姉妹チート

和希

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Feel My Heart

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(1)

 今年の紅葉狩りは竹田に来ていた。 
 地元にはお城がない城址が多い。
 昔色々あったらしい。
 雪はベンチに座って絵を描いている。
 雪はやけに絵が上手い。
 雪の目には紅葉がこんな風に見えてるのか。
 俺は雪の隣に座っていた。
 する時になったらしくて雪の方から話しかけてきた。

「なんで私の側にいるの?」

 他の皆と遊んでいた方が良いんじゃないか?
 自分と一緒にいてもつまらないんじゃないかと思っている。
 雪のじいじが言っていたらしい。
 俺も頑張る必要があるけどそれだけじゃ足りない。
 雪自身が自分の気持ちに気づく必要がある。
 今仮にその事を指摘したところで雪は頑なに拒絶するだろう。
 大事な事が何なのか?
 それを雪が気づかなければならない。
 もちろんそんな小細工をしないで俺が気持ちを打ち明けるのもいいだろう。
 でも絶対に雪はそれを拒絶する。
 まだ俺にはそんな雪を説得する力はない。
 だから待っていればいい。

「それって雪が誠司郎の事好きなのが前提だよな?」

 神奈が言っていた。
 すると結のじいじは答えた。

「そんなの見ればわかるだろ」

 予想していたように少しずつ雪の警戒は薄れている。
 まずは第一段階クリア。
 次に必要なのは雪が俺に興味を持つこと。
 それも今の所問題ないだろう。
 
「その次は雪の誤解を解くことか?」
「違うね」
「どうして?」
「カンナは僕が愛莉の事を好きでも抑えきれなかったんだろ?」
「つまりそう言う事か?」
「そうだね」

 雪が自分の気持ちに素直になれる事。
 それをひたすら待てばいい。
 雪はとても儚いけど、それ以上に優しい。
 とても不器用な優しさ。
 いつの日か俺は雪の隣に座ることを許されて、話しかける事も許された。
 でも、まだまだ雪の警戒は薄れていない。
 薄れていないように見えるだけで実はそんな物とっくにないのだと聞いていた。
 雪は色々な知識を持っている。
 瞳子が図鑑を買ってきたりテレビのニュースを雪のじいじが解説付きで見ていたり。
 同い年で雪と同レベルの女の子なんて俺は知らない。
 精々見た目くらいだろうか。
 雪は無力だ。
 それを分かっているから様々なことに臆病になる。
 だけど自分の真価を知っているはず。
 すでにその片鱗をを見せている。
 サファリに行った時は動物でさえ服従させていた。
 それは恐怖だけじゃない。
 恐怖だけなら立ち向かおうとする存在がいる。
 雪には誰をも服従させる資質を持っているそうだ。
 今までの片桐家の人間の中で一番強い力。
 雪は人以外の生物には等しく優しい。
 何も言わずともそのオーラをまとっている。
 なのに雪は自分が無力で非力な存在だと思っている。
 とても変な話だ。
 紅葉狩りを終えた後昼食を食べていた。
 当たり前の様に俺は雪の隣にいた。
 雪は一々「なんで私の隣なの?」と聞くけど最近は諦めたらしい。
 何も言わなくなった。
 そして黙々と昼食を食べている。
 それは片桐家の特性だと神奈が言っていた。
 でも少しは俺の事を気にして欲しいな。
 そんな事を考えていると、突然雪が俺を見ていた。
 どうしたんだろう?

