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二律背反
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(1)
「冬夜、ちょっといいか?」
誠が来た。
どうしたんだろう。
「いや、これから飲むだろ?だから酔っぱらう前に済ませておきたい用件があるんだ」
「……何か捕まえた?」
「ああ、今菫を中心に暴れ回ってるみたいだ」
具体的にはグルチャを荒らしたり特定の人間を呼び出して天音達が叩きのめしているらしい。
薔薇乙女という団体についても大体の規模は把握した。
恵美さん達と協力して潰しを始めたらしい。
「久しぶりに腕がなるわね」
「そうね。こんな極上の獲物滅多にない。骨の髄までしゃぶりつくしてやる」
恵美さんと晶さんが楽しそうにしていた。
本当にこの2人とやり合うなんて馬鹿じゃないのかとすら思える。
「で、FGの武器の出元は?」
「それはこっちで動く予定」
純也が来た。
茜が流した証拠を素に奴らの傘下の暴力団に目星をつけたらしい。
取引する日付までしっかり押さえた。
純也には信頼できる仲間がいるそうだ。
それはいいんだけど……
「梨々香一人家に残して大丈夫なのか?」
「子供達は逆にいない方が梨々香も楽みたいだから」
こんな時くらい子供の面倒任せてもいい?と聞かれたらしい。
愛莉ママはあの事件がショックだったらしい。
「佑太さん!」
事件の当日そう叫んでいたと証言があったと純也から聞いた。
今でも「佑太さんはどこ?」と家の中を探しているらしい。
それを梨々香が宥めているそうだ。
「片桐君や、本当に子供達に任せる気なのかい?」
酒井君が言う。
空が自ら名乗り出たんだ。
そろそろ子どもに託していいだろう。
どうせ末路は決まっている。
それより気になる事がある。
それはパオラから聞いた話だ。
公園に散歩に行くと今まで主婦友だった主婦が言ったそうだ。
「あなたSHなんでしょ?もう私達に関わらないで」
さすがにパオラも困惑したらしい。
カンナに相談したそうだ。
「そんな奴一々取り合う必要はない!」
「神奈の言う通りだ。私ならその場で砂にするところだ!」
すでに飲んで盛り上がってるカンナと美嘉さんが言っていた。
渡辺君も今回ばかりは許せないらしい。
「望み通り地獄に直送してやろう」
「……で、空はこの後どうするつもり?」
僕は息子に聞いてみた。
やっぱり意外と冷静なようだ。
「純也が動くなら僕達がいると邪魔だろ?」
一緒に捕まったら面倒になる。
「まさか法廷で裁いてお終いなんてふざけた事考えてねーだろうな!?」
天音が怒り出す。
「大丈夫だ天音。私が法廷で撃ち殺してやる」
茉莉の中では判決は死刑らしい。
「おい、茉莉。心臓はお前にゆずってやるから頭部は私にやらせろ」
菫と茉莉が相談を始めた。
そんなものをねだる中学生がいるのだろうか。
その前にそんなものを中学生に渡していいのだろうか?
菫はショットガンを手に入れたらしい。
眉間を撃ちぬくなんて芸当は出来るけどどうせ見せしめに殺すなら派手な方が良い。
頭部を吹き飛ばしてやる。
それが菫の主張。
「でも警察の情報をそんなにリークしていいの?」
茜が聞いていた。
それが原因で純也の上司は懲戒処分を食らった。
だけど純也は平気だという。
「さすがに1週間もすれば家に帰るよ」
それでも仕事はしないといけない。
当然ノートPCを家に持って帰る。
別に家にある必要もない。
放っておいたら茜が情報を抜き取っていくだろう。
もちろん痕跡を残すなんてへまはしない。
相手の団体が特定出来たら芋づる式に根城が判明していく。
警察は「銃器の取引を取り締まる」と「殺人犯を捕まえる」だけ。
その他の事は知らない。
せいぜい実行犯を引きずり出すくらいだ。
引きずり出したら後はSHの餌になるだろう。
純也も容赦するつもりはないらしい。
先に手を出したのだから後から文句を言うなよ。
「それでいいと思ったんだけど、父さんはどう?」
空が聞いていた。
「まだ足りないかな」
「何が?」
「その薔薇乙女という奴らの実態をつかめていない」
純也達の話を聞いていたら薔薇乙女とやらの傘下の暴力団を突き止めただけ。
そんなのいくらでもしっぽを切るだろ。
「ネットの情報だけで動けない」
そんなものいくらでも偽装することは可能だ。
それは誠だって経験してるはず。
「じゃ、私達が兵隊使う?」
恵美さんが言う。
多分世界レベルの組織だから警察では手に負えない。
そういう土俵なら僕達が最も得意だろ?
