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RAGE OF DUST
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(1)
「ここみたいだね~」
俺達が東中に着くと結莉が言った。
「兵隊は必要ない」
茉莉は天音に言ったらしい。
中学生くらい大したことないからが理由じゃない。
全員私達の獲物だという茉莉の主張。
帰ったらコンビニでおにぎりを食べて帰っておやつを食べながらゲームをするという幸せな時間を奪われた。
挙句絶対に明日翔に呼び出されることになる。
だって放課後に来たわけじゃない。
昼休みに抜け出してきた。
理由は部活生でもない限り放課後に馬鹿が残ってるわけがない。
部活なんて真面目にやってる奴がFGなわけがない。
学校ごと爆撃して破壊しようぜと菫が言うけど、愛莉が「関係ない人を巻き込んではいけません」というのでどうやって判別するか相談していた。
そして出した結論で俺達は午後の授業の時間に東中にいる。
ここからが問題だ。
どうやってFGを選別する?
一クラスずつ回る方法もあるけど面倒だ。
すると朔と秋久が手があると言って校舎に入って行った。
当然職員が呼び止める。
「君たちはいったい何だね?」
そんなマヌケな質問をする職員に朔はためらわずに銃を向けた。
「死にたくなくなかったら放送室まで案内してもらおうか?……言っとくけどこれおもちゃじゃないよ?」
そういって壁に向かって一発撃つ。
もちろんサプレッサーくらいつけている
やがてスピーカーから朔の声が聞こえて来た。
「FGの奴らは全員グラウンドに出て来い。言う通りにしたら楽に殺してやる」
すると奴らの笑い声が聞こえて来た。
窓から顔を出した生徒が僕達に言う。
「たったそれだけの人数で俺達をやろうってのか?笑わせるな!怪我しないうちにとっとと家に帰れ」
それを聞いた他の生徒たちが笑っている。
ああ、この学校まで俺達の事は伝わってないのか?
その事を予測していた茉莉が結莉を見る。
結莉は警告代わりにその馬鹿のいる教室を破壊する気でいた。
だけと海翔が止めた。
「結莉が手を下すまでもないよ。僕がやる」
「どうやって?」
結莉が聞くと海翔は両手を校舎に向ける。
「ぐらららら~」
海翔がそう言った瞬間校舎が外から見ても分かるくらいに揺れ出した。
教室の中から悲鳴が聞こえる。
何か変な実を食べたのだろうか?
「……言う通りにした方が良いですよ。この人たち平気で校舎破壊しますよ?」
秋久が説明を追加していた。
それから怒涛の如く昇降口から出てくる生徒たち。
これじゃ判別がつかないな。
そうでもないらしい。
「菫、間違えるなよ?」
「空が言ってたしな。伊達に鍛えてねーよ」
そう言って2人は銃を取り出すと黒いリストバンドをしたやつの太ももを撃ちぬいていく。
「お前らを逃がすなんて一言も言ってねーぞ。余計な手間取らせるんじゃねーよ」
「た、助けて……」
「今更命乞いか?遅いよ。空がお前らは絶対に殺すって言ったんだ。だから死ぬしかない。諦めろ」
菫と茉莉がそうして選別してる中僕達は校舎を見ていた。
カーテンの隙間からこっちを見ている奴がいるのを見逃さなかった。
結莉に伝えて校内にいる馬鹿達の居場所を指示する。
部外者が全員避難したころ入れ違いで入って来たのが警官たちだった。
そのころには中に残っていたFGを始末した秋久達も学校から出てくる。
警官というか機動隊がシールドを持って並んで俺達に指示をする。
「やっぱりこうなりますよね」
「警官はどうするんだ?」
「こんな時だけ初動が早いって事はそういう事じゃないのか?」
「……そういう事にしとくけどいいか?結」
秋久と菫と茉莉が話して菫が俺に聞いてくる。
「銃を捨ててゆっくりとこっちに来なさい!」
警官も必死らしい。
まあ、グランドに築かれた亡骸を見たらそうなるだろう。
公僕ってのも大変なんだな。
そんな警官に菫が笑いながら答える。
「I'm not good at Japanese. Ask in english」
「ふざけるな!」
意味は通じたらしい。
最近の警官は凄いな。
すると一人の刑事がやって来た。
こっちに投降を呼びかけていた機動隊と話をしている。
「ああ、すまない。伝えておくのを忘れていた。あの子達はただの役者だ」
これはアクション映画の撮影だという。
「し、しかしあの倒れている人間は?」
「よくできている人形だよ。最近のSF技術はすごいんだ」
なんでもCGで作っているように見えて実は精巧な技術でつくられた仮面なんかがある。
この死体の山もそれだと説明していた。
「実は遠坂署長から連絡を受けていたのを伝えるのを忘れていたんだ。すまない」
「ま、まあ署長の命令なら従いますけど」
そう言って警察は撤収していく。
「ああ、大丈夫。全部署長から聞いてる。俺は一応署長直属の部下でFG関係の事件を任されている」
そう言って手帳を見せてくれた。
「君たちのリーダーは片桐空って言うんだろ?」
空に伝えておいてくれ。
これから映画のロケをする時は事前に伝えて欲しい。
つまりこれから起こる事件は全部ロケという事で片づけるつもりらしい。
念を入れて恵美がちゃんと作品の偽造をして警察に届け出を出したらしい。
そう言ってその刑事も帰って行った。
「まあ、片付いたし帰るか?それにしても海翔。お前何を食べたんだ?」
そんな話を茉莉がしている。
「ここからの帰り道ってコンビニないよね?どうしよう」
「海翔、ちゃんと見てなかったの?お弁当屋さんがあったよ」
弁当食べながら帰る中学生。
ありなのかな?
