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迎え撃つ未来
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(1)
「光聖ヤバイ!」
「分かってる。まだ大丈夫だ」
俺達は慌てて着替えて準備して家を出た。
車を飛ばして会場に向かう。
「光聖あんた運転して大丈夫?」
「こんな時間に検問やってるわけないだろ?」
やってたとしてもバス専用レーンの取り締まりくらいだ。
そんなの車の流れを見ていたら気づく。
分かりやすく言うと左側の車線が空いてるからって気持よく飛ばしてたら捕まるってやつ。
それだけ気を付けていたら、事故でもしない限り大丈夫。
入学式の会場に着くと香奈達が来ていた。
「遅かったね」
入学式の事忘れてるのかと思った。
香奈がそう言うと希美が説明した。
入学式の日は覚えていた。
だから前祝いに夜遅くまで飲んでいた。
結果寝坊した。
そんな希美の説明を聞いて香奈は呆れていた。
「そろそろ時間だし入ろうぜ」
圭がそう言うとホールに入って入学式が始まる。
終わると昼飯を食って一度家に帰ると言った。
「どうしたんだ?」
「いや、車で来たから」
「そもそもなんで車で来たんだ?」
バスでもよかったんじゃないのか?
ちなみに圭は電車で来たらしい。
玲衣に合せて別府大学近くのアパートを借りたから。
あの辺は意外と交通の便がいい。
下手すると地元よりいいかもしれない。
圭の言う通り車で着てもよかった。
しかしちゃんと理由があった。
どうせ夜騒ぐんだろ?
だったら一度家に帰って電車でくればいい。
無駄な出費は押さえたい。
もちろん別府から来てる圭はそういうわけでもないけど。
というわけで一度家に帰って夕方にまた街にバスで街に向かった。
他の皆は街で時間を潰していたらしい。
明日が休みというわけじゃないので2次会程度までにしておいた。
最終便のバスに乗って家に帰る。
「ベッドに行く前にお風呂に入ってね」
希美がそういうので言う通りに従う。
風呂から出ると希美が風呂に入ってる間テレビを見ていた。
希美が出てきて髪を乾かしているころいい時間になる。
さすがに初日から遅刻は嫌だからすぐに寝る事にした。
いよいよ大学生生活が始まる。
(2)
「ただいま~」
「おかえり。随分遅かったね」
「うん、茉奈達と遊んでた」
「そうなんだ。夕食大丈夫?」
「それはちゃんと食べる」
「それじゃ部屋に行って着替えなさい」
「うん」
そう言って部屋に戻る。
通学距離が伸びたから少々食べる量が増えても大丈夫だ。
そう思って構わず食べてた。
しかしそんなに大金の小遣いをもらってるわけじゃない。
財布の中身がヤバイ。
茉奈ともまずいと相談していた。
しかし今日予期せぬ出来事が起きた。
それは昼ご飯を食べながら朔達と話していた時だった。
話題はいつも同じ。
今日は何食べて帰ろうか?
ちなみに昼は茉奈が作った弁当と父さんが推していた購買部の焼きそばパン。
いつもと変わらぬ選択肢。
ラーメンかうどんか?