例えば薔薇乙女とやらの本体がどこにいるかわかれば空が隕石落としてお終い。
「しかし片桐はそれじゃ物足りないと思っているんだろ?」
檜山先輩が言うと僕は頷いた。
「誰に喧嘩売ってるのかしっかり教えてやらないとね」
だからもう少し情報が欲しい。
中途半端な情報で手を出したら把握できてない勢力が出てくるかもしれない。
SHの弱点は規模の大きさだ。
皆が戦えるわけじゃない。
だから常に致命傷を加え続ける必要がある。
「とりあえずはグループとその経営者。その他重要人物の特定だね?」
公生がそう言うと僕は頷いた。
「任せとけ、丸裸にしてやらぁ」
誠がそう言って盛り上がる。
「冬夜さん、少し時間をくれませんか?」
愛莉が言って来た。
「どうしたの?」
「桜子が……」
またか。
ちょっと席を外して桜子の所に向かう。
「あと定年までもう少しじゃないですか?」
「絶対に雪達は桜子先生が担当するわけありません」
瞳子達が必死に宥めてる。
「だから大丈夫だって。ちょっと小学校でドンパチやるだけだ」
「ふざけた真似してくれたからな。まとめて投身自殺させてやる!」
「水奈の言う通りだ。海翔にも遺書の偽装くらい仕込んだから」
何度も言うけどあまり悩むと禿げるぞ。
「瞳子……覚悟しなさい。片桐家の担任なんて恐ろしい以外に何もないから」
「私は自分の娘だから扱い方くらいわかってますので」
瞳子はあまり気にしていないようだ。
しかし僕の子供はどうも好戦的な子が多いらしい。
しかも娘の方が強いというのは多分片桐家だからだろう。
酒井君の所を見てると僕だけに限った話じゃなさそうだけど。
「そう言えば雪達は今度から幼稚園か」
僕が冬吾に聞いていた。
「うん、そうだけど」
「冬吾、一つ言っておく。多分愛莉が忙しいから偶に愚痴聞いてやれ」
過去に散々愛莉をこき使っていた天音が言った。
結莉や茉莉達も例外じゃなかった。
母親の天音が行かなきゃいけないところを着信拒否と言う暴挙に出た。
それは水奈も同じだったらしい。
瞳子は学校がある。
だから愛莉が代わりに行くしかない。
愛莉もその事は悩んでいるようだった。
雪は多分問題ないとは思う。
それにパオラの言っていたことも気になる。
あの事件をきっかけにSHの人間に関わりたくないという主婦が増えているらしい。
まあ、SHも母親の多いグループになったからそんなに問題ないと思うんだけど気になる。
雪は桜を見ながらお弁当を食べていた。
誠司郎はしゃいで走り回っている。
「やっぱり私の孫みたいだ」
神奈が言っていた。
まだまだ大人しくすましているなんて歳じゃない。
純達とはしゃいで遊んでいた方が楽しいのだろう。
あの歳であんなに大人しく弁当を食べている雪の方が不思議なんだ。
多分、茉莉や菫の様に自分から動くという事はないだろう。
問題はそこじゃない。
どうやらSHを潰そうと思ってるのは本気らしい。
すでに大学生の間でもその動きが見えているようだった。
空もFGだのリベリオンに構っている立場の人間じゃない。
昔とはやり方が変わった。
出来れば雪を刺激するような馬鹿が現れない事を祈るしかない。
しかし祈るだけ無駄だったようだ。
(2)
「雪、急ぎなさい」
パパが言うから急いで着替えた。
小さい鞄を背負ってリビングに出る。
じいじが私を見て言った。
「一人でちゃんと着替えられるんだね」
普通じゃないの?