だめみたいだった。
天音達がやって来た。
「悪いな。私は別に夕飯ちゃんと食べれるなら文句は言わないんだが」
「天音はそう言って夕飯残しかけたことあったでしょ!」
天音と翼が言い合ってる。
「あと結達がいけそうなのは西中くらいか?」
「あそこも結構遠いぞ?」
昼休みに抜け出しても間に合わないかもしれない。
「て言う事は私達がやるしかないな」
「そうなるだろうな」
天音と祈が話し合っている。
「天音達だけずりーぞ!」
茉莉が抗議する。
「中学生に拳銃撃たせてやっただけありがたいと思え」
天音がそう言って茉莉の頭をポンと叩く。
「んじゃ帰るぞ」
「天音、あれどうすんだ?」
茉莉が倒れてる人を見る。
翼はにこりと笑って答えた。
「菫、さっさとゴミ掃除しときなさい」
「分かった」
菫はそう言って骸の山を”奈落”に飲み込んでいく。
「じゃ、帰ろうか。今夜はすき焼きにでもするか?」
「でも大地は椎茸残すよ?」
「あの野郎……白菜すら食わねーからな」
どうして残すんだろう?
玉子につけて食べたら美味しいのに。
ちなみに父さんはすき焼きにビールを入れると肉が柔らかくなるからと入れようとしていた。
「せっかく味を調えたのにその癖やめて下さい!」
そう言って母さんに怒られていた。
もうすぐ冬になる。
鍋やチキンとかケーキ。
美味しい物が待っていた。
(2)
俺達はFGの連中に囲まれていた
玲衣たちもさすがに不安を見せている。
相手は高校生じゃない。
高校生は大体の学校を天音達が潰してきたから。
地元で残っているのは菫達が始末しきれない大学生や社会人達。
当然こんなことに真昼間に加わる社会人だ。
ろくな連中じゃない。
だから玲衣や朝子達が震えていた。
「今まで散々やってきたんだ。自分たちがやられる事くらいわかってるんだろうな?」
そんな事を言いだすFGの連中たち。
まだ、少し時間がかかるらしいと佐為が言う。
「一つだけ言っておく。今ならまだ間に合うかもしれない」
ちゃんと棺桶に入れるか、塵になって海に捨てられるか、それとも存在そのものを抹消させられるか?
そのくらいの選択肢はあると思うから選べ。
ちなみに生き残るという選択肢はすでにない。
空の命令はFGが消滅するまで続く。
空が止める意思はないらしい。
「随分強気だな。この人数差がわからないのか?」
それに自分たちは銃を持っている。
そんな風に俺達を脅しつける。
逆に言えば現状でFGの優位はそのくらいしかない。
「お前らこそ分かってるのか?」
俺達に手を出せばもう何を言っても無駄。
すでにお前らにはハッピーエンドは用意されてない。
そんなに惨たらしい死に方をしたいなら好きにしろ。
ただし俺達も抵抗くらいはするぞ。
「あんまり舐めるなよ?クソガキ」
そう言って空に向かって一発脅しの一発を撃とうとした馬鹿の頭を善明が撃ち抜いた。
「空が言ってましたよ?それは脅しの道具じゃないと」
善明がFGの連中に警告する。
「悪かったな。少し問題があってな」
天音がそう言って笑う。
問題というのは簡単なものだった。
この場所へ来れる道は一本だけ。
だからそれを塞いでしまう必要があった。
そんな場所に偶然来るわけがない。
茜の指示通りにFGの連中を誘い込んだ。
で、問題というのは誰が道を塞ぐか。
増援が来る分は構わないけどなるべく警察の介入をさせたくない。
すでに純也を通じて「映画の撮影」という名目で通報は受けなくていいと警察には指示が下されていた。
あとは関係のない人間が入ってくるのを止めるだけ。
そんなつまらない役を誰がするか?