しかしそんな日常に菫が不満だったらしい。
「茉莉は女子高生だろ!食いすぎとかそう言うの考えないのか!?」
「ラーメンもうどんもそんなに変わらねーよ!たまには餃子にしとくか?」
菫はうどん派だった。
地元の女子高生は昔からうどんを食べて帰る子が多いらしい。
「私はともかく心音たちが心配してるんだよ!」
いくら自転車通学とはいえこれは食べすぎじゃないのか。
その分夕食を減らしていたらしい。
それでもやっぱりお財布の中身が心配みたいだ。
心音の分は秋久が払っているから問題ないけど。
菫だって一緒じゃないか。
そうなると心配なのは芳樹や佳織達か。
「でもゲーセンで遊んで行っても腹減るだけじゃねーか」
茉莉や菫は真っ直ぐ家に帰るという選択肢はないらしい。
「花の女子高生なんだからもっと学校生活を謳歌しろ!」
天音がそう言ったらしい。
帰りにラーメン食ってる女子高生なんてそんなにいないと思うけど。
「じゃあ、どうすればいいんだよ?」
茉莉が聞いていた。
すると心音が提案した。
「私一度でいいから制服でファストフード食べてみたかったの」
食べるのには変わらないじゃないか。
「あんなものじゃいくら食っても腹にたまらないぞ」
だからそんなに弱っちいんだよと茉莉が言った。
「お前みたいなゴリラ女と一緒にするな!」
「んだと!てめえだって食ってるじゃねーか!」
「お前とは違うんだよ!見ろ!この弁当の量を!」
茉莉達と一緒にどうせ帰りにラーメン食べるからと減らしてるらしい。
もちろん秋久はそんな真似許されない。
「そんな年頃の女の子みたいな事許しません!」
翼や祈にそう言われたらしい。
「結も大食い女は嫌なの?」
茉奈が聞いた。
僕は不思議だったから逆に聞き返した。
「あのさ、そもそも女子高生の大食いっていけないことなのか?」
「普通は嫌なんじゃない?」
「そんなの実際の女子高生を知らない男の妄想だろ?」
一般的な女子高生をイメージしてるだけ。
心音みたいな清純なのか菫達みたいな遊び系か。
細かく言うと運動部に通っている女子高生だっているのにおかしな話だ。
「飾らないありのままの茉奈が好きなんだ」
そう言うと茉奈は喜んで抱き着いてきた。
焼きそばパン食べてるのに服にソースつくよ?
「私も結が大好き」
「……このバカップルは放っておくとして確かにたまには変えてみるのもいいかもね」
沙羅がそういう。
しかしハンバーガーはいくら食べても腹に溜まらない。
そんな平行線の話をしていると結莉が一言で解決した。
「両方食べたらいいじゃない」
「……結莉本気で言ってるの?」
佳織が驚いていた。
「まあ、ハンバーガーなんておやつみたいなもんだし何とかなるだろ?」
茉莉が言った。
ラーメンもおやつだと思うんだけどややこしくなるので黙っていた。
で、今日はラーメンとハンバーガーを食べた。
夕食は高校に入学した時からちゃんと帰って食べれるようにするって約束していたから調整している。
しかしまだ半月も経ってないのに財布の中身がやばい。
「実を言うと私も今月もうデート出来ないんじゃないかってくらいにきつくて」
「うん」
だから少し多めにもらっている。
それでも足りなさそうだとハンバーガーを食べながら聞いていた。
「それなら天音からいい方法聞いたぜ」
茉莉が相談に加わった。
夕食の後お風呂に入って父さんがお風呂に入っている時にキッチンで片づけている母さんに後ろから抱きついた。
「結?どうしたの?」
「あのさ、お願いがあるんだけど……」
茉莉が言ったようにお願いしてみた。
ぽかっ
「どうせそんな事だろうと思った。結莉達から聞いたの?」
バレていた。
天音がじいじに頼もうとしてことごとく愛莉が追い払ったらしい。
だけど相手が母さんならいける。
そう茉莉が言っていたけど失敗だったみたいだ。
「男の子なら母親にそんな真似したらだめですよ。そういう人間を”マザコン”って言うの」
そんな軟弱な男の子に育てたつもりはない。
やっぱりダメか。
そうでもなかったらしい。
「愛莉さんからは聞いていたの。多分結もそうするだろうって」
冬吾や冬莉は共同で愛莉たちを攻略しようとしたけど失敗したらしい。
でも母さんは違うらしい。
「……空がお風呂から出てきたら母さんが一緒に相談してあげる」
「え?」
「茉莉や結莉達と一緒に遊ぶのならちょっと足りないかなって思ったから」
どうせ妙なものを買うつもりはないんだろう。
ほとんどを食べ物に使うつもりだろう。
「分かったら、早く離れなさい。空が見たら大事だよ?」
「もう遅いよ」
父さんが俺達を見ていた。
「悪戯もほどほどにしておきなさい。この色男」
「自分の息子に言う言葉なの?」
母さんが笑っていた。
その後父さん達と相談して増額が許してもらえた。
そのことを茉奈に知らせる。
「でも、無理しないでね。結と一緒にいられる事が私にとって大事なの」
「それも話し合った」
「え?」
家で夕食を食べるならいくら買い食いしても構わない。
さっきも言ったけど大学に進学したら2人で同棲するんでしょ?