呼び鈴が鳴るとママが玄関に行く。
誠司郎達が来たみたい。
「よお!」
誠司郎が挨拶していた。
「へえ、可愛いじゃん」
「……ありがと」
お世辞だと思うけど嬉しい。
ただどうやって伝えたらいいか分からない。
なんか恥ずかしい。
「誠司郎。ボタンはちゃんと留めたほうがいいよ」
「ボタンしない方がかっこよくないか?」
「そんなわけない、そういうのをだらしがないって言うの」
私が誠司郎を注意していた。
「じゃあ、冬吾さん。ごめんなさい」
「いいよ。仕事頑張って」
ママは小学校が始まってるから今日来ることが出来ない。
だからパパが来ていた。
「瞳子も大変だね」
「自分で決めたことだから」
そんなやりとりをパオラとしていた。
もちろん誠司も来ている。
今日は試合が無いから大丈夫らしい。
幼稚園に着くとクラスわけがあった。
私と誠司郎は同じクラスだった。
策者の手抜きというらしい。
先生が何かを言うたびに馬鹿みたいにでかい声で「はーい」と言っている。
先生は難聴なんだろうか?
うるさくて眠れやしない。
「いいか雪。幼稚園は寝る場所だ。じっくり体を休めろ。五月蠅かったらとっとと家に帰った方が良い」
「天音は自分の甥に何を馬鹿な事を吹き込んでいるの!」
茉莉や菫はそれを実行しているらしい。
今は中学校だけどそれで学校を抜け出すそうだ。
しかし中学校くらいになると便利なシステムがある。
何をしていようと成績さえよければ何とかなる。
授業を受けずとも教科書読むだけで理解してしまう二人なら問題ないそうだ。
天音はともかく愛莉が頭を悩ませていた。
入園式で長い話をする禿がいるけど他の園児たちは後ろで見ている親をチラチラ見ていた。
茉莉や菫は寝ていたそうだけど、確かにこれはつまらない。
現に私は寝ていた。
誠士郎も一緒に寝ていた。
入園式が終わると説明があって家に帰る。
帰る際にルートをチェックする。
ここは危険だとかとりあえず確かめておく。
家に帰ると部屋に戻って着替えて洗濯機に入れて寝る。
父さん達の部屋にあった漫画は大体読んだ。
漫画はもう十分だと思う。
もっと面白いものはないかと探していた。
夕飯の時に幼稚園であったことをママやじいじ達に聞かれた。
友達出来た?
当然出来るわけがない。
「別に何もなかった」
「……そうか」
じいじはそれ以上聞いてこなかった。
夕食のあと風呂に入ると寝る事にした。
これから毎日平和という平凡な日々を繰り返す。
そんな事を考えていた。
(3)
部屋にあった積み木で適当に遊んでいると、そいつらが突然やってきた。
ここ数日の間でそれなりに誠司郎には友達が増えた。
当然の様に私も頭数に入っていた。
そいつらが来た振動で積み木が崩れてしまった。
「FGに入るか死ぬか選べ」
そんな脅しというか死亡フラグを受けていた。
誠司郎はいないみたいだ。
特に急用があったみたいじゃない。
”連れしょん”というのをやってみたかったらしい。
男の子ってたまに理解に苦しむ行動に出る。
「おい、俺達を無視してんじゃねーよ。話聞いてるのか?」
こっちの馬鹿もどうにかしないとな。
私はそいつらを睨みつけて言った。
「私に指図しないで」
男達は怯んだ。
どんな生物でも私に服従させる”王の権威”という能力。
「今すぐ私の目の前から消え失せなさい」
「たった一人で何が出来る?お前馬鹿じゃないのか?」
そう言われて周りをみると鬱陶しいトレードマークをつけた馬鹿が囲んでいた。
「……そういやお前片桐って言ったな?」
「それがどうかしたの?」
「前に殺されたのお前の親族だろ?」
遠坂の爺さんの事か。
「あいつも妻を庇って死んだんだってな?」
「お前も殺されたいのか?」
こいつは口にしてはいけない事をした。
「ほら、二の舞にならないうちに失せろ」
「……確かに死ぬのは嫌だね」
後始末も面倒だ。
「意外とも分かりがいいじゃねーか……!?」
私が行動する前に誠司郎が戻って来たらしい。
誠司郎は私に絡んでる馬鹿を思いっきり殴り飛ばした。
「お前誰に断って雪に触ってるんだ!」
俺だって触った事ないんだぞ!
