがないしとりあえず回ろうよ」
瞳子が言うので子供達を連れて昭和の町を散策することにした。
とはいえ、生まれる前の景観を楽しめと言われても何が楽しいのか分からない。
しかし瞳子とパオラは様々なものを眺めてはスマホで写真を撮っていた。
雪も同じだ。
カブトムシなどを見ては瞳子に訴える。
それを察した瞳子がカブトムシを撮る。
誠司郎はしっかりと俺が手を繋いでいる。
誠司郎を放っておくと一人であちこち歩き回る頃になったから。
雪にいたって瞳子に甘えていたいのか瞳子と手をつなぐ。
すると何かに気づいた瞳子が結を見る。
「雪、ちゃんと前を向いて歩きなさい」
どういう意味だろう?
俺はパオラを見る。
パオラは知っているようだった。
頻繁に瞳子と連絡をしてるそうだから。
雪は文字通りうつむいたまま歩いていた。
文字通り前を向いてないと危ないから。
しかし雪はそんなレベルじゃなかった。
雪の前に立ちふさがる物は誰だろうと道を譲る。
どういう理屈なのかは分からないけど。
冬吾もサッカーをし始めた頃は同じことをしていた。
周りの状況はなんとなくわかるからと足元のボールを見ていた。
「あの子の前に立ちふさがることが出来る存在は瞳子くらいなんだ」
冬吾もそう言って笑っていた。
迷路があったので子供と一緒に道を探している。
「雪、どっちかな?」
瞳子が聞くと迷わず雪は進んでいく。
雪の中では迷路の構造が把握できてるらしい。
「この先クイズもあるみたいだから先に行こう?」
瞳子がそう言うので俺達は黙ってついて行った。
すると問題の所で雪が待っていた。
背が低すぎて問題を見ることが出来ないから。
まだ文字は読めないと思っていた。
瞳子の顔を見ている。
昭和時代のレトロなクイズ。
こんなの分かるわけないと思ったら結が突然選択肢の一つを選びだした。
まさか文字が分かるのか?
「ずっとテレビを見ていたから」
絵本を読んだりもしていたと思ったら大人向けの雑誌を読むようになった。
すぐに小説や辞典を読むようになった。
実際に雪の示した通りの回答をすると全問正解してお菓子を景品にもらっていた。
それを黙々と食べる雪。
食事中に絶対に邪魔したらいけないと瞳子から聞いていた。
雪はまだ自分の感情をコントロールできていないんだろう。
実際食事中に話しかける誠司郎を露骨に嫌がっていた。
「なあ、冬吾」
「どうした?」
「どうして雪って、あそこまで誠司郎に対してあたりが強いんだ?」
どう考えても嫌っているだろ?
でも誠司郎が何か悪いことをしたというわけでもなさそうだし、どういう理由があるんだ?
しかし冬吾と瞳子に聞いても分からなかった。
ただ、冬吾もおかしいと思って父親に聞いたらしい。
すると父親は笑って答えたそうだ。
「あの子が特別だと思ったら大間違い。あれが正しい反応なんだ」
「え?」
「あの子は普通の女の子だよ」
普通ならそこで愛莉さんが何かしら父親に言うけど愛莉さんも笑っていた。
「母さんもそうだったの」
小さな子供なら当たり前の事だから気にしないでいい。
そのうち変化があるだろうから。
そう言って終わったらしい。
もちろん瞳子にも分からなかった。
しかしパオラは違うみたいだった。
冬吾の父親の言葉で確信を得たらしい。
「結達を見ていたら日本人はそういう物なのだろうかと思ったけどやっぱり子供はそうだったんだね」
「パオラ、どういう意味?」
俺がパオラに聞くとパオラは笑った。
「誠司も小さい時からモテたでしょ?」
「誠司君は小さい時から運動神経はいいし、この見た目だからそれはモテたみたいだよ」
瞳子がそう言って笑っていた。
「それが何か関係あるのか?」
「冬吾や誠司では多分雪の気持ちは分からないと思う」
「パオラには分かるのか?」
「ええ、私にもそういう時期があったから」
だけどそれは雪の前で言う事じゃない。
だから言えない。
パオラはそう言った。
俺と冬吾は悩んでいた。
雪は何を考えているんだろう?
