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(1)
今夜は花見の日。
桜と関係ないかのように瑛大と誠を中心に盛り上がっている。
結や茉奈も花を楽しんでいた。
「優奈達、それはまだ早い!」
学が叱っている。
多分優奈達が持っているアルミ缶が理由だろう。
「いいじゃねーか!中学生になったら飲んでいいと水奈が言ってたよ!」
愛菜が言うと水奈を睨みつける学。
「わ、私だけじゃない!紗理奈だって中学生で飲んでいたって聞いたぞ」
「水奈の言う通りだ。どうせ隠れて飲むんだからいいだろ!」
水奈と美嘉が言っていると学は悩んでいた。
だから正志が美嘉を注意していた。
「いつも言ってるだろ!それを親が認めてどうするんだ!?」
「酒飲んだからって人殺すわけじゃねーからいいだろ!」
別にクスリとかやってるわけじゃないからいいじゃないか。
「学もこんな日くらい硬い事言わないで許してあげなよ」
亜依が言うと学が悩んでいた。
するとじいじが何か思いついたらしい。
優奈達に言っていた。
「二人ともまだ早いうちからお酒飲んでると成長止まっちゃうよ?」
「どういう事?」
「身長とかもそうだけど、2人とも気にしてるんじゃないのか?」
「あ……」
優奈達は気づいたらしい。
やっぱり気にしていたようだ。
大人しくジュースを飲んでいた。
しかしそれで解決するはずがなかった。
「するってーと私が成長しなかったのは酒飲んでいたからと言いたいのか?トーヤ」
神奈がじいじを睨んでいた。
「私もそれが原因なんだろうか……」
急に落ち込みだす水奈。
「待て!その理屈はおかしい!私は高校卒業するまで飲んでないのに大きくならないぞ!パパどういうことだ!?」
天音も怒り出していた。
「そう言えば結莉達は興味もたないの?」
翼が話題を変えていた。
ちなみに茉莉と菫は「ビールなんかじゃ物足りない!スピリタス持ってこい!」と叫んでいて善明達が説得していた。
石原家と酒井家の男子は少しアルコールが入ったくらいなら大丈夫らしい。
そんな時に敵襲があるかもしれないから訓練をしているそうだ。
……って事は結局飲んでるのか。
茉奈達は違うようだった。
「私は結と約束してるから」
「約束?」
水奈が聞くと茉奈が説明した。
お互い成人したらお洒落なバーでカクテルが飲みたい。
そんな夢を共有していたらしい。
するとなぜか空が落ち込んでいる。
「結、お酒飲めるようになったら父さんとも飲んであげてやれないかな?」
父親は息子と飲める日が何よりも待ち遠しいらしい。
「分かった」
「茉奈達はもう進路決めてるのか?」
来年受験だろ?
多分連休前に進路相談とかあるはずだと天音が言う。
「うん、決めてるよ」
近所の高校にするそうだ。
普通科ならどこでもいいから近い方が良いと決めていた。
「それに父さんが言っていた。あそこの焼きそばパンは最高だって」
「あれ?茉奈に弁当作ってもらわないの?」
愛莉が聞くと結は当然の様に答えていた。
「両方食べるから大丈夫」
「……冬夜さん。私今一つ不安な事があるんですけど聞いてもらえませんか?」
「どうしたの?愛莉」
「この二人を一緒にするのが怖くてしょうがないんです」
片桐家は恋人が食欲を制御しないと食べられるだけ食べる。
だけど茉奈が相手じゃブレーキが利かない。
それが非常に不安だという。
「大丈夫、愛莉。その分お弁当の量で調整するから」
茉奈は結の食事量を制限すると言っていた。
そんな事出来るんだろうか?
「……それはお婆さんにも難しかったことなのよ」
「結が約束してくれたの」
「どういう事?」
「私にも協力して欲しいって」
愛莉が聞くと茉奈は答える。
結はいつも茉奈の側にいる。
結が食べたら茉奈も食べなければならない。
茉奈には片桐家のチートはない。
以前の愛莉のようにスカートが入らないと悩むかもしれない。
そんな体型の彼女嫌でしょ?