そんなに触りたいのだろうか?
今度触らせてあげようかな?
「お前、FGなめてるんじゃねーぞ!」
「それは墓標みたいな物って父さんが言ってた。生きて帰れると思うなよ」
本当に人殺しの好きな物語だな。
だけどこれは恋愛物語。
通常あり得るはずがないのに。
そう思った時だった。
彼らは抵抗を止めた。
誠司郎が一方的に攻撃している。
不思議に思いながらもそれは誠司郎の暴力事件になるから誠司郎を止める。
しかし泣きわめく彼らに気づいた保母さんがやってきた。
「彼らが勝手に絡んできて、勝手に泣き出しました」
私はありのままに説明した。
私が女の子という事、普段から大人しくしていたという事を考慮して解放された。
「誠司郎も後先考えず暴れるのやめなよ」
「雪を守るためならなんだってするよ」
「それで誠司郎が注意されてたら私は……」
悲しいの?
「どうした?」
「いや、それより誠司郎は私に触りたいの?」
「そりゃ、手を繋ぐとかしたいよ」
「いいよ」
「へ?」
「ほら」
そう言って手を差し出す。
手汗が気になったけど誠司郎は喜んでくれた。
さっきの勇敢な行動に免じてこのくらい許してやろう。
崩れた積み木を再び積み上げていく。
「残念だったね」
女の子がそう言っている。
「また積みなおすよ」
家に帰ると着替えて夕食まで寝る。
夕食の時に今日あったことをパパやママに話していた。
じいじも聞いていたようだ。
じいじは違う質問をしてきた。
「で、一緒に積み木で遊んでいた女の子の名前は?」
確か黄島亜優って言ってたっけ。
でもそれがどうかしたんだろう。
「あの……注意しなくていいのかな?」
パパがじいじに聞いていた。
「何を注意するの?」
私は別に何もしていない。
風呂に入って寝るかってときにママがノックする。
「誠司郎が言いたい事があるって電話してきたの。聞いてあげて」
母さんがそう言うと電話に出る。
「今日はありがとう」
「礼を言うのは私の方だと思うけど」
「でも手を繋いでくれた時嬉しかった」
「ちゃんと手を洗ってなかったからごめんね」
「すごく柔らかかった」
そんなしょうもないことを言いたくて電話してきたのだろうか?
「他の子と比較したの?」
「雪が初めてだよ」
「だったら他の子と比べてみたら?」
「雪だけでいい!」
誠司郎からそんな風に押してくるの初めてだな。
すると予想外の答えが返って来た。
「次は腕を組んでくれると嬉しいんだけど」
「他の子に誤解されても知らないよ」
「誤解なのかそれは」
どういう意味だろう?
「そうだな、雪は俺と手を繋いで嫌な気分になったのか?」
「別にただ手を繋ぐくらいどうってことないし」
「じゃあさ、腕を組むのも同じじゃないか?」
流石に違うんじゃないだろうか?
「俺と腕組むの嫌か?」
え?
考えた事もなかった。
そんな風に隣に立ってくれる人がいるなんて考えてなかった。
でも隣に誠司郎がいてくれるなら。
でも私よりふさわしい女の子がいるよ。
「その相応しいって誰が決めるんだ?」
「誠司郎が決めたらいいじゃない」
「じゃあ、雪に決めた。これでいいか?」
逆に私は誠司郎を選べない理由があるのか?
そんなのあるわけない。
でも本当に私でいいの?