(2)
昼くらいになると昼食にしようと誠司が言い出した。
確かにお腹が空いたけどいくつか問題がある。
まずどこで食べるか。
昭和の町というくらいの観光地。
何を食べても高い。
それに父さんが言っていた。
「クジラの肉が入ったチャーハンだけは止めておきなさい。すごくまずいんだ」
「冬夜さんはどうしてそういう風に好き嫌いを子供に勧めるんですか!」
「愛莉だって一緒に食べに行った時値段の割には微妙だって言ってたじゃないか」
「……うぅ」
「で、どこで食べるのが良いと思うの?」
僕が聞いてみた。
「一度街を離れて国道沿いにファミレスがあるからそこがいいかもしれない」
子供もいるしちょうどいいだろう。
「じゃ、それでいいじゃん?俺達はどこでもいいぞ」
「誠司ならそう言うと思ったんだけど問題はもう一つあるんだ」
それはお土産。
多分父さん達の事だから食べ物でいいだろうけどまた一つ父さんから注文があった。
「あそこの名物の納豆以外の物にしてくれると嬉しいんだけど」
「冬夜さんいい加減にしてください!大体冬夜さん納豆は好きじゃないですか!」
「それが違うんだよ愛莉」
「何が違うんですか?」
ここにある納豆は長持ちしない。
2週間くらいが限度だ。
納豆なのに痛む。
それに普通の納豆より少し大きい。
止めに味付けのたれが無い。
なるほど……。
「だったらいつも通り卵と醤油をかけたらいいじゃないですか!」
「愛莉、それなら納豆いらないだろ?普通にTKGでいいじゃないか」
納豆の粘りとあのたれの味が絶妙なのがいいんだ。
空はそれすら分からないくらい醤油をかけて食べてるらしいけど。
「冬夜さんは大人なのですよ!子供みたいな事言わないでください!」
「だから納豆以外にしてくれって言ってるだけじゃないか」
と、言うわけで何を買えばいいか悩んでる。
しかし瞳子はあっさりと解決策を考えていた。
「漬物か煎餅とかでいいんじゃないかな?」
「でも父さんおかずでご飯食べちゃうからあまり漬物食べないんだ」
僕が瞳子にそう言うと瞳子はくすっと笑っていた。
「自分の父親なのに気づいてないんだね。冬吾さんと一緒だよ」
「え?」
僕は漬物があるとおかずを先に食べて漬物と一緒にご飯を食べる。
父さんもおかずを食べてご飯が残ったらそうしてるらしい。
「で、煎餅は?」
「多分片桐家の子供ならではなんでしょうね」
雪もすでに生えている歯とあごの力で煎餅くらいなら噛み砕くらしい。
母さんはハラハラしながら見てるみたいだけど。
瞳子がそう言うので言う通りに買って昭和の町を出てファミレスに入る。
そこでも問題が起きた。
誠司郎を隣に座らせると雪が警戒する。
近づくな。
そう言わんばかりに嫌悪感を垂れ流していた。
昼ご飯を食べ終わるとそのまま家に帰って行った。
雪は部屋に戻ってスケッチブックに絵を描き始めた。
あの子はそのうち絵日記とか書きそうだな。
夕飯の時間になると部屋から出てきて自分の席に座る。
「今日はどうだった?」
父さんが聞くけど雪は何も答えなかった。
さすがにまずいと思って叱ろうとしたけど、父さんが「まあいいよ」と言って笑っていた。
夕食が済むと僕は雪をお風呂に入れる。
その時に雪になんとなく聞いてみた。
「なんで雪は誠司郎に冷たいの?」
あんなに優しい男の子は滅多にいないよ。
しかし雪からは全く想定外の返事が返って来た。
「だからだよ」
雪の言葉の意味を全く理解できなかった。
「どうして?雪に何かしたわけじゃないだろ?」
「理由なんかない」
父さんは僕の考えてる事を手に取るように把握していたけど、僕は雪の気持ちが分からなかった。
僕は父親失格なのだろうか?
風呂から出ると、2人は部屋に戻る。
父さんとリビングで今日の話とお風呂での出来事を話していた。
すると父さんは笑った。
「多分そうだと思ったよ」
父さんは知っていた?
でもそれなのに雪を自由にしている。
人を憎むのはいけないことじゃないのか?