結には関係ない気がしたけど結はそれで納得したらしい。
「つまり茉奈は片桐家に食事制限をかけることが出来るってわけ!?」
「……そうみたいだね」
じいじも驚きを隠せないみたいだった。
結莉達の目指す高校はじいじ達が通ってた高校。
だからじいじ達は知っている。
その学校の通学路の途中に幾つも飲食店があることを。
その高校以外を勧めたところで無駄なのは天音が証明した。
街で食べるだけ食べて夕食がきついと言ってた事があるらしい。
もちろん愛莉に怒られた。
「茉奈はやっぱりうどんがいいの?」
「う~ん、近所にコーヒーショップあったからそこでいいよ」
「でも毎日同じじゃ飽きないかな?」
「いろんなケーキあるから平気だよ」
そんな2人の会話を聞いていて神奈は落ち込んでいた。
「片桐家の食欲を制限する孫娘か……水奈は凄い娘を作ったのかもしれないな」
やりたい放題の片桐家に制限をかける茉奈こそ最大のチートじゃないかと神奈が説明する。
「それにしてもあの食欲で結莉はよく体型を維持してるわね……さすが片桐君の孫ってこと?」
亜依もそう言ってため息を吐いていた。
「天は少しは大地とかを見習いなさい!」
上半身裸になって狂乱している天を繭が叱っている。
無理もない。
これで如月リゾートの会長という職位なんだから怒りもするだろう。
そしてその後を継ぐ大和はそんな父親を見て笑っている。
綺羅は大人しく弁当を食べているけど。
それが珍しいと思ったのか晶が繭に聞いていた。
「綺羅にはどんな教育をしたの?」
「……私が母様から受けた教育を徹底しました」
むしろ酒井家の血がある大和がはしゃいでいる方が不思議だと繭が言う。
そんな風に皆が騒いでいるのを眺めながら弁当を食べていた。
ぽかっ
「まーた、一人でぼーっとしているぞ」
少しは友達付き合いとかした方がいいんじゃないの?
誠司郎がそう言って私の隣に来る。
「そう思うんだったらもっと私の相手してよ」
「俺以外の子とは話したりしないのか?」
「興味ない」
ガキ臭い子と遊ぶつもりはない、と子供の私が言ってみた。
「俺は違うのか?」
「光栄に思うのね」
こんな言い方しかできない自分が一番子供じゃないのだろうか?
「で、何を考えていたんだ?」
誠司郎が聞いたので説明する。
今年に入って空の命令が下りてFG狩りが始まった。
今までみたいに手を出して来たら潰すじゃない。
見つけ次第に一人残らず潰している。
馬鹿がじいじ達に喧嘩を売った。
だから相手をしてやることにした。
最後の一人になるまで潰してやる。
天音や祈達も暇を見つけては潰しにかかっている。
それは喧嘩だけじゃない。
薔薇乙女とやらの息のかかった企業を乗っ取りにかかる。
アルテミスとやらも同じだ。
敵対勢力を地元から完全に消し去ろうとしていた。
にもかかわらず不可解な点がある。
潰すと言っていた割には反撃してこない。
何の感触もないようだ。
そしてパパ達の話を聞いていた感じだとDOLLとやらも姿を見せないみたいだ。
何か企んでる。
そう考えるのが普通だろう。
じいじは言っていた。
「雪は凄い才能がある。だからこれから必要になる事を教えてあげる」
「それは何?」
「読み」
自分が相手ならこの状況でどんな手段を取ってくるか。
相手は何を仕掛けてくるか。
どうして相手が何もしてこないのか?
それを考えていたら一つの結論に至る。
タイミングを狙ってる。
その時期がいつなのかが分からない。
無抵抗な相手程恐ろしい物はない。
それがこっちの隙を伺っているにしろ、我慢が出来なくなって反撃してくるにしてもそんな苦し紛れの一手が一番怖い。
死なばもろとも。
そんな最終思考に入った人間が怖いのは雪もこれから知るだろう。
剣の腕なんて未熟だった侍が最強の人斬りに傷を入れるくらいに恐ろしい事だ。
一度こちらから仕掛けたら最初の猛攻で粗方潰してしまわないといけない。
反撃なんて二文字を使わせてはいけない。
それができないのなら先手必勝なんて言葉を軽々しく口にしてはいけない。
最低限相手の反撃の手段をある程度予測しないといけない。
SHは持てる最大の攻撃力を出している。
それでもまだ潰し切れないくらいFGの規模はでかい。
そうなると考えられる事はそんなにない。
こっちの弾切れを狙っている。
一気に攻撃を仕掛けるのはいいけど息が切れた時が一番危険な瞬間。
相手も私と同じように隙を伺っている。
だから空達がやっきになって攻撃している間に見極めないといけない。
それはSHの一番の急所。
私がFGならどこを狙う?
「で、雪は分かったの?」
「なんとなくだけどね」
一番安全な位置にいるように見えて実は一番危険な部分。
「そんなのがあるのか?」
「……あった」
確かにタイミングが肝心だ。
早くても遅くてもダメ。
SHが油断した一瞬を突いてまさに会心の一撃にしないといけない。
その時期だけが分からないと誠司郎に言う。
「さすが雪だな。そんな事考えていたのか……。でもだめだ」
「なぜ?」
「雪は今日は何しにきたんだ?」
桜を楽しみながら食事にきたんだろ?