「そろそろ母さんがうるさいから切るよ。また明日」
「うん……」
電話を切るとママに返しに行った。
「何かあった?」
ママが聞いてくるのでママに聞いてみた。
「私にふさわしい男ってどうやって決めるんだろう?」
ママは笑って答えた。
「そんなの雪が自由に決めたらいいじゃない」
「じゃあ、その人にとってふさわしい女は?」
「その人に聞いてみたらいいんじゃないの?」
人の優劣なんてみんな価値観が違うんだ。
だから流されずに自分の気持ちに素直になればいい。
その晩私はなかなか眠れなかった。
「冬夜、ちょっといいか?」
誠が来た。
どうしたんだろう。
「いや、これから飲むだろ?だから酔っぱらう前に済ませておきたい用件があるんだ」
「……何か捕まえた?」
「ああ、今菫を中心に暴れ回ってるみたいだ」
具体的にはグルチャを荒らしたり特定の人間を呼び出して天音達が叩きのめしているらしい。
薔薇乙女という団体についても大体の規模は把握した。
恵美さん達と協力して潰しを始めたらしい。
「久しぶりに腕がなるわね」
「そうね。こんな極上の獲物滅多にない。骨の髄までしゃぶりつくしてやる」
恵美さんと晶さんが楽しそうにしていた。
本当にこの2人とやり合うなんて馬鹿じゃないのかとすら思える。
「で、FGの武器の出元は?」
「それはこっちで動く予定」
純也が来た。
茜が流した証拠を素に奴らの傘下の暴力団に目星をつけたらしい。
取引する日付までしっかり押さえた。
純也には信頼できる仲間がいるそうだ。
それはいいんだけど……
「梨々香一人家に残して大丈夫なのか?」
「子供達は逆にいない方が梨々香も楽みたいだから」
こんな時くらい子供の面倒任せてもいい?と聞かれたらしい。
愛莉ママはあの事件がショックだったらしい。
「佑太さん!」
事件の当日そう叫んでいたと証言があったと純也から聞いた。
今でも「佑太さんはどこ?」と家の中を探しているらしい。
それを梨々香が宥めているそうだ。
「片桐君や、本当に子供達に任せる気なのかい?」
酒井君が言う。
空が自ら名乗り出たんだ。
そろそろ子どもに託していいだろう。
どうせ末路は決まっている。
それより気になる事がある。
それはパオラから聞いた話だ。
公園に散歩に行くと今まで主婦友だった主婦が言ったそうだ。
「あなたSHなんでしょ?もう私達に関わらないで」
さすがにパオラも困惑したらしい。
カンナに相談したそうだ。
「そんな奴一々取り合う必要はない!」
「神奈の言う通りだ。私ならその場で砂にするところだ!」
すでに飲んで盛り上がってるカンナと美嘉さんが言っていた。
渡辺君も今回ばかりは許せないらしい。
「望み通り地獄に直送してやろう」
「……で、空はこの後どうするつもり?」
僕は息子に聞いてみた。
やっぱり意外と冷静なようだ。
「純也が動くなら僕達がいると邪魔だろ?」
一緒に捕まったら面倒になる。
「まさか法廷で裁いてお終いなんてふざけた事考えてねーだろうな!?」
天音が怒り出す。
「大丈夫だ天音。私が法廷で撃ち殺してやる」
茉莉の中では判決は死刑らしい。
「おい、茉莉。心臓はお前にゆずってやるから頭部は私にやらせろ」
菫と茉莉が相談を始めた。
そんなものをねだる中学生がいるのだろうか。
その前にそんなものを中学生に渡していいのだろうか?
菫はショットガンを手に入れたらしい。
眉間を撃ちぬくなんて芸当は出来るけどどうせ見せしめに殺すなら派手な方が良い。
頭部を吹き飛ばしてやる。
それが菫の主張。
「でも警察の情報をそんなにリークしていいの?」
茜が聞いていた。
それが原因で純也の上司は懲戒処分を食らった。
だけど純也は平気だという。
「さすがに1週間もすれば家に帰るよ」
それでも仕事はしないといけない。
当然ノートPCを家に持って帰る。
別に家にある必要もない。
放っておいたら茜が情報を抜き取っていくだろう。
もちろん痕跡を残すなんてへまはしない。
相手の団体が特定出来たら芋づる式に根城が判明していく。
警察は「銃器の取引を取り締まる」と「殺人犯を捕まえる」だけ。
その他の事は知らない。
せいぜい実行犯を引きずり出すくらいだ。
引きずり出したら後はSHの餌になるだろう。
純也も容赦するつもりはないらしい。
先に手を出したのだから後から文句を言うなよ。
「それでいいと思ったんだけど、父さんはどう?」
空が聞いていた。
「まだ足りないかな」
「何が?」
「その薔薇乙女という奴らの実態をつかめていない」
純也達の話を聞いていたら薔薇乙女とやらの傘下の暴力団を突き止めただけ。
そんなのいくらでもしっぽを切るだろ。
「ネットの情報だけで動けない」
そんなものいくらでも偽装することは可能だ。
それは誠だって経験してるはず。
「じゃ、私達が兵隊使う?」
恵美さんが言う。
多分世界レベルの組織だから警察では手に負えない。
そういう土俵なら僕達が最も得意だろ?