「どうしたの?」
「……誠司郎はもう食べないの?」

 ああ、それを気にしてたのか。
 少しがっかりだ。

「うん。普段からあまり食べないから」
「じゃあ、残ったのもらってもいい?」

 本当に食べ物の事しか考えないようだ。
 その時一つひらめいた。

「いいけど、条件言ってもいいかな?」
「なんだ?」
「一回だけでいいから雪の口の中に入れてみたい」
「どうして?私は赤ちゃんじゃない」

 絶対言うと思った。
 だけど俺だってただ雪の隣にずっといたわけじゃない。
 雪の攻略法くらい考えている。

「赤ちゃん以外にも”あーん”ってさせてみたい相手知らないのか?」

 すると雪は少し考えていた。
 やがて少し頬を赤く染めていてた。
 それが俺の事を気にしている証拠だと神奈が教えてくれた。

「一回だけだよ」
「うん」
 
 そう言って俺は箸でつまんで雪の口に食べ物を入れる。

「美味しい?」
「味が変わるわけないよ」

 そこは嘘でも美味しいって言って欲しかったな。
 その後も黙々と食べる雪を俺は見ていた。
 愛莉もそうだったらしい。
 美味しそうに食べる雪のじいじを眺めているのが楽しかったらしい。
 食事を終えると家に帰る。
 帰りにファミレスで夕食を食べて帰る。
 帰ると父さんと一緒にお風呂に入る。

「今日はどうだった?」
「楽しかった」

 雪と一緒にいる時はいつも楽しい。

「雪とは仲良く出来そうか?」
「難しいけど頑張るよ」

 雪のじいじが言ってたんだ。
 諦めない事が一番大事。

「そうか、頑張れよ」

 そうやって夢中になれる何かがあるのは悪い事じゃない。
 ただひたすら雪の事を想ってやれ。
 その先に悲しみが待っていたとしても信じてやれ。
 雪の涙を見たくないなら。
 片桐家の子供と付き合うというのは、W杯で勝ちあがる事並みに難しい事。
 中途半端な覚悟でやってるならあきらめた方が良い。
 もちろんそんな中途半端な覚悟じゃない。 
 俺はわずか3歳で将来の人を決めて見せた。

(2)

「寒いな」
「あのさ、やってみたい事があるんだけどいいかな」
「どうしたんだ?」

 すると茉奈が腕に抱き着いてくる。
 ただ抱き着きたいだけというのは知っていた。
 そして茉奈が抱き着いてくるのは俺だけだという事も知っていた。
 ただのバカップルに見えるけどそんなバカップルな人間ばかりの日だった。
 クリスマスイブ。
 日本では性夜と言われる日。
 恋人と夜を過ごす日。
 だから茉奈とデートをしていた。
 夕食もクリスマスだからと母さんが店を予約してくれた。
 フレンチの美味しい店だそうだ。

「いい?クリスマスって恋人にとって特別なの」

 だから「ラーメンの方が美味しい」とか言ったらだめ。
 母さんがそう言ってた。
 片桐家の人間は食に関するマナーは徹底的に仕込まれる。
 茉奈は慣れてないのか緊張している。
 ワインはまだ早いからブドウジュースで我慢しておいた。
 夕食を食べながらクリスマスプレゼントを交換する。 
 茉奈にはマフラーを用意しておいた。
 もっと貴金属と宝石の方が良いような気がしたけど母さんはダメと言った。

「まだ結は中学生。そんなもの無理して買う必要ないよ」

 だけどこんなもので良いのだろうか?
 母さんはにこりと笑っている。

「結は茉奈の事をずっと見ているんだよね?」
「うん」
「じゃあ、質問。茉奈がそんなのを身に着けているところを見た事ある?」

 母さんでも気づいているらしい。
 中学生でそんな高級なアクセサリをつけるはずがない。
 年相応の格好をしていた。
 そして母さんが言うように茉奈は喜んでくれた。
 茉奈から受け取ったプレゼントを見る。
 腕時計だった。
 そういえば俺が腕時計をしてないのを気にしてたな。

「こんなに高そうなもの良いの?」
「うん」

 だって茉奈の彼氏がかっこよくなってくれるんだから問題ない。
 そう言って笑っていた。
 さっそく付けて見る。

「似合うかな?」
「素敵だよ」

 学と一緒に選んだらしい。
 食事がすむと茉奈と一緒に街のイルミを見て回る。
 茉奈は写真を撮っていた。
 一通りに見ると茉奈と一緒に俺の家に帰る。
 茉奈の持っている大きなカバンが示すように今夜は茉奈と一緒に夜を過ごす予定だった。