「結。順番はちゃんと守らないとダメだよ」
「え?」
「子供をつくる前にまず結婚しないとダメだよ」
「そうなんだ」
「おもしれえ!菫。誰が一番先に子供作るか勝負しようぜ!」
そいつが一番男を誘惑するのが上手いって事だろと茉莉が言いだした。
「お前みたいな胸だけが取り柄のゴリラ女に私が負けるわけねーだろ!」
「胸すらねーゴリラに言われたくないぞ!」
「上等だ!茉莉!おい、正行。明日うちに泊りに来い!子作りするぞ!」
学歴なんか関係ない
どうせ酒井グループの子会社くらい任せられるから問題ない。
「そうこなくちゃな!朔!お前も今度の週末家に泊りに来い!」
「ま、待て。結莉が言ってる事忘れてるだろ。先に結婚だって」
まだ結婚できる歳じゃない。
しかしこうなった二人を止められるはずがなかった。
「事実婚って言葉しらないのか!」
高校生が使う言葉なのかはおいておこう。
そして茉莉は天音に相談した。
すると天音は祈に言ったらしい。
「祈!てめえの息子は子作りくらいもビビッてできないのか!?」
「何かあったのか?」
天音が事情を説明すると朔は叱られたらしい。
「お前!行為くらいはしてるんだろ!?リスクがある事くらいわかってるだろ!」
リスクを分かっているって事は子供が出来た場合の事も覚悟してるって事だ。
だったらいつ作っても一緒だろ!
大地がさすがに止めようとしたけど天音を止められる存在なんてそんなにない。
恵美は多分茉莉の子供なら天音が面倒みたらいいから早く作りなさいというのが分かっている。
晶も同様だ。
だから愛莉に救援を求めた。
求めるまでもなかった。
冬吾がこれはまずいと瞳子と相談して愛莉に伝えたらしい。
当然愛莉は激怒する。
「あなた達は高校生になったばかりなのに何を馬鹿な事を言ってるのですか!」
「別に女なら大学行く必要ないだろ!」
母親とは思えない無茶苦茶な理論を展開する天音対母さんと愛莉という図式になった。
晶たちも話を聞いたらしい。
「あなた彼女がその気になってるのにそんな腰抜けな子供に育ったの!?」
ただのお小遣いの話が凄いことになった。
茉奈はそんな中僕に聞いていた
「結は男の子と女の子どっちがいい?」
きっとどっちもって言ったら両方出来るまで作るつもりなんだろうな。
僕は今日一番の問題にぶつかっていた。
(3)
「お前に俺達をまとめて欲しいんだけど」
今日もまたやって来た。
新しいグループを作った。
俺の父さんはFGの創始者。
だから俺にリーダーになってほしい。
中学に入ってから毎日の様に勧誘されていた。
俺はSHに入っているから無理と断っても「あんな甘っちょろい仲良しグループより絶対いいぜ」と同じセリフを何度も聞かされる。
こいつらは知らないのだろうか?
そんな甘っちょろいグループがFGを壊滅させたことを。
何も分かっていない。
そんな馬鹿に巻き込まれて怪我をしたくない。
「悪いがその気はない」
いつも言っているのだけど懲りずに毎日やってくる。
だが、いつしか脅しみたいなことを言いだした。
「一ノ瀬詩……だったか?」
「詩がどうした?」
「結構綺麗な彼女だな。ナイフで顔に傷を……」
そいつが最後まで言う前に俺はそいつの胸ぐらをつかんでいた。
「いいか?一度だけ忠告してやる。お前が今言ったことをやってみろ?俺もお前を許さないし、お前が作ったしょぼいグループもお前の言う甘っちょろいグループの餌になるだけだ」
今この場でお前を殴り飛ばしたいところだけど俺が暴れたら海翔達が気づく。
そうなったらお前らなんぞ夏休みを迎える前に焼却するぞ?