例えば薔薇乙女とやらの本体がどこにいるかわかれば空が隕石落としてお終い。
「しかし片桐はそれじゃ物足りないと思っているんだろ?」
檜山先輩が言うと僕は頷いた。
「誰に喧嘩売ってるのかしっかり教えてやらないとね」
だからもう少し情報が欲しい。
中途半端な情報で手を出したら把握できてない勢力が出てくるかもしれない。
SHの弱点は規模の大きさだ。
皆が戦えるわけじゃない。
だから常に致命傷を加え続ける必要がある。
「とりあえずはグループとその経営者。その他重要人物の特定だね?」
公生がそう言うと僕は頷いた。
「任せとけ、丸裸にしてやらぁ」
誠がそう言って盛り上がる。
「冬夜さん、少し時間をくれませんか?」
愛莉が言って来た。
「どうしたの?」
「桜子が……」
またか。
ちょっと席を外して桜子の所に向かう。
「あと定年までもう少しじゃないですか?」
「絶対に雪達は桜子先生が担当するわけありません」
瞳子達が必死に宥めてる。
「だから大丈夫だって。ちょっと小学校でドンパチやるだけだ」
「ふざけた真似してくれたからな。まとめて投身自殺させてやる!」
「水奈の言う通りだ。海翔にも遺書の偽装くらい仕込んだから」
何度も言うけどあまり悩むと禿げるぞ。
「瞳子……覚悟しなさい。片桐家の担任なんて恐ろしい以外に何もないから」
「私は自分の娘だから扱い方くらいわかってますので」
瞳子はあまり気にしていないようだ。
しかし僕の子供はどうも好戦的な子が多いらしい。
しかも娘の方が強いというのは多分片桐家だからだろう。
酒井君の所を見てると僕だけに限った話じゃなさそうだけど。
「そう言えば雪達は今度から幼稚園か」
僕が冬吾に聞いていた。
「うん、そうだけど」
「冬吾、一つ言っておく。多分愛莉が忙しいから偶に愚痴聞いてやれ」
過去に散々愛莉をこき使っていた天音が言った。
結莉や茉莉達も例外じゃなかった。
母親の天音が行かなきゃいけないところを着信拒否と言う暴挙に出た。
それは水奈も同じだったらしい。
瞳子は学校がある。
だから愛莉が代わりに行くしかない。
愛莉もその事は悩んでいるようだった。
雪は多分問題ないとは思う。
それにパオラの言っていたことも気になる。
あの事件をきっかけにSHの人間に関わりたくないという主婦が増えているらしい。
まあ、SHも母親の多いグループになったからそんなに問題ないと思うんだけど気になる。
雪は桜を見ながらお弁当を食べていた。
誠司郎はしゃいで走り回っている。
「やっぱり私の孫みたいだ」
神奈が言っていた。
まだまだ大人しくすましているなんて歳じゃない。
純達とはしゃいで遊んでいた方が楽しいのだろう。
あの歳であんなに大人しく弁当を食べている雪の方が不思議なんだ。
多分、茉莉や菫の様に自分から動くという事はないだろう。
問題はそこじゃない。
どうやらSHを潰そうと思ってるのは本気らしい。
すでに大学生の間でもその動きが見えているようだった。
空もFGだのリベリオンに構っている立場の人間じゃない。
昔とはやり方が変わった。
出来れば雪を刺激するような馬鹿が現れない事を祈るしかない。
しかし祈るだけ無駄だったようだ。
(2)
「雪、急ぎなさい」
パパが言うから急いで着替えた。
小さい鞄を背負ってリビングに出る。
じいじが私を見て言った。
「一人でちゃんと着替えられるんだね」
普通じゃないの?