桜なんて関係なしに騒いでる人もいるけど。
「だから誠司郎が隣に来たんでしょ?」
「悪かったか?」
「そんなわけない……でも」
「でも?」
「私じゃなくても例えば亜優といたほうがいいんじゃないかって」
今日はいないけど。
「別に亜優の事は何も考えてないよ」
「じゃあ、私の事は考えてるの?」
「亜優って誰だ?」
神奈が聞いていたみたいだ。
誠司郎が説明している。
するまでもなかった。
「ああ、剣太の子供だね」
パパが答えていた。
それをきいた誠が怒り出す。
「おい誠司郎!お前雪の何が気に入らないんだ!冬夜も言ってただろ!愛莉さんや瞳子の血なら間違いなく……いてぇ!」
「お前は黙ってろ!なるほどな、そういう話ならお婆さんが乗ってやるよ」
「そうだね、雪。そういう時は女の方からガンガン押して行かないとダメ!」
神奈と亜衣が混ざって来た。
結莉も何か言っている。
「結莉も聞いたよ~。お嫁さんや彼女にない物を他の女性に求めるのが男だって」
「それ誰に聞いたんだ?」
「優奈」
結莉がそう言うと優奈を見る。
「ああ、瑛大から聞いたの」
「……お前らは孫に何を教えてるんだ!」
結局今年もこの2人が怒られるんだな。
するとじいじがそばに来た。
「これはお爺さんのアドバイスなんだけど」
どうしたんだろう?
じいじはにこりと笑って言った。
「そういうのは遠慮をした方が負けるんだ」
「どうして?」
「だって男からしたら自分にはいらないから譲ってあげるって言われてるような物なんだ」
自分の事はそんなに大事じゃないと誤解されるかもしれない。
だからじゃあいいやと諦めてしまうかもしれない。
男の子だって自分を好きでいてくれる女の子を探しているんだ。
私に手ごたえを感じなかったら他の女の子を求めるかもしれない。
そうなったらもう私には絶対近づかない。
そうなった時に後悔するのは私だとじいじが言った。
「そんな事絶対ねーから!」
そう言って俺の腕を掴む誠司郎。
「……よかったね」
こんな楽しい時くらい友達と遊んだ方が良い。
どうせすぐにその緊急事態がくるわけじゃないから。
楽しめる時に楽しむ。
それが渡辺班からの伝統だといってじいじは言った。
「雪は誤解してる。勝手に亜優が近づいてくるんだ」
「知ってる。だから不安で……」
「覚えてるか?」
「何を?」
「手を繋いだ女の子は雪だけだよ」
あんな風に抱きしめたのも私だけ。
嬉しいけどそれは今聞きたい事じゃない。
「へえ、もうはぐしちゃったのかあ」
「今夜の酒の肴は決まったな。亜衣」
「あまり孫娘を困らせないで」
私は今すぐこの場から消え去りたいと思った。
「雪でもてこずる事ってあるんだね」
パパはそう言って笑っている。
「久々に面白い話になって来たわね」
神奈や愛莉、恵美達女性陣が私を取り囲んでいた。
「いいか!まずこれが大前提だ!」
諦めたらそこで試合終了。
「だ、だから私は……」
「そういう意地は必要ない。むしろはっきり自分の意思を示さないと!」
そうして帰るまで私は人生の先輩のアドバイスを受けていた。
(2)
「よお、海翔」
振り返ると学ランを来た悠翔がいた。
今日は中学校の入学式。
優奈達も一緒にいる。
結莉達の時は髪の色で親が揉めていたそうだけど今年はそれはないみたいだ。
天音と水奈が話をしている間僕達も話をしていた。
クラス分けが張り出されると教室に向かう。
手抜きな神様は皆同じクラスにしていた。
琴音がやや機嫌が悪そうだから何かあったのか快に聞いてみた。
「ああ、家でやらかしたらしいよ」
「何を?」
僕が聞くと快が説明した。
最初スカートを平成の時代並みに短くしたらしい。
そしたらなずなが注意する。
するとネクタイを締めている遊に言ったらしい。
「パパもこのくらいがいいよね。パンチらもあるよ」
遊はどう返事したらしいか悩んだらしい。
「琴音。それは快に見せるものじゃないの?」
「ええ、パパは興味ないの?」
「琴音は足が綺麗だなってのは認めるけど、世の中の快以外の男の目線は気にならないのか?」
「そんな変態放っておけばいいじゃん」
「快はそう思わないかもしれないよ」
「そっか、快には今年中には全部見せるから関係ないね!」
「いや……そうじゃなくてね!」
「遊はいい加減娘に甘すぎ!琴音も馬鹿な真似してないで早く元に戻して準備しなさい!」
「ママは私に嫉妬してるの!」
「いい加減にしないと小遣い減らすよ!」
「それって理不尽じゃない!?」
そう言って朝からなずなと喧嘩していたらしい。
でも、遊の言う通りだ。
「琴音。自分の彼女がそんな目で見られるのは彼氏としてはやっぱり微妙かもしれない」
「……海翔が言うんだったらそうなんだろうね」
「ほら、優奈。私の言う通りだったでしょ?」
「本当だね」
愛菜と優奈が話をしている。
優奈達も同じ事を考えたらしい。
だけど愛菜がそう優奈に言ったらしい。
「多分、優奈が魅力的すぎてちゃんと見てもらえなくなるよ」
どうせ一緒のベッドで寝る事になったら全部見てもらえるんだから普通にしといたほうがいいんじゃない?