俺の気が変わらないうちに失せろ。
そう言うと男は教室を出ていった。
その後に俺も教室を出ると昇降口で詩たちが待っていた。
「また……か?」
光一が言うと「まあな」と答える。
「また物騒な世界になるの?」
詩が不安そうにしている。
「そんな事にはさせない」
その為には絶対に海翔達に知られるわけにはいかない。
帰りにコンビニによってジュースを買って飲みながら相談していた。
「俺は詩を絶対守る。だから光一は碧から絶対に目を離すな」
「分かってる。碧にふざけた真似したらただじゃ済まさない」
珠希は世界一安全な石原家の警護がついているから心配ない。
「恭一。私を守ってくれるのは嬉しいんだけど……」
不安そうにしている詩の頭を撫でる。
「分かってるよ。心配するな」
やっとつかみ取った平穏な日々。
絶対にそれを守って見せると誓っていた。
(4)
「どうしたんだ?詩織」
「うん、ラブレター入ってた」
そう言って双子の弟の杏介に手紙を見せる。
卒業式とか修学旅行とかに伝えるのは割とべただけど新学期が始まってからいきなりは驚いた。
馬鹿正直に名前を書いている。
如月大和。
如月グループの御曹司だ。
またすごい人に目をつけられたな。
「どうするつもりなんだ?」
「とりあえず話を聞いてみるよ」
その後で決断してもいいでしょ?
気になる事もあるし。
書かれている通りに屋上の入り口に待っていた。
屋上への扉は鍵がかかっている。
むかしここから投身自殺を偽装して放り投げようとした児童がいるらしい。
無茶をするな。
ご丁寧に遺書まで偽造するらしい。
小学生とはいえあまりにだらしのない格好をしている大和だったけどこの日ばかりは双子の姉の綺羅にアドバイス受けたらしい。
「あ、来てくれてありがとう」
「いいよ、ああいう行動に出る勇気は凄いと思ったから」
それなりの誠意は尽くすよ。
「でさ、早速本題なんだけど……」
「その前に質問があるんけど」
「どうしたの?」
「なんで今なの?」
もっともっともな時期ってあるじゃない。
どうして今だったの?
すると少し考えて大和は話した。
「実は前から詩織の事が気になっていた」
思春期を迎える頃には私を見ていたらしい。
杏介とやんちゃをして楽しんでる私に釘付けになっていた。
それが恋だと理解するのにそんなに時間がかからなかった。
だったらその時に言えばいい。
でもなかなかいうタイミングに迷っていた。
すると綺羅がアドバイスしたらしい。
「女の子だって恋をするんだよ」
よほどひどい人じゃない限り男の子から告白されて嬉しくない女子なんていない。
きっとうまくいく。
大和は真面目だし大丈夫。
でもそうやって悩んでいるうちに詩織を横取りされるかもしれない。
躊躇っていたらそのリスクは増すばかり。
「でも卒業式までまだ時間が」
「卒業式にしないといけないなんて決まりはない」
いつでもいいでしょ。
それでも困っている大和に綺羅は答えた。
「だったら新学期始まったらすぐしたら?」
「なんで?」
「上手くいったら修学旅行楽しめるじゃない」
それで今日決行したらしい。
「……わかった。ありがとう」
「それじゃ……」
「まだだよ。大和」
肝心な事を言ってないじゃない。
「私の事……好きなの?」
彼の面子を潰すかもしれないけど聞きたいと思ったから。
彼の口から聞かせてくれると思ったから。
彼は私の思いに答えてくれた。
「ずっと好きだった。付き合って欲しい」
「いいよ。ありがとう」
「へ?」
どうしたんだろう?