呼び鈴が鳴るとママが玄関に行く。
誠司郎達が来たみたい。
「よお!」
誠司郎が挨拶していた。
「へえ、可愛いじゃん」
「……ありがと」
お世辞だと思うけど嬉しい。
ただどうやって伝えたらいいか分からない。
なんか恥ずかしい。
「誠司郎。ボタンはちゃんと留めたほうがいいよ」
「ボタンしない方がかっこよくないか?」
「そんなわけない、そういうのをだらしがないって言うの」
私が誠司郎を注意していた。
「じゃあ、冬吾さん。ごめんなさい」
「いいよ。仕事頑張って」
ママは小学校が始まってるから今日来ることが出来ない。
だからパパが来ていた。
「瞳子も大変だね」
「自分で決めたことだから」
そんなやりとりをパオラとしていた。
もちろん誠司も来ている。
今日は試合が無いから大丈夫らしい。
幼稚園に着くとクラスわけがあった。
私と誠司郎は同じクラスだった。
策者の手抜きというらしい。
先生が何かを言うたびに馬鹿みたいにでかい声で「はーい」と言っている。
先生は難聴なんだろうか?
うるさくて眠れやしない。
「いいか雪。幼稚園は寝る場所だ。じっくり体を休めろ。五月蠅かったらとっとと家に帰った方が良い」
「天音は自分の甥に何を馬鹿な事を吹き込んでいるの!」
茉莉や菫はそれを実行しているらしい。
今は中学校だけどそれで学校を抜け出すそうだ。
しかし中学校くらいになると便利なシステムがある。
何をしていようと成績さえよければ何とかなる。
授業を受けずとも教科書読むだけで理解してしまう二人なら問題ないそうだ。
天音はともかく愛莉が頭を悩ませていた。
入園式で長い話をする禿がいるけど他の園児たちは後ろで見ている親をチラチラ見ていた。
茉莉や菫は寝ていたそうだけど、確かにこれはつまらない。
現に私は寝ていた。
誠士郎も一緒に寝ていた。
入園式が終わると説明があって家に帰る。
帰る際にルートをチェックする。
ここは危険だとかとりあえず確かめておく。
家に帰ると部屋に戻って着替えて洗濯機に入れて寝る。
父さん達の部屋にあった漫画は大体読んだ。
漫画はもう十分だと思う。
もっと面白いものはないかと探していた。
夕飯の時に幼稚園であったことをママやじいじ達に聞かれた。
友達出来た?
当然出来るわけがない。
「別に何もなかった」
「……そうか」
じいじはそれ以上聞いてこなかった。
夕食のあと風呂に入ると寝る事にした。
これから毎日平和という平凡な日々を繰り返す。
そんな事を考えていた。
(3)
部屋にあった積み木で適当に遊んでいると、そいつらが突然やってきた。
ここ数日の間でそれなりに誠司郎には友達が増えた。
当然の様に私も頭数に入っていた。
そいつらが来た振動で積み木が崩れてしまった。
「FGに入るか死ぬか選べ」
そんな脅しというか死亡フラグを受けていた。
誠司郎はいないみたいだ。
特に急用があったみたいじゃない。
”連れしょん”というのをやってみたかったらしい。
男の子ってたまに理解に苦しむ行動に出る。
「おい、俺達を無視してんじゃねーよ。話聞いてるのか?」
こっちの馬鹿もどうにかしないとな。
私はそいつらを睨みつけて言った。
「私に指図しないで」
男達は怯んだ。
どんな生物でも私に服従させる”王の権威”という能力。
「今すぐ私の目の前から消え失せなさい」
「たった一人で何が出来る?お前馬鹿じゃないのか?」
そう言われて周りをみると鬱陶しいトレードマークをつけた馬鹿が囲んでいた。
「……そういやお前片桐って言ったな?」
「それがどうかしたの?」
「前に殺されたのお前の親族だろ?」
遠坂の爺さんの事か。
「あいつも妻を庇って死んだんだってな?」
「お前も殺されたいのか?」
こいつは口にしてはいけない事をした。
「ほら、二の舞にならないうちに失せろ」
「……確かに死ぬのは嫌だね」
後始末も面倒だ。
「意外とも分かりがいいじゃねーか……!?」
私が行動する前に誠司郎が戻って来たらしい。
誠司郎は私に絡んでる馬鹿を思いっきり殴り飛ばした。
「お前誰に断って雪に触ってるんだ!」
俺だって触った事ないんだぞ!