それでもめたらしい。
空が「僕がやるよ」と言ったけどみんなが反対した。
「雑魚の掃除ごときで王が出て来るな!」
で、翼と水奈と大地がその役割を負う事したそうだ。
「分かったか間抜け。お前らは私達の罠にはまっただけだ」
天音がそう言う。
しかし馬鹿は馬鹿でしかない。
まだ余裕を見せていた。
「お前らその程度の増援でこの人数を倒せると思ったのか?」
すると善明がため息を吐いた。
「君たちは分かってない。戦いは人数だけではどうしようもない状態があるんだ」
今日集まったのは凶悪なSHの中でも一番放っておいたら危険な連中。
人数差があろうが何だろうが関係ない。
水奈を見張りに行かせたのは過剰戦力になるから。
学に水奈がやりすぎないように見張っててくれと頼まれたから。
いい加減生き残ることを諦めろ。
善明達を止める者は存在しない。
それだけSHを怒らせた無能なリーダーを恨め。
「あまり俺達を舐めるなよ!」
そう言って銃を善明に向けたFGのメンバーは紗理奈にこめかみを撃ちぬかれた。
驚くFGの連中を見て善明はため息を吐く。
「だから言いましたよ?それは脅しの道具じゃない」
「どうでもいいだろ。これで正当防衛ってやつが成り立つだろ?」
天音はそう言って近くにいた奴を殴り飛ばす。
それが開始の合図だった。
人数差などなかったことにしてしまうのがSHの特徴。
天音の持つライド・ギグは戦えない朝子達に銃弾をかわすくらいの能力を与える。
戦闘自体にそんなに時間はかからなかった。
あっという間に最後の一人になってしまう。
「紗理奈、拳銃貸せ」
そう言って紗理奈から拳銃を受け取る天音。
「お前持ってないのか?」
「私が携帯すると愛莉が五月蠅いんだよ」
恵美さんからも「天音が自らそんな場所にいたらダメ。石原家の大事な嫁なのよ」と止められるらしい。
「なんか言い残すことあるか?」
「お前らこんな真似して後悔してもおそいぞ」
「お前は馬鹿か?お前らが馬鹿な真似をしたからこうなったんだ。後悔するのはお前らだ」
「天音や。空からメッセージ聞いてるんだろ?一応伝えておいた方がいいよ」
善明が言うと天音は生き残っている馬鹿に伝える事にした。
「あまり俺をを舐めるなよ?お前らの考えそうなことくらい筒抜けだ」
そう言って最後の一人を始末すると、天音は菫に頼んで連中を片付ける。
「光聖。大丈夫か?けが人いないだろうな?」
天音が俺に聞いてきた。
「おかげさまで助かりました」
「礼なら空に言え」
多分狙われるのは高校生だろう。
空はは予測していたらしい。
だから真っ先に天音達を使って高校生を潰した。
それでもまだ社会人などは潰し切れていない。
そいつらが狙うとしたら一番戦力がない高校生だろう。
SHも天音達が出てきてるんだ。
高校生潰すのに暴力団が出てきても別に不思議じゃない。
だから暴力団以上に質の悪い天音達に指示を出した。
それに奴らの指揮系統は既に把握している。
菫や茜達が逃すはずがない。
奇襲攻撃のつもりでもその指示を監視している茜達がすぐに空に伝える。
あらゆる面でSHはFGより優位な立場にいた。
SHはすでに高校生以下のメンバーは既に始末した。
県外や海外の連中も同様らしい。
中には「こんな危険なグループとは知らなかった」とグループを抜けようとする者もいるそうだ。
だが、空の次の手は既に決まっている。
ずっと対立してきたFG。
しかしもう生かしておくべき価値はない。
完全に叩き潰すと空は決めたらしい。
この抗争もようやく終止符を打つ時が来たようだ。
(3)
「何考えてるんだ?」
茉奈が急に聞いてきた。
学校で策を考えていた。
ただの暴力団なら空達が始末する。
だけどDOLLは俺が片付けないといけないだろう。
残りは4人。
しかしあいつらも誰を狙っているのかすらわからない。
スマホを使ってネットワークを把握したけど、さすがにそれだけじゃ誰が能力者なのか分からない。
DOLLが誰かを突き止める必要がある。
その方法を悩んでいた。
「つまり、そのDOLLを探す方法を考えていたんだ?」
「まあな」
さすがにネットでは能力の有無なんて判別できないからな。
「なるほどな……それなら私にアイデアがあるんだけど」
「アイデア?」
俺が聞くと茉奈が頷いた。
「どうするんだ?」
「その前に取引しようよ?」
「取引?」
「ああ、私が結にDOLLを探す方法を教えてあげる」
「で、俺はどうすればいい?」
「DOLL狩りに連れて行って」
「それは無理だ」
嫌だからとかじゃない。
理由はちゃんとある。
そう説明するけど茉奈は引き下がらなかった。
「結の側が地球で一番安全な場所でしょ?絶対離れないから」
確かに茉奈一人にしてるよりは安全かもしれない。
だけど……
「その話、家で話さないか?」
「誘ってくれるのは嬉しいんだけど、まずはDOLLでしょ?」
「理由を説明したいんだ」
「理由?」
「ああ、他人に聞かれたくない」
「まあ、そういう事なら今日放課後行く」
そう言って放課後茉奈を家に連れてきた。
「あら?茉奈を連れてきたの?」
珍しいわねと、母さんがそう言って笑っていた。
「悪さをしたらいけませんよ」
お菓子とジュースを持ってきた母さんがそう言って部屋を出る。
「スマホある?」
「ああ……」
そう言ってスマホをテーブルに置いた。
「結の能力にダイブってのがあるんでしょ?」
「それが関係あるのか?」
「その情報は私でも分かるんだよね?」
「無理だ」
「どうして?」
「それをこれから説明するよ」
「どういう事?」
茉奈がそう言うと俺は説明を始めた。
「俺の能力に”エンペラーズギアス”というのがある」
「結に従わなかったら心臓を握りつぶすってやつ?」
「ああ、それを俺自身にかけることで自分の能力に制限をかけた」
だからでたらめに能力を行使できる。
「それがどう関係するの?」
っていうかどんな制約をかけたの?