「声とか大丈夫かな?」

 茉奈はやっぱり不安らしい。
 そんな娘の声が聞きたいと誠は水奈の部屋に張り付いて神奈と喧嘩していたらしい。
 だけど父さんはそんな人じゃない。
 それに……
 家に帰ると真っ暗だった。
 電気をつけると誰もいない。
 誠さんがいるからまずいんじゃないかと健太が気にしていたけどそれは大丈夫だと佳織が言っていたそうだ。
 多分俺と同じ理由だろう。
 誰もいないのに気づいた茉奈が聞いていた。

「あれ?空達は?」
「今夜はいないよ」
「どうして?」
「今日は渡辺班でクリスマスパーティに行くって言ってた」

 多分誠も一緒だろう。
 だから今夜だけは俺と茉奈の二人っきり。
 ゆっくり楽しみなさいと母さんが言っていた。
 そんな説明をしながら茉奈を部屋に案内する。

「ねえ、お風呂どこ?」

 気の早い子なんだな。
 お風呂に案内すると何かを確かめていた。
 茉奈がまず先に入って俺がその後に入る。
 お風呂を済ませるとおかしとジュースを用意してテレビを見る。
 茉奈は持ってきたドライヤーで髪を乾かしていた。
 それが終わると俺の隣に座って俺に密着する。
 茉奈は寝るときはブラをつけないらしい。
 だから茉奈のパジャマのボタンの隙間から見える胸にどうしても目が行ってしまう。
 それは多分茉奈も気づいている。
 だからもっとくっつく。
 茉奈が求めてきた。
 俺はそっと茉奈の肩に手を回す。
 茉奈と目が合ってキスをする。

「……そろそろいいかな?」
「……うん」

 茉奈が頷くと茉奈と一緒にベッドに入る。

「灯り消しても大丈夫?」

 茉奈が聞いてきた。
 やはり恥ずかしいのだろう
 ただ僕に分かるかどうか聞いてきた。
 全く分からない。
 その手のDVDすら見た事無いからどうしたらいいかわからない。
 どうしたらいいか父さんに聞いておいた。

「手探りでやってみたらいいんじゃないかな」
 
 さり気なく茉奈が誘導してくれるはず。
 そう言うのは良いのだろうか?
 よくはなかった。

 ぽかっ

 母さんに相談したら小突かれた。

「なんでも彼女に任せるって茉奈が可哀そうでしょ」

 茉奈だって初めてなんだ。

「じゃあ、どうしたらいいんだ?」

 全くその手の知識はないぞ。
 すると母さんは考えた。

「……まずは結の思ったことをやってみなさい」

 キスをしたり胸を触ったり舐めて見たり。
 そしたら茉奈の方から強請って来るから。
 それって結局茉奈だよりじゃないのか?

「1から10まで茉奈に聞くのとじゃ違うでしょ」

 それに本当に興味がなかったわけじゃないんじゃないのか?
 俺が茉奈の見てない部分に興味があったんじゃないのか?
 なるほどな……

「まさか息子にこんな事を説明するとは思わなかった」

 父さんもそうだったらしい。

「変な動画見なくてもそのくらいならネットに乗ってるから」

 それを見たらいい。
 お互い初めてなんだから仕方ない。
 でも多分なんとなく茉奈が誘導してくれるはずだから大丈夫だと言った。
 そんな相談を水奈が受けていたと聞いていたらしい。

「なるほどね」
「ごめん」
「謝らなくてもいいよ」

 まあ、変に慣れてる彼氏よりはましだからいいよ。

 それに母さんが言った通り水奈と相談したらしい。
 ただ茉奈はブラをしていない。
 一回外してみたかったけど我慢した。

「次の時はしておくね」

 そう言って茉奈は僕に抱き着く。

「えっと……どうしたらいいんだろう?」

 我ながら間抜けな質問だ。

「さっき言ってたじゃない。胸……触ってみたいんでしょ?」

 そう言って初めて2人で聖夜を過ごした。
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