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短い夢を重ねて
しおりを挟む世界が変わる。
そんな風に感想を言った人がいるそうだ。
だけど俺には分からなかった。
そんなに変わったようには思わなかった。
ただ、茉奈は間違いなく変わっている。
終わった後凄く優しかった。
まるでお母さんみたいに優しかった。
だから渡辺班の年越しパーティの時、中学生の男子だけで集まって皆に聞いてみた。
と、言っても秋久と朔と比呂、カミル、健太だけだけど。
朔はそれを話していいのか悩んでる。
「別に言いたくないならいいよ?」
「いいんだけど、茉莉には絶対内緒な?」
朔がそう言うと皆頷いた。
結論から言うといつもの茉莉とは思えない様子だったみたいだ。
「ちょ、ちょっと灯かり消してくれ……恥ずかしい」
「ば、ばか。そんなに見るな!」
「こ、こんなの入るのか?大地より大きいぞ?」
「や、優しくしてくれって言っただろ。痛いって!」
そして最後は静かになったらしい。
声が出そうになるのを指をかんで必死に抑えていたそうだ。
「ぜ、絶対に私に飽きたとか言うなよ」
そんな不安すら見せていたそうだ。
「あの茉莉がね……」
結莉達とはしゃいでる茉莉を見ながら俺達は感想を言っていた。
女子って色んな顔があるんだな。
そうなると菫が気になる。
やっぱり同じパターンなんだろうか?
「秋久はどうだったんだよ?」
朔が聞いていた。
「どっちかって言うと茉莉みたいな感じですね」
服を脱ぐまで後ろ向いていて。
そう言って心音が「いいよ」と言うと心音はベッドの中にいた。
「あのさ、私初めてだから……」
「それは分かってるよ。僕だって初めてなんだから」
人間の本能という物があるらしい。
それに従って秋久は動いたらしい。
だけど違う点が一つだけあった。
心音は全く反応しなかった。
どこを触っても全く反応がない。
誠達が言っていた「マグロ」ってやつだろうか?
「ごめんね。初めてで扱い方が分からなくて」
「……それ二度と言わないで」
心音は小さな声で言った。
お互いの初めての感想に「ごめんね」なんていらない。
私も慣れてないから恥ずかしくてどうしたらいいかわからない。
ただ、怖いって気分がある。
「それはどうやったら消せるかな?」
秋久がそう言うと心音が一言言った。
「キスして」
キスした後もやっぱり反応は同じだけど秋久は確信した。
秋久が下手とかそう言う問題じゃない。
心音は普通の女の子なんだ。
だから初めてのことで頭がパニックになってどうしたらいいか戸惑っているだけ。
きっとそのうち慣れたら変化が起きるだろう。
この歳で変化がでるほど行為を重ねるなんてありえるのか?と思ったらしいけど。
「で、皆世界が変わったの?」
俺が聞くと皆は「わかんね」と答えた。
やっぱり変わるというのは迷信なんだろうか?
「だけど、彼女という物が少しだけ大切になった気はしたね」
秋久は俺と同じらしい。
男は事後は冷めるというけど何か違っていた。
尚も甘えてくる茉奈。
そして終わった後の茉奈の姿を見ると、自分がどれだけ子供なのか思い知らされる。
女子と言うのは僕達の何歩の先も行っている。
そんな事を痛感していた。
「それは当たり前だよ。そんなことをこそこそ話している内はまだ子供だよ」
母さんの声がしたので驚いて振り返ると母さんと天音達がいた。
「空の時もそうだったから気になってはいたのよね」
父さんも同じように光太達と相談していたらしい。
そんなの彼女に直接聞けばいいじゃない。
女の子だって彼氏以外に知られたくない事だってあるんだよ。
じいじは愛莉の黒子を全部把握したと母さんが言っていた。
「だからそんなしょうもないことを話しているうちは彼女に比べたらまだまだ子供」
頑張れ。と母さんが言う。
「あ、あと女性目線からのアドバイスと思ってくれ」
天音がそう言ってにこりと笑って言った。
そう言う話は出来るだけ彼女のいないところで話せ。
意外と女性と言うのは地獄耳だ。
同じパーティ会場で話したら気づかれるぞ?
何のために男子グルなんてもの作ってるんだ?
天音が言う。
ってことは……
「結は何を話したの?」
茉奈がにこりと笑って言った。
こういう時は笑ってごまかすしかないと父さんが言った。
「男同士の話だよ」
「天音が言ってた。こういう時の男同士の話はろくなことがない」
ぽかっ。
茉奈に小突かれた。
「ダメだよ。女子だって聞かれたくない事があるんだから」
他の人に聞かれたら恥ずかしいことだってある。
逆に僕に尋ねる。
そんな風な目で彼女を他人に見られて平気なの?
「ごめん」
「初回だからいいよ。男子も初めての経験で舞い上がってるからしょうがないんだって愛莉から聞いた」
誠に至っては行為をした朝に神奈に隠れてじいじに教えたらしい。
「俺の勝ち!!」
こういうのって勝負する意味あるのだろうか?
「結は気にしなくていいの」
彼女に逆らうな。
父さんが言ってたな。
片桐家の男は絶対に彼女に逆らえない。
どんなに暴走しようと彼女や母親のげんこつで収まってしまう。
それだけ彼女の存在が大事なんだって言ってた。
「おい朔!てめえ、余計な事喋ってないだろうな」
さすがに友達を亡くしたくないので黙っていた。
「だいたいてめぇだって、少し血が出たくらいで慌ててたじゃねーか!」
「さすがに彼女が血を流していたら驚くよ!」
「ま、茉莉。そう言う話は止めとけ……」
天音が仲裁しようとしている。
父さんと大地は帰って善明も混ざって飲みに行ったらしい。
「本当に男の子って子供だね」
「そうかもしれないね」
そんな事を話しているうちに、カウントダウンが始まる。
「ハッピーニューイヤー!」
MCの人が叫ぶと皆挨拶をしている。
「今年もよろしくね」
「……ずっとよろしく」
「うん!」
そしてまた僕達は新しい年を迎えた。
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