茉奈が聞くと俺は茉奈を指さした。
「どんな状況であろうと俺は茉奈に能力を使用しない」
茉奈に能力を使用した時点で俺は死ぬ。
「なんでそんな制限を!?」
「他にちょうどいい制限がなかった」
どんなことがあっても茉奈は俺自身で守る。
そう決めたから。
「なんでそんな事黙ってたの?」
「他の人間に知られたらリスクが高まるだろ?」
茉奈を盾にするだけで俺は無力になる。
「どうして私なの?」
ていうか私にどうしてそんな話を?
「茉奈だからだよ」
茉奈から他の人間に漏れても仕方ない。
そう覚悟を決めたから。
「ごめん、そんな覚悟を決めていたんだね」
全然気づかなかった。
「気づかれないようにしていたんだから当然だ」
「そっか、じゃあこの策はだめかぁ」
「どんな策だったんだ?」
茉奈に聞くと茉奈は説明した。
俺がゲットしたスマホの情報はFGでもDOLLの確信に触れることが出来る権限を持っている。
そんなところに一つのアカウントで二人も入れるはずがない。
だから茉奈を弾くアカウントがDOLLの情報のアカウント。
そうして茉奈が話しているうちに茉奈は何か気づいたらしい。
「あっ、そうか」
「どうした?」
「結が言ってたロボットアニメの話」
レーダーに反応しない位置を特定する戦艦の話。
それの逆をすればいい。
俺が何かしらの能力を発動させて反応を見せたアカウントがDOLLの所持するアカウント。
「茉奈は賢いな」
「ありがとう。で、どうする?」
さっそくやる?
俺が能力を使っている間は無防備な俺を見守っているらしい。
順番からするとサンからだろうな。
準備をすると茉奈に指示を出す。
「じゃあ、任せた」
「気をつけてね」
俺はさっそく奪ったスマホからダイブを試みる。
電脳空間の中能力の波動みたいなものを流す。
確かに反応するアカウントがあった。
一番大きなものに触れるとDOLLに関する情報が全て記載されていた。
その中からサンという奴を探し出す。
見つけたら跳躍する。
俺はサンとか言う奴の目の前に現れた。
「なんでお前が!?」
多分サンの部屋の中だろう。
都合がいい。
「死神は割とせっかちらしいんだ。待たせたな」
「くっ……」
部屋の中に違和感を感じた。
なるほど、それがお前の”人形”か。
俺は手に持っていた二つのヨーヨーを操りだす。
ヨーヨーを伸ばしたり手に戻したりの繰り返し。
違うのはヨーヨーが目に見えない人形を破壊していく。
空気で作られた目に見えない人形。
確かに有効な能力だけど相手が俺なのがまずかっただけだ。
能力を感知するとヨーヨーが勝手に潰しに行く。
しかし相手も馬鹿じゃない。
ヨーヨーの射程範囲を把握したんだろう。
その中に絶対に入ってこなかった。
「お前の能力はそれだけか?」
「貴様こそそのおもちゃだけじゃないか」
話し合ってる割には俺の能力を把握してるわけじゃないらしい。
「で、お前がサンか?」
「なんでその名前を?」
「俺の質問に答えろ。余計な事を言うな」
「そうだ、俺がサンだ」
「分かった。じゃあお礼にお前に一つアドバイスしてやる」
「アドバイスだと?」
首を傾げるサンの頭をめがけてヨーヨーを飛ばす。
「目に見えてるだけで全部分かった素振りを見せるのはただの油断だぞ」
いつからこのヨーヨーが紐で繋がっていると錯覚していた?
もちろん昔のドラマの様なチェーンで結んでるわけじゃない。
自由な絆。
勝手にそう呼んでる能力でつないでるだけの物体はサンの頭を粉々にする。
せめて自分の周りくらい人形で固めるくらいしておけば助かっただろうに。
死体を始末すると自分の部屋に戻る。
「もう終わったのか?」
「まあな」
どんなにすごい能力の持ち主でも使い方が分かってないなら大したことないと茉菜に説明する。
「このペースなら今日中に全部いけるんじゃないか?」
「いや、もう時間だ」
そう言って時計を指す。
「父さんが言ってたんだ。あまり茉奈と二人っきりになると誠が怒りだすって」
「……今さらじゃないか?」
「なんで?」
そう言われると確かに変だ。
首を傾げて考えていると茉奈が動いた。
突然俺の頬にキスをする。
「まさかクリスマスも日が暮れたら帰るとか言わないでよ」
ああ、そういうことか。
「じゃ、そろそろ帰るね」
「送るよ」
そう言って母さんに言って茉奈を家に送る。
「さっきの話だけど、もう一緒に寝てる仲なのに今さら夜遊びしても怒られないよ」
「そうだったな……」
「初めてが私で後悔してる?」
「それはない」
「よかった、じゃあまた明日ね」
そう言って茉奈は家に帰る。
あの日の事は鮮明に覚えている。
茉奈がちょっと大人びて見えた日。
自分の未熟さを感じた日。
今年はどうなるんだろう?