世の中誠みたいにスカートの丈が短い=下着を見て欲しい=欲求不満と都合のいい解釈をする変態がそこら中にいるんだから。
一緒のベッドで寝るとどうしてそうなるのかはわからないけど、多分聞かない方が良いと思ったからやめておいた。
そんな話をしながら僕と悠翔はクラスの生徒を観察していた。
そんなに難しいことじゃない。
手首だけを確認すればいい。
結構な数いるな。
まだ、手出しはしなかった。
今日は入学式だから何もしなくていい。
入学式を葬式に変える必要はない。
分かりやすく言うと「私達の餌に勝手に手出しするなと」茉莉と菫に言われていた。
今まで大人しかったSHの逆鱗についに触れたFG。
そしてずっと一方的なSHの暴行が続いてた。
中学校でも問題になって天音達が呼ばれたらしい。
だけど天音は平然と言う。
「いいか翔。私を呼びだすって事は子供達の夕食が遅れるって事だ」
それは子供達を苛つかせて被害はまだ増えるぞ。
「そこを抑えてもらえないか?」
「無理だな。私が墓に叩き込んでやりたいくらいだ」
あいつらは私達を怒らせた。
今まで散々多めにみてやったら調子に乗った。
罪状はそれだけで十分だ。
空の指示が出た以上、私達を邪魔する奴もまとめて皆殺しにしてやる。
「だから生徒を死なせたくなかったらSHに見つからないように頭を低くして歩けと伝えておけ」
その方が弾にも当たらないし利口だぞ。
僕の母親の天音はそう言った。
だから茉莉と菫も十分な装備を渡されている。
結莉は武器なんて必要ない。
破壊の能力があるんだから人体くらい片手で破壊する。
FGは絶対にしてはならない事をした。
それはじいじを怒らせたこと。
子供のやんちゃくらいもみ消してやる。
恵美もそう言っている。
心配そうにしているのは愛莉と瞳子くらいだ。
僕もそのつもりでいる。
だけど折角のめでたい日だから今日だけは我慢しろ。
後は中学校を地獄に染めてやれ。
学級崩壊くらいじゃ気が済まない。
校舎を崩壊させてやれと結莉に言っていた。
SHの暴走は止まらない。
誰にも止められない。
僕も止めるつもりはない。
にいにに従って任務を遂行するのみ。
先月まででテレビのローカルニュースどころか全国レベルで問題になっているSHの暴動。
だけどSHの実態は絶対に流れない。
恵美や晶が圧力をかけている。
「少しほとぼりが冷めるのを待った方がいいんでないかい?」
善明がそう言っていた。
だけど空は言ったらしい。
「なんで?」
恵美さん達が隠蔽しようとしたら相手は必ずそれを引きずり出そうとする。
空の狙いはそれだと言う。
そいつが相手の黒幕につながっているのは間違いない。
そいつを見つけたら一気に暴いて芋づる式に引きずり出してやる。
しかし相手はよほど慎重らしい。
なかなか手を出してこない。
今もそうだ。
毎年新入生を恐喝するFGが何もしてこない。
天音達の脅しが効いたのかどうかは分からない。
何事もなく無事入学式を終えて回転寿司によって家に帰る。
着替えると教科書を流し読みしてた。
小学校でも進級するたびにやってたこと。
これだけで大体の事は頭に入る。
だから授業で寝るってわけじゃない。
小学校と違うのは担任=教師じゃない事。
科目によって教師が変わる。
中には中間テストのヤマを教えてくれる先生もいるそうだ。
僕には必要ないけど優奈にはきっと必要だからちゃんと聞いておこうと思ってる。
「中学生になったら買い食いできるからお勧めのおにぎり教えてあげるね」
結莉がそう言っていた。
「意外と昆布とか美味しいんだぞ。ミーハーはツナマヨや鮭狙うけどな」
母さんが言っている。
そうやって僕達の新しい3年間が始まる。
今夜は花見の日。
桜と関係ないかのように瑛大と誠を中心に盛り上がっている。