瞳子にもさすがに理解できなかったらしくて、瞳子が説明をしてもらおうとお願いしていた。
すると母さんも加わった。
「冬夜さん。これは教えない方が良いのでしょうね」
「そうだね。2人の親としての最初の試練にちょうどいいかもしれない」
2人で悩んで雪の真意を解いてみせろ。
父さんはそう言っていた。
でも何もしてない誠司郎を嫌う理由なんてどうやって探せと言うんだ。
「言っておくけど雪に聞いても無駄だからね。雪が結みたいな性格なら素直に言うだろうけど」
「あの……私の育て方が悪かったのでしょうか?」
瞳子が不安そうに聞いていた。
あまりにも歪んでいる性格は瞳子が原因なのかもと思ったのだろう。
だけど母さんが瞳子に注意する。
「それ、絶対に雪の前で言ってはいけません。お手本となる瞳子が悩めば雪は何を頼るの?」
「ですが……」
不安になっている瞳子を放っておくと仕事にも支障が出るかもしれない。
そう判断した父さんが一言言った。
「だめだよ、瞳子。もっと自分の事を思い出してごらん」
「え?」
「……瞳子は幼稚園の時から冬吾と一緒だったね?」
「はい」
「それがヒント。瞳子と冬吾が交際を始めたきっかけは?」
まだわからないならもう少しヒントをあげる。
「何が異常だと決めつけるならむしろ誠司郎が異常なんだ」
雪は凄く普通に育っている。
だから雪の心配をする必要はない。
「他人を嫌う事が普通なの?」
「冬吾、もう少し自分の娘の事を知ってあげないと可哀そうだよ」
雪は僕の娘。
だから女親の瞳子がもっと雪を理解してあげないといけない。
子供は正直だ。
だけど子供だからこその未熟な感情がある。
それが何かを気づいてやるのが父親だろ?
「冬吾と瞳子は雪は何もしなくても自分で何でもするようになった。そう思ってるでしょ」
「やっぱりダメでしたか?」
「ある意味ダメだね。雪を観察することを忘れている」
雪が普段何を考え、どんなことに興味を持って、何を見ているかをよく観察してみるといい。
だけど瞳子も教師の仕事があるから二人を見る時かない。
でも、少しだけ雪の事を見ていたらすぐに気づくはず。
普通ならね。
ただ二人にはまだよく分かってない物がある。
だから雪の行動が不思議に思うんだろう。
「それはなんですか?」
瞳子が聞くと父さんは笑顔で答えた。
「女の子の純情」
それは冬吾や誠司でも絶対にわからないごく普通の感情。
「愛莉さんには分かるのですか?」
「ええ、瞳子もそうだったじゃないですか」
あの子には一つ欠けている物がある。
だけどそれは異常なことじゃない。
むしろそれが当たり前の年頃なんだ。
あの子の心は決して歪んでなんかいない。
むしろとても綺麗な感情なんだ。
それを親である僕達が見守ってあげないとダメだよ。
「ヒントはこのくらいでいいのでしょうか?」
「そうだね。もう少し2人で考える時間が必要かもしれない」
先に寝るよ。
後は戸締りと電気確認して寝なさい。
そう言って両親は部屋に戻って行った。
「冬吾さんは何か手がかり無いですか?」
「うーん、僕は確かに人の心を理解しちゃうから」
娘の心が分からないのがショックだけど。
誠司なら何か思う所があるかもしれない。
グルチャでみんなに聞いてみた。
「それ、母さんも言ってた」
誠司が答えた。
女の子にもいろんなタイプがあるんだ。
雪もそのタイプの一つに過ぎない。
それでも勇気を出した奴にだけ恋人を得る資格がある。
だからほっとけ。
「私も愛莉に賛成だな。雪をもっと信じてやれ。あいつは絶対に性格がねじれているわけじゃない」
天音がそう言っていた。
「そういや、梨々香もそんな感じだったね」
「まあ、そうだね。私も焦ってたから」
純也と梨々香も言っている。
「雪は私や天音と全く違うタイプなんだ。それでもいつか変わる時が来るよ」
水奈が言うとパオラが「私の娘なのにどうしてそうなるんですか?」と笑っていた。
「パパが2人で考えろって言ったんでしょ?じゃあ、私は何も言えない」
翼はそう言っていた。
多分、今までの片桐家の娘では雪のような性格は絶対にいなかった。
ましてやまだ1歳。
そんなに気にする事でもない。
時期が来ればいつか変化が現れる。
やっぱり父さん達と同じ事を言っている。
僕達はさっぱり分からなかった。
ただ、翼の息子の結が言っていた。
「雪はきっと諦めてる」
どういう事?
私達は自分の子供の持つ感情に気づくことが出来ないまま。
その行動を見守る事しかできなかった。
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