「いや、断られると思ったから。俺つまらない人間だと思ってたから」
「一つアドバイスしてもいい?」
「うん」
「私が大和を選んだの。少しは自信を持ってほしい」
「分かった」
「ありがとう。おかげで小学校生活最後の楽しみが出来たね」
楽しい修学旅行にしようね。
「よろしく」
そう言って大和は手を差し出す。
私も手を出して握手をした。
「私一度やりたかったことあるんだけどいい?」
「どうしたの?」
一緒に帰りたい。
「……うん。分かった」
そう言って大和と家に帰る。
大和も色々恋愛事情に詳しかった。
SHは縁結びの神様
私達の同級生はたくさんいるけどきっとうまくいくだろう。
私にとって幸せな最後の小学校生活が待っていた。
「光聖ヤバイ!」
「分かってる。まだ大丈夫だ」
俺達は慌てて着替えて準備して家を出た。
車を飛ばして会場に向かう。
「光聖あんた運転して大丈夫?」
「こんな時間に検問やってるわけないだろ?」
やってたとしてもバス専用レーンの取り締まりくらいだ。
そんなの車の流れを見ていたら気づく。
分かりやすく言うと左側の車線が空いてるからって気持よく飛ばしてたら捕まるってやつ。
それだけ気を付けていたら、事故でもしない限り大丈夫。
入学式の会場に着くと香奈達が来ていた。
「遅かったね」
入学式の事忘れてるのかと思った。
香奈がそう言うと希美が説明した。
入学式の日は覚えていた。
だから前祝いに夜遅くまで飲んでいた。
結果寝坊した。
そんな希美の説明を聞いて香奈は呆れていた。
「そろそろ時間だし入ろうぜ」
圭がそう言うとホールに入って入学式が始まる。
終わると昼飯を食って一度家に帰ると言った。
「どうしたんだ?」
「いや、車で来たから」
「そもそもなんで車で来たんだ?」
バスでもよかったんじゃないのか?
ちなみに圭は電車で来たらしい。
玲衣に合せて別府大学近くのアパートを借りたから。
あの辺は意外と交通の便がいい。
下手すると地元よりいいかもしれない。
圭の言う通り車で着てもよかった。
しかしちゃんと理由があった。
どうせ夜騒ぐんだろ?
だったら一度家に帰って電車でくればいい。
無駄な出費は押さえたい。
もちろん別府から来てる圭はそういうわけでもないけど。
というわけで一度家に帰って夕方にまた街にバスで街に向かった。
他の皆は街で時間を潰していたらしい。
明日が休みというわけじゃないので2次会程度までにしておいた。
最終便のバスに乗って家に帰る。
「ベッドに行く前にお風呂に入ってね」
希美がそういうので言う通りに従う。
風呂から出ると希美が風呂に入ってる間テレビを見ていた。
希美が出てきて髪を乾かしているころいい時間になる。
さすがに初日から遅刻は嫌だからすぐに寝る事にした。
いよいよ大学生生活が始まる。
(2)
「ただいま~」
「おかえり。随分遅かったね」
「うん、茉奈達と遊んでた」
「そうなんだ。夕食大丈夫?」
「それはちゃんと食べる」
「それじゃ部屋に行って着替えなさい」
「うん」
そう言って部屋に戻る。
通学距離が伸びたから少々食べる量が増えても大丈夫だ。
そう思って構わず食べてた。
しかしそんなに大金の小遣いをもらってるわけじゃない。
財布の中身がヤバイ。
茉奈ともまずいと相談していた。
しかし今日予期せぬ出来事が起きた。
それは昼ご飯を食べながら朔達と話していた時だった。
話題はいつも同じ。
今日は何食べて帰ろうか?
ちなみに昼は茉奈が作った弁当と父さんが推していた購買部の焼きそばパン。
いつもと変わらぬ選択肢。
ラーメンかうどんか?