結や茉奈も花を楽しんでいた。
「優奈達、それはまだ早い!」
学が叱っている。
多分優奈達が持っているアルミ缶が理由だろう。
「いいじゃねーか!中学生になったら飲んでいいと水奈が言ってたよ!」
愛菜が言うと水奈を睨みつける学。
「わ、私だけじゃない!紗理奈だって中学生で飲んでいたって聞いたぞ」
「水奈の言う通りだ。どうせ隠れて飲むんだからいいだろ!」
水奈と美嘉が言っていると学は悩んでいた。
だから正志が美嘉を注意していた。
「いつも言ってるだろ!それを親が認めてどうするんだ!?」
「酒飲んだからって人殺すわけじゃねーからいいだろ!」
別にクスリとかやってるわけじゃないからいいじゃないか。
「学もこんな日くらい硬い事言わないで許してあげなよ」
亜依が言うと学が悩んでいた。
するとじいじが何か思いついたらしい。
優奈達に言っていた。
「二人ともまだ早いうちからお酒飲んでると成長止まっちゃうよ?」
「どういう事?」
「身長とかもそうだけど、2人とも気にしてるんじゃないのか?」
「あ……」
優奈達は気づいたらしい。
やっぱり気にしていたようだ。
大人しくジュースを飲んでいた。
しかしそれで解決するはずがなかった。
「するってーと私が成長しなかったのは酒飲んでいたからと言いたいのか?トーヤ」
神奈がじいじを睨んでいた。
「私もそれが原因なんだろうか……」
急に落ち込みだす水奈。
「待て!その理屈はおかしい!私は高校卒業するまで飲んでないのに大きくならないぞ!パパどういうことだ!?」
天音も怒り出していた。
「そう言えば結莉達は興味もたないの?」
翼が話題を変えていた。
ちなみに茉莉と菫は「ビールなんかじゃ物足りない!スピリタス持ってこい!」と叫んでいて善明達が説得していた。
石原家と酒井家の男子は少しアルコールが入ったくらいなら大丈夫らしい。
そんな時に敵襲があるかもしれないから訓練をしているそうだ。
……って事は結局飲んでるのか。
茉奈達は違うようだった。
「私は結と約束してるから」
「約束?」
水奈が聞くと茉奈が説明した。
お互い成人したらお洒落なバーでカクテルが飲みたい。
そんな夢を共有していたらしい。
するとなぜか空が落ち込んでいる。
「結、お酒飲めるようになったら父さんとも飲んであげてやれないかな?」
父親は息子と飲める日が何よりも待ち遠しいらしい。
「分かった」
「茉奈達はもう進路決めてるのか?」
来年受験だろ?
多分連休前に進路相談とかあるはずだと天音が言う。
「うん、決めてるよ」
近所の高校にするそうだ。
普通科ならどこでもいいから近い方が良いと決めていた。
「それに父さんが言っていた。あそこの焼きそばパンは最高だって」
「あれ?茉奈に弁当作ってもらわないの?」
愛莉が聞くと結は当然の様に答えていた。
「両方食べるから大丈夫」
「……冬夜さん。私今一つ不安な事があるんですけど聞いてもらえませんか?」
「どうしたの?愛莉」
「この二人を一緒にするのが怖くてしょうがないんです」
片桐家は恋人が食欲を制御しないと食べられるだけ食べる。
だけど茉奈が相手じゃブレーキが利かない。
それが非常に不安だという。
「大丈夫、愛莉。その分お弁当の量で調整するから」
茉奈は結の食事量を制限すると言っていた。
そんな事出来るんだろうか?
「……それはお婆さんにも難しかったことなのよ」
「結が約束してくれたの」
「どういう事?」
「私にも協力して欲しいって」
愛莉が聞くと茉奈は答える。
結はいつも茉奈の側にいる。
結が食べたら茉奈も食べなければならない。
茉奈には片桐家のチートはない。
以前の愛莉のようにスカートが入らないと悩むかもしれない。
そんな体型の彼女嫌でしょ?