そんなことを考えていた。
「ここみたいだね~」
俺達が東中に着くと結莉が言った。
「兵隊は必要ない」
茉莉は天音に言ったらしい。
中学生くらい大したことないからが理由じゃない。
全員私達の獲物だという茉莉の主張。
帰ったらコンビニでおにぎりを食べて帰っておやつを食べながらゲームをするという幸せな時間を奪われた。
挙句絶対に明日翔に呼び出されることになる。
だって放課後に来たわけじゃない。
昼休みに抜け出してきた。
理由は部活生でもない限り放課後に馬鹿が残ってるわけがない。
部活なんて真面目にやってる奴がFGなわけがない。
学校ごと爆撃して破壊しようぜと菫が言うけど、愛莉が「関係ない人を巻き込んではいけません」というのでどうやって判別するか相談していた。
そして出した結論で俺達は午後の授業の時間に東中にいる。
ここからが問題だ。
どうやってFGを選別する?
一クラスずつ回る方法もあるけど面倒だ。
すると朔と秋久が手があると言って校舎に入って行った。
当然職員が呼び止める。
「君たちはいったい何だね?」
そんなマヌケな質問をする職員に朔はためらわずに銃を向けた。
「死にたくなくなかったら放送室まで案内してもらおうか?……言っとくけどこれおもちゃじゃないよ?」
そういって壁に向かって一発撃つ。
もちろんサプレッサーくらいつけている
やがてスピーカーから朔の声が聞こえて来た。
「FGの奴らは全員グラウンドに出て来い。言う通りにしたら楽に殺してやる」
すると奴らの笑い声が聞こえて来た。
窓から顔を出した生徒が僕達に言う。
「たったそれだけの人数で俺達をやろうってのか?笑わせるな!怪我しないうちにとっとと家に帰れ」
それを聞いた他の生徒たちが笑っている。
ああ、この学校まで俺達の事は伝わってないのか?
その事を予測していた茉莉が結莉を見る。
結莉は警告代わりにその馬鹿のいる教室を破壊する気でいた。
だけと海翔が止めた。
「結莉が手を下すまでもないよ。僕がやる」
「どうやって?」
結莉が聞くと海翔は両手を校舎に向ける。
「ぐらららら~」
海翔がそう言った瞬間校舎が外から見ても分かるくらいに揺れ出した。
教室の中から悲鳴が聞こえる。
何か変な実を食べたのだろうか?
「……言う通りにした方が良いですよ。この人たち平気で校舎破壊しますよ?」
秋久が説明を追加していた。
それから怒涛の如く昇降口から出てくる生徒たち。
これじゃ判別がつかないな。
そうでもないらしい。
「菫、間違えるなよ?」
「空が言ってたしな。伊達に鍛えてねーよ」
そう言って2人は銃を取り出すと黒いリストバンドをしたやつの太ももを撃ちぬいていく。
「お前らを逃がすなんて一言も言ってねーぞ。余計な手間取らせるんじゃねーよ」
「た、助けて……」
「今更命乞いか?遅いよ。空がお前らは絶対に殺すって言ったんだ。だから死ぬしかない。諦めろ」
菫と茉莉がそうして選別してる中僕達は校舎を見ていた。
カーテンの隙間からこっちを見ている奴がいるのを見逃さなかった。
結莉に伝えて校内にいる馬鹿達の居場所を指示する。
部外者が全員避難したころ入れ違いで入って来たのが警官たちだった。
そのころには中に残っていたFGを始末した秋久達も学校から出てくる。
警官というか機動隊がシールドを持って並んで俺達に指示をする。
「やっぱりこうなりますよね」
「警官はどうするんだ?」
「こんな時だけ初動が早いって事はそういう事じゃないのか?」
「……そういう事にしとくけどいいか?結」
秋久と菫と茉莉が話して菫が俺に聞いてくる。
「銃を捨ててゆっくりとこっちに来なさい!」
警官も必死らしい。
まあ、グランドに築かれた亡骸を見たらそうなるだろう。
公僕ってのも大変なんだな。
そんな警官に菫が笑いながら答える。
「I'm not good at Japanese. Ask in english」
「ふざけるな!」
意味は通じたらしい。
最近の警官は凄いな。
すると一人の刑事がやって来た。
こっちに投降を呼びかけていた機動隊と話をしている。
「ああ、すまない。伝えておくのを忘れていた。あの子達はただの役者だ」
これはアクション映画の撮影だという。
「し、しかしあの倒れている人間は?」
「よくできている人形だよ。最近のSF技術はすごいんだ」
なんでもCGで作っているように見えて実は精巧な技術でつくられた仮面なんかがある。
この死体の山もそれだと説明していた。
「実は遠坂署長から連絡を受けていたのを伝えるのを忘れていたんだ。すまない」
「ま、まあ署長の命令なら従いますけど」
そう言って警察は撤収していく。
「ああ、大丈夫。全部署長から聞いてる。俺は一応署長直属の部下でFG関係の事件を任されている」
そう言って手帳を見せてくれた。
「君たちのリーダーは片桐空って言うんだろ?」
空に伝えておいてくれ。
これから映画のロケをする時は事前に伝えて欲しい。
つまりこれから起こる事件は全部ロケという事で片づけるつもりらしい。
念を入れて恵美がちゃんと作品の偽造をして警察に届け出を出したらしい。
そう言ってその刑事も帰って行った。
「まあ、片付いたし帰るか?それにしても海翔。お前何を食べたんだ?」
そんな話を茉莉がしている。
「ここからの帰り道ってコンビニないよね?どうしよう」
「海翔、ちゃんと見てなかったの?お弁当屋さんがあったよ」
弁当食べながら帰る中学生。
ありなのかな?