しかしそんな日常に菫が不満だったらしい。
「茉莉は女子高生だろ!食いすぎとかそう言うの考えないのか!?」
「ラーメンもうどんもそんなに変わらねーよ!たまには餃子にしとくか?」
菫はうどん派だった。
地元の女子高生は昔からうどんを食べて帰る子が多いらしい。
「私はともかく心音たちが心配してるんだよ!」
いくら自転車通学とはいえこれは食べすぎじゃないのか。
その分夕食を減らしていたらしい。
それでもやっぱりお財布の中身が心配みたいだ。
心音の分は秋久が払っているから問題ないけど。
菫だって一緒じゃないか。
そうなると心配なのは芳樹や佳織達か。
「でもゲーセンで遊んで行っても腹減るだけじゃねーか」
茉莉や菫は真っ直ぐ家に帰るという選択肢はないらしい。
「花の女子高生なんだからもっと学校生活を謳歌しろ!」
天音がそう言ったらしい。
帰りにラーメン食ってる女子高生なんてそんなにいないと思うけど。
「じゃあ、どうすればいいんだよ?」
茉莉が聞いていた。
すると心音が提案した。
「私一度でいいから制服でファストフード食べてみたかったの」
食べるのには変わらないじゃないか。
「あんなものじゃいくら食っても腹にたまらないぞ」
だからそんなに弱っちいんだよと茉莉が言った。
「お前みたいなゴリラ女と一緒にするな!」
「んだと!てめえだって食ってるじゃねーか!」
「お前とは違うんだよ!見ろ!この弁当の量を!」
茉莉達と一緒にどうせ帰りにラーメン食べるからと減らしてるらしい。
もちろん秋久はそんな真似許されない。
「そんな年頃の女の子みたいな事許しません!」
翼や祈にそう言われたらしい。
「結も大食い女は嫌なの?」
茉奈が聞いた。
僕は不思議だったから逆に聞き返した。
「あのさ、そもそも女子高生の大食いっていけないことなのか?」
「普通は嫌なんじゃない?」
「そんなの実際の女子高生を知らない男の妄想だろ?」
一般的な女子高生をイメージしてるだけ。
心音みたいな清純なのか菫達みたいな遊び系か。
細かく言うと運動部に通っている女子高生だっているのにおかしな話だ。
「飾らないありのままの茉奈が好きなんだ」
そう言うと茉奈は喜んで抱き着いてきた。
焼きそばパン食べてるのに服にソースつくよ?
「私も結が大好き」
「……このバカップルは放っておくとして確かにたまには変えてみるのもいいかもね」
沙羅がそういう。
しかしハンバーガーはいくら食べても腹に溜まらない。
そんな平行線の話をしていると結莉が一言で解決した。
「両方食べたらいいじゃない」
「……結莉本気で言ってるの?」
佳織が驚いていた。
「まあ、ハンバーガーなんておやつみたいなもんだし何とかなるだろ?」
茉莉が言った。
ラーメンもおやつだと思うんだけどややこしくなるので黙っていた。
で、今日はラーメンとハンバーガーを食べた。
夕食は高校に入学した時からちゃんと帰って食べれるようにするって約束していたから調整している。
しかしまだ半月も経ってないのに財布の中身がやばい。
「実を言うと私も今月もうデート出来ないんじゃないかってくらいにきつくて」
「うん」
だから少し多めにもらっている。
それでも足りなさそうだとハンバーガーを食べながら聞いていた。
「それなら天音からいい方法聞いたぜ」
茉莉が相談に加わった。
夕食の後お風呂に入って父さんがお風呂に入っている時にキッチンで片づけている母さんに後ろから抱きついた。
「結?どうしたの?」
「あのさ、お願いがあるんだけど……」
茉莉が言ったようにお願いしてみた。
ぽかっ
「どうせそんな事だろうと思った。結莉達から聞いたの?」
バレていた。
天音がじいじに頼もうとしてことごとく愛莉が追い払ったらしい。
だけど相手が母さんならいける。
そう茉莉が言っていたけど失敗だったみたいだ。
「男の子なら母親にそんな真似したらだめですよ。そういう人間を”マザコン”って言うの」
そんな軟弱な男の子に育てたつもりはない。
やっぱりダメか。
そうでもなかったらしい。
「愛莉さんからは聞いていたの。多分結もそうするだろうって」
冬吾や冬莉は共同で愛莉たちを攻略しようとしたけど失敗したらしい。
でも母さんは違うらしい。
「……空がお風呂から出てきたら母さんが一緒に相談してあげる」
「え?」
「茉莉や結莉達と一緒に遊ぶのならちょっと足りないかなって思ったから」
どうせ妙なものを買うつもりはないんだろう。
ほとんどを食べ物に使うつもりだろう。
「分かったら、早く離れなさい。空が見たら大事だよ?」
「もう遅いよ」
父さんが俺達を見ていた。
「悪戯もほどほどにしておきなさい。この色男」
「自分の息子に言う言葉なの?」
母さんが笑っていた。
その後父さん達と相談して増額が許してもらえた。
そのことを茉奈に知らせる。
「でも、無理しないでね。結と一緒にいられる事が私にとって大事なの」
「それも話し合った」
「え?」
家で夕食を食べるならいくら買い食いしても構わない。
さっきも言ったけど大学に進学したら2人で同棲するんでしょ?