結には関係ない気がしたけど結はそれで納得したらしい。
「つまり茉奈は片桐家に食事制限をかけることが出来るってわけ!?」
「……そうみたいだね」
じいじも驚きを隠せないみたいだった。
結莉達の目指す高校はじいじ達が通ってた高校。
だからじいじ達は知っている。
その学校の通学路の途中に幾つも飲食店があることを。
その高校以外を勧めたところで無駄なのは天音が証明した。
街で食べるだけ食べて夕食がきついと言ってた事があるらしい。
もちろん愛莉に怒られた。
「茉奈はやっぱりうどんがいいの?」
「う~ん、近所にコーヒーショップあったからそこでいいよ」
「でも毎日同じじゃ飽きないかな?」
「いろんなケーキあるから平気だよ」
そんな2人の会話を聞いていて神奈は落ち込んでいた。
「片桐家の食欲を制限する孫娘か……水奈は凄い娘を作ったのかもしれないな」
やりたい放題の片桐家に制限をかける茉奈こそ最大のチートじゃないかと神奈が説明する。
「それにしてもあの食欲で結莉はよく体型を維持してるわね……さすが片桐君の孫ってこと?」
亜依もそう言ってため息を吐いていた。
「天は少しは大地とかを見習いなさい!」
上半身裸になって狂乱している天を繭が叱っている。
無理もない。
これで如月リゾートの会長という職位なんだから怒りもするだろう。
そしてその後を継ぐ大和はそんな父親を見て笑っている。
綺羅は大人しく弁当を食べているけど。
それが珍しいと思ったのか晶が繭に聞いていた。
「綺羅にはどんな教育をしたの?」
「……私が母様から受けた教育を徹底しました」
むしろ酒井家の血がある大和がはしゃいでいる方が不思議だと繭が言う。
そんな風に皆が騒いでいるのを眺めながら弁当を食べていた。
ぽかっ
「まーた、一人でぼーっとしているぞ」
少しは友達付き合いとかした方がいいんじゃないの?
誠司郎がそう言って私の隣に来る。
「そう思うんだったらもっと私の相手してよ」
「俺以外の子とは話したりしないのか?」
「興味ない」
ガキ臭い子と遊ぶつもりはない、と子供の私が言ってみた。
「俺は違うのか?」
「光栄に思うのね」
こんな言い方しかできない自分が一番子供じゃないのだろうか?
「で、何を考えていたんだ?」
誠司郎が聞いたので説明する。
今年に入って空の命令が下りてFG狩りが始まった。
今までみたいに手を出して来たら潰すじゃない。
見つけ次第に一人残らず潰している。
馬鹿がじいじ達に喧嘩を売った。
だから相手をしてやることにした。
最後の一人になるまで潰してやる。
天音や祈達も暇を見つけては潰しにかかっている。
それは喧嘩だけじゃない。
薔薇乙女とやらの息のかかった企業を乗っ取りにかかる。
アルテミスとやらも同じだ。
敵対勢力を地元から完全に消し去ろうとしていた。
にもかかわらず不可解な点がある。
潰すと言っていた割には反撃してこない。
何の感触もないようだ。
そしてパパ達の話を聞いていた感じだとDOLLとやらも姿を見せないみたいだ。
何か企んでる。
そう考えるのが普通だろう。
じいじは言っていた。
「雪は凄い才能がある。だからこれから必要になる事を教えてあげる」
「それは何?」
「読み」
自分が相手ならこの状況でどんな手段を取ってくるか。
相手は何を仕掛けてくるか。
どうして相手が何もしてこないのか?
それを考えていたら一つの結論に至る。
タイミングを狙ってる。
その時期がいつなのかが分からない。
無抵抗な相手程恐ろしい物はない。
それがこっちの隙を伺っているにしろ、我慢が出来なくなって反撃してくるにしてもそんな苦し紛れの一手が一番怖い。
死なばもろとも。
そんな最終思考に入った人間が怖いのは雪もこれから知るだろう。
剣の腕なんて未熟だった侍が最強の人斬りに傷を入れるくらいに恐ろしい事だ。
一度こちらから仕掛けたら最初の猛攻で粗方潰してしまわないといけない。
反撃なんて二文字を使わせてはいけない。
それができないのなら先手必勝なんて言葉を軽々しく口にしてはいけない。
最低限相手の反撃の手段をある程度予測しないといけない。
SHは持てる最大の攻撃力を出している。
それでもまだ潰し切れないくらいFGの規模はでかい。
そうなると考えられる事はそんなにない。
こっちの弾切れを狙っている。
一気に攻撃を仕掛けるのはいいけど息が切れた時が一番危険な瞬間。
相手も私と同じように隙を伺っている。
だから空達がやっきになって攻撃している間に見極めないといけない。
それはSHの一番の急所。
私がFGならどこを狙う?
「で、雪は分かったの?」
「なんとなくだけどね」
一番安全な位置にいるように見えて実は一番危険な部分。
「そんなのがあるのか?」
「……あった」
確かにタイミングが肝心だ。
早くても遅くてもダメ。
SHが油断した一瞬を突いてまさに会心の一撃にしないといけない。
その時期だけが分からないと誠司郎に言う。
「さすが雪だな。そんな事考えていたのか……。でもだめだ」
「なぜ?」
「雪は今日は何しにきたんだ?」
桜を楽しみながら食事にきたんだろ?