だめみたいだった。
天音達がやって来た。
「悪いな。私は別に夕飯ちゃんと食べれるなら文句は言わないんだが」
「天音はそう言って夕飯残しかけたことあったでしょ!」
天音と翼が言い合ってる。
「あと結達がいけそうなのは西中くらいか?」
「あそこも結構遠いぞ?」
昼休みに抜け出しても間に合わないかもしれない。
「て言う事は私達がやるしかないな」
「そうなるだろうな」
天音と祈が話し合っている。
「天音達だけずりーぞ!」
茉莉が抗議する。
「中学生に拳銃撃たせてやっただけありがたいと思え」
天音がそう言って茉莉の頭をポンと叩く。
「んじゃ帰るぞ」
「天音、あれどうすんだ?」
茉莉が倒れてる人を見る。
翼はにこりと笑って答えた。
「菫、さっさとゴミ掃除しときなさい」
「分かった」
菫はそう言って骸の山を”奈落”に飲み込んでいく。
「じゃ、帰ろうか。今夜はすき焼きにでもするか?」
「でも大地は椎茸残すよ?」
「あの野郎……白菜すら食わねーからな」
どうして残すんだろう?
玉子につけて食べたら美味しいのに。
ちなみに父さんはすき焼きにビールを入れると肉が柔らかくなるからと入れようとしていた。
「せっかく味を調えたのにその癖やめて下さい!」
そう言って母さんに怒られていた。
もうすぐ冬になる。
鍋やチキンとかケーキ。
美味しい物が待っていた。
(2)
俺達はFGの連中に囲まれていた
玲衣たちもさすがに不安を見せている。
相手は高校生じゃない。
高校生は大体の学校を天音達が潰してきたから。
地元で残っているのは菫達が始末しきれない大学生や社会人達。
当然こんなことに真昼間に加わる社会人だ。
ろくな連中じゃない。
だから玲衣や朝子達が震えていた。
「今まで散々やってきたんだ。自分たちがやられる事くらいわかってるんだろうな?」
そんな事を言いだすFGの連中たち。
まだ、少し時間がかかるらしいと佐為が言う。
「一つだけ言っておく。今ならまだ間に合うかもしれない」
ちゃんと棺桶に入れるか、塵になって海に捨てられるか、それとも存在そのものを抹消させられるか?
そのくらいの選択肢はあると思うから選べ。
ちなみに生き残るという選択肢はすでにない。
空の命令はFGが消滅するまで続く。
空が止める意思はないらしい。
「随分強気だな。この人数差がわからないのか?」
それに自分たちは銃を持っている。
そんな風に俺達を脅しつける。
逆に言えば現状でFGの優位はそのくらいしかない。
「お前らこそ分かってるのか?」
俺達に手を出せばもう何を言っても無駄。
すでにお前らにはハッピーエンドは用意されてない。
そんなに惨たらしい死に方をしたいなら好きにしろ。
ただし俺達も抵抗くらいはするぞ。
「あんまり舐めるなよ?クソガキ」
そう言って空に向かって一発脅しの一発を撃とうとした馬鹿の頭を善明が撃ち抜いた。
「空が言ってましたよ?それは脅しの道具じゃないと」
善明がFGの連中に警告する。
「悪かったな。少し問題があってな」
天音がそう言って笑う。
問題というのは簡単なものだった。
この場所へ来れる道は一本だけ。
だからそれを塞いでしまう必要があった。
そんな場所に偶然来るわけがない。
茜の指示通りにFGの連中を誘い込んだ。
で、問題というのは誰が道を塞ぐか。
増援が来る分は構わないけどなるべく警察の介入をさせたくない。
すでに純也を通じて「映画の撮影」という名目で通報は受けなくていいと警察には指示が下されていた。
あとは関係のない人間が入ってくるのを止めるだけ。
そんなつまらない役を誰がするか?