「結。順番はちゃんと守らないとダメだよ」
「え?」
「子供をつくる前にまず結婚しないとダメだよ」
「そうなんだ」
「おもしれえ!菫。誰が一番先に子供作るか勝負しようぜ!」
そいつが一番男を誘惑するのが上手いって事だろと茉莉が言いだした。
「お前みたいな胸だけが取り柄のゴリラ女に私が負けるわけねーだろ!」
「胸すらねーゴリラに言われたくないぞ!」
「上等だ!茉莉!おい、正行。明日うちに泊りに来い!子作りするぞ!」
学歴なんか関係ない
どうせ酒井グループの子会社くらい任せられるから問題ない。
「そうこなくちゃな!朔!お前も今度の週末家に泊りに来い!」
「ま、待て。結莉が言ってる事忘れてるだろ。先に結婚だって」
まだ結婚できる歳じゃない。
しかしこうなった二人を止められるはずがなかった。
「事実婚って言葉しらないのか!」
高校生が使う言葉なのかはおいておこう。
そして茉莉は天音に相談した。
すると天音は祈に言ったらしい。
「祈!てめえの息子は子作りくらいもビビッてできないのか!?」
「何かあったのか?」
天音が事情を説明すると朔は叱られたらしい。
「お前!行為くらいはしてるんだろ!?リスクがある事くらいわかってるだろ!」
リスクを分かっているって事は子供が出来た場合の事も覚悟してるって事だ。
だったらいつ作っても一緒だろ!
大地がさすがに止めようとしたけど天音を止められる存在なんてそんなにない。
恵美は多分茉莉の子供なら天音が面倒みたらいいから早く作りなさいというのが分かっている。
晶も同様だ。
だから愛莉に救援を求めた。
求めるまでもなかった。
冬吾がこれはまずいと瞳子と相談して愛莉に伝えたらしい。
当然愛莉は激怒する。
「あなた達は高校生になったばかりなのに何を馬鹿な事を言ってるのですか!」
「別に女なら大学行く必要ないだろ!」
母親とは思えない無茶苦茶な理論を展開する天音対母さんと愛莉という図式になった。
晶たちも話を聞いたらしい。
「あなた彼女がその気になってるのにそんな腰抜けな子供に育ったの!?」
ただのお小遣いの話が凄いことになった。
茉奈はそんな中僕に聞いていた
「結は男の子と女の子どっちがいい?」
きっとどっちもって言ったら両方出来るまで作るつもりなんだろうな。
僕は今日一番の問題にぶつかっていた。
(3)
「お前に俺達をまとめて欲しいんだけど」
今日もまたやって来た。
新しいグループを作った。
俺の父さんはFGの創始者。
だから俺にリーダーになってほしい。
中学に入ってから毎日の様に勧誘されていた。
俺はSHに入っているから無理と断っても「あんな甘っちょろい仲良しグループより絶対いいぜ」と同じセリフを何度も聞かされる。
こいつらは知らないのだろうか?
そんな甘っちょろいグループがFGを壊滅させたことを。
何も分かっていない。
そんな馬鹿に巻き込まれて怪我をしたくない。
「悪いがその気はない」
いつも言っているのだけど懲りずに毎日やってくる。
だが、いつしか脅しみたいなことを言いだした。
「一ノ瀬詩……だったか?」
「詩がどうした?」
「結構綺麗な彼女だな。ナイフで顔に傷を……」
そいつが最後まで言う前に俺はそいつの胸ぐらをつかんでいた。
「いいか?一度だけ忠告してやる。お前が今言ったことをやってみろ?俺もお前を許さないし、お前が作ったしょぼいグループもお前の言う甘っちょろいグループの餌になるだけだ」
今この場でお前を殴り飛ばしたいところだけど俺が暴れたら海翔達が気づく。
そうなったらお前らなんぞ夏休みを迎える前に焼却するぞ?