桜なんて関係なしに騒いでる人もいるけど。
「だから誠司郎が隣に来たんでしょ?」
「悪かったか?」
「そんなわけない……でも」
「でも?」
「私じゃなくても例えば亜優といたほうがいいんじゃないかって」
今日はいないけど。
「別に亜優の事は何も考えてないよ」
「じゃあ、私の事は考えてるの?」
「亜優って誰だ?」
神奈が聞いていたみたいだ。
誠司郎が説明している。
するまでもなかった。
「ああ、剣太の子供だね」
パパが答えていた。
それをきいた誠が怒り出す。
「おい誠司郎!お前雪の何が気に入らないんだ!冬夜も言ってただろ!愛莉さんや瞳子の血なら間違いなく……いてぇ!」
「お前は黙ってろ!なるほどな、そういう話ならお婆さんが乗ってやるよ」
「そうだね、雪。そういう時は女の方からガンガン押して行かないとダメ!」
神奈と亜衣が混ざって来た。
結莉も何か言っている。
「結莉も聞いたよ~。お嫁さんや彼女にない物を他の女性に求めるのが男だって」
「それ誰に聞いたんだ?」
「優奈」
結莉がそう言うと優奈を見る。
「ああ、瑛大から聞いたの」
「……お前らは孫に何を教えてるんだ!」
結局今年もこの2人が怒られるんだな。
するとじいじがそばに来た。
「これはお爺さんのアドバイスなんだけど」
どうしたんだろう?
じいじはにこりと笑って言った。
「そういうのは遠慮をした方が負けるんだ」
「どうして?」
「だって男からしたら自分にはいらないから譲ってあげるって言われてるような物なんだ」
自分の事はそんなに大事じゃないと誤解されるかもしれない。
だからじゃあいいやと諦めてしまうかもしれない。
男の子だって自分を好きでいてくれる女の子を探しているんだ。
私に手ごたえを感じなかったら他の女の子を求めるかもしれない。
そうなったらもう私には絶対近づかない。
そうなった時に後悔するのは私だとじいじが言った。
「そんな事絶対ねーから!」
そう言って俺の腕を掴む誠司郎。
「……よかったね」
こんな楽しい時くらい友達と遊んだ方が良い。
どうせすぐにその緊急事態がくるわけじゃないから。
楽しめる時に楽しむ。
それが渡辺班からの伝統だといってじいじは言った。
「雪は誤解してる。勝手に亜優が近づいてくるんだ」
「知ってる。だから不安で……」
「覚えてるか?」
「何を?」
「手を繋いだ女の子は雪だけだよ」
あんな風に抱きしめたのも私だけ。
嬉しいけどそれは今聞きたい事じゃない。
「へえ、もうはぐしちゃったのかあ」
「今夜の酒の肴は決まったな。亜衣」
「あまり孫娘を困らせないで」
私は今すぐこの場から消え去りたいと思った。
「雪でもてこずる事ってあるんだね」
パパはそう言って笑っている。
「久々に面白い話になって来たわね」
神奈や愛莉、恵美達女性陣が私を取り囲んでいた。
「いいか!まずこれが大前提だ!」
諦めたらそこで試合終了。
「だ、だから私は……」
「そういう意地は必要ない。むしろはっきり自分の意思を示さないと!」
そうして帰るまで私は人生の先輩のアドバイスを受けていた。
(2)
「よお、海翔」
振り返ると学ランを来た悠翔がいた。
今日は中学校の入学式。
優奈達も一緒にいる。
結莉達の時は髪の色で親が揉めていたそうだけど今年はそれはないみたいだ。
天音と水奈が話をしている間僕達も話をしていた。
クラス分けが張り出されると教室に向かう。
手抜きな神様は皆同じクラスにしていた。
琴音がやや機嫌が悪そうだから何かあったのか快に聞いてみた。
「ああ、家でやらかしたらしいよ」
「何を?」
僕が聞くと快が説明した。
最初スカートを平成の時代並みに短くしたらしい。
そしたらなずなが注意する。
するとネクタイを締めている遊に言ったらしい。
「パパもこのくらいがいいよね。パンチらもあるよ」
遊はどう返事したらしいか悩んだらしい。
「琴音。それは快に見せるものじゃないの?」
「ええ、パパは興味ないの?」
「琴音は足が綺麗だなってのは認めるけど、世の中の快以外の男の目線は気にならないのか?」
「そんな変態放っておけばいいじゃん」
「快はそう思わないかもしれないよ」
「そっか、快には今年中には全部見せるから関係ないね!」
「いや……そうじゃなくてね!」
「遊はいい加減娘に甘すぎ!琴音も馬鹿な真似してないで早く元に戻して準備しなさい!」
「ママは私に嫉妬してるの!」
「いい加減にしないと小遣い減らすよ!」
「それって理不尽じゃない!?」
そう言って朝からなずなと喧嘩していたらしい。
でも、遊の言う通りだ。
「琴音。自分の彼女がそんな目で見られるのは彼氏としてはやっぱり微妙かもしれない」
「……海翔が言うんだったらそうなんだろうね」
「ほら、優奈。私の言う通りだったでしょ?」
「本当だね」
愛菜と優奈が話をしている。
優奈達も同じ事を考えたらしい。
だけど愛菜がそう優奈に言ったらしい。
「多分、優奈が魅力的すぎてちゃんと見てもらえなくなるよ」
どうせ一緒のベッドで寝る事になったら全部見てもらえるんだから普通にしといたほうがいいんじゃない?