それでもめたらしい。
空が「僕がやるよ」と言ったけどみんなが反対した。
「雑魚の掃除ごときで王が出て来るな!」
で、翼と水奈と大地がその役割を負う事したそうだ。
「分かったか間抜け。お前らは私達の罠にはまっただけだ」
天音がそう言う。
しかし馬鹿は馬鹿でしかない。
まだ余裕を見せていた。
「お前らその程度の増援でこの人数を倒せると思ったのか?」
すると善明がため息を吐いた。
「君たちは分かってない。戦いは人数だけではどうしようもない状態があるんだ」
今日集まったのは凶悪なSHの中でも一番放っておいたら危険な連中。
人数差があろうが何だろうが関係ない。
水奈を見張りに行かせたのは過剰戦力になるから。
学に水奈がやりすぎないように見張っててくれと頼まれたから。
いい加減生き残ることを諦めろ。
善明達を止める者は存在しない。
それだけSHを怒らせた無能なリーダーを恨め。
「あまり俺達を舐めるなよ!」
そう言って銃を善明に向けたFGのメンバーは紗理奈にこめかみを撃ちぬかれた。
驚くFGの連中を見て善明はため息を吐く。
「だから言いましたよ?それは脅しの道具じゃない」
「どうでもいいだろ。これで正当防衛ってやつが成り立つだろ?」
天音はそう言って近くにいた奴を殴り飛ばす。
それが開始の合図だった。
人数差などなかったことにしてしまうのがSHの特徴。
天音の持つライド・ギグは戦えない朝子達に銃弾をかわすくらいの能力を与える。
戦闘自体にそんなに時間はかからなかった。
あっという間に最後の一人になってしまう。
「紗理奈、拳銃貸せ」
そう言って紗理奈から拳銃を受け取る天音。
「お前持ってないのか?」
「私が携帯すると愛莉が五月蠅いんだよ」
恵美さんからも「天音が自らそんな場所にいたらダメ。石原家の大事な嫁なのよ」と止められるらしい。
「なんか言い残すことあるか?」
「お前らこんな真似して後悔してもおそいぞ」
「お前は馬鹿か?お前らが馬鹿な真似をしたからこうなったんだ。後悔するのはお前らだ」
「天音や。空からメッセージ聞いてるんだろ?一応伝えておいた方がいいよ」
善明が言うと天音は生き残っている馬鹿に伝える事にした。
「あまり俺をを舐めるなよ?お前らの考えそうなことくらい筒抜けだ」
そう言って最後の一人を始末すると、天音は菫に頼んで連中を片付ける。
「光聖。大丈夫か?けが人いないだろうな?」
天音が俺に聞いてきた。
「おかげさまで助かりました」
「礼なら空に言え」
多分狙われるのは高校生だろう。
空はは予測していたらしい。
だから真っ先に天音達を使って高校生を潰した。
それでもまだ社会人などは潰し切れていない。
そいつらが狙うとしたら一番戦力がない高校生だろう。
SHも天音達が出てきてるんだ。
高校生潰すのに暴力団が出てきても別に不思議じゃない。
だから暴力団以上に質の悪い天音達に指示を出した。
それに奴らの指揮系統は既に把握している。
菫や茜達が逃すはずがない。
奇襲攻撃のつもりでもその指示を監視している茜達がすぐに空に伝える。
あらゆる面でSHはFGより優位な立場にいた。
SHはすでに高校生以下のメンバーは既に始末した。
県外や海外の連中も同様らしい。
中には「こんな危険なグループとは知らなかった」とグループを抜けようとする者もいるそうだ。
だが、空の次の手は既に決まっている。
ずっと対立してきたFG。
しかしもう生かしておくべき価値はない。
完全に叩き潰すと空は決めたらしい。
この抗争もようやく終止符を打つ時が来たようだ。
(3)
「何考えてるんだ?」
茉奈が急に聞いてきた。
学校で策を考えていた。
ただの暴力団なら空達が始末する。
だけどDOLLは俺が片付けないといけないだろう。
残りは4人。
しかしあいつらも誰を狙っているのかすらわからない。
スマホを使ってネットワークを把握したけど、さすがにそれだけじゃ誰が能力者なのか分からない。
DOLLが誰かを突き止める必要がある。
その方法を悩んでいた。
「つまり、そのDOLLを探す方法を考えていたんだ?」
「まあな」
さすがにネットでは能力の有無なんて判別できないからな。
「なるほどな……それなら私にアイデアがあるんだけど」
「アイデア?」
俺が聞くと茉奈が頷いた。
「どうするんだ?」
「その前に取引しようよ?」
「取引?」
「ああ、私が結にDOLLを探す方法を教えてあげる」
「で、俺はどうすればいい?」
「DOLL狩りに連れて行って」
「それは無理だ」
嫌だからとかじゃない。
理由はちゃんとある。
そう説明するけど茉奈は引き下がらなかった。
「結の側が地球で一番安全な場所でしょ?絶対離れないから」
確かに茉奈一人にしてるよりは安全かもしれない。
だけど……
「その話、家で話さないか?」
「誘ってくれるのは嬉しいんだけど、まずはDOLLでしょ?」
「理由を説明したいんだ」
「理由?」
「ああ、他人に聞かれたくない」
「まあ、そういう事なら今日放課後行く」
そう言って放課後茉奈を家に連れてきた。
「あら?茉奈を連れてきたの?」
珍しいわねと、母さんがそう言って笑っていた。
「悪さをしたらいけませんよ」
お菓子とジュースを持ってきた母さんがそう言って部屋を出る。
「スマホある?」
「ああ……」
そう言ってスマホをテーブルに置いた。
「結の能力にダイブってのがあるんでしょ?」
「それが関係あるのか?」
「その情報は私でも分かるんだよね?」
「無理だ」
「どうして?」
「それをこれから説明するよ」
「どういう事?」
茉奈がそう言うと俺は説明を始めた。
「俺の能力に”エンペラーズギアス”というのがある」
「結に従わなかったら心臓を握りつぶすってやつ?」
「ああ、それを俺自身にかけることで自分の能力に制限をかけた」
だからでたらめに能力を行使できる。
「それがどう関係するの?」
っていうかどんな制約をかけたの?