そんなに触りたいのだろうか?
今度触らせてあげようかな?
「お前、FGなめてるんじゃねーぞ!」
「それは墓標みたいな物って父さんが言ってた。生きて帰れると思うなよ」
本当に人殺しの好きな物語だな。
だけどこれは恋愛物語。
通常あり得るはずがないのに。
そう思った時だった。
彼らは抵抗を止めた。
誠司郎が一方的に攻撃している。
不思議に思いながらもそれは誠司郎の暴力事件になるから誠司郎を止める。
しかし泣きわめく彼らに気づいた保母さんがやってきた。
「彼らが勝手に絡んできて、勝手に泣き出しました」
私はありのままに説明した。
私が女の子という事、普段から大人しくしていたという事を考慮して解放された。
「誠司郎も後先考えず暴れるのやめなよ」
「雪を守るためならなんだってするよ」
「それで誠司郎が注意されてたら私は……」
悲しいの?
「どうした?」
「いや、それより誠司郎は私に触りたいの?」
「そりゃ、手を繋ぐとかしたいよ」
「いいよ」
「へ?」
「ほら」
そう言って手を差し出す。
手汗が気になったけど誠司郎は喜んでくれた。
さっきの勇敢な行動に免じてこのくらい許してやろう。
崩れた積み木を再び積み上げていく。
「残念だったね」
女の子がそう言っている。
「また積みなおすよ」
家に帰ると着替えて夕食まで寝る。
夕食の時に今日あったことをパパやママに話していた。
じいじも聞いていたようだ。
じいじは違う質問をしてきた。
「で、一緒に積み木で遊んでいた女の子の名前は?」
確か黄島亜優って言ってたっけ。
でもそれがどうかしたんだろう。
「あの……注意しなくていいのかな?」
パパがじいじに聞いていた。
「何を注意するの?」
私は別に何もしていない。
風呂に入って寝るかってときにママがノックする。
「誠司郎が言いたい事があるって電話してきたの。聞いてあげて」
母さんがそう言うと電話に出る。
「今日はありがとう」
「礼を言うのは私の方だと思うけど」
「でも手を繋いでくれた時嬉しかった」
「ちゃんと手を洗ってなかったからごめんね」
「すごく柔らかかった」
そんなしょうもないことを言いたくて電話してきたのだろうか?
「他の子と比較したの?」
「雪が初めてだよ」
「だったら他の子と比べてみたら?」
「雪だけでいい!」
誠司郎からそんな風に押してくるの初めてだな。
すると予想外の答えが返って来た。
「次は腕を組んでくれると嬉しいんだけど」
「他の子に誤解されても知らないよ」
「誤解なのかそれは」
どういう意味だろう?
「そうだな、雪は俺と手を繋いで嫌な気分になったのか?」
「別にただ手を繋ぐくらいどうってことないし」
「じゃあさ、腕を組むのも同じじゃないか?」
流石に違うんじゃないだろうか?
「俺と腕組むの嫌か?」
え?
考えた事もなかった。
そんな風に隣に立ってくれる人がいるなんて考えてなかった。
でも隣に誠司郎がいてくれるなら。
でも私よりふさわしい女の子がいるよ。
「その相応しいって誰が決めるんだ?」
「誠司郎が決めたらいいじゃない」
「じゃあ、雪に決めた。これでいいか?」
逆に私は誠司郎を選べない理由があるのか?
そんなのあるわけない。
でも本当に私でいいの?
「そろそろ母さんがうるさいから切るよ。また明日」
「うん……」
電話を切るとママに返しに行った。
「何かあった?」
ママが聞いてくるのでママに聞いてみた。
「私にふさわしい男ってどうやって決めるんだろう?」
ママは笑って答えた。
「そんなの雪が自由に決めたらいいじゃない」
「じゃあ、その人にとってふさわしい女は?」
「その人に聞いてみたらいいんじゃないの?」
人の優劣なんてみんな価値観が違うんだ。
だから流されずに自分の気持ちに素直になればいい。
その晩私はなかなか眠れなかった。
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