俺の気が変わらないうちに失せろ。
そう言うと男は教室を出ていった。
その後に俺も教室を出ると昇降口で詩たちが待っていた。
「また……か?」
光一が言うと「まあな」と答える。
「また物騒な世界になるの?」
詩が不安そうにしている。
「そんな事にはさせない」
その為には絶対に海翔達に知られるわけにはいかない。
帰りにコンビニによってジュースを買って飲みながら相談していた。
「俺は詩を絶対守る。だから光一は碧から絶対に目を離すな」
「分かってる。碧にふざけた真似したらただじゃ済まさない」
珠希は世界一安全な石原家の警護がついているから心配ない。
「恭一。私を守ってくれるのは嬉しいんだけど……」
不安そうにしている詩の頭を撫でる。
「分かってるよ。心配するな」
やっとつかみ取った平穏な日々。
絶対にそれを守って見せると誓っていた。
(4)
「どうしたんだ?詩織」
「うん、ラブレター入ってた」
そう言って双子の弟の杏介に手紙を見せる。
卒業式とか修学旅行とかに伝えるのは割とべただけど新学期が始まってからいきなりは驚いた。
馬鹿正直に名前を書いている。
如月大和。
如月グループの御曹司だ。
またすごい人に目をつけられたな。
「どうするつもりなんだ?」
「とりあえず話を聞いてみるよ」
その後で決断してもいいでしょ?
気になる事もあるし。
書かれている通りに屋上の入り口に待っていた。
屋上への扉は鍵がかかっている。
むかしここから投身自殺を偽装して放り投げようとした児童がいるらしい。
無茶をするな。
ご丁寧に遺書まで偽造するらしい。
小学生とはいえあまりにだらしのない格好をしている大和だったけどこの日ばかりは双子の姉の綺羅にアドバイス受けたらしい。
「あ、来てくれてありがとう」
「いいよ、ああいう行動に出る勇気は凄いと思ったから」
それなりの誠意は尽くすよ。
「でさ、早速本題なんだけど……」
「その前に質問があるんけど」
「どうしたの?」
「なんで今なの?」
もっともっともな時期ってあるじゃない。
どうして今だったの?
すると少し考えて大和は話した。
「実は前から詩織の事が気になっていた」
思春期を迎える頃には私を見ていたらしい。
杏介とやんちゃをして楽しんでる私に釘付けになっていた。
それが恋だと理解するのにそんなに時間がかからなかった。
だったらその時に言えばいい。
でもなかなかいうタイミングに迷っていた。
すると綺羅がアドバイスしたらしい。
「女の子だって恋をするんだよ」
よほどひどい人じゃない限り男の子から告白されて嬉しくない女子なんていない。
きっとうまくいく。
大和は真面目だし大丈夫。
でもそうやって悩んでいるうちに詩織を横取りされるかもしれない。
躊躇っていたらそのリスクは増すばかり。
「でも卒業式までまだ時間が」
「卒業式にしないといけないなんて決まりはない」
いつでもいいでしょ。
それでも困っている大和に綺羅は答えた。
「だったら新学期始まったらすぐしたら?」
「なんで?」
「上手くいったら修学旅行楽しめるじゃない」
それで今日決行したらしい。
「……わかった。ありがとう」
「それじゃ……」
「まだだよ。大和」
肝心な事を言ってないじゃない。
「私の事……好きなの?」
彼の面子を潰すかもしれないけど聞きたいと思ったから。
彼の口から聞かせてくれると思ったから。
彼は私の思いに答えてくれた。
「ずっと好きだった。付き合って欲しい」
「いいよ。ありがとう」
「へ?」
どうしたんだろう?
「いや、断られると思ったから。俺つまらない人間だと思ってたから」
「一つアドバイスしてもいい?」
「うん」
「私が大和を選んだの。少しは自信を持ってほしい」
「分かった」
「ありがとう。おかげで小学校生活最後の楽しみが出来たね」
楽しい修学旅行にしようね。
「よろしく」
そう言って大和は手を差し出す。
私も手を出して握手をした。
「私一度やりたかったことあるんだけどいい?」
「どうしたの?」
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「……うん。分かった」
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