茉奈が聞くと俺は茉奈を指さした。
「どんな状況であろうと俺は茉奈に能力を使用しない」
茉奈に能力を使用した時点で俺は死ぬ。
「なんでそんな制限を!?」
「他にちょうどいい制限がなかった」
どんなことがあっても茉奈は俺自身で守る。
そう決めたから。
「なんでそんな事黙ってたの?」
「他の人間に知られたらリスクが高まるだろ?」
茉奈を盾にするだけで俺は無力になる。
「どうして私なの?」
ていうか私にどうしてそんな話を?
「茉奈だからだよ」
茉奈から他の人間に漏れても仕方ない。
そう覚悟を決めたから。
「ごめん、そんな覚悟を決めていたんだね」
全然気づかなかった。
「気づかれないようにしていたんだから当然だ」
「そっか、じゃあこの策はだめかぁ」
「どんな策だったんだ?」
茉奈に聞くと茉奈は説明した。
俺がゲットしたスマホの情報はFGでもDOLLの確信に触れることが出来る権限を持っている。
そんなところに一つのアカウントで二人も入れるはずがない。
だから茉奈を弾くアカウントがDOLLの情報のアカウント。
そうして茉奈が話しているうちに茉奈は何か気づいたらしい。
「あっ、そうか」
「どうした?」
「結が言ってたロボットアニメの話」
レーダーに反応しない位置を特定する戦艦の話。
それの逆をすればいい。
俺が何かしらの能力を発動させて反応を見せたアカウントがDOLLの所持するアカウント。
「茉奈は賢いな」
「ありがとう。で、どうする?」
さっそくやる?
俺が能力を使っている間は無防備な俺を見守っているらしい。
順番からするとサンからだろうな。
準備をすると茉奈に指示を出す。
「じゃあ、任せた」
「気をつけてね」
俺はさっそく奪ったスマホからダイブを試みる。
電脳空間の中能力の波動みたいなものを流す。
確かに反応するアカウントがあった。
一番大きなものに触れるとDOLLに関する情報が全て記載されていた。
その中からサンという奴を探し出す。
見つけたら跳躍する。
俺はサンとか言う奴の目の前に現れた。
「なんでお前が!?」
多分サンの部屋の中だろう。
都合がいい。
「死神は割とせっかちらしいんだ。待たせたな」
「くっ……」
部屋の中に違和感を感じた。
なるほど、それがお前の”人形”か。
俺は手に持っていた二つのヨーヨーを操りだす。
ヨーヨーを伸ばしたり手に戻したりの繰り返し。
違うのはヨーヨーが目に見えない人形を破壊していく。
空気で作られた目に見えない人形。
確かに有効な能力だけど相手が俺なのがまずかっただけだ。
能力を感知するとヨーヨーが勝手に潰しに行く。
しかし相手も馬鹿じゃない。
ヨーヨーの射程範囲を把握したんだろう。
その中に絶対に入ってこなかった。
「お前の能力はそれだけか?」
「貴様こそそのおもちゃだけじゃないか」
話し合ってる割には俺の能力を把握してるわけじゃないらしい。
「で、お前がサンか?」
「なんでその名前を?」
「俺の質問に答えろ。余計な事を言うな」
「そうだ、俺がサンだ」
「分かった。じゃあお礼にお前に一つアドバイスしてやる」
「アドバイスだと?」
首を傾げるサンの頭をめがけてヨーヨーを飛ばす。
「目に見えてるだけで全部分かった素振りを見せるのはただの油断だぞ」
いつからこのヨーヨーが紐で繋がっていると錯覚していた?
もちろん昔のドラマの様なチェーンで結んでるわけじゃない。
自由な絆。
勝手にそう呼んでる能力でつないでるだけの物体はサンの頭を粉々にする。
せめて自分の周りくらい人形で固めるくらいしておけば助かっただろうに。
死体を始末すると自分の部屋に戻る。
「もう終わったのか?」
「まあな」
どんなにすごい能力の持ち主でも使い方が分かってないなら大したことないと茉菜に説明する。
「このペースなら今日中に全部いけるんじゃないか?」
「いや、もう時間だ」
そう言って時計を指す。
「父さんが言ってたんだ。あまり茉奈と二人っきりになると誠が怒りだすって」
「……今さらじゃないか?」
「なんで?」
そう言われると確かに変だ。
首を傾げて考えていると茉奈が動いた。
突然俺の頬にキスをする。
「まさかクリスマスも日が暮れたら帰るとか言わないでよ」
ああ、そういうことか。
「じゃ、そろそろ帰るね」
「送るよ」
そう言って母さんに言って茉奈を家に送る。
「さっきの話だけど、もう一緒に寝てる仲なのに今さら夜遊びしても怒られないよ」
「そうだったな……」
「初めてが私で後悔してる?」
「それはない」
「よかった、じゃあまた明日ね」
そう言って茉奈は家に帰る。
あの日の事は鮮明に覚えている。
茉奈がちょっと大人びて見えた日。
自分の未熟さを感じた日。
今年はどうなるんだろう?
そんなことを考えていた。
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