世の中誠みたいにスカートの丈が短い=下着を見て欲しい=欲求不満と都合のいい解釈をする変態がそこら中にいるんだから。
一緒のベッドで寝るとどうしてそうなるのかはわからないけど、多分聞かない方が良いと思ったからやめておいた。
そんな話をしながら僕と悠翔はクラスの生徒を観察していた。
そんなに難しいことじゃない。
手首だけを確認すればいい。
結構な数いるな。
まだ、手出しはしなかった。
今日は入学式だから何もしなくていい。
入学式を葬式に変える必要はない。
分かりやすく言うと「私達の餌に勝手に手出しするなと」茉莉と菫に言われていた。
今まで大人しかったSHの逆鱗についに触れたFG。
そしてずっと一方的なSHの暴行が続いてた。
中学校でも問題になって天音達が呼ばれたらしい。
だけど天音は平然と言う。
「いいか翔。私を呼びだすって事は子供達の夕食が遅れるって事だ」
それは子供達を苛つかせて被害はまだ増えるぞ。
「そこを抑えてもらえないか?」
「無理だな。私が墓に叩き込んでやりたいくらいだ」
あいつらは私達を怒らせた。
今まで散々多めにみてやったら調子に乗った。
罪状はそれだけで十分だ。
空の指示が出た以上、私達を邪魔する奴もまとめて皆殺しにしてやる。
「だから生徒を死なせたくなかったらSHに見つからないように頭を低くして歩けと伝えておけ」
その方が弾にも当たらないし利口だぞ。
僕の母親の天音はそう言った。
だから茉莉と菫も十分な装備を渡されている。
結莉は武器なんて必要ない。
破壊の能力があるんだから人体くらい片手で破壊する。
FGは絶対にしてはならない事をした。
それはじいじを怒らせたこと。
子供のやんちゃくらいもみ消してやる。
恵美もそう言っている。
心配そうにしているのは愛莉と瞳子くらいだ。
僕もそのつもりでいる。
だけど折角のめでたい日だから今日だけは我慢しろ。
後は中学校を地獄に染めてやれ。
学級崩壊くらいじゃ気が済まない。
校舎を崩壊させてやれと結莉に言っていた。
SHの暴走は止まらない。
誰にも止められない。
僕も止めるつもりはない。
にいにに従って任務を遂行するのみ。
先月まででテレビのローカルニュースどころか全国レベルで問題になっているSHの暴動。
だけどSHの実態は絶対に流れない。
恵美や晶が圧力をかけている。
「少しほとぼりが冷めるのを待った方がいいんでないかい?」
善明がそう言っていた。
だけど空は言ったらしい。
「なんで?」
恵美さん達が隠蔽しようとしたら相手は必ずそれを引きずり出そうとする。
空の狙いはそれだと言う。
そいつが相手の黒幕につながっているのは間違いない。
そいつを見つけたら一気に暴いて芋づる式に引きずり出してやる。
しかし相手はよほど慎重らしい。
なかなか手を出してこない。
今もそうだ。
毎年新入生を恐喝するFGが何もしてこない。
天音達の脅しが効いたのかどうかは分からない。
何事もなく無事入学式を終えて回転寿司によって家に帰る。
着替えると教科書を流し読みしてた。
小学校でも進級するたびにやってたこと。
これだけで大体の事は頭に入る。
だから授業で寝るってわけじゃない。
小学校と違うのは担任=教師じゃない事。
科目によって教師が変わる。
中には中間テストのヤマを教えてくれる先生もいるそうだ。
僕には必要ないけど優奈にはきっと必要だからちゃんと聞いておこうと思ってる。
「中学生になったら買い食いできるからお勧めのおにぎり教えてあげるね」
結莉がそう言っていた。
「意外と昆布とか美味しいんだぞ。ミーハーはツナマヨや鮭狙うけどな」
母さんが言っている。
そうやって僕達の新しい3年間が始